―――――怪しい剣に触れた。
―――――怪しい場所に行ってしまった。
―――――怪しい美女にとりつかれてしまった。
俺ってどうなるの?
「……貴様は誰だ」
……こっちが聞きたい。
そう言いたいのをグッとこらえ、周りを見渡して見るとさっきまでいた場所ではなく、
そこらの地面に魔法陣が光輝いており、その陣から黒い煙のようなものが放出されていた。
ついさっきまで俺は祖父が冒険に出て帰ってくるたびに遺産だとか言って、
あやしい骨董品を押し込んでいた蔵を掃除するために箒と塵取りを手に蔵の中に入った。
ここまでは良い。そして掃除を始めて埃まみれの床を掃きながら散乱している骨董品を、
綺麗に箱に詰めていって変な刀みたいなものに触れた瞬間に気がついたらこの場所にいて、
目の前に金髪碧眼、そして手には大剣を握った美人な女性が立って俺を見ていた。
「と、とりあえずここはどこ?」
「ここは貴様の世界、そしてもう一つの世界の狭間だ」
「…………ごめん。いまいち理解できない」
「まあ良い。貴様が私を呼び寄せたのだ……だが、
こんな弱っちい男を主にせねばならぬとはな」
金髪の女性が色々と喋っているが俺にはその内容が全く理解できない。
それにもう一つの世界って……俺ってほんと、面倒事に巻き込まれるな。
スーパーに入れば強盗が押し寄せてくるし、銀行に入ったら、
なんか勘違いで警備員に事務室に連れて行かれるし、挙句の果てにはいつの間にか、
俺が保証人の借金の返済書まで来たし。まあ借金に関しては向こうさんの手違いだってことが、
分かったから良かったものの。
今度はいったいどんな面倒事に巻き込まれたんだ?
そんな時だった。突然、女性の身体が青白い粒子に変化しだした。
「ちっ! やはりこの程度の主では実体化すらままならんか。貴様、手を貸せ」
「は、はい!」
慌てて女性に手を差し伸べると女性の光っている手が俺の手に重なったかと思えば、
女性が光となって俺の身体の中に入ってしまった。
その一連のことが終わると俺の右腕の甲に円陣の中に剣の絵が描かれた文様が浮かび上がった。
『取り敢えず貴様とは仮契約だ』
頭の中にさっきの女性の声が響いてきた。
「いや。だからまったく意味が」
その時、地面を軽く蹴る音が聞こえ、目の前を見てみると怪しい色に輝いている眼を持った、
紫色の体色の怪物が何体も俺に近づいてきた。
「……な、なんだあれ」
『世界の狭間を歩き続ける存在だ。殺されたくなかったら私を』
女性の説明を最後まで聞く前に俺は怪物が離れるために、
猛ダッシュでその場から立ち去った!
あんなもんか変わらないのが吉だ!
かかわった瞬間に超絶面倒くさいことに巻き込まれるに違いない!
『おい貴様。人の話を最後まで聞け!』
「聞く前にあんな奴らから逃げるのが先だろ! げっ! 追いかけてきてる!」
女性に返答しながら後ろを振り返るとさっきの怪物が何十体も俺を追いかけて来ていた。
『このまま逃げていても奴らの殺されるだけだ! そうなるのは私としても大迷惑だ!』
「だったらどうすればいいんだよ!」
『その為の私だ。力をくれてやる。立ち止まって私の後に続け』
「ほ、本当に大丈夫なんだろうな!?」
『あぁ。全てを蹂躙せし力』
「す、全てを蹂躙せし力」
俺は立ち止って女性が言っていくフレーズを後追いで口からはきだしていく。
『望むものならば修羅の道。否めば死の道』
「望むものならば修羅の道。否めば死の道」
後追いで口からはきだしていく最中に俺の右手の甲にある文様が青い光を放ち始め、
俺の足もとに甲にある文様が浮かび上がった。
『選ぶは己の力! 解放せよ!』
「選ぶは己の力! 解放せよ!」
そこまで言い終えた瞬間、俺に飛びかかってきた紫色の怪物が何かに吹き飛ばされ、
何体かは塵となって消滅した。
ふと足元を見てみるとさっきまで俺の肩幅ほどしかなかった文様が広がっており、
その文様が壁となって俺を護っているようだった。
『その陣に手を突っ込んでひっこ抜け!』
「どうにでもなれ!」
ヤケクソ気味に叫びながら陣に手を突っ込んだ瞬間、何かの持ち手が俺の手にあたり、
それを掴んで陣から腕をひっこ抜くと円陣から青白い炎のようなものが噴き出し、
その青白い炎が一瞬にして拡散して周囲に散らばっていた黒い円陣を一瞬にして、
俺の足もとにあるものと同じものに変えると同時に地面の色も黒から青へと変わっていく。
そして抜いた俺の手には女性がさっきまで握っていた大剣があった。
持ち手は足もとの円陣と同じ青色に染まっており、
刀身には俺には理解できない文字が薄く刻まれていた。
直後、刀身から青い炎が吹き出し、その長さを伸ばしていく。
『さあ、その力で全てを蹂躙しろ! 生きるために殺せ!』
「えああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
女性の叫び声と同時に青い炎が噴き出している大剣を思いっきり振り下ろすと、
青い炎が衝撃波となって放たれ、地面を抉りながら突き進んでいき、
俺に迫って来ていた紫色の怪物を文字通り蹂躙していき、少し進んだところで大爆発を上げて、
怪物と一緒に消え去った。
「はぁ……はぁ」
『それで良い……ここからは私と貴様は同じ道を進む』
「…………」
パッと目が覚め、一番最初に視界に入ったのは俺の自室の天井だった。
慌てて起き上がり、周囲を見渡して見るとそこは先ほどまでの場所ではなく正真正銘、
俺が住んでいる家の二階の俺の部屋だった。
「夢……なのか」
『夢ではないぞ』
「うわっ! で、出た!」
突然、女性の声が聞こえて慌てて視線を上に向けるとそこにはさっき出会った、
金髪碧眼の美女が俺のベッドの上に仁王立ちの恰好で立っていた。
その姿は少し薄れており、女性を通して部屋の壁が見えている。
「ゆ、夢じゃないのか」
『現実だ。目的を果たすまで私は貴様から離れる事が出来ない』
「…………勘弁してくれ~」
そう言いながら俺はベッドに倒れ込んだ。
やはり俺の予想通り、俺は今までにない規模の非常に、
面倒くさい出来事に巻き込まれてしまった。
なんとなく書いてみた。
早く黒猫終わらせないと。