異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~ 作:九十九一
ボクたちの話は続きます。
「ところで、桜はモデルとかエキストラとかやっていたか?」
「やったよ。あれだよね? 碧さんにスカウトされて、っていう」
「そう! で、美羽さんって言う女優……じゃなくて、声優を助けたり」
「うんうん! そしたら、なぜかテレビで有名になっちゃったりして……」
「……しかも、それが原因で白銀の男神とか言われるし……」
「ボクの場合、白銀の女神って言われてるよ……」
「恥ずかしいよな……」
「……うん。すごく」
テレビで、そんな大層な呼ばれ方をした時は、本当に恥ずかしかった。
しかも、学園にいるみんなも知ってるし、未果たちだって知ってたから、本当に恥ずかしかったんだよね……。
「そう言えば、そっちのミス・ミスターコンテストの、ミスター部門は誰が出たんだ?」
「晶だよ。ちなみに、優勝したよ」
「まあ、晶はかっこいいからなー」
「それじゃあ、依桜の方のミス部門は、誰が?」
「未果だ。こっちも、未果が優勝してる」
「そうなんだ。未果、可愛いし綺麗だもんね」
「ああ。性格もいいから、モテてるよ」
「やっぱりそうなんだ」
本当にそっくりな世界なんだね、ここって。
ボクの性別とかが違うだけで、結構、変わってる部分も多いけど、大きくは外れていない。
不思議な世界だよね。
「まあでも、あれだな。体育祭では、本気で怒ったものだ」
「もしかして、態徒?」
「ああ。まさか、大事な友人をボコボコにされてるなんて夢に思わなかった。おかげで、殺意が芽生えたよ」
「さすがにあれはね……。しかも、下手をしたら命に関わってくるような怪我があったし」
「ま、その犯人のやつは、異世界送りになったが」
「あー、あれね。後日見に行ったら、かなり委縮しちゃってたよ。ボクを見ると逃げちゃって……」
「……向こうで何があったのやら」
佐々木君は、異世界で相当嫌なことがあったんだろうね。
向こうの世界は、一応戦争が終結して、平和が訪れたとは言っても、まだまだ悪い人たちがいたわけだし。
まあ、ちゃんと無事に帰って来れただけ、まだマシだと思うけどね。
「冬〇ミも行ったか?」
「……うん。スカートの中を盗撮されたりしたよ……。というか、女委に渡された衣装が、すごく露出が多くて恥ずかしかった……。依桜の方は、どうだったの?」
「……僕も、女委にメイド服を着させられたよ……。しかも、なぜかスカートの中を盗撮された……。男です、って言っても、なぜか鼻息荒くされてな……はは……」
「……大変だったね」
「……まあね」
お互いの苦労のレベルがかなり高いと思います……。
そっか……やっぱり、大変なんだね、女の子から男になるのも……。
そもそも、性別が変わっちゃってること自体が非常事態なわけでだし……。
「男になってからというもの、苦労の連続だったよ……。なぜか、女性から痴漢を受けるんだぞ? この気持ちわかるか……? あれはさすがに、精神に来たよ……」
「……ボクも、痴漢に遭ったことあるよ。ちょっと太ってて、不潔な印象を受ける男の人。鼻息が荒かったです……」
「……それは嫌すぎる。なんかこれ、ある意味桜の方が大変じゃないか?」
「……依桜の方だって、結構苦労してるみたいだけど」
「……僕の場合は、一応男だから、あまり被害に遭いにくい……いや、普通の男よりかは被害を受けやすいかも……」
「……結局、どっちも大変、ってことだね……」
「……そうだな」
結局、性別が変わると、生活がかなり苦労するものになるみたいです……。
普通の人生を送りたい……。
ボクたちの願いはそれだけだと思います。
「ところで、そっちに《CFO》ってあるのか?」
話変わって、ゲームの話になった。
「うん。あるよ。『New Era』だよね?」
「そうそう。そのゲームでキャラを作って、どうなって?」
「……すごく、おかしなキャラクターになったよ」
ステータスは最初から三桁がほとんど。
他にも、スキルがかなり多くあったし。
「あれか、変な称号があったりするって言う……」
「そうだよ。おかげで、レベル18のキャラクターでイベント優勝しちゃって……」
「あれだろ? インガド」
「うん。あの人が原因で、ボクつい怒っちゃって。無傷で優勝したら、【覇者】なんて称号も手に入っちゃうし……」
「あれな……おかげで、効率がさらに倍になったよな……。上げにくいステータスが実質的になくなってさ」
「2FPで、ステータスが1じゃなくて、2上がるんだもんね」
「そうなんだよ。まあでも、目立つのは好きじゃないから、基本店の方なわけだが」
「あ、もしかして、『白銀亭』?」
「ああ。ということは、そっちも?」
「うん。洋服を売ったり料理を出したりしてるよ」
「さすが僕。考えることは同じなわけか」
「もちろん」
どうしよう。会話が止まらない。
ついつい、今までの苦労を話しちゃう。
向こうも向こうで、ボクと同じことをしてきたから、話がすごく合うし。
ちょっと楽しい。
それからも、色々なことを話した。
商店街の福引での旅行とか、大食い勝負とか、ハロパ、お悩み相談、風邪を引いた時に、学園見学会、誕生日会、おじいちゃんとおばあちゃんの家に行った時の話に、スキー教室とか。
他にもいろいろあったけど、その中で話が盛り上がりと言えば、
「バレンタインはどうしてた?」
「ボクは、クラスメートのみんなと、商店街のみなさん、あとは父さんと母さんに、未果たち、師匠、美羽さんに渡したよ」
「やっぱり、やるよなー。僕は、男になったから、作ったりしなかったんだけど、なんだか落ち着かなかったよ。毎年作ってたから。……まあ、学園中の生徒たちからかなりもらったけど」
「ボクもだよ。女の子たちから大量のチョコレートをもらったよ……」
「……いくら甘いものが好きと言っても、飽きるんだよな」
「そうなんだよね……。ボクもさすがに、あの量はちょっと……」
『アイテムボックス』に入れないと運べないレベルのチョコレートって、普通に考えたら相当多いと思うんだよ。
しかも、全部手作りだったから、食べないわけにもいかなくてね。
結構頑張って食べた記憶があるよ。
「まあ、おかがでホワイトデーはかなり作る羽目になったが……まあ、料理は好きだったから、全然構わなかったけど」
「わかるよ。料理は楽しいし、喜んでくれた時の顔を見ると、幸せな気持ちになるよね」
「そうなんだよ! だから、ゲーム内でも、喜んでもらえるのが嬉しくて、ついつい料理を作ったり、洋服を作るわけで」
「うんうん。ボクたちの場合は、向こうで嫌というほど戦っていたからね……」
「ああ……」
文字通りの地獄だったよ。
自ら進んで傷つけなきゃいけないから。
本当に、あの時代は辛かったなぁ……。
「まあ、そのおかげで守れるものもあったわけだけど」
「そうだね」
特に、未果たちなんていい例だよ。
もしも、ボクが異世界に行っていなかったら、学園祭とかはどうなっていたかわからない。それこそ、死人が出たかもしれないし。
それ以前に、データを盗まれて、戦争が起こったかもしれないから。
「……さて、とりあえず、お互いの身の上話はこれくらいにして、僕たちの設定を考えるか」
「設定?」
「本来、僕という存在は、一人だけしか存在していないはずなのに、どこかのマッドサイエンティストのせいで、もう一人の別の僕が現れてしまった以上、対外的な事情を考えないといけないから」
「あ、それもそっか。こっちの未果たちは事情を知っているんだよね?」
「ああ。僕が異世界に行っていたことは知っている。そっちの四人には、明日事情を話そう」
「うん。わかった。じゃあ、えっとボクの存在をどう説明するか、だよね……」
うーん……。
何がいいだろう。
少なくとも、一般的に説明しても不思議じゃない理由にしないと、おかしいよね……。
そうなると……何がいいんだろう?
やっぱり、他人の空似?
……一応、こっちのボクの元の姿が今のボクと同じらしいから無理、だよね。
だって、空似どころの話じゃないもん。同一人物って言われるほどにそっくりなんだもん。
しかも、男の姿が、ボクの性転換前と全く同じだし……。
そうなると……
「じゃあ、双子だった、っていうのはどう?」
「双子?」
「うん。これなら、似ていても不思議じゃないし」
「たしかに。となると……生まれてすぐ、桜が間違えて別の家に連れていかれて、最近ようやく戻って来た、って設定にしよう」
「その理由だと、結構すごいことになってるけど……まあ、それが妥当かな」
そもそも、碧眼の時点で間違えようがない気がするけどね。
「それに、この理由にしておけば、お互いの名字が違う理由になるだろう? そっちは男女だけど、僕は女男なわけだし」
「そうだね」
「じゃあ、決まりだ。……この後、師匠とメルに話すのがちょっと大変だ……いや、あの二人は異世界の存在を実際に知っているわけだから、問題はない、か?」
「あー、特に師匠の方はそうなんじゃないかなぁ。何でも知ってるような感じがあるし……。それに、並行世界から来た依桜です、って言えば、普通に納得してくれそう」
大抵のことでは驚かないからね、師匠。
むしろ、かなり興味を持ちそうだよ、並行世界の話は。
「……たしかにな。メルは普通に喜びそうだ」
「それに、父さんと母さんだって、すんなり信じてくれるし、意外と問題はないかも」
「言われてみれば、そうだな。……意外と心配事は少ないな。あるとすれば……ちゃんと帰還できるか、ってところだな」
「……そうだね」
学園長先生のことだから、多分ちゃんと帰還できるような装置を作ってくれるとは思うけど……これでもし、無理、みたいなことになったら、相当困るよ? ボク。
ボクにだって、自分の住む世界があるわけだし……。
……うん? そういえば、四月一日から並行世界の装置に関する試運転した、って言ってたよね?
たしか、ボクの世界の方でも、四月一日から空間歪曲が日本各地で多発してるって……。
……まさかとは思うけど、その原因もこっちの学園長先生?
あ、あり得る。
というか、絶対そうだよね、これ。
今回、学園長先生は、この件に関して関わっていない、って言ってたけど、ある意味では関わってたよ。
別の学園長先生が、だけど。
う、うわぁ……まさか、ボクの方の世界で起きてる問題事の原因が、あの人だったなんて……もうこれ、どうしようもない気がするんだけど……。
「ん、どうした、桜?」
「あ、いや、えっと……ふと思いだしたんだけど、ボクの世界でね――」
と、軽く思い当たったことを依桜に説明。
「……あんの馬鹿……はぁ。本当に申し訳ない。今回の件、明らかに僕たちの方の学園長が原因だ。まさか、そっちの世界にも影響があったなんて……あとでシバいとくよ」
「あ、あはは……い、一応被害が出てないから、お手柔らかに、ね?」
「任せておけ」
う、うわぁ、すっごくいい笑顔。
ボクが男だった時も、こんな笑顔ができたのかなぁ……うん、まあ、できた気がする。
……多分。
「……それにしても、話してるだけで、気が付けば昼過ぎか。昼ご飯、どうする?」
「それじゃあ、ボクが作ろうか?」
「いいのか?」
「うん。一応、居候になるわけだしね。家事は得意だよ」
「そこも同じなのか。……まあ、頼むよ。自分なら、味の心配もいらないだろうからな」
「うん。任せて」
というわけで、ボクがお昼ご飯を作ることになった。
二人でリビングに行き、ボクは冷蔵庫を覗く。
あまり材料は多くなかったけど、炒飯くらいなら作れそう。
ボクは材料を取り出し、細かく切っていく。
それと並行して、わかめスープも作る。
海藻類好きだからね。多分、こっちのボクも好きなはず。
軽く材料の準備が終わったら、中華鍋でご飯や材料を一緒に炒めて完成。
「はい、どうぞ」
「炒飯か。しかも、わかめスープ付き。さすが僕。わかってる」
「でしょ?」
「それじゃ、いただきます」
「ボクもいただきます」
向かい合うようにしてちょっと遅めのお昼ご飯を食べる。
「うん。僕が作る炒飯と同じ味だ。ちゃんと、好みの味だな」
「それはよかったよ」
「別の自分が作る料理を食べるって言うのも、不思議な気分だな」
「それを言うなら、ボクもだよ。別の自分がボクが作った料理をおいしそうに食べてくれる、って言う不思議な状況だもん」
「それもそうか」
お互い軽く笑う。
こっちのボクが、変な人じゃなくて良かったよ。
大体は、ボクと同じみたいだからね。
これでもし、荒っぽい性格をしていたり、悪い性格をしていたら、さすがに戸惑ったよ。
この後、お昼ご飯を食べた後は、他愛のない雑談をしたら、お互いの世界の情報交換をしました。
意外と、楽しかったです。
どうも、九十九一です。
割と、書き分けがちょっと大変な気がしてます。まあ、所々違うのは依桜くらいなので、依桜と依桜の書き分けさえしっかりしていれば、なんとかなるはず……。
明日も、いつも通りだと思いますので、よろしくお願いします。
では。
依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか
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やってほしい
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やらなくていい
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どっちでもいい
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知らぬ
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単体作品でやってほしい