ありふれた世界に星の白金は輝く   作:ユフたんマン

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憑依

目が覚めたら空条承太郎だった。何を言ってるかわからないと思うが俺にもさっぱりわからない。目が覚めたら俺は空条承太郎だったのだ。過程など吹っ飛ばされ空条承太郎になったという結果だけが残っている。まさかキング・クリムゾンの能力か!?

とまぁ茶番は置いといて恐らく俺は憑依したのだろう。ジョジョの奇妙な冒険という作品の中の主人公、『空条承太郎』に…いやだー、俺ジョジョの黄金の精神なんて大それたもの持ってないからすぐにDIOの追手に殺されちゃうじゃないですかー!

本来なら仰天するような事柄だが不思議と冷静でいられる。承太郎になったおかげだろうか。精神的に余裕がある。

 

「承太郎ー!そろそろ起きないと遅刻するわよー!」

 

「…あぁ、わかった」

 

外から声をかけられ返事をする。俺はあ、今起きますと言おうとしたのだが何故か変換されてしまった。承太郎の口調フィルターでもかかっているのだろうか。きっと神からのロールプレイをしろという導きに違いない。

襖を開けるとそこには金髪の年齢を感じさせない美女、ホリィさん。現俺の母さんが立っていた。

 

「あら?いつもなら起きてこないのに今日は珍しいわねぇ!何かあったのかしら!」

 

そう言われて思い出す。そういえば俺…というか承太郎は大体学校遅刻していたな…

 

「いや、今日は早く目が覚めただけだぜ」

 

適当に母さんの質問に答え思考する。今の奇妙な感覚…それは俺だけの記憶じゃあ知り得ないもの…それはいつもの承太郎としての記憶。それが薄らとだが俺に残っている。残っていなければ承太郎が遅刻していたと知っているはずがない。眉間に皺を寄せ思い出そうと母さんが用意していた朝食を食べる。

あ、美味しいこの玉子焼き。癖になりそう。

 

そして思い出したのは部屋にスマホを忘れていたということだ。朝食を食べ終え、部屋に戻りスマホを手に取った瞬間、ふと頭に疑問が過ぎる。

 

なんで高校生の承太郎がスマホを持っているんだ?承太郎の時代は確か携帯電話なんてものは無く、ショルダーフォンといった携帯電話の元となったものしかなかったと思うのだが…

起動するとパスワードがかかっていたが、指紋認証で解除しカレンダーを確認する。

 

「2000年…を超えているだと!?」

 

ジョジョの作品の正確な年代を覚えてはいないが、流石におかしなことはわかる。三部といえば2000年以前の物語であることぐらいは知っている。この時点で既に時間軸がおかしくなっている。

いったいどういうことだってばよ…わからん…

 

窓を開けて鞄から取り出したタバコで一服する。

 

「ふぅ〜……」

 

って俺何吸ってんだ!?すぐさまタバコの火を消し捨てる。完全に喫煙が習慣になってたな承太郎。ヌルっていったもんヌルって。癖だよ癖、体が覚えてたんだよ…というか喫煙してんのによくあんな動けんな。流石はジョースターの血統…

 

そろそろ登校の時間なのでいつもの学帽を被り、承太郎が自分好みに改造した学ランを羽織り、ピアスをつけ登校する。こんなのでいけば即指導ものだが何故か先生に指導されていない。やはり不動産王であるお爺ちゃんの圧力が効いているのだろうか。まぁ創作物の世界だししょうがないよね!学園ものでよくある金持ちなら問題を起こしても学校側から何も制裁を受けないようなものだね、うん。

 

まぁそんなどうでもいいことは置いといて登校しよう。鞄を漁り生徒手帳を取り出し学校名を確認する。うん、わからん。

道筋はぼんやりとだが覚えているから問題ないと思う。

しかしどう思い返しても花京院、ポルナレフ、アヴドゥル、イギー、お爺ちゃんのジョセフ、そしてジョースター家の宿敵であるDIO。仲間たちとの旅の記憶、そしてDIOとの最終決戦、それらの記憶が一切無い。どういうことだろうか。もしかするとSBRの世界の空条承太郎なのかもしれない。たしかあれってパラレルワールドだった筈だし。しかも極め付けはこれだ。

 

「スタープラチナ!」

 

声に出して力むように体に力を入れると、空条承太郎の幽波紋であるスタープラチナが現れる。この幽波紋が出ている時点でDIOが存在していないとなると矛盾が生じる。承太郎はDIOが幽波紋使いになった影響で幽波紋を得たはずだ。それにジョジョのルールなら他の幽波紋使いとも出会っているはずだが、共有されている記憶には一切そんな記憶はない。はて、謎がまた深まった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登校途中にコンビニでジャンプを購入し、学校へ向かう。今日は月曜日だ。普段ならジャンプを読んでから登校するが、俺という存在がいるため、なんとなく遅刻するのは嫌なので後で読むことにする。

 

正門前に立っていた先生は俺が早く来たことに驚き体調が悪いのかと心配してくる。といっても遅刻ギリギリの時間帯なのだが。そうだな、後で体調が悪くなったフリをして保健室に篭ってジャンプを読むのもいいかもしれない。

 

教室に入ればそこは雰囲気最悪であり、1人の男子生徒がクラス全員から殺気を向けられている。たしか南雲ハジメだったか…

その男子生徒の名前を思い出していると、やけにキラキラした男子生徒に話しかけられる。

 

「空条、今日はいつものように遅刻しなかったのには驚いたよ。けどなんだその脇のジャンプは!!ここは勉学を嗜む場であって漫画を読む場所じゃないんだぞ!?」

 

記憶を辿ればこいつは天之河光輝。ルックス、身体能力共に高く、知力も高い完璧超人。まるでアニメや小説の主人公のような男だ。しかしその反面、思い込みが激しいことが欠点らしい。だが承太郎の記憶からすれば口煩い面倒くさいやつという認識しかない。

 

「おいッ!!何とかいったらどうなんだッ!!無視するんじゃない!!」

 

少し天之河のことを思い出していた空白の時間を無視していたと思ったのだろう。天之河が俺に怒鳴る。

 

「やかましい。前にも言ったが興味のねぇ奴の話を聞くほど俺も暇じゃあないんでな。テメエと話すよりジャンプを読んでいる方が有意義な時間だぜ」

 

ギャイギャイと騒ぐ天之河を無視し自分の席に座る。最後列の席だ。ドカリと机に足を乗せジャンプを開く。

 

「ん?」

 

視線を感じたため、顔を上げるとクラス全員の視点が俺に集まっていた。ギロリと睨むとすぐさま顔を背ける。天之河とその友人である坂上龍太郎が俺のことを睨んでいるがデフォルトのため放置し、ジャンプに視線を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4時限目、歴史。まるで小学生のような体型のロリ系の畑山先生の授業が始まる。

 

「く、空条くん…!せめて室内なのでその帽子だけは外しませんか?」

 

授業が始まって数分後、先生にそう提案される。今まで一度も言われた試しがなかったため、少しばかり動揺し、その勇気に敬意を称すがこの帽子は俺という存在のアイデンティティだ。そう簡単に外せるものではない。

 

「先生には悪いがそれを聞くことは出来ねーぜ。何しろコイツは俺の頭と同化しちまってるからな」

 

「え、あ!?そうなんですか!?それは……って騙されるわけないでしょう!!」

 

帽子のツバを弾き先生に見せつける。一瞬それを信じた先生は俺に謝罪しようとするが、すぐに嘘だと気付きプンプンと頬を膨らまして怒る。その怒る姿はリスのような小動物のようで可愛らしく、怒っているはずなのに空気が和む。

 

「おいッ!!毎度毎度言っているが態度が悪いぞッ!!それに授業くらい真剣に受けたらどうだッ!!」

 

天之河が立ち上がり俺を睨みながら糾弾する。毎度毎度ご苦労なことだ。

 

「やかましいぜ天之河。それに俺は別に適当に授業を受けてるって決めつけるのはちと早計過ぎるんじゃあないのか?」

 

机の中に放置してあったノートに隣の生徒のノートの内容を全て一瞬の内にスタープラチナに写させ、それを天之河に投げ渡す。

 

「ッ!?…これは……!!?嘘だろ!?」

 

ノートを確認した天之河は激しく動揺する。何せ今まで不真面目な態度+遅刻欠席ばかりだった俺が完璧にノートを取っていることは完全に予想外だったのだろう。少し腕が震えている。

 

「……嘘だ嘘だ!!いつも不真面目なお前がこんな風にノートを取れる訳がないッ!!さては恐喝して他の生徒のノートを奪い取ったな!?」

 

天之河が俺に人差し指を向け糾弾する。冤罪でーす。が、実際には無断転載みたいなもんだから天之河のは的外れってわけじゃあない。だがそれを普通みんなの前で言うかな?

ほら、他のクラスメイトの視線が冷たくなってきたよ、うん。

 

「馬鹿か。名前を見ろ名前を。まさかそんなのも見えねー程テメエの目は節穴ってことはねぇよな?」

 

まずまずノートは半分程までギッシリと書き込まれている。そんな使い込まれたノートに名前を書いてない間抜けはいるまい。普通なら先に名前が書かれている筈だし、それを奪ったのなら修正テープやら何やらで消している筈だ。

 

「お前のことだ!!聞けば昨日の深夜も繁華街を彷徨いていたそうじゃないか!!そんな不真面目なやつが、遊び呆けているような奴がここまで書けているなんておかしいだろ!!絶対何か良からぬことをしたに決まってる!!」

 

さりげなく俺の昨日の行動が暴露される。といってもその頃は承太郎しかいなかったのだがな。そもそも昨日は無くなったタバコを買いに行っただけで…って高校生が吸っていいもんじゃあなかったな。

 

「それに君もだ南雲!!」

 

「んご…?」

 

最後列の窓側の主人公席に座る南雲。俺の隣の席でいつも授業中は夢の中の彼は例外なく優等生の天之河に目をつけられるは必然だろう。

急に話を振られ怒鳴られた南雲は何を言われているのか理解してないようで眠そうな顏で首を傾げながら目を擦る。

 

「いつもいつも寝てばかり!!君達2人は何のために学校に来ているんだッ!!ここは勉学を嗜む場だぞ!!」

 

うむ、全くその通りだ。寝てばかりじゃあ駄目だぞ少年。

 

「まぁまぁ、2人とも落ち着いてください!喧嘩はダメですよ!」

 

剣呑な雰囲気の中、先生が仲裁に入る。天之河は納得のいかない顏で俺と南雲を再度睨み席に着く。やれやれ、また面倒臭い奴に目をつけられたものだぜ。というかいつも無視してたから反応したの間違いだったな。

事情を理解出来ず南雲が困惑しながら俺と天之河を交互に見ていたのが印象に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、俺は母さんが作ってくれた弁当を食べる。隣では南雲と、この学校で女神と呼ばれている美少女の白崎香織が一緒に弁当を食べている。他の男の嫉妬の視線が突き刺さっている。何故か女子からも突き刺さっている。南雲はすごく居心地が悪そうに笑顔を振りまく白崎に苦笑いを浮かべている。

 

そんな2人を尻目に立ち上がり教室から出ようとすると、床に光り輝く奇妙な模様が浮かび上がる。

 

ついに来たか…ッ!!

 

「スタープラチナッ!!」

 

恐らくこの魔法陣のようなものは幽波紋使いの仕業に違いない。承太郎に憑依したからには遅かれ早かれ来ると思っていたがクラスメイトごと攻撃するつもりか?

 

「皆!教室から出て!!」

 

先生が叫ぶ。さらに生徒たちは悲鳴を上げる。奴の幽波紋能力はなんだ?無関係の人間を巻き込んでまで俺を始末しに来たとなるとまさかDIOの刺客か?

 

魔法陣の輝きはより一層強くなり、光は教室全土を包み込む。何も見えなくなるが、スタープラチナで視界を遮り辺りを警戒する。

数秒後、光が収まり始めた瞬間、先程まで教室に居なかった存在を把握し殴り掛かる。

 

「オラァッ!!」

 

「イシュタル様ァッ!!ウボァァ!!」

 

1番近くにいた老人に拳が届く寸前に兵士が割って入りスタープラチナに吹き飛ばされる。俺はすぐに老人から距離を取り周りを見渡す。そこはまるで神殿のような、全体的に白の神秘的な空間だった。壁には大きな肖像画が掛けられている。

目の前には煌びやかな衣装を纏う老人以外に甲冑を纏う兵士と、老人の衣装をグレードダウンさせたような服装の集団がいた。

 

「なるほどな…空間転移に兵のようなものを操る能力か…やれやれ、初戦としてはなかなかハードなんじゃあねぇか?」

 

「貴様ッ!!」

 

空間転移…もしくはデス13のような夢の世界か、それとも幻覚かはわからないが、確実に先程までとの空気が違う。

兵士たちが槍や剣を向ける。これがわからない。幽波紋は例外を除いて一つしか能力を持たない筈だ。ならこの兵士たちはこの神殿と同じ能力で出来ているのだろうか。

 

「待てお前たち。その武器を下ろしなさい。勇者様、そしてその御同胞様方。突然の召喚に困惑を隠し切れていないご様子。どうかご説明をさせていただけませんかな?」

 

好好爺然とした微笑を浮かべる老人。周りの兵士や、老人と同じような法衣を纏った奴らとはまるで覇気が違う。素人目でもわかるほどに只者ではない。

 

「ようこそトータスへ。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願い致しますぞ」

 

やけに友好的?な態度のイシュタルとか名乗る怪しげなジジイ。どう見ても怪しい感満載のジジイだ。信用してもいいものか…それに幽波紋使いではないのか?スタープラチナをジジイの目の前に出しているというのに一切反応していない。まさか本当に見えていないのだろうか…

 

「おい!いきなり他人を殴り飛ばすなんて非常識じゃないか!?何が何だかわからないのは理解できるがあれはやり過ぎだろ!!」

 

天之河が指差す先には先程殴り飛ばした兵士がピクピクと痙攣しながら大理石のような綺麗な壁に埋まっていた。うん。承太郎の記憶には思い込みが激しい奴とあるが今のところ真っ当なことしか言ってない気がする。承太郎って人を見る目はあると思うからなぁ…検討外れってことはないとは思うけどね。まだわからないか…

ひとまず返答すればまた噛み付かれて面倒くさいので無視しジジイに質問を投げかける。

 

「待て…ジジイ、召喚と言ったな?テメエは幽波紋使いじゃあなく異世界から俺たちを魔法的なもんで呼び出したってことか?まさか世界がヤバイとかそんなんじゃあねーのか?」

 

わからないことがあればすぐに聞く。これが1番大事なのよ。最近の若者はこれが余り出来ないって聞いたけどマ?

 

「えぇ、幽波紋使いなるものは聞いた事も見た事も御座いませぬが、貴方様は理解が早くて助かります。しかし…少々過程が違いますな。貴方方を召喚したのは我々ではなくエヒト様です。我々人間族が崇める守護神にして唯一神で有らせられ、世界を創られた至上の神で御座います。我々人間族の窮地をお救いになるべく、貴方様方を召喚なされたのです」

 

よくぞ聞いたとばかりにニコニコと気持ち悪い顔をしてエヒトとやらを語るジジイ。正直引いた。

 

「立ち話もなんですのでひとまず場所を移しましょう。ご案内致します」

 

そうジジイに誘われる。信用してもいいのか…恐らく幽波紋使いではないだろうが別の危険性を感じる。こんな感じは初めてだ。これが直感…ってやつなのだろうか…

 

「皆!困惑しているのはわかるけどひとまずイシュタルさんの言う通り移動しよう!不安なのもわかるけど今はイシュタルさんに今の僕達の状況を詳しく教えてもらわないといけない!」

 

声高らかに叫んだのは天之河だ。彼の持つカリスマオーラで他の生徒たちは覚悟を決めたように先を歩むイシュタルについていく。

待て待て、そう簡単に怪しい人間について行っても大丈夫なのか?いきなり異世界やらに召喚してきた連中だぞ!?もっと危機感持てよ!!

 

「チッ…やれやれだぜ。目覚めて初日から転移とはな…嫌な予感しかしないぜ…」

 

 

俺も周囲を警戒しながら、クラスメイト達の後を追った。

 

 

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