この素晴らしい侠客立ちに祝福を   作:単三抜き電池

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カズマ一行との出会い。戦闘はありません。


第一撃 出会い

駆け出し冒険者の街、アクセル。

 

先日のキャベツ狩りクエストの甲斐もあってか、夕暮れだというのに市場はまだまだ賑わっている。

そんな人混みに一瞬の静寂がもたらされた。

 

巨躯い。

 

冒険者の中には体格に恵まれた者も者も少なくない……が、彼と比べたら貧相な部類に入るだろう。

 

身長190.5cm、体重166kgの巨体。

 

頸が太い。

 

胸が分厚い。

 

この世界では珍しい真っ白なスーツから覗く手と顔には、深く大きな傷が刻まれている。

 

通行人の視線を無理やり集めながら、当の本人はそんなことは意にも介さず歩いていく。

 

大通りに差し掛かったところで、花山は一軒の宿屋を見つけた。彼には少々狭い部屋ではあるがとりあえずの拠点には悪くない。

 

異世界に来たものの、花山には一つ大きな問題があった。

彼はゲームをやらない。他の転生者のように『RPGではまずギルドへ向かう』といった思考がない。

全く知らない世界での、当てのない生活。とはいえそれで生き方が変わる男でもない。酒を煽りながら彼は『成人の儀の山籠もりの予行だ』などと、そんなことを思っていた。

 

 

 

夜――。

 

花山は町へと繰り出していた。

 

夜の街を歩くこと。日本にいたころはパトロールの意味合いも兼ねていたこの行為は花山の習慣だ。

 

「ん……?」

 

しばらくブラついていると、花山はある墓地を見つけた。

 

お世辞にもいい雰囲気とは言えないそこは、手入れはあまりされておらずいくつかの墓石に至っては傾いたり倒れたりしてる始末だ。

 

花山は任侠道を歩むが故に死者の弔いを非常に重んずる。

そんな彼だからこそ、この墓地のあり様に思うところがあったのかもしれない。花山は墓地へ入っていくと、スーツが汚れるのも気にせず傾き倒れた墓石を直し、墓場の土を固めなおす。

掃除が一通り終わったころ、月は彼の真上まで上がっていた。

 

ガサッ――。

 

不意に花山の背後で物音がした。彼が幽霊を信じていたのか――それは定かではない。がともかく『墓地』で『深夜』に『物音』という状況に、少しばかりの緊張を伴いながら彼は振り向いた。

 

視線の先にいたのは茶髪の美女。黒い衣装に月明りも相まって幻想的な雰囲気を醸し出している。

 

「まあ、共同墓地がこんなに綺麗に……!これ、貴方がやってくれたんですか!?」

 

「……。」

 

沈黙を肯定と捉えた女性はさらに続ける。

 

「私はこの町でマジックアイテム屋をやっていますウィズと言います。お名前を聞いてもいいですか?」

 

「……花山……薫だ……。」

 

差し出された小さな手を、傷だらけの大きな手が握る。

嬉しそうにニコニコとしているウィズを見て、花山は疑問を口にした。

 

「…こんな時間に一人で何しに来た?」

 

深夜のアクセル。しかも場所は墓地。ほとんど暗闇のこの場所に女性が一人でやってくるというのは少々不自然に思えた。

 

「それは私が、この墓地の迷える魂を定期的に天へと送ってあげてるからです。」

 

嘘を言っているようには見えないが、いきなり信じられる話でもない。が、ウィズが実際に魂を天に送る姿を見たなら話は別だ。

 

ウィズを中心に墓地全体を覆うような魔法陣が現れる。そして、彼女を中心に怪しくも幻想的な光が天へと昇っていく。

 

「……ッ!」

 

『異世界』という場所の意味を、花山は改めて実感した。

 

 

 

「リッチーがこんな場所に現れるとは不届きな!成敗してやる!」

 

天へ向かう霊も少なくなってきたころ。突然、墓地全体に女の声が響いた。

 

声の主である青い髪が、ウィズを睨みつけながらズンズンと墓地へ踏み入って来る。

 

「やめて!やめてください!この魔法陣は、成仏できないでいる魂を天に還してあげるためものです!壊そうとしないで!」

 

「何よ!リッチーの戯言なんて信じられるわけないじゃない!そんな善行はアークプリーストであるこの私がやるから、あんたは引っ込んでなさいよ!魔法陣を壊すついでにあんたも共同墓地ごと浄化してあげるわ!」

 

「ええ!?や、やめてください!話を聞いてください!」

 

「問答無用!『ターン……って何よアンタ!そこを退きなさいよ!」

 

攻撃の気配感じ取った花山は、二人を遮るように立ちふさがった。

 

「ハナヤマさん……!ありがとうございます……!」

 

花山の背中に隠れたウィズは睨視から逃げるように顔を少しだけ出している。

 

「おーいアクア、一人で先行くなって……ヒィッ!?」

 

膠着状態となったところにやってきた少年は、花山と目が合うと絶句した。

 

(ヤクザだ…ヤクザが何でここに!?)

 

フツウではない経歴を思わせる、初めて出会う彼と同郷の人間。

 

初対面当時のことを、少年――サトウカズマ氏はこう語る。

 

「驚いた、なんてもんじゃなかったですよ。」

 

「圧倒的…っていうか、もうデカいとか怖いとか、そういう言葉では収まらないっていうか……。」

 

「実物見たのは初めてでしたけど、直感で分かりましたね。あ、ヤクザだって。」

 

「あの顔の傷、絶対に冒険でついたものじゃないですもん。」

 

「めぐみんが『アンデッドにしか見えない』とか言ったときはもう、心臓止まるかと思いましたよ。」

 

「……ハナヤマですか?基本的に無言でしたよ。」

 

「でも一言だけ。『俺のツレだ、見逃してやってくれ』って……。」

 

「それ聞いてようやく状況が見えてきまして。」

 

「ハナヤマの後ろに隠れるウィズと、二人に食って掛かるうちの駄女神。ゾンビメーカー討伐に来たのにこの状況はおかしいなって。」

 

「そこで俺が仲裁に入ったわけですよ!話を聞いたらウィズは凄くいい人なのが分かったので、浄化を引き受ける代わりに見逃すことにしたんです。どうです?この俺の交渉力!」

 

「えっ……?あぁ、ハナヤマは……ウィズがリッチーっていうのは全然気にしてないみたいでしたよ?」

 

「関係ないんでしょうね彼にとって。自分の目で見たことで十分なんですよ。実際ウィズはいい人だし。」

 

「後はもうそのまま解散ですね。俺達は不満そうなアクア連れてさっさと帰りました。……墓地の外出たら緊張の糸が切れて汗が噴き出してきましたよ。」

 

これが冒険者カズマ一行と、喧嘩師花山薫の出会いだった。

 

 

 

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