剣の示す道   作:シュリンプ1012

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 あけましておめでとうございます(血涙)


 なんでこんなに間が空いたかって?……リアルが忙しかったんです……はい。許して…。


二、芽吹きの門

 

「ふぁ〜ぁ…」

 

 

 のそのそと、眠っちまいそうな足取りで歩きながら、大きな欠伸を一つ。今日はいつもの時間よりも早く起きたのに加えて、暖かな陽気にも満たされていたからだろう。俺の脳みそ君は、ちゃんと朝の挨拶が出来ていなかった。

 これに関しては兄と姉が悪いと言える。…いや、全部が全部あの二人のせいだと言う訳ではないのだが……そう、ただ単純に起こし方が悪かったのだ。

 

 俺が布団の中でぐっすりと気持ちよさそうに寝ていた時のことだ。突然ノックの一つもなしに、

 

『弟よぉ!今日はお前にとってのめでたい日だ!!ちゃんと心の準備は出来たかい!!?』

 

 などと大声を上げて、ずかずかと姉が入ってきたのだ。

 いや近所迷惑だからやめろよ、とは思いましたよ?えぇ。…ただ、それならまだよかった。煩いだけならまだマシだったのだ。

 

 

『…ぅ…煩ぇよ姉貴ぃ〜…』

 

 

 開けきらない目蓋を擦り、欠伸を一つして上半身を起こす。

 

 

 その時だった。

 

 

 

『今だケンシロー!!』

 

『ワンワン!!ワオーン!!』

 

 

 笑いを込めたかのような兄貴の掛け声。それと同時に叫ぶ犬の遠吠え。

 この時の俺は、脳の回転が通常通りに動いていた訳なく、それでいて視界もぼやけたまま。だからこそか、二つの声への反応が出遅れたし、何より、一直線に向かってくる黒い何かにも気づくことが出来なかった。

 

 

 

 ここいらで想像がついただろう。そう、朝っぱらから俺は愛おしいケンシローから反則級のタックルを喰らったのだ。それも土手っ腹。さらにいえば鳩尾近くの所に。

 もちろん痛かったし、呻き声も上がった。正に不意打ち。ケンシロー君は忍者になれるな(確信)。まぁその後すぐにケンシローは兄貴に抱き抱えられてどっか行ったんですけどね。

 あの後母親から『朝から何騒いでんだ馬鹿タレ!!』とこっ酷く叱られた。その時には兄貴も姉貴も家を出ていたので、俺だけが叱られた。

 

 まぁ腹立ったからあの二人が取っておいた菓子持ってきたがな!ガハ!!

 

 

「うぅ、腹痛ぇ…」

 

 

 にしても、綺麗に喰らった〜…。そのせいで身体痛いのに眠気が襲ってくるという矛盾した現象起きてんだよなぁ……。

 まぁ、ケンシローだから許す。うん、可愛いは正義だもん、是非もないね。

 

 

「…っと、そんなこんなでつきましたよっと」

 

 

 調子の戻ってきた足取りを一旦止め、突っ込んでいたポケットの中の手を出し、大きく聳え立つ校舎の前に立つ。

 

 

 ––––羽丘高校。これからの三年間、俺が在籍することになる学校。

 別に緊張しているわけではない。なのに俺は足を進ませることが出来ない。……さっきまで意気揚々とした感じで進められたのに。

 

 とここで、通常運転を開始している脳みそに、ある少女の姿がよぎった。

 つい3日前に会ったあの少女。同い年かそれ以上の彼女がよぎったのだ。

 期待していなかった出会い。それがあの時起きた。と言うことはもしかしたらこの学校でも……と、思い込んでしまったのだ。

 

 

「……いや、ありえんだろ」

 

 

 小声で俺はそう呟く。

 そうだ、アレ以来一回も会っていないのだ。……それに、期待なんてするだけ損だし。うんうん、淡い妄想など考えたって無駄無駄、無駄なんだ。

 そう納得した俺は、止めていた足を進め校門をくぐり抜けて行ったのであった。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 薄暗い室内。天井にある照明は明かりを灯しておらず、窓は暗いカーテンに遮られ、日光がこの中に入り込まないようになっている。

 唯一の光といえば壇上に立つ男を照らす為、天井とはまた別の明かりが眩く煌いていた。

 

 午前9時。場所は羽丘高校小ホール。ずらりと並ぶ座席に、これまたずらりと座る生徒たち。どれもこれも、今日から始まる学校生活に心を躍らせる新入生たちだ。だのに彼らは感情を表には出さず、ただじっと、美しい姿勢を保ったまま耳を澄ませていた。

 それもその筈。今行われているのは、その新入生たちの為に催された入学式の真っ最中。学長、担任etc…様々な人達が祝辞を述べ、彼らの入学を祝っている。当然、生徒達はこれを聞かなければならない。

 

 

 その中で一人、何故だか肩を震わせるものがいた。

 

 

 

「はわ、はわわわ……」

 

 

 彼女の名を朝日 六花。眼鏡と赤いシュシュが目立つ田舎娘。

 では、彼女は何故肩を震わしているのか?

 緊張している……それはあり得るだろう。実際、彼女は東京に到着した際に人の多さに感動もしていたし、コンビニのあまりの多さに驚きもしていた。要は東京という街について無知だったのだ。それ故に、彼女の中では感動があったのと同時に、これからやっていけるかの不安があった。

 

 ならばそれが理由ではないか。そう思う者が多いだろう。だがそれは、割合に表すならば3割程度のもの。おおよその要因ではない。では、残りの7割は何なのだろうか。

 

 

 それは、彼女の横の席にあった。

 

 

「くかっ……くっ…くぅ…」

 

「はわわわわ…!」

 

 

 頭を振り子のように動かし、目を閉瞑り、かつ口を半開きにして夢の国に向かっている者が1人。

 何を隠そう、こいつこそ今朝方、愛犬に腹をどつかれた哀れな男なのだ。そいつが、彼女の横に座っているのである。

 

 

(どどど、どうしたらええんや…!?さっき起こしたのに〜!!)

 

 

 実は、時間を巻き戻すこと数十分前。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 期待と不安を目一杯胸の内に秘めた六花。角ついた足取りで小ホールに着くと、案内役の先生に出迎えられ、今いるこの先に座った。

 今回の座席順はあらかじめ決められたクラスに分け、そのクラスの中で早いもの順に詰めて座る形式だった。

 

 やいのやいのと賑わう周囲。これが都会というものかと息を呑んでいた彼女だったが、ふと、先に座っていた男に目が向いた。

 腰を老人のように曲げ、両腕を前で組み、顔を下に向け表情を窺わせないようにしている。

 

 寝ている…そう判断した六花は、お祭り騒ぎの中でも平然としていることに驚きつつも感心した。そして彼とは反対に姿勢をビシッと伸ばし、開会の宣言が告げられるのを待った。

 

 それから少し経ち。照明が段々と消され、カーテンが閉められる。もうそろそろ始まる…そう思った瞬間、彼女は横の彼が気になりそちらに視線を向けた。

 

 

『……すぅ…』

 

『ま、まだ寝とる……』

 

 

 始まることに気付かないのか、男はあいも変わらず下を向いていた。

 

 

『あ、あの…!もう始まりますよ…!』

 

 

 流石に起こさないとまずいので、彼女は男の肩を揺らした。

 すると、男は触れられた肩を電撃が走ったかのように跳ねびつかせた。これには堪らず伸ばした手を引かせる六花。その手は予想外の反応による恐怖で震えていた。

 

 

『ん……あぁ、時間か……』

 

 

 男は何事もなかったかのように顔を上げ、僅かな光で照らされた時計に目をやり、始まりの時間であることを確認。それから横に座る六花へと視線を向けた。

 互いに目が合う2人。かたや、今にもまた眠りに入りそうな半目の男。かたや、どうしていいか分からず慌てふためく少女。

 

 

『あっえっえとですね!?時間になったと思ったので起こそうとしまして、そ、それで今日はお日柄も良くぅぅ…!』

 

『…えぇーっと……取り敢えず落ち着こうぜ?』

 

 

 ここでハッと我に帰った六花。男はその様子を見て、周りを見てみろと指先で円を描きながらそう促した。

 

 

『…ぁ』

 

 

 小さく声が一つ鳴る。

 生徒はおろか数人の教師らが、困惑した顔で六花の方へと視線を向けていた。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 そんな出来事から戻って現在。もう一度起こそうか起こさないかと悩む六花とは裏腹に、時間は決められたリズムに乗って進んでいく。式は佳境へと入り、最後の生徒会長挨拶までと至っていた。

 

 

(どうしよう……やっぱ起こした方が…いやでもさっきみたいに…)

 

 

 起こしたい反面、先程の羞恥に晒されたことが引っかかり、未だに踏ん切りをつけられない六花。だがこのままでは、かれの寝息が周りに気付かれ先生に見つかり、両者ともが罰を課せられる可能性がある。それだけは如何しても避けたい。

 

 悩みに悩む……その時だった。

 

 

るんっ♪ですよー!

 

 

 可愛らしい女子の声。

 書類の舞う音とその声が響いた瞬間、周りに巨大な歓喜の嵐が吹き荒れた。

 突然のことに六花は勿論のこと、眠っていた彼さえも肩をびくつかせ、目を見開いた。

 咄嗟に周りを見渡す2人。そして再度、目があった。

 目と目が合うその瞬間好きだと気付いた……訳ではなく。

 

 

「「……え?」」

 

 

 状況を全く掴めずに、唯々困惑するだけなのであった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 入学式終了後、俺達生徒はその場で解散。決められた時間に自分達の教室にいることを条件に、校内探索をするなり、新しく出来た友達と談話するなりと、ある程度の自由時間を設けられた。

 ……どうしたものか。俺はてっきりこのままみんなで教室に向かって、先生からの連絡を聞いて帰宅……みたいに考えてたもんだから、この後の予定考えて無いんだけど。ってか、そういうのは連絡伝えた後にした方がいい気がするんだがなぁ…。

 

 

「あ、あのっ!」

 

「ん?」

 

 

 教室で寝ていようかと考えていると、横から可愛らしいお声が耳に届いた。なんだなんだと、俺は其方へと振り向いてみる。

 自分より少し身長の低い眼鏡っ子……確か、さっきの式で着々目が合ってた人だ。……名前分からん、誰や?

 

 

「えっと、さっき横に座っていた…」

 

「あぁ、それは分かってるよ?」

 

 

 俺の顔を訝しんだのだろう。彼女は隣の席にいたことを話そうとしてくれた。まぁ、それぐらいは分かっておりますとも。律儀な子だなぁ……

 

 まぁそれはそれとして。

 

 

「……んで、何か用?」

 

 

 質問の意図を探る為、俺も質問を彼女に投げかける。

 確かに目は合ってはいたが、これといって気になることはなかった筈。なのでどうして俺に話しかけたのか訳が知りたいのだ……なんて思ってるけど、ホントは女の子に声掛けられてちょっとビビっただけですハイ。可愛い子に話しかけられて心舞い上がってるだけですハイ。

 

 

「あの…その……もしよかったらこの後一緒に校内を」

 

「あっ朝日さん!ちょっといいかな?」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 

 ……うぇ?なんかいい感じの所で先生が来たんやけど。あっ、そっちで今度は話進めちゃう系ですねぇ…あっ、ふーん。……ってかあの眼鏡の子、朝日さんっていうのか。オーケーオーケー、理解した。

 

 えっ、てかこの後ホントにどうしよう。朝日さんなんか書類渡されてそのまま先生に連れてかれたけど。オドオドしながらどっか行ったんですけど!?どうすりゃええんだ?なんか本当に用があると思われるから、ここで待ってた方が良いのか?

 

 

「じー」

 

 

 いやしかしまた戻ってくるとは思えんし…このまま校内探索に洒落込むとするか?

 

 

「じー」

 

 

 いやでもなぁ…戻ってくる気がしないでも無いんだよなぁ…どうするか?行くか行かないか?待つか待たないか?……うーん。

 

 

「じー」

 

 

 ……決めた!行こう探索に!購買気になってたし、なんならこの学校広すぎて迷子になりそうだし!今のうちに把握しておくか!よし、そうと決まればレッツラ……って

 

 

「うぇぇえ!?」

 

「あっ、バレちゃった」

 

 

 心機一転、出発だ!と息巻いたのも束の間、後ろを振り向くとそこには誰とも分からない女の人が立っていた。俺の反応が面白かったのか、「アハハー!」と揚々に笑っている。

 いや誰だこいつ!?どっから現れた!?……って、ん?いやよく見たらこの人、ネクタイの色を見るに先輩…?それも、誰かに似てるような……?

 

 

「ごめんねー驚かせちゃって!アタシ氷川 日菜!!さっき壇上に立ってたんだけど、どうだった!?」

 

「えっと、壇上…?」

 

 

 壇上……となるともしかして生徒会長!?この人が!?こんな好奇心旺盛な犬みたいな人が!?……いやめっちゃ偏見だけどね!?

 しかもこの人、氷川って言った?氷川でこの顔……うぅ、なんだか前の学校にも似たような人いたぞ……?いやでも性格全然似てないし、似てるのは気のせいか?

 

 

「って、そんなこと聞いてる場合じゃないんだった!」

 

 

 何かを思い出したのか、「こっち来て!」と言いながら俺の手を掴んできた。そんで急に走り出した。……ふぇ?なんで?

 

 

「ちょっ、ちょっと!?いきなり何してるんですか!?」

 

「いいからいいから!!ちょっと君に()()()()()()()()()()()()()

 

「……はぇ?」

 

 

 会わせたい人…?一体誰やソイツは?

 

 なーんて疑問も気にも止めず、氷川先輩は俺の引きながら疾走する。俺もそれに何とかついて行きながらも、何だこの状況!!と心の中で叫んでいたのであった。

 

 

『正にブシドーです!!』

 

 

 ……なんでだろう。3日前に会った少女のことを思い出してしまう。

 

 

 いや、そんなまさか……ねぇ?






 次回は近いうちに投稿したい。でもまた忙しくなる……(´・ω・`)。
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