ありふれた世界に星の白金は輝く   作:ユフたんマン

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封じられし女王

「……?」

 

DIOの女体化か、と疑問に思っている俺を見て、可愛らしく首を傾げる少女。悪の化身であるDIOの女体化…俺が承太郎に憑依して転移したということを考えればその可能性はなくはない。DIOはジョジョの世界では上位の存在であり、エヒトとやらの感心を引くには十分な存在だろう。柱の男もいるが奴らは手が付けられなかったのかもしれない。無差別に人間を、吸血鬼を喰らう彼らは一種の災害のようなものだ。それに今思い出したが、承太郎が幼い頃に、ジョセフのおじいちゃんは自身の冒険譚として柱の男を語っていた。その頃の承太郎は作り話だろうと思っていたようだが…

つまりはあの世界はやはりジョジョの世界で、俺の憑依と異世界転移は完全なるイレギュラーということになる。

俺に、承太郎に別人格が憑依、その対となるDIOの女体化。そんなイレギュラーが起こっていても不思議ではない。

 

「テメェは何者だ…こんな場所にいるってーことは只者じゃあねぇよな?」

 

スタープラチナを背後に出し、警戒しながら拳を構え少女に問う。

 

「待って…!!私は何もしてない…私、悪くない!私…裏切られただけ!」

 

「…裏切られたとかはどうでもいい。今はそれを事実と確認する術がねぇ。俺が聞いてんのはテメェが何者かってことだぜ」

 

「…ッ!?…そ、それは……」

 

「答えられねー…ってことか?答えられねーってんならこのまま放置していってもいいんだぜ?なぁDIO」

 

「待って…!!助けて!何でもするから…!!私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる…そして元女王…裏切られたけど…」

 

泣きそうな顔で俺に助けを乞う少女。その声はもう何年も出していなかったように掠れて呟きのようだった。

少女の口調、表情、声質、心拍音、全てが彼女の心境を表すかのように必死だった。俺に助けを懇願する表情、震える声、緊張しているのか掠れて上擦った声、ドクドクと高速で脈打つ心臓。

途中会話でDIOという言葉を出したが完全な無反応。声も心拍音も何も乱れなかった。それにもし、彼女がDIOなのだとしたら、こうまで命乞いをするだろうか…いや、しない。DIOは勝つ為なら手段を選ばない狡猾な一面もあるが、それ以上に頂点に君臨するという帝王としての大きなプライドがあるはずだ。

他人に媚びるのは彼の最も嫌う行為だろう。彼が犬が嫌いだったように。

そして彼女の目の前にスタープラチナを出しているが、スタンドはまったく見えていないようだ。

 

なら、この少女はなんなのだろうか。彼女はDIOと同じ吸血鬼、更には女王だ。疑問は多々ある。恐らく彼女はこの世界の吸血鬼だ。なら、ジョジョの世界の吸血鬼のように日光を浴びればどうなるのか、波紋は効くのか、DIOと同じように何らかの方法で人間をやめたか、生まれた頃から吸血鬼だったのか……

聞きたいことは山程ある。

しかしそれは置いておいて、彼女がDIOである可能性は限り無く低いだろう。そう認識した俺は僅かばかり、少女への警戒を緩める。その雰囲気が伝わったのか、少女はあからさまにホッと安堵したような表情を浮かべている。

 

「……で、何故元女王がこんな深層に封印されている?それほどテメェは無能な王だったってことか?」

 

「違う!!私は…国の為に…皆の為に頑張ったのに…家臣の皆…お前はもう必要ないって…おじ様……これからは自分が王だって…私…それでもよかった…でも、私、すごい力があるから危険だって…殺せないから……封印するって…それで…ここに…」

 

枯れた喉でポツリポツリと語る少女。やはりどこの世界でも出る杭は打たれるのか…と、少女の波瀾万丈な運命に同情する。彼と同じく、彼女も運命に振り回された者だったか…

 

「そうか…助けてと言ったな。これから質問することに嘘偽りなく答えな。俺はここから更に下の階層に足を踏み入れる。まだここが最下層じゃあないようだからな。魔物は強さを増し、ここにいた方がマシだったと思うかもしれない。それでも…俺に助けられる“覚悟”はあるのか?」

 

「…ある!」

 

即答だった。

 

「もう…私は…地獄をみた…こんな所で…1人で…孤独に生き続けるより……例え死ぬのだとしても…誰かの隣で生きて…一緒に死にたい!!」

 

「good、いい回答だぜ」

 

スタープラチナを再度顕現させ、少女を捕らえ、封印しているアーティファクトに照準を定める。

 

「ォオオオオ!!!オラァッ!!!!」

 

そして力任せに殴り付ける。硬い。金属と金属が打ち付け合うような甲高い打撃音が部屋に響き渡る。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」

 

想像以上の硬度に嫌気が差す。防衛機関かはわからないが、赤い雷のようなものが、スタープラチナに襲い掛かる。飛び散った雷が俺の服を焦がすが、それを無視して殴り続ける。

 

「こいつがッ!!壊れるまでッ!!殴るのをやめねぇッ!!ォオオオオオオラァァアアアァァアアアッ!!!!」

 

瞬間、一筋の亀裂がアーティファクトに刻み込まれる。そこから、ピシピシと不協和音を流しながら崩れていく。ボロボロと封印していたアーティファクト全体が崩れ始め、中にいた少女がゆっくりと俺の方へ一糸纏わぬ姿で力無く倒れ込む。

軽く彼女を支えてやり、鎧の上に来ていた学ランを少女に被せる。

 

「ありがとう……貴方の名前…教えて…」

 

「空条承太郎…テメェは?」

 

「…名前、付けて」

 

「何故だ?忘れたか?」

 

少女はフルフルと首を振る。

 

「もう、前の名前はいらない。…承太郎が付けた名前がいい」

 

前、というのは女王の時の名前か。それを捨てて新たな自分と価値観で生きる。過去と決別する少女。その一歩としての名前というわけか…

なら、運命を乗り越えて欲しい。DIOのような吸血鬼としての因縁の運命ではなく、幸せを運んでくる運命へ…

 

名付けよう、彼女の名を。

 

「ステラ…ステラなんてのはどうだ」

 

無数に広がり輝く星のように、そんな輝かしい未来を迎えて欲しい。そんな想いを込めて…ステラ。ラテン語で星を意味する名前。

 

「ステラ…ステラ……ん、今日から私はステラ…ありがとう」

 

「おう…じゃあまぁ取り敢えず…そこのデカブツを倒すぜ。ステラの力、見させて貰うぜ!」

 

天井を見上げれば、そこには巨大な蠍の魔物が張り付き、俺たちを仕留めんと、照準を合わせ尻尾から毒針を発射する。ステラの腕を取り、バックステップで毒針を避け構える。

 

「待って…私…魔力…空っぽ…」

 

「………やれやれだぜ」

 

蠍の魔物は俺たちに飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

時は少し遡りる。

 

ハイリヒ王国王宮内の一角、錬成師用の工房の中で1人、深夜遅くまで作業を続ける少年がいた。

 

「錬成…!!錬成…!!錬成…!!」

 

何度も何度も錬成の詠唱を続ける。少年の足元には大量の魔力回復ポーションの飲み終えた空の瓶が数十と乱雑に捨てるように置かれ、さらにその周りには近代兵器、銃と思わしき物が大量に散らかっていた。

 

「南雲くん!!もうやめて!!南雲くんの体が…精神がもう保たない…!!」

 

錬成を繰り返す少年は、本来ならば承太郎の代わりに落ちるはずだった南雲ハジメ。そして狂ったように錬成を続けるハジメを止めようと静止の言葉を投げかけ続ける少女は白崎香織。日本の通っていた学校で、八重樫と2大天使と称される美少女である。 

 

「止めないで…!錬成…!!駄目だ…こんなんじゃベヒモスは倒せない…錬成、錬成!!僕に…僕に力が無かったせいで…空条くんは死んだんだ…僕のせいで…僕に力があれば…あそこで空条くんが死ぬことなんて無かったんだ…!!」

 

ハジメは自身が立てた作戦で、自分が助かり、承太郎が死んでしまったという事実に自責の念に駆られていた。

自分が弱かったから承太郎が死んだ。自分がもう少しベヒモスを抑えてられたら承太郎は死ななかったかもしれない。

それに加えて檜山達に言われたことも、こうして引きこもり錬成を続ける原因であった。

 

『お前のせいで空条が死んだんだ!』

『あそこでお前がイキってなきゃ誰も死ななかったんじゃねぇの?』

『これだからキモオタはな。すぐに自分が特別だかなんだが知らねーけど思い込んじまうんだ。あーあ、キモオタのせいで1人死んだな。あとお前は何人殺すつもり?ギャハハハハ!!』

 

そもそもの話、今回の転移は檜山がトラップの有無を確認せず鉱石に触れたことが事の発端であり、彼は戦犯だったのだが、それを棚に上げてハジメを責める。自身が悪いということを理解している檜山は、ハジメが一人でいるところを狙い、散々とハジメを罵倒した。

承太郎を自身の策で殺したと思い、自責の念に駆られていたハジメは、そんな罵倒を脳に受け入れてしまった。本来のハジメなら無視したか適当に流していたが、いかんせんショックが大き過ぎた。

 

それからというもの、ハジメはずっと工房に引き篭もり、一切休まず錬成を続けている。

 

「大丈夫だよ南雲くん!!私が、私が貴方を守るから!!ねぇ、この前約束したでしょ!?」

 

月下の語らい。オルクス大迷宮へと挑む前夜、ハジメと香織が結んだ約束。治癒師である香織に、自身を心配する香織に、少しでも安心して貰おうとハジメが結んだ『香織がハジメを守る』という約束。

 

「駄目だよ…!!守られてばかりじゃ駄目なんだよ!!空条くんの時のように…自分に力がないと何も守れないんだ!!白崎さんが僕を守ってくれたとしても、僕が弱いままじゃきっといつか限界が来る!!もう僕は…同郷の皆が死ぬのを見たくないんだ……」

 

「南雲くん…」

 

それはハジメの心からの叫び、吐露だ。例え自分がクラスの皆からどう思われていようと、どんな扱いをされていようとも、ハジメは同郷のクラスメイト達が死ぬ姿を見たくないし、出来れば死に怯えることもして欲しくないと思っている。ハジメは優しい。香織はハジメの汗だくな背中に胸を押し当て抱擁する。

 

「優しいね…南雲くんは」

 

「ちょっ…!?エッ!?あの…白崎さん…!?」

 

「私はね…許せないの。南雲くんはこっちに来てからもずっと、人一倍頑張ってる。でも、皆はそれを認めずに南雲くんを責め立てるの。光輝くんもそうだったでしょ?私なら、自分の努力を全部否定されたらもう正気じゃいられないと思うの。

けど南雲くんは、気にするどころか、逆に皆の心配だなんて…本当にお人好し…」

 

「まぁ…うん…。それが僕の性分だから…」

 

「知ってる…前にも言ったでしょ?私の中で一番強い人は南雲くんなんだって。あと…ごめんね。私が南雲くんを守るって言ったことが枷になってたんだよね」

 

「そんなこと…!?僕からお願いしたんだし…!!」

 

「いいよ。私が間違ってたの。実はね、私には碌な攻撃手段がないの。それに、自分で言うのもなんだけど、一番重要な役割じゃない、ヒーラーって。だからきっとこれから、魔人族と戦う時に真っ先に狙われると思うの。きっとそれは光輝くんや龍太郎くんに雫ちゃん、その他にも皆が守ってくれるだろうけど、まだ怖いの。南雲くんは強くなりたいって言ってたよね。後方での支援じゃなくて、自分の命を投げ打っても私たちを守ろうとするでしょ。わかるよそれぐらい。ずっと見てたもん。

それでね…私を守って欲しいの」

 

「…え?僕が…白崎さんを…?」

 

「うん。私を守って欲しい。私も南雲くんを守るから。貴方は1人じゃない。だから気負いすぎないで。一緒に、2人で強くなろう」

 

「2人で強く…けど…」

 

「空条くんのことだよね…南雲くんは彼が本当に死んだと思ってるの?」

 

「……え?」

 

「わかってる。あそこに落ちて生きていると思う方がおかしいって。…でもね、確認したわけじゃない。可能性は1%より低いけど、確認していないのならゼロじゃない。それに、南雲くんも知ってるでしょ?空条くんがあの程度でくたばるような男じゃないって。だってあの光輝くんを正面から倒したんだよ?

だから信じようよ、空条くんを…!」

 

空白の間が流れる。聞こえるのは2人の吐息のみ。ハジメは知っている。承太郎が一人で不良軍団を壊滅に追いやったことを。この世界でベヒモスとほぼ謙遜無いくらいの力を持っていたことを。ハジメは手に持っていた銃を台に置き、腰に巻きついている香織の腕を優しく解き、彼女と向き合い目を合わせながら答えた。

 

「わかった…信じるよ。僕じゃ力不足かもしれないけど、白崎さんを守る。一緒に…強くなろう!」

 

ハジメの顔は、先程と比べ少しばかり明るくなり、悩みも殆ど吹き飛んだ。ハジメは信じる。承太郎が決して死んでいないと。それを確認するためにも、もっと強くなろうと決意する。ハジメの瞳は、既に狂気に現実逃避の色は消え失せている。

 

普通に考えれば、香織の言っている可能性など0%であると切って捨てていい話だ。あの奈落に落ちて生存を信じるなど現実逃避と断じられるのが普通だ。

 

「空条くんだしね」

 

「そのうちひょっこり顔を出しそうだね」

 

ハハハッと2人で笑い合う。こうして笑ったのはいつ振りだろうか…とハジメは考える。いつも学校では寝てるだけ、家ではゲームに親の手伝い。心から笑うなんで久しぶりのことだった。

 

「香織って呼んで。私もハジメくんって呼ぶから」

 

「え、いや…それはちょっと…」

 

いきなりの提案に女性経験皆無、話したことも殆どないハジメはきょどるが、香織はグイグイと詰め寄る。

 

「か、香織…さん…」

 

「か・お・り!」

 

「わ、わかったよ…香織…」

 

「うん、それでよし!」

 

顔を赤くして頬を掻くハジメを見た香織は、心臓が高鳴るのを感じる。

 

「(あぁ、やっぱり私はハジメくんのことが…)…キャッ!?ハ、ハジメ……フフッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「香織、南雲くんは大丈夫かし「しぃーーー静かに」ら…」

 

ハジメのいる工房に入ってから、香織が中々出て来なかったため、様子を見に来た雫は、思わずその光景に頬を染めた。

ハジメは穏やかな顔で、香織の膝の上で眠っていた。グッスリと膝枕で。数日間寝ずにずっと無理して作業していたのだ。香織との会話の途中で寝落ちしたハジメは役得とばかりに香織に膝枕されたのだ。

 

「あの香織がもうそこまで…きっともうすぐ2人は付き合うんだわ。一緒に綺麗な夜景を見ながら、さりげなく『好きだよ』とか、南雲くんが跪いて、香織の手を取ってキスして『僕の恋人になってください』とか言われるんだわ!羨ましい…!!」

 

「雫ちゃんちょっとうるさいよ。というかそんな乙女チックな展開ないと思うけど…けどそんなのもいいなぁ…」

 

香織はハジメの髪を撫でながら寝顔を覗き見る。そんな告白のシーンを思い浮かべ、顔が真っ赤になった。

 

 

 

 

 

 

〜〜一時間後〜〜

 

「足が痺れて……!!けどまだ…」

 

「そろそろ南雲くんをベッドに寝かせなさいよ…」

 

 




うわぁああああ南雲の心境難しいぃぃぃいい

ジョースターのスターを取って、そこからステラにしました。当初の予定ではディオナやディーナといったDIOと共通点のある名にしようかと思っていましたが、流石にないかと変更しました。

「ステラーーーーーッ!!」
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