異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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115件目 美天杯4

「それでは、本戦出場者の人は、くじを引いてください!」

 

 先生の指示に、予選通過者の人たちが、くじを引きに集まってきた。

 ボクと態徒も、そこに集まってくじを引く。

 

「態徒は、何番を引いたの?」

「オレは、3番だ。依桜は、何番を引いたんだ?」

「ボクは七番だったよ」

「運いいな。シードか」

「そうみたい。ボクとしては、ありがたいんだけどね」

「依桜の場合、闘うことに本気になるんじゃなくて、手加減することに本気になるもんな」

「うん。ボクと闘ったら、死んじゃう可能性があるもん……」

 

 一応、ミスをすることはないと思うけど、万が一があるかもしれない。師匠にみっちり手加減を鍛えられたけど、神経を使うことに変わりはない。

 

 師匠は、自然にやるけど、ボクにはできないよ。凡人だもん。

 

「でも、態徒も大変だよね。おかしな人に目を付けられちゃってるし……」

「あー、まあ、な。オレ的にも、頭のおかしい奴に目を付けられちまった、って気分だよ。幸いなのは、あいつが1番だってことだな」

「少なくとも、最初に当たることはないもんね」

「ああ。でも、勝ち進んだら、当たることになるんだよなぁ……面倒でしょうがねーよ」

「がんばって、としか言えない、かな。ボクは」

 

 これに関して、ボクが言えることは少ないし、できることも応援以外にはない。

 

「オレの最初の相手、地味にめんどくさそうだが、まあ、勝てない相手ではないだろ」

「油断はダメだよ、態徒。いくら、見た感じ、自分よりも弱そうだと感じたとしても、その油断が命取りになりかねないんだから」

 

 これは、師匠に言われてたこと。

 

 どんな場面でも、決して手を抜かず、最後まで真剣に、油断せずに戦え、って言う意味。

 ……だと言うのに、ボクは油断をして、痛い目を見ることが多かったけどね。魔王の時とか、いい例なんじゃないかなぁ……。

 

 気を抜いてしまったがゆえに、今のボクがあるわけだし……。

 

 なので、油断はダメ、絶対。

 

「依桜が言うと、重みが全然違うな。まあ、オレも油断はしないようにする。……負けたら、ミオ先生に何言われるかわかったもんじゃないからな」

「……もしかして、何か言われたの?」

「まあ、な……。ついさっき――」

 

 

「おい、カワノ。ちょっとこっち来い」

 

 美天杯が始まる前、ちょっと休憩をしに、依桜たちから離れると、突然ミオ先生が目の前に現れて、有無を言わさずに、ついてくるよう促してきた。

 

 ……や、やべえ、オレ、死ぬのか……?

 

 なんて、割と本気で思った。

 

 内心、恐々としながら、オレはミオ先生の後をついて行く。

 

 しばらく歩くと、そこは体育館裏だった。

 

 ……また?

 

「よし、来たな。まあ、まずお前に言うことがある」

「な、なんすか」

「絶対に、試合で勝たんと許さんぞ」

 

 マジ顔でそう言われた。

 

「いや、あの……オレ、十六歳じゃ強いほうっすけど、最強ってわけじゃないんすよ? 許さんと言われても……」

「いいから勝つんだ。お前はな、そこはかとなく才能はあるから、問題はないはずだ」

 

 ……なんだろう、褒められている気がしないのはなぜだ。

 

「それに、瓦割りの特訓の時にも言ったが、お前は依桜の友人だ。ならば、当然勝たなければいけない。というか、あたしが許さん。仮に、依桜が許したとしても、このあたしが許さん」

 

 やべえ、理不尽すぎて、何も言えねぇ……。

 

 依桜が行った異世界の人は、ミオ先生みたいに、頭のねじが外れている奴が多いのか? それとも、単純にミオ先生だけがおかしいのか? いや、もしかしたら、それが普通なのかもしれないぞ……?

 

 ……だとしたら、相当イカれてるぞ、異世界。

 

 オレ、絶対行きたくねぇ。

 

「と言うかお前、なぜ、二十八枚で止めた? もっと行けたよなぁ?」

「そんなこと言っても、ルールですよ!? 勝てばいいんですよ!? なんでわざわざ、自分から死にに行くような真似をしなきゃいけないんすか!」

「うるせえ! 勝たなきゃ殺す! 負けたら殺す! 引き分けでも殺す!」

「教師が言うことじゃないっすよ!?」

「んなもん、知ったこっちゃない! 他所は他所! うちはうち!」

「母親みたいなことを言わんでください!」

 

 この人、本当に教師なのか?

 

 生徒に対して、殺すはやばくない? 結構口調が荒い戸隠先生でも、ここまで酷くはないぞ?

 

 オレ、なんでミオ先生相手にはツッコミになるんだ。

 

 あれか? ボケてるつもりはないのに、傍から見たらツッコミどころ満載だから、結果的にツッコミに回っちゃうだけなのか?

 

 ……くそ! なぜ、オレがこんな目に!

 

「しかしまあ、あまりやりすぎても、イオに嫌われるだけだからな……殺すのはなしにしてやろう」

「ほ、ほんとですか? いやぁ、よか――」

「だが、罰を与えないとは言わん」

「……え?」

「そうだな……負けたら、あたし直々に鍛えてやろうじゃないか」

「え、遠慮させていただきます!」

「まあまあ、そう言うなよ。あたしが課すトレーニングをこなせりゃ、気ッと強くなれること間違いなしだぞ?」

「だ、だとしても嫌っす!」

 

 眩しいくらいの、ものっそい笑顔で言われても、嫌なものは嫌だ!

 

 だって、依桜が理不尽の権化と言うレベルの人のトレーニングとか、絶対普通じゃねえし、洒落にならん!

 

 いつ死んでもおかしくないような状況に、自ら突っ込むほど馬鹿じゃないぞ、オレ!

 

 普段から、馬鹿だ馬鹿だと言われても、これだけは理解できる!

 オレ、トレーニングした死ぬんだ、ってことがな!

 

「ほほぅ? お前。あたしのトレーニングができないって言うのか?」

「できないっす! オレ死にたくないですもん!」

「何を言っているんだ。死なないためのトレーニングだろう? まあ、そのトレーニングの途中で、死なない保証はないがな」

 

 ほらな!

 

 依桜が以前、修業時代の話をしてくれた時に、何度か死んでるって言ってたのを思い出して断ったのは正解だった!

 

 これ、明らかにオレを殺しに来てるじゃねえか!

 

 オレ、ここで『はい』なんて言おうものなら、その先に待つのは、死だけだ! 生き残れる可能性なんて、ほとんど皆無だろ、こんなの!

 

「まあ、安心しろ。仮に死んだとしても、あたしが無事に蘇生してやるから」

「オレが心配しているのはそこじゃないっす!」

 

 違う、違う。そうじゃないんだ!

 

 オレが言いたいのは、蘇生が必要になるような修業方法をしないでくれ、ってことなんだ! 決して、何度も死んでもいいように、っていうわけじゃないんだ!

 

「まあいいじゃないか。死の一つや二る。減るもんじゃあるまい」

「減ってますよ!? 主に、オレの命という名の、尊い命が!」

「んなもん、蘇生すりゃ、プラマイゼロだろ」

 

 だめだ、話が通じない! というか、こっちの世界の常識が一切通用しないんだけど! 人の話を聞くって言うことができないのか、ミオ先生!

 

 そもそも、命は蘇生できないんだよ! 人間を生き返らせるとか、なんでできちゃうの、この人!

 

 あれか、暗殺者って言う職業は、殺すだけでなく、生き返らせることもできないと務まらないってのか!? だとしたら、生死が変幻自在すぎてこええんだけど!

 

「まあいい。とにかく、勝て。これは命令だ」

「命令を拒否します!」

「拒否を拒否する。これは、副担命令だ。絶対に拒否は許さん」

「副担にそんな権限はないっす!」

「んなもん関係ねえ! あたしがやれと言うんだから、やるんだよ!」

「そんな理不尽な!」

 

 もうやだ、この人!

 

 理不尽すぎて、何も言えねえよ。どうするんだよ、これ。

 と言うか、副担命令とか聞いたことねえぞ、オレ。

 

「とまあ、話はこんなもんだ。戻っていいぞ。あたしは、ちとやることがあるんでな。じゃあな」

 

 とだけ言い残して、ミオ先生は消えた。

 ミオ先生って、神出鬼没すぎない……?

 

 オレ、絶対に負けられないやんけ……。

 

 

「――てなことがあってな」

「そ、そうだったんだね……」

 

 どうしよう。師匠が、ボクの友達にすごく辛辣。

 

 そもそも、なんでそんなに態徒を勝たせたいの? 師匠。

 

 別に、無理して勝つ必要ないんだよ? この競技。

 

 たしかに、この競技でもらえるポイントは高めに設定されているけど、本戦に出場できただけで、それなりのポイントが入るんだよね、これ。

 

 ボクと態徒は、二人そろって本戦に進出してるから、結構入っている。

 

 たしかに、優勝できればポイントは高いよ? 一位だもん。

 

 でも、なんでそこまで優勝させようとするのかなぁ、師匠。

 

 ……多分、ボクの友達だから、って言う理由だけで勝たせようとしてきてる気がするけどね。

 

「オレ、どうすりゃいいんだろうな」

「う、う~ん……とりあえず、勝つしかない、んじゃないかなぁ。だって、師匠がそう言うってことは、できると思っているんじゃないかな」

「そうかぁ?」

「うん。師匠って、その人ができないと思ったら、絶対に修業を入れてくるもん。実際、ボクがそうだったし……」

「いやいやいや。オレ、明らかに理不尽なことを言われているようにしか感じなかったぞ!?」

「師匠、ほとんど表に出さないもん。表情とか」

 

 なので、師匠がどう思っているか、とか、考えるのが本当に大変だった。

 

 師匠って、自由気ままに生活しているし、表情はあるんだけど、本当はどう考えているのかなぁって思った……んだけど、あまりにも表情が一定のパターンで変わっているせいで、分かりにくくなってしまった。

 

 ……まあ、今ならある程度はできるんじゃないかなぁ、って思ってるけど。

 

「やっぱ、暗殺者って、ポーカーフェイスが得意だったりするのか?」

「ボクは割と得意だよ。師匠ほどじゃないけど、演技には慣れてるからね。暗殺者は、演技力も必要だから、かなり大変だよ?」

「そうかぁ。やっぱすげえな、依桜は。オレ、そんなこと全然できてねーもん」

「ぼ、ボクなんて、師匠に鍛えられたからこうなっただけで、実際はそんなにすごくないと思うんだけどなぁ……」

「なんで、そんなに自己評価が低いんだろうな、依桜は」

 

 逆に、未果とかも、なんでボクの自己評価が低いって言うんだろう? 普通だと思うんだけどなぁ……。

 

『えー、第一試合が間もなく始まりますので、第二試合にでる選手は、速やかに控え室に来るよう、お願いします』

「おっと、もうそろオレの出番だ。じゃ、行ってくるな!」

「うん。頑張ってね」

 

 師匠が何かするんじゃないか、って冷や冷やしているので、是非、態徒には買ってもらいたいなぁ……。

 

 ……応援しないと。




 どうも、九十九一です。
 これを書いている時、あまりにも眠すぎて、微妙に記憶がとんでたりします。……疲れてるのかな、私。
 まあそんなことは置いておいて……。なんだか、手抜きになり始めているような気がするのは、なぜだろう? ……十中八九、だれて来てるからだろうなぁ……。なんとかしないと。
 さて、明日もいつも通りだと思いますので、よろしくお願いします。もしかすると、12時に以降になるかもしれませんので、ご了承ください。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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