【悲報】刹那の妹に転生したけど双子の片割れが一方通行な件について 作:篠原えれの
低軌道ステーションにて、上条は姉の絹江に連行されるように、兄の沙慈とそのガールフレンド、ルイスを見送るために来ていた。
「姉さんは分かるけど、なんで当麻まで見送りに......」
「ちょっと会いたい人が居てな。お見送りは偶然重なってしまったというか、」
沙慈が困った様子で上条の方を見る。仕事で低軌道ステーションに来た姉と違って上条は今日も日本の学校で補習があったはずなのである。上条の視線はとても泳いでいた。
「あれ?当麻君確か補習があるんじゃなかったけ?別にいいけど、不思議~」
「そうなんだよ、ルイス。姉さんが偶然当麻を見つけたからいいけど見つからなかったら僕達に黙ってこっちにまで来てたってことだよね?」
「そうよ。あんたお金もないのにどうやってここまで来たのよ。偶然見つけたからいいけど、学校サボってこんなところまで来て。小萌先生に叱られるわよ」
グサグサと上条に聞かれて当然な質問が次々に飛んでくる。ここはまず、弁明できるところから弁明して行こう。上条は胸に誓った。
「此処に来るまでの交通費を負担してくれる人が居てな。小萌先生にはきちんと連絡済みだから許してくれ」
「それで土御門君と一緒に普通ソロモン諸島まで来る?一体誰なのよ、その交通費を出してくれた友人って」
「私だよ」
「そうなんだよ。インデックスとステイル達が交通費を出してくれるって。それで土御門も一緒にって、うぇええなんでここにいるんだインデックスうぅぅ!」
はい!と元気よく絹江の疑問に答えたのは上条が言った通り、低軌道ステーションで待ち合わせしていたインデックスだった。腰まで届く長い銀髪に純白の修道服が特徴的で、一目で異国のシスターだと分かる少女はとても低軌道ステーションでは目立った。
純白の修道服こと歩く教会は今回、
そんな彼女、インデックスは勿論転生者だ。手紙でしか上条は彼女とやり取りをしたことがないが、その姿は本当に前世のインデックスと変わりなかった。
「沙慈、あの子可愛いね!少し小さいけど、もしかして当麻君のガールフレンド?」
「えぇ?!確かに前に、当麻からAEUに何人か友達は居るって聞いたことはあるけど、確かに手紙の差出人もインデックスさんだと聞いたけど、まさかこんな小さい女の子でシスターさんだとは僕も初耳だよ?!」
「ちょっと、当麻。どういうことかきちんと説明しなさい」
ゴゴゴ...と三人(特に姉)からの圧が凄まじく上条は押されてしまう。インデックスも、はじめてのクロスロード家との邂逅で「わぁ、生ではじめて見た」と感動して正直何を言ったらいいのか分からなくなっていた。もう少しまってから上条と話せばよかったが、つい手が出ちゃったのだ。インデックスもインデックスで、オタクだった。
「僕達はこういうものです。すみません、いきなりご兄弟をお借りしてしまって。彼とは付き合いがそれなりに長いんですよ」
そう言ったのはステイルだった。ステイルが名刺を絹江に渡す。
「へぇ、十字教の神父さん。...イギリス清教?」
「わぁ、すごい。神父さんなのに赤髪だし、ピアスとバーコード。しかも高身長でイケメン。当麻君の友達、すごいね。どこで知り合ったの?十字教って、私聞いたことある。確かカトリックとかプロテスタントみたいに、宗派がいっぱいあるんだよ。イギリス清教はそんな十字教の一つだね。確か、イギリスにあるって聞いたことがあるけど。」
「えっ、イギリスの神父さんが態々こんなところに?」
ルイスも絹江と一緒にステイルが渡した名刺を見る。ルイスがステイルに感じた印象をそのまま沙慈に伝えると沙慈は困惑した。こんなところに、イギリスの神父さん?疑問に思うのも当然だった。
上条はステイルの登場に驚く。
「ステイル?!来るのが遅いというか、目立つわその格好!!」
「...この格好以外に何もないと思うんだが、侵害だな。」
上条はステイルがいつも通りすぎるのを指摘すると、そうでも無いぞとステイルは否定した。すると、トイレに逃げるように籠っていた土御門が戻ってくる。
「すまんにゃー」
「何がすまんにゃーだ、お前のせいでこの修羅場だったんだ土御門!!なんか言ってくれ!!」
「言うもなにも、これから行くところはステイル達だけじゃなくて、カミやんも行かないと意味がないところだにゃー。そういうところだにゃ。だから、その、勝手に連れてきちゃってごめんなさいだにゃ」
困ったように土御門はそう言う。それを見て、絹江はため息を吐きながら言った。
「はぁ。せめてどこに行くのか教えなさいよ。それぐらい聞く権利がこっちにもあると思うんだけど?」
「王商会の当主に会いに行くんだにゃ。大昔にお世話になったことがあって、そのお礼を言いに行くだけだにゃ。お姉様も名前ぐらいは聞いたことがあると思うんだにゃ。」
譲らない姿勢の絹江のために、これぐらいなら言っても大丈夫だろうと土御門が話す。そう、上条達は王留美に会いに来たのだ。土御門は王留美がソレスタルビーイングのエージェントだというだけでなく、ハシャ神の付喪神が憑依しているのも知っている。だから、大昔にお世話になった礼を言いに行くと言うのもあながち間違いでは無いのだ。ソレスタルビーイングのエージェントとしてだけでなく、自分達をこの世界に転生させた経緯も聞きたい。そんな想いが土御門にあった。
「王商会の当主って、超セレブな女の子でしょ確か。社交界で有名になった、あの美人さんじゃない。昔お世話になったって、私知らないわよそんなの!またどんなトラブル作ったの?!」
「知らないと言われてもそれ以上説明できないんだにゃ。信じる信じないのもお姉様に任せるにゃ」
上条にはカミやんのお姉ちゃんと言ってた割に、本人を目の前にするとお姉様と言ってしまうのは流石だろうか。土御門は絹江に理由を話せるだけ話した。
「相変わらず、当麻君すっごい交友関係持ってるね」
「切っても切れない腐れ縁と言いますか、なんかその、勝手にここまで来ちゃってごめんなさい。旅行楽しんできてください(トホホ......)」
「うん。行ってくるよ。来ちゃったのはもう仕方ないし、当麻も気をつけてね」
「相変わらずあんたは当麻に甘いんだから。はぁ、分かったわ。終わったらきちんと連絡すること。いいわね!」
上条が勝手に黙って低軌道ステーションまで来たのを謝っているのもあって三人から許して貰う。土御門やステイル、インデックスがいい感じに経緯や自己紹介をしたのもあって、そういうことならと許して貰えたのも大きいだろう。
「(来て早々、色々起こりすぎだなぁ)」
上条はひたすらに自分の不幸を呪った。