異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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286件目 五月五日:異世界旅行10

『いらっしゃいませ!』

「あ、えっと、六人なんですけど……」

『はい! 六名様ですね! 何泊お泊まりになりますか?』

「えっと、三泊でお願いします」

『かしこまりました。では、二回の一番奥の部屋へどうぞ!』

「ありがとうございます」

『夕食は宿泊とセットになっておりますので、お時間になりましたら、お運び致します』

「わかりました」

『それでは、ごゆっくりどうぞ』

 

 ……よ、よかった。ジルミスさんみたいに、ボクが依桜だとバレてなくて。

 

 

 みんなを連れて、指定されて部屋へ。

 

「それじゃあ、えっと……あ、そう言えば、まだ事故紹介をしてなかったね。えっと、ボクはイオ・オトコメです。これから、よろしくね」

 

 笑顔で自己紹介をすると、みんながポカーンとしていた。

 

 その直後、

 

「え、えっと、い、イオお姉ちゃんって、勇者様、なんですか……?」

 

 あ。そう言えば、みんなには言ってなかったし、そもそも今は姿を変えてたっけ。

 ジルミスさんには、早めに言っておく方がいい、って言われたから、まあいいよね。

 

「ま、まあ、そうだね。世間では、勇者、なんて言われてるよ」

 

 自分で自分の事を勇者って言うの、やっぱり恥ずかしいね……。

 なんだか、中二病みたいでちょっと嫌だなぁ。

 

「わ、私たち、勇者様に助けられたんですか……?」

「そうなる、のかな。と言っても、偶然だったんだけど……」

 

 あの時、アイちゃんが気付いてくれてよかったよ。

 

 じゃないと、さらに酷い目に遭っていたかもしれないし。

 

「す、ごい、です……。わ、わたしたち、勇者様と一緒……」

「ぼくもびっくり」

「私もです。まさか、勇者様に助けていただけるなんて……」

「……魔族の国でも、英雄」

 

 みんな、なんだか嬉しそうな表情を浮かべている。

 

 ボクに助けられたことが、そんなに嬉しいのかな?

 

 でも、そこまで大それた人間じゃないんだけど……なんだか、ここまで喜ばれると、ちょっとこそばゆいというか……恥ずかしい。

 

「それで、えっと……みんなは、ボクと一緒に行く、ということでいいんだよね?」

「「「「「はい!」」」」」

「うん。ボクも了承しちゃったし、見捨てることは絶対にしないけど、最後に確認。こことは、根本的に違う世界で暮らすことになります。そこでは、魔法もないし、能力もスキルもありません。その代わり、科学というものが発達していて、それが人の暮らしを支えているの。さらに言えば、こっちでの常識はほぼ通じません。魔物もいないし、魔族も、亜人族もいません。いるのは、人間だけ。でも、こっちの世界よりもちょっと非力だから、決して、力を振るっちゃいけないよ。特に、クーナちゃんとスイちゃんはサキュバスだからね。気を付けてほしいの。あとは、向こうの世界に行ったら、まず『言語理解』って言うスキルを習得してもらうね。まあ、すぐに手に入ると思うから、気負わなくていいよ。それが終わったら、学園……学校に通ってもらうよ。最初は、ちょっとやることが多いけど、きっと楽しいはずだから安心してね。それに、ボクもちゃんと支えるし、向こうにはこっちの世界の人が二人いるから、その二人も頼って。特に、もう一人の娘は、みんなと同じくらいの歳だから、頼るといいよ。……と、一気に説明しちゃったけど、何か質問はあるかな?」

 

 ちょっと、一回で言いすぎちゃったけど、見たところ、みんなしっかり聞けていて、ちゃんと理解もしているみたい。

 

「はい」

「ニアちゃん」

「え、えっと、その世界では、私たちってどういう立場に……?」

「みんなは、ボクの妹……家族になってもらおうかなって思ってます。もちろん、嫌なら嫌で――」

「「「「「嬉しいです!」」」」」

「そ、そっか」

 

 嫌なら拒否してもいいって言う前に、食い気味に言われちゃったよ。

 

 そ、そんなに妹がいいのかな……?

 

 でも、この娘たちはみんな孤児みたいだし、家族ができるから嬉しいのかも。

 そういう意味で言えば、食い気味に言われても不思議じゃないかな。

 

 ……目、すっごくキラキラしてたし。

 

「それじゃあ、他の質問はあるかな?」

「は、はい」

「リルちゃん」

「が、学校って、ど、んなところ、ですか……?」

「うーん。同じくらいの年齢の子供たちで集まって、いろんなことを勉強する場所だよ。友達もできる場所でもあります」

「友達ができるの?」

「うん。そうだよ、ミリアちゃん」

「わ、私とスイは、サキュバスですけれど……だ、大丈夫なんでしょうか……?」

「もちろん。さっき、ジルミスさんからこれを渡されてね。このネックレスを身に付けていれば、魅了の力が抑えられるみたいだから、二人はこれを付けてね。それに、外見だけなら、可愛い女の子にしか見えないから、大丈夫」

「……わたしたち、可愛い?」

「うん。みんな可愛いよ」

 

 そう言うと、みんな一斉に嬉しそうに顔を見合わせた。

 今まで、どんな生活をしていたんだろう……?

 

「他に質問はないかな?」

 

 そう尋ねると、みんなからは特に手が上がらなかった。

 

 うん、大丈夫みたいだね。

 

「それじゃあ、ボクから質問。一応、言いたくなかったら言わなくていいからね?」

 

 そう言うと、みんなこくりと頷いてくれた。

 

「えっと、みんなの年齢と今までどういう生活をしていたのか訊きたいの。いいかな?」

 

 みんなに尋ねると、一瞬迷った後、すぐにこくりと頷いてくれて、ニアちゃんから順番に話し出した。

 

 

 みんなの年齢をまとめてみると、ニアちゃんとクーナちゃんの二人が10歳。リルちゃんとミリアちゃん、スイちゃんの三人は9歳だそう。

 

 そうなると、学園に通った際、ニアちゃんとクーナちゃんの二人はメルと同じ学年になりそうだね。他の三人は一個下の学園か。

 

 あの学園、一応初等部にはエレベーターが設置されてるんだよね。だって、七階まであるし。一つの回につき、一学年あるという感じで。

 

 職員室は七階だけどね。

 先生方が大変そう。

 

 それは置いておくとして。まあ、それぞれ三人ずつで分かれられるなら、ちょうどいいかもね。

 

 メルもいることだし、たまにボクも様子を見に行けばいいと思うし。

 

 まあ、それは最終手段だけどね。

 

 みんなの生活費などに関しては、ボクが出せばいいよね。どのみち、使い道がなくて困ってたし。

 

 さて、そんな五人の今までの生活だけど……どうやら、相当よくない生活だったみたい。

 

 みんなは最初から知り合いだったわけじゃなくて、ある日突然、あの人攫いたちに捕まって、連れて行かれる途中の馬車で、初めて会ったそう。それからは五人で身を寄せ合いながら生活して来たそうなんだけど、つい最近、なんでも買い手がついたとかで、いきなりあの小屋に連れて行かれ、一人ずつ檻に入れられたそう。

 

 それで、もう一生まともな生活はできないと絶望しながら檻の中で過ごしていたら、ボクに救出されたとのこと。

 

 お父さんやお母さんについては、どうも小さい頃に亡くなってしまっていて、孤児院で生活していたみたい。

 

 人攫いたちに掴まったのがつい一年ほど前だったとか。

 

 その間は、碌な食事も与えられず、お風呂にも入れてもらえないとかで、本当に酷かったみたい。

 

 ……本当に、許せないよね。

 

 ボクが容赦のない人間だったら、その場で殺したくなるよ。

 

「……そっか。辛いことを話させちゃったね。ごめんね……」

「い、いいんです。イオお姉ちゃんは、私たちを助けてくれました……」

「う、ん。わたしたち、もう、だめかと、思ってたから……イオおねえちゃんには、ありがとう、しかない、よ」

「うん。ぼくも、イオねぇが助けてくれたから、大丈夫!」

「私もです。イオお姉さまに助けていただけなかったら、どうなっていたかわかりません」

「……うん。わたしも。イオおねーちゃん。ありがとう」

 

 ……本当に、こんなにいい娘たちが酷い目に遭うなんて……世界は残酷だよ。

 でも、これから先は、幸せな人生にしてあげたい。

 

 ……何気に、みんなボクの事を姉と呼んでるのが、ちょっと嬉しい。

 

 本音を言えば、兄、なんだけどね、ボクって。

 

「うん。今日からボクは、みんなのお姉ちゃんだから、遠慮なく頼ってね。必ず、助けてあげるから」

「「「「「はい!」」」」」

 

 うん。いい返事です。

 

 

 それから、みんなでいろんなことを話していると、夜ご飯に。

 

 お腹いっぱい食べられて、みんなはすごく幸せそうな顔をしていました。

 癒されました……。

 

 ご飯を食べた後、お風呂に入りました。すると、よっぽど疲労がたまっていたのか、すぐにぐっすり眠ってしまった。

 

『いやはや、まさか家族を増やすとは思いませんでしたよ、イオ様』

 

 みんなが寝た直後、アイちゃんが呆れたような口ぶりでそう言ってきた。

 

「あ、あはは……ボクもまさか、妹が五人も増えるとは思わなかったよ」

『イオ様、子供には弱いんですね』

「う、うーん、なんだかね。あまり強気になれなくて……」

『それは、子供関係なくそうでは? イオ様、いかにも押しに弱そうですもん』

「……黙秘します」

『押しに弱いとなると、あれですねぇ。なんでも受け入れそうですよねぇ』

「さ、さすがにボクだって、断る時は断るよ」

『ほっほ~う? イオ様が断るですか~? いやいや、そんなことがあるんですかぁ?』

「あ、あるよ! ボクにだって」

 

 ……多分。

 

 で、でもボクの場合は、基本頼みごとを断らないだけだもん。助けたいと思っているから、助けてるだけだもん。

 

『とりあえず、そんなことは置いておくとしてですね。これ、帰った後どう説明するんで?』

「どうって……孤児を拾いました?」

『いや、拾ったって言うから、救いだしたですよね? 少なくとも、拾ってはいませんよ』

「だ、大丈夫。母さんたちは基本的に許してくれるから」

『そうですか。なら、金銭面は? あと、家は? たしか、一般的な一軒家よりもちょっと大きいくらいとのことですが?』

「あ、うん。家に帰ったら、改築かな。お金は一応、かなり持ってるし……というか、逆にとんでもない金額持ってるから、使いたかったんだよね……。持ってるのが怖くて」

『小心者ですねぇ』

 

 いやむしろ、あの大金を持っていて、怖くならないのって普通にすごくない?

 

「ま、まあ、元は一般家庭の普通の男子高校生だったから……」

『んまあそうですね。で、いくらくらい持ってるんですか?』

「え、えーっと……九千五百万くらい、かな。あ、でも最近なぜか補填されてたから……一億二千万くらい……」

 

 補填されてて本当にびっくりしたよ……だって、なぜか三千万くらい増えてるんだもん。

 あれ、絶対学園長先生だよね?

 

『うっわぁ、ちょっとした……というか、立派な財産じゃないですか。高校二年生が持つような金額じゃないですねぇ』

「そ、そうでしょ? だから、ある程度使いたくて……」

『なるほどです。たしかに、それほどのお金があれば、五人を養うことは可能ですね。それに、イオ様的にはもうすでに決めたことみたいですし』

「うん。もしお金がなかったとしても、アルバイトをしてたよ。ボクなら結構きついバイトも簡単にできるからね」

 

 やりようによっては、工事とかのバイトもできるし。

 

『そりゃ、異常な身体能力持ってたら、肉体労働系は余裕でしょうよ。というか、あっちでも殺し屋出来るんじゃないですか?』

「ま、まあできないこともないよ? それこそ、完全犯罪が可能だもん。証拠も残らないし、そもそも殺したとさえ思わせないよ」

『おっほぉ、おっそろしい発言! てか、イオ様って、優しい、とか、性格がいい、とか言われてる割には、かなり物騒なこと言ったりしますよねぇ。それどころか、悪魔のようなことまで言いますし?』

「いや、まあ……それくらい、普通じゃいられなかったんだよ、こっちでの三年間は」

『……ま、それもそうですねぇ~。むしろ、殺人をしておきながら、壊れなかったのは普通にすごいと思いますし、奇跡だと思いますよ、私。だって、一人殺したら、自責や後悔、罪の意識に苛まれて、精神が崩れそうですからね』

「……そうだね。ボクも、何度も精神が壊れそうになったよ。でも、小さな子供たちが、笑顔で『ありがとう』って言ってくれるから、多分壊れなかったんじゃないかなぁ」

 

 今思えば、あれがなければどうなっていたかわからない。

 

 いつだってボクを救ってくれたのは、子供の笑顔だったし、人からの感謝だった。

 

 と言っても、それは途中から、ボクを攻撃する何かになったんだけどね……。

 

『なるほど。イオ様が子供弱いのは、それでしたか』

「……多分ね。子供は、まだまだ人生があるから。なんとしても守ってあげたいんだ。逆に、子供のお父さんやお母さんが何て言うかわかる?」

『ん~、やっぱり、『子供だけでも助けて!』ですかね?』

「そう。大人たちはね、ほとんどの人が諦めるんだよ。でも、子供は違うの。何としても生きようと、何としても助けようとするんだよ。それがたとえ、自分を守ろうとして、今にも殺されそうになっている、諦めていたお父さんやお母さんでもね」

『……子供は、現実を知りませんからね。人は大人になるにつれて、残酷な現実を知ります。だからこそ、大人はすぐに諦めてしまうんでしょうね。中には、何度も立ち向かうすごい人もいますが、ほとんどは、諦めて次に託そうとしてしまう。成長をやめてしまうわけですね』

「うん。だからかな。ボクがこの娘たちを放っておけなかったのは」

 

 子供ながらに、全てに絶望して、全てを諦めそうになっていたからこそ、ボクは連れて行こうと思ったのかも。

 

 あの時は、ここに残すのが正解だと思ったんだけど……この世界において、あの娘たちには家族がいない。

 

 向こうとは違って、こっちは養子になるというのは難しくて、そもそもなかなかもらってくれる人がいない。でも、向こうなら、最低限の保障は得られるし、しっかりと勉強して、しっかりと学校に通えば、それなりの仕事には就ける。

 

 まあ、結局はその人の努力や運次第、という部分もあるけどね。

 それでも、こっちの世界よりは全然マシな生活ができるかもしれない。

 そうなれば、この娘たちも幸せになれるかも、って。

 

 今までの人生がどん底だった分、これからからはその分だけ幸せにならないと、あまりにも可哀そうだから。

 

 それに、楽しいことを何も知らないで死んでいく、というのは本当に悲しいことだもん。

 

『……なるほど。イオ様が強い理由は、しっかり自分の中に一本の芯があるからなんですね』

「芯、か。そう言えば、師匠にも『お前はまだまだ弱い。だが、その心の中にある芯は、誰よりも強い』って言われたよ」

『ほうほう、理不尽なだけじゃないんですねぇ、ミオさんって』

「そうだよ。あの人は、いつも理不尽だけど、ボクを気遣ってくれるし、いつでも面倒を見てくれた。それに……暗殺だけじゃなくて、人生の師匠でもあるからね。あの人は、なんだかんだで、いつも正しかったから」

『……イオ様って、強そうに見えて、本当は弱いですよね』

「……それはそうだよ。ボクだって、一人の人間だよ? 今でも殺した時のことが夢に出てくるし、殺した人たちがボクを見て嘲笑った顔をボクに向ける夢だって見る。でも、ボクには未果たちがいたからね。やっぱり、人との繋がりって大事だよ」

 

 多分だけど、これが、ボクが三年間で一番学んだことだと思うよ。

 ひとりぼっちだったら、ボクは最悪の殺人鬼になっていたかもしれないしね。

 

『イオ様が言うと、重みが違いますねぇ。経験者は語る、ってやつですかね』

「う、うーん、ボクの話は全然参考にはならないよ」

 

 そもそも、異世界云々の話だって、普通は信用されないしね。

 ボクの場合は、未果たちの性格がよかったから、受け入れられていただけだから。

 

『いやいや、イオ様、なかなかいいこと言ってましたよ? なので、最初から最後まで、録音させていただきました』

「あはは、そこまでいいことは言ってな――ちょっと待って? 今、何て言ったの?」

『いえいえ、あまりにもイオ様が大変素晴らしいことを言っていたので、録音させてもらいましたぜ! いやぁ、素晴らしい話が聞けて、私大満足! アイちゃん、嬉しい!』

「……」

 

 アイちゃん、ボクの話を聞いている間、いつもよりちょっと静かだなぁ、とか、ちゃんと聞いてくれてるだなぁ、とか思ったけど……

 

「その録音、消してぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!」

 

 全然、いつも通りのアイちゃんでしたっ!




 どうも、九十九一です。
 ついに、数字系の回が最高記録と同じ話数になりました。これ、いつ終わるんだろう。そう思ったんですが、まあ……五日目書いて、あとの六日目七日目は端折ろうかなと。前話くらいに言っていた気がしますが、多分やりますね。だって、終わる気しないんですもん。だれたら嫌だし。読者様に飽きられるわけにはいきませんからね! まあ、すでに飽きられてそうですが……似たようなネタばかりですし。
 今日も二話投稿を予定していますが、いつも言っている通りですので、よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

  • やってほしい
  • やらなくていい
  • どっちでもいい
  • 知らぬ
  • 単体作品でやってほしい
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