こちら艦娘広報室   作:たこ輔

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あくまで「ような」なのでピロートークではないです
ですが、それにも負けない甘い時間
公式には負けますが、それでも精いっぱい幸福を込めて
青葉と片腕のない司令官さんの、外伝的お話


外伝:まるでピロートークのような青葉の話

うたた寝って、どうしてこんなに幸せなんでしょう。

 ――それはきっと、大好きな人が傍にいるから。

 

 

 

「ふわぁ~」

「眠そうだね、青葉」

 

 大きなあくびをする青葉に、司令官さんが微笑みかけました。

 変な顔していなかったかな? ちょっと恥ずかしさを覚えて、慌てて口元を隠します。

 

 司令官さんのお家でのんびり過ごす週末の夜。青葉は司令官さんの左側に座ってテレビを眺めていました。

 今は映画の再放送が流れています。ちょっと前に話題になったロマンス映画ですね。見ているだけでちょっと恥ずかしく、赤面してしまいそうな大人なシーンがたくさん。

 

 だけど青葉はウトウトして、司令官さんの肩に寄りかかってしまっていたみたい。座りなおして姿勢を正します。

 

「あ、司令官さん。ごめんなさい。重かったですよね?」

「そんなことないよ。それに、寝ててもいいんだよ?」

「それはもったいないから嫌です。せーかっく司令官さんと一緒にいるんですから」

 

 ポヤポヤと重いまぶたをこすりながら青葉はキッパリと答えます。

 一週間ぶりの司令官さんとの時間。寝てて終わってしまうのはもったいないです。

 

「青葉はもっと司令官さん成分、補給したいです」

 

 ……そう思ってはいるのですが、やっぱり眠たい気持ちは青葉の頭の中をぼんやりで埋め尽くしていきます。ほらまたコクリ、コクリと船をこぐ。

 

「そうは言うけど……あはは。ほら、眠そう。いいよ、寝てて。気にしないで」

 

 苦笑しながら司令官さんは優しく頭を撫でてくれました。男の人らしい、大きな手。ゴツゴツしていますけど温かくて、繊細で、とても……心地いい。

 

 気持ちよくて目を細めてしまいます。今の青葉は撫でられるワンコのよう。

 

「あぁ、頭を撫でるのはズルいです。そんなことされたら気持ちよくて……」

 

 言葉の端がもにゃもにゃと。最後まで言う前にコテン、青葉は頭を司令官さんの肩に寄せました。

 ドクン、ドクン。伝わってくる音。

 

「あ……司令官さんの鼓動、聞こえます」

 

 大好きな人の命の音。感じることができて自然と表情が緩んでいきます。

 

「ボクも青葉の重さを感じることができて嬉しいな」

 

 重いまぶたを上げて、上目で司令官さんをチラリ。幸せそうな顔に、青葉まで嬉しい気持ちでいっぱい。

 

「……いい匂いだね」

「それ、ちょーっと変態さん、みたいですよ?」

 

 耳元にかかる吐息がくすぐったくて、囁かれた言葉がヘンテコで、青葉は小さく笑いを漏らします。

 司令官さんは微妙に困ったような笑みを浮かべます。

 

「そうは言われてもね……。青葉からはお日様の匂いがするから、思わず口に出しちゃったよ」

「えへへ、まるで干したお布団、みたいですか?」

 

「そうだね。思わず抱きしめたくなるよ」

「わわわ……! ギュッとされちゃいました」

 

 司令官さんは青葉の頭に置いてあった手を腰に回して、そっと抱き寄せました。

 さっきまでよりずっと近い、密着感。

 

 司令官さんの温かさが伝わってきて、青葉は熱くなってしまいます。きっと頬に出てしまっているはず。ポカポカしちゃってますから。

 

「……うん。いい抱き心地」

 

「きょーしゅくです……」

 

 満ち足りた表情を浮かべる司令官さん。恥ずかしさがこみ上げてきて顔を見ることができません。

 だけど自然と青葉も手を司令官さんの背中に回してギュー。牛さんじゃ、ないですよ?

 

 ……幸せがじんわりと湧き上がってきます。

 

「このままどこかに持ち去って独り占めしてしまいたいくらいだよ」

 

 テレビでは主人公がヒロインをお姫様抱っこしながらどこかへ連れていくシーン。思わず青葉が司令官さんに同じようなことをされる光景を想像してしまいます。

 

 それがあまりにステキすぎて、ふにゃふにゃな笑み。

 でも司令官さんはちょっと寂しそうな表情。

 

「だけどボクの手じゃそれができない。そこまで不便に感じたことのないこの腕だけど、久しぶりに片腕になってしまった悔しさを覚えるよ」

 

 ヒラリ、揺れる司令官さんの右袖。中には何も入っていない空っぽ。

 事故で失くしてしまった右腕。

 

 左腕だけで青葉を抱っこするのは確かに……難しいです。

 

「そう……ですね」

 

 ちょっと気まずくなって視線を逸らします。

 残念……というのもありますが、それ以上に青葉の心をギュッと絞めつける苦しさ。

 

 どうしようもない現実を突きつけられたような寂しさ。

 

「でも……大丈夫です。青葉はずぅっと、司令官さんのそばにいます。だからいつでも、独占ですよ?」

 

 今度は青葉が囁きました。優しく、素直な気持ちをたくさん込めて。それはきっと自分自身にも向けた言葉。

 

 言葉はなくても嬉しそうに目を細める司令官さん。青葉も柔らかな笑みを浮かべました。

 

「それに青葉も、司令官さんを独占しちゃいます」

 

 コテン。青葉は司令官さんの膝に頭を乗せて寝転びます。硬いけれど落ち着く寝心地。

 下から覗いた司令官さんの表情は目をパチクリ、キョトンとさせていてなんだか可愛い。

 

「えへへ。青葉の……定位置です」

 

 そっと司令官さんの手を握ります。手のひらを合わせ、指と指、一本ずつしっかりと絡ませて。

 繋がった手の体温が伝わってきます。司令官さんの温もり。

 

「青葉の手、暖かいね」

 

 微笑む司令官さんにだけど、青葉は小さなあくびで返します。

 

「えへへ……。また、眠くなってきちゃいました。しばらく、こうしてても……いいですか?」

「うん、こうしてて……欲しいな」

 

 チラリ、テレビを横目で見ればクライマックス。主人公とヒロインが熱く愛を確かめ合っています。ちょっとだけ羨ましいと思ってしまいました。

 

 でも……テレビの中のロマンスにも負けないくらい、幸せで、甘い時間。

 ウトウト、幸せな気持ちでいっぱいです。

                                 終

 

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