異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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133件目 アスレチック鬼ごっこ1

『それじゃあ、こっちのトラップを設置する場所を考える』

 

 鬼側の人が全員集まると、話し合いが始まった。

 

 話し合いが始まると、ここにいる人たちの目の前に、半透明のスクリーンのようなものが出現。

 

 それを見ると、トラップの概要について書かれていた。

 

 見たところ、天井に設置するものとか、壁、床なんてものもある。

 床以外は、そこを通過した時点で発動。床のタイプは、踏まないといけないらしく、飛び越えたり、跨いだりすれば、発動することはないみたいだ。

 

 うーん、この辺りは、向こうの世界にあったトラップ系の魔法に近いかも。

 

 それで、設置可能なトラップは……う、うーん?

 

 なんか、何とも言えないようなものばかり表示されているんだけど。

 

 さっき、学園長先生が言っていた、『行き止まりを創るトラップ』や、『一定時間階段を上れなくする』と言ったものや、『過去の記憶を読み取って、視界に人生最大のトラウマを見せる』なんてものもある。

 

 ……他にも色々あるにはあるけど、トラウマはまずくない?

 

 あと、なんで記憶を読み取れるの? どういう構造してるんだろう、あの機器。

 

 多分だけど、逃走側の方も、あまりこっちと変わらないんじゃないかなぁ。

 多少の差異はあっても、急遽作ったものな気がするし……半分近くは同じもので代用している気がする。

 

 じゃないと、たった三週間で作るのは厳しいと思うし。

 ……まあ、この仮想世界を創るのに、どれくらいの期間を要したのかはわからないけど。

 

『それじゃあみんな、何か案はあるか?』

『とりあえず、行き止まりは各フロアに二ヶ所くらいは設置したほうが良くね?』

『たしかに。シンプルかつ、使い勝手もいいからな。よし、なら二ヶ所ずつ、設置することにしよう。ほかには?』

『うーむ、100×100の広さだからな……五個ってのはいささか少ない気もするが……』

 

 そもそも、100メートルも高さがある時点で、色々とおかしいような気がするけどね。

 

 それはそれとして、ボクは成り行きを見守ってようかな。

 

 ボクの場合は、普通に動き回ったほうが役に立てるし。

 ……問題は、どういうトラップが向こうにあるか、だけど。

 

 学園長先生が関わってる時点で、スライムとかがありそうだもん。

 

 それから、いろんなことを考えていると、どうやらトラップの設置についての相談が終わったみたい。

 

『さて、このトラップたちだが……正直なところ、どこに転移するかわからない。なので、できればこのトラップの配置位置を覚えておいて欲しい。いや、無理にとは言わない。だが、一ヶ所だけでも覚えておいてもらえるとありがたい』

 

 記憶、か。

 

 師匠には散々言われたっけ。

 

 ……暗殺者として重要なのは、情報。

 

 まず、ターゲットの家に忍び込んで、見取り図、場合によっては罠の設置場所について書かれた紙を盗みに行くこともあった。

 

 ……普通に考えたら犯罪だけど、うん。相手は悪人だったので、その……目を瞑ってほしいです。

 

 それで、その紙に書かれていることをすべて暗記して、仕事に臨まないといけなかった。

 

 見ながら行ってもいいと思うかもしれないけど、そもそもボクには、『アイテムボックス』の魔法は使えないので、必要最低限の物しか持っていかなかったしね。

 

 いくら紙とはいえ、それなりに大きかったからかさばるし、万が一『消音』の効果が切れてしまった場合を想定して、事前に暗記しろ、と師匠に言われていた。

 

 ……ものによっては、前日に覚えなきゃいけなかったから、本当に辛かったよ。

 

『さて、十分が経過した。それぞれのリーダーは、トラップの設置をしてください!』

 

 ホログラムが出るまではなかったけど、学園長先生の声がどこからともなく響いてきた。

 

 これ、外から声を発して流しているのか、それともこの世界の中から声を流しているのか、どっちなんだろう?

 楽しいことが大好きな学園長先生のことを考えたら、意外とどこかにいるかも。

 

『どうやら、両陣営とも設置が終わったみたいですね! それでは、転移のカウントダウンを起動させます。なので、急に視界が切り替わっても、驚かないように』

 

 そう言った瞬間、ここに入り込む直前に見たカウントダウンの表示が、視界に出現した。

 うーん、どこを見ても、中心に表示されているって言うのは、すごく不思議な気分。

 

 あ、でも、ステータスを見る時に似てるかもなぁ。

 と、そんなことを考えていたら、足元に魔法陣のような物が出現。そこから、眩いばかりの光があふれだし、あまりの光の強さに思わず目を瞑った。

 

 

「ん……ここ、は……」

 

 次に目を開けると、視界にはアスレチックコースが移っていた。

 

「転移魔法に似た感覚……」

 

 向こうの世界にも、一応は転移魔法というものがあった。

 と言っても、ボクは使えなかったけどね。あれ、かなり特殊な属性だったし。

 ……もしかすると、師匠辺りが使えるかも。

 

『さあ、全員が転移し終えたようなので、『叡春祭』の目玉競技と言っても過言ではない、アスレチック鬼ごっこ、開始です!』

 

 その学園長先生の開始のセリフと共に、

 

 リーンゴーン!

 

 という、大きな鐘の音が響き渡った。

 うーん? なんだか、この鐘の音もどこかで聴いたような……いや、考えるのは後だよね。

 

「ボクもがんばらないと!」

 

 周りに誰もいない場所で、胸の前で拳を握って、意気込む。

 

『さあさあ、思わぬサプライズとなったアスレチック鬼ごっこ! この競技では、勝った方に得点が全部加算されます! 現在の得点は、東軍:2801点! 西軍:2816点! かなり拮抗しています! そして、この競技で勝った陣営には、200点が加算されます! つまり、この競技で体育祭の優勝陣営が決まるというわけです! 両陣営とも、頑張ってくださいね!』

 

 あれ、実況の人の声も響き渡ってる。

 

 うーん、やっぱり、現実の方から声を発しているのかも。

 

 さて、ボクも動かないとね。

 まずは、周囲の情報を得られるだけ得よう。

 

 その場で目を瞑って、耳を澄ますと、いろんな声や音が聞こえてきた。

 

 どうやら、各階で早くも出会った人たちがいるみたい。

 

 そう言えば、ボクはどの階層にいるんだろう?

 ちょっと気になると思っていたら、目の前のさっきの半透明なスクリーンが表示された。

 それを見ると、どうやらボクは一階層にいるみたい。

 

「えーっと、さすがに『気配感知』を使うのはひきょう、だよね。いくらのうりょくがあると言っても」

 

 それに、不自然に思われたら嫌だしね。

 地図が表示されるのなら、そこまで不自然じゃなかったのかもしれないけど、地図はないみたいだし。

 

 まあ、正確に言えば、あるにはあるけど。

 

 完成図はないけど、空白の地図ならある。

 

 どうやら、自分自身を基点に、半径三メートルを自動的に書き込んでくれるみたい。

 この辺りは、本当にゲームっぽくていいね。

 

 向こうの世界にも、『地図作成(マッピング)』なんて能力があったけど。

 

 ボクは、暗殺者だったので、スキルとしても覚えるのは難しかったんだよね。覚えられる職業って、『作図師』っていう職業の人たちだったし。

 

「とりあえず、まずはしかくとちょうかくで……ん、一人近くにいる」

 

 カタリ、とこの近くからかすかな音が聞こえてきた。

 まずは一人目、とボクは動き出した。

 

 

 アスレチック鬼ごっこと言うだけあって、本当に様々なアスレチックがあった。

 

 例えば、ターザンロープのようなもの。

 

 ちなみに、ターザンロープがある場所には、向こう岸との間に、見慣れない紫色の液体がなみなみと注がれていた。

 

 一体どういう物なのか、すごく気になるところではあるけど、ここは無視。絶対にいいことはない。学園長先生のことだから。

 

 ほかにも、回る丸太の上を走ったりもした。

 普通の床もあるのは、まだよかったね。多分これ、運動が苦手な人でもなんとかできるように、って言う配慮かな?

 

 まだ少ししか走っていないけど、アスレチックと普通の床の割合は半々ってところだと思う。

 

「……見つけた!」

 

 さっきの音を辿りながら走っていると、前方に人影が一つ。

 

『しまったっ! よりにもよって、天使ちゃんだとぅ!?』

 

 ボクの声と足音に、前方にいる男子がしまったという顔をして、全力疾走しだす。

 ふふふ。目立たないレベルなら、ある程度走っても問題ないからね、追いつけるレベルで走るよ!

 

 と、ボクが走っている時のこと。

 

 距離を半分ほど縮めた辺りで、いきなり地面が光り出した。

 

「――ッ!」

 

 それを見た瞬間、ボクは、前方に飛び込むことで回避。一瞬、つま先辺りに何かが掠めた気がした。

 

 気になって、後ろを振り返ると……あれは、

 

「えっと、なわ?」

 

 なぜか縄が出現していた。

 

 幸い、トラップから離れたことで、特に害はなかったけど……あと一秒でも遅れていたら、どうなっていたかわからない。

 

『嘘だろ!? なんでトラップを避けられるんだよ!? くそっ、せっかく嵌めるチャンスだったってのに!』

 

 どうやら、ここのトラップを覚えていて、それを使ってボクを足止めしようと画策していたみたいだった。

 

 うん。ボクも冷や冷やしたよ。

 

 ……最悪の場合、すっごく小さいナイフでも生成して、逃げればいいんだけど。

 

「って、ゆうちょうに考えてるばあいじゃないね!」

 

 すぐさま床を蹴って走り出す。

 

『って、速っ!?』

「ぼーっとしてちゃダメですよ!」

 

 なるべく力を抑えて距離を縮め、罠にかけようとした男子にタッチした。

 

『くっそー、俺の作戦は失敗か……。てか、天使ちゃん速すぎ……』

 

 そんな文句? を呟いてから、光の粒子になって消えて行った。

 

『おーっと! 早速逃走側から脱落者が出ました! 最初に逃走者を捕まえたのは、おなじみ、男女依桜さんです! しかも、発動したトラップを前方に飛び込むことで見事に回避! 仮想世界とはいえ、実に人間離れした反射神経です!』

 

 ……あれ、もしかして、さっきのって普通なら回避できないものだったりする?

 

『解説の学園長先生。回避は可能、なのでしょうか?』

 

 なんか、学園長先生、解説になってるんだけど。

 

『そうですね……正直、微妙なところです。このトラップを回避するには、光った瞬間に、0.1秒以下で回避行動をとらなければなりません。ちなみに、人間が何らかの行動をする際、脳から電気信号が送られていますが、実際に体を動かすまでに、0.2秒のタイムラグがあります。と言っても、あくまでも意識的な部分のことであり、無意識的部分を含めたら、0.7秒ほどかかります。まあ、そんなことはどうでもいいですね。最初に微妙と言った理由はと言うと、一般的な理論からくるものです。陸上の短距離走で、0.1秒以内に反応した選手がフライングになるのは、『人間が0.1秒以内に反応することが理論的にありえない』からです。なので……まあ、避けるには、常人よりも圧倒的に優れた反射神経と動体視力がいることでしょう』

 

 ……し、知らなかったよ!

 というか、そうだったの!? 人って、体を動かすまでに、0.7秒もかかってるの!? じゃ、じゃあ、雷を目視で避けられるボクって……。

 ……強くなりすぎた、のかな、これ。

 だ、だって師匠が、

 

『これくらい、人間はできる』

 

 って言うから、てっきり鍛えれば誰でもできるのかと……。

 

『つ、つまり、男女依桜さんは、0.1秒以内に反応してる、ってことですか?』

 

 うっ、まずい。変に目立ちそうになってる……!

 

 できれば目立ちたくないのに……。うぅ、これは失敗だよぉ……。これに関しては、そう言った話を調べなかったボクが悪いよね……。

 

 はぁ……。また、マスコミの人たちに張り込みされるのかなぁ。

 

 と、悲観的になっていたら、

 

『うーん、まぐれだと思いますね』

 

 まさかの、学園長先生から救いの手が。

 

『まぐれ、ですか?』

『はい。実際は飛び込んだように見えて、つまずいて転んだのでしょう』

『え、でもさっき、普通に飛び込み前転していたような……?』

『偶然です。たしかに、依桜君は特殊な体質をしてるけど、みんなと同じ人間よ? だから、さっきのはまぐれです』

『な、なるほど? ま、まあ、まぐれということにしますね!』

 

 よ、よかったぁっ……!

 

 そう言えば、初めて学園長先生がまともに助けてくれたような……?

 

 あ、でも、一応は学園長先生が裏で色々やってくれたおかげでマスコミの人たちに追われなくなったみたいだし……まあ、その後に異世界に行かされて、幼い姿になるようになったのは言うまでもない。

 

 それを踏まえると、プラスマイナスゼロなんじゃ……?

 

 ……ということは、学園長先生に救われたのって、これが初?

 

 そうして、ボクは思った。

 

 ……なんで、あんな人なのに、学園長という仕事ができてるんだろう、って。




 どうも、九十九一です。
 ようやく、本格的に最後の競技に入りましたよ。……何とかして、5話程度で収めたい。正直、早く休みたいと言うのと、いい加減読者の皆様も飽きているんじゃないか、という気持ちと、私自身が疲れてきている、というものがあります。
 正直、この小説に投稿されている話のうち、約半分は体育祭です。もう半分は、それ以外ですね。それを考えると、いかに長いかがわかると思います。……まあ、人によっては、もっと長い人もいるんでしょうけど。
 明日もいつも通りだと思いますので、よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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