異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~ 作:九十九一
元の世界にて。
「やっぱり、依桜は帰って来てない感じか?」
「らしいわ……。一応、源次さんや桜子さんに訊いてみたんだけど、昨日の朝忘れ物を取りに戻って、家を出たっきり、一度も見ていないらしいわよ」
「そうか……」
唐突に依桜が行方不明になったことで、私たちの間には、常に重い空気が流れていた。
それもそうだ。
大事な友人、幼馴染が突然いなくなってしまったのだから。
今までも何度か異世界に行くようなことはあった依桜だけど、今回はちょっとパターンが違う。
一回目はこっちからすれば、一瞬だけ消えて、一瞬で戻ってくる、なんてことだったから、私たちの方は会わなかった、なんてことがなかった。
二回目は、一時的に言ったことを知らされたけど、一日で帰ってきて、さらには土日だったからこそ、問題がなかった。
三回目は、普通に半日程度で帰って来たみたいだし……。
そして、問題は今回の四回目。
今までは、仮に行っていたしても、すぐに戻ってくるようなことしかなかった。
いなくなっても、次の日にはひょっこり帰ってきてる感じ。
だから、今回も一日で帰ってくるはず、と私たちは期待していたのだけど……その淡い期待は裏切られることになった。
帰ってきていないのだ。
依桜は、本当に行方不明になってしまったみたい……。
この状況をどうすればいいのか、私たちはわからない。
「大丈夫かな……依桜君」
いつもはどうしようもない、変態な腐女子な女委も、いつものような元気がない。
「少なくとも、依桜は強いしよ、危険は少ないかもしれないけど……それでも、心配だよな……」
態徒も態徒で、いつものような気楽な言動などを取ったりしない。
こんな風に、いつもは変態で、何かと問題ばかり起しているような二人だけど、こう言う時は本当に心配そうにし、元気がなくなる。
かく言う、私と晶もそう。
特に、私なんて、幼稚園の頃からの付き合いで、この中で一番依桜の付き合いは長い。
一番気心の知れた仲で、一緒にいるのが当たり前のような関係だから、いざいなくなると、心にぽっかり穴が開いたように感じる。
「……とりあえず、私たちの方でも依桜は探しましょう」
「そうだな。少なくとも、何もしないよりはいいだろう」
「だね……」
「おう……」
それでもやっぱり、私たちの間に流れる空気は重かった。
「それで、そっちの研究はどうなってるの?」
『はい。幸い、依桜君が転移する瞬間を観測していたおかげで、ある程度の世界の目星はつきました』
私は、依桜君が行方不明になった昨日から、学園長の業務を一時休み、研究所の方にこもりだした。
学園長業務に関しては、新しく赴任した教頭先生に一任してある。
一応、私の事情を知っている人だから、安心できる。
ゼイダルのような輩は、もう二度と入れないわ。
「そう。それで、そこ専用の観測装置は?」
『世界の目星がついたので、すぐに作成に取り掛かっています』
「早いわね」
『いえ、依桜君には、こちらの研究を手伝ってもらったり、お菓子を差し入れてもらったりしていますから。こちらも、何としてでも早急に見つけないといけません』
「そうね……。観測装置の方は、どれくらいで完成しそう?」
『そうですね……最低でもあと三日。長くても五日で完成すると思います。可能な限り、三日で完成させるつもりです』
三日……。最悪の場合は五日、か。
できるならば、今すぐにでも依桜君を探し出したい……だけど、無理なものは無理。
それは、私がよくわかってる。
今は、研究所のみんなを信じないと。
「了解したわ。その調子で進めて」
『はい』
「でも、問題はどういった世界にいるか、よね……」
『そうですね。今回はどこの世界に行ってしまったのかわからない以上、完全に未知です。そもそも、どういう世界なのか不明ですから』
「そうよね……」
少なくとも、空間歪曲のパターンがいつものと違うから、依桜君が行ったような世界ではないことは確か。
だとすると、依桜君が今回行ってしまった世界がどういうところなのか、よね。
異世界と言っても、実際は無数にあるわけだから。
一番厄介なのは、危険な世界よね……。
実際、依桜君が行った世界も、危険な世界と言われれば、危険な世界だから。
命のやり取りがあったのはたしか。
だからこそ、依桜君があそこまで強くなったわけなんだけど……。
まあ、それはいいとして。
「ところで、異世界の目星がついた、って言っていたけど、実際どんな感じかわかっているのかしら?」
『はい。おおよそは』
「それはどんな感じ?」
『観測値的には、あまりこの世界と変わらないようです』
「ということは、少なくとも危険のあるような世界ではない、と言うことでいいのかしら?」
『はい。少なくとも、こちらの世界に存在しない……魔法などがある場合の数値は検出されていません』
「それなら、少しは安心ね……」
この世界と数値は同じ、ということは、この世界のような平穏な世界に辿り着いている、という可能性が一番高い。
それなら、まだ安心できる。
危険な世界にいないのであれば、なおさら。
でも、どんな世界にいるのかしら……。
色々とありつつも、一日が何とか終わり、家に帰宅。
「まったく、師匠は本当に理不尽だよ……」
「そうだね……。まさか、二対三十九の戦いをすることになるとは思わなかったよ……」
体育の時間のドッジボールは、本当に酷かったように思える。
なぜか、ボクと依桜の二人だけで、戦わなきゃいけなかったから。
結局、体力の差がありすぎて、みんながぐったりしたため、ボクたちの勝ちにはなったけど……そもそもの前提条件が違うからね……。
異世界で何度も死にながら鍛えた人と、こっちの世界ので常識レベルの鍛え方をするのでは、全然違うもん……。
「それにしても、学園長の方からは、なにも連絡はなし、か」
「そうなんだ……」
「連れてくることはできたのに、送り帰すことができないって、欠陥品にもほどがあるだろ……」
「そうだね……」
その辺りは、まだボクの世界の学園長先生の方がマシ……じゃ、ないかも。
少なくとも、どうしようもない人だったの確かだし……。
「本来は、こっちに来て、すぐに帰れるようにしないといけないのにな……。研究者とは言っても、あの人の場合、マッドサイエンティストだからな……」
「あ、あはは……」
否定できない……。
とりあえず、面白そうだから、で何でもやる人だし……。
色々と諦めた方がいいのはわかってるんだけど、どうしようもないからなぁ……。
できれば、普通の人の感性を持ってほしいんだけど……。
「まあ、とりあえず、あの馬鹿のことは置いておいて。で、こっちの世界にはなれたか? と言っても、昨日来たばかりだから、少しあれだが……」
「うん。少しはね。ほら、未果たちもよくしてくれるし、こっちのみんなも、向こうと変わらない性格、外見をしているからほっとするよ……。いつもあれだもん」
「それならよかったよ。これでもし、慣れない、もしくは気まずい、なんて思われてたら心配だったからなぁ」
「こっちのボクは、優しいんだね」
「そんなことはないさ。というか、それは桜もだろう?」
ボクが依桜を優しいといったら、ボクもと返された。
「ボク?」
「だって、普通に怪我した人の手当てをしてたじゃないか」
「あ、うん。だって、すぐに手当てしないといけないからね。ほら、ばい菌が入ったら大変だし」
「まあ、それは僕も同じだ。基本、救急道具は持ってるし」
「だよね」
基本的に、誰かがいつ怪我してもいいように、って感じで持ってるから。
活用しない手はないよ。
まあ、今回はこっそり『アイテムボックス』から取り出したわけだけど。
って、『アイテムボックス』と言えば。
「ところで、依桜の『アイテムボックス』って中に入れたりする?」
「ああ、入れるぞ。それを訊くってことは……もしかして、桜も入れるのか?」
「うん。なぜか」
「ということは、中に家があったり?」
「そうそう! じゃあ、依桜も?」
「ああ」
「やっぱり、そこも同じなんだね」
「みたいだな」
どうやら、こっちのボクも、『アイテムボックス』の中に入れるみたいだった。
やっぱりこの世界、ボクの性別と名字が違うことを除けば、同じ歴史を刻んでるのかもしれない。
微妙に違うところはある見たいだけど、大きくは外れていないみたいだし。
「それから、『アイテムボックス』内で、欲しいと思ったものが、魔力と引き換えに出てきたりするか?」
「うん、するよ」
「やっぱりか……。あれ、本当にどうなってるかわからなくてな。師匠ですらわからないって話だったから、なおさら気になってるんだよ」
「ボクの世界の方も同じだよ。師匠がボクの『アイテムボックス』を見て、すごく驚いてたもん。生物が入れるのは、普通はあり得ない、って」
「そっちでも、それは変わらない、か。一体、どういう理由なんだろうなぁ……」
「さあ……できれば、どうしてそうなっているのかは、知りたいよね……」
「そうだな」
なんだかんだで、謎が多いもん、あの世界。
いや、むしろこの場合、謎があるのはボクの方?
よくよく考えてみたら、学園長先生の転移装置が原因だったしても、異世界人を召喚する儀式とたまたま噛み合う、なんてことあるのかな?
今まで、そうなんだろうな、って流してたけど、よくよく考えてみたら、ちょっと変かも……。
「便利なことに変わりはないけどな、『アイテムボックス』」
「そうだね。重い物とかも、『アイテムボックス』の中に入れちゃえば、それだけで済んじゃうもんね」
「本当、便利な魔法だよ」
教えてくれた師匠には感謝しかないよ、この魔法に関しては。
いや、ボクが身に着けた技術や能力、スキル、魔法はなんだかんだで役に立ってるからそれも感謝してるけどね。
師匠、とにかく理不尽だから……。
「ところで、依桜は、『アイテムボックス』とか、『聖属性魔法』を習得した時って、どういう方法だったの?」
「……『感覚共鳴』って、わかるか?」
依桜は、笑みが消えた遠い目をしながら、ボクにそう尋ねてきた。
「……あ、うん。依桜も、それだったんだね……」
ボクも、そのスキル名を聞いて、すべてを察しました。
あ、これはボクと同じことをされたんだなぁ、って。
「……ああ。正直、あの感覚は決して嫌なものではなかったが、怖かったな……」
「……あの、未知の感覚が体中を駆け巡っていたから?」
「……そうだよ。僕は、初めて腰が砕けた。桜は?」
「……ボクも同じ。あの感覚は怖かったよ……。なんだか、これ以上行ったら戻れなくなりそうなくらいに」
「……そうか。あれ、何だったんだろうな……」
「……わからないよ。でも、すごく危険なもの、っていうことだけはわかるよ」
できれば、二度と感じたくないものだったよ。
その後も、過去の師匠による理不尽な話をしながら時間を潰し、夜ご飯を食べて、お風呂に入ってから就寝となりました。
この時、抗えないほどの強い睡魔に二人とも襲われてたけど……
そして、翌朝。
「う、うぅ……さ、さむぃ……」
朝起きたら、なんだか寒くて、スースーした。
それに気づいた瞬間、ボクの意識は急激に覚醒。
バッと起き上がった。
それと同時に、ベッドの方からも同じような音が聞こえてきて、そちらを見る。
そこには、裸の小さくなったボク――依桜がボクを見ていた。
そして、ボクも自分の体に視線を落とす。
……縮んでいました。
そして、ボクたちはお互いを見て、一言。
「「はぁ……このパターンかぁ……」」
ボクたちは、揃って小学四年生くらいのサイズになってしまったみたいです。
どうも、九十九一です。
やっぱり、この章が終わるまでの間は、1話投稿になりそうです。少し執筆が難航してまして……申し訳ないです。一応、2話投稿の日もあると思うので、許してください……。
今日はこの回のみです。明日もいつも通りだと思いますのでよろしくお願いします。
では。
依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか
-
やってほしい
-
やらなくていい
-
どっちでもいい
-
知らぬ
-
単体作品でやってほしい