異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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34件目 依桜ちゃんのアルバイト1

 十月十四日の朝九時、今日は開校記念日で学園はお休み。

 振替休日が、あったばかりだというのに、お休み。

 でも、そう言う学校も世の中には多そうだけどね。

 

 そんなお休み、今日のボクには特にやることがない。

 

 やることがないボクは、インターネットを見ていて、ふと思い出した。

 最近、ちょっとほしいものでができたなって。

 と言っても、大それたものじゃなくて、ごく普通の漫画とライトノベルだ。

 

 一応、うちはお小遣い制だけど、どうしても足りない、ということがある。

 中学生頃だったら、我慢してたけど、今は高校生。

 ……まあ、外見的にはそう見えないかもしれないけど。

 

 一応、学園祭でもらったあのお金があるけど、あれはよほど切羽詰まった時じゃない限りは使わないようにしてる。

 

 だから、別の方法でお金が欲しい。

 こういう時することと言えば、

 

「うん、アルバイトしよう」

 

 アルバイトである。

 

 一応、中学生でもできる例外的なアルバイト(新聞配達など)はあったけど、さすがにそこまで欲しいというわけじゃなかったから、やらなかったけど、今は違う。

 

 高校生ともなれば、大抵のアルバイトはできるわけで。

 

「うーん、こういう時どういう風に探せばいいのかな?」

 

 できれば、お給料は日払いがいいから、日雇いのアルバイトがいい、よね?

 なるべく、急ぎ目でほしいし……。

 

 自分はほとんど欲がない、と思った時が最近あったけど、こうしてみると、やっぱり人並みの欲はあるんだなぁ。

 

「こういう時は、晶に連絡を取ったほうがいいよね、アルバイトしてるし」

 

 ここは、アルバイトをしている晶に尋ねることにした。

 

『もしもし、依桜か?』

「うん、おはよう、晶」

『ああ。それで、どうかしたのか?』

「えっとね、実は――」

 

 と、ボクがアルバイトを探していることを伝え、どういう風に探せばいいのかなどを尋ねた。

 

「――ってことなんだけど」

『なるほどな。そうだな……俺は、バイトアプリで探したな。自分の希望を入力すれば、それにあったバイトを表示してくれるやつだ』

「へぇ。じゃあ、それを使ってみようかな?」

『ああ、なら、LINN(チャット系コミュニケーションツール)にそのアプリのURL送っとく』

「うん、ありがとう。それじゃあね」

『また明日な』

 

 通話が終了まもなくして、LINNにアプリのURLが送られてきた。

 送られてきたURLを開くと、様々なアルバイト情報が表示された。

 

「えっと、検索は……あ、これかな」

 

 とりあえず、日雇いかな、できれば今日でもいいんだけど……まあ、ない、よね?

 

「……って、あるんだ」

 

 普通にあった。

 と言っても、一件だけだけど。

 

 えっと、何々?

 

「『急募! ドラマのエキストラ出演者』?」

 

 どうやら、ドラマのエキストラの募集らしい。

 

 えっと、お仕事するのは……あ、今日なんだ。時間は、お昼の二時から。場所は……隣町か。募集の締め切りは、今日の十時までで、条件は、近場で、なるべく早めに来れる人で、且つ二十歳以下であること、か。選考方法は、抽選。

 

 うーん、エキストラってたしか、ドラマとかで見かける一般人のこと、だよね?

 たしか、セリフなんてないはずだし……これくらいなら、できる、かな?

 

「ちょっと、応募してみよ」

 

 それに、いい社会経験になるかもしれないしね。

 

 目立つのはあまり得意ではないけど、これしかないし、それに、エキストラだったらそんなに目立たないだろうからね。

 そんな気持ちで、このアルバイトに応募。

 

「まあ、ぎりぎりだから、実際通らないと思うけど。抽選だし」

 

 そんなことを呟きながら、ほかにもないかよさそうなのはないかと、アルバイトを探した。

 

 

 それから、一時間ほど経った頃、応募したところからメッセージが届いた。

 

「えっと……あ、受かってる。えっと?」

『ご応募ありがとうございました。抽選につきましては、男女様が見事当選となりましたので、ご連絡させていただきます。十三時に軽い説明がありますので、可能なようでしたら、十三時の説明にご参加ください。万が一、予期せぬ事態で遅れるようなことや、急用が入ってしまった場合は、ご連絡いただきますよう、よろしくお願いします。お会いできることを楽しみにしています』

 

 ……考えてみたら、抽選なんだもんね。確率が低い、ってことだもんね。多分、向こうでの幸運値がこっちにも適用されちゃってるんだろうなぁ。

 

 まあ、それはそれとして……十三時か。

 えっと、今は十時だから、うん、まだ時間はある。

 

 このドラマ、どうやら学園物らしく、生徒役のエキストラが不足になったことで募集をしたらしい。

 平日なのに撮影って、すごいなぁ。

 

 そんなわけで、ボクがやるのは、その学校の生徒さんなのだそう。

 

 衣装自体は、向こうで用意してくれるとのことだけど……これ、本当にエキストラなの?

 ちょっと違うような気がしないでもないけど……。

 お金かけてるのかな。

 まあ、お仕事自体は、廊下を歩いていればいいらしいけど。

 

「それなら簡単だよね!」

 

 持ち物などは特にないので、小さめのカバンと、財布、スマホだけで大丈夫なはず。

 

 ナイフポーチは……さすがにいいよね。一応、何かの事件に巻き込まれた時用に持ってはいたけど、こういうので持っているのはちょっと、というかかなり危ない人だもんね。

普段から持ってる時点で危ない人だと思うけどね……。

 

 服装は、いつも通りの私服。

 今日は……うん、白の長袖ワンピースでいいよね。

 

「……なんか、ナチュラルに女の子してるボクがいるなぁ」

 

 もはや、ジーンズなどのズボンを穿くという考えそのものが抜け落ちていることがある。

 スカートを穿くことに、何の抵抗もなくなってるし。

 

 ……これはあれだね、以前女委が言っていたことが、着々と進んでいる結果だよね。

 

「……はぁ。なんだか複雑」

 

 近いうちに、女委が言ったことが完全になる日が来ちゃうかもしれないと、少し鬱な気持ちになった。

 

 

「えっと、場所は……あ、ここかな?」

 

 ボクはアルバイトのために、隣町――安芸葉町(あげはちょう)に来ていた、

 

 送られてきた地図を見る限りだと、どうやら近くにある高校が撮影場所となっているみたいだ。

 エキストラの抽選通過者は、通過通知を見せれば入れるようになっているとのこと。

 

 最寄り駅の、御柱駅から、十分ほどで安芸葉町に到着。

 

 高校までの送迎バスが出ているみたいだけど、ほとんど来たことない道だし、やっぱり、自分の足で見てみたい。

 お昼ご飯は、家で済ませてきてあるので、問題なし。

 色々と見て回りながら、目的地の学校『楚咲高校(そざきこうこう)』に到着。

 

 遠目からもわかるほどに、学校の前には大勢の人がいた。

 どちらかと言えば、女性のほうが多いような?

 もしかしてあれかな。抽選にあぶれちゃった人が見に来てるって感じかな。

 

「こんにちは~」

『こ、こんにちは』

 

 警備員の人に、挨拶をしながら合格通知を見せる。

 なんだか、警備員の人から戸惑いに似た何かを感じたけど、どうしたんだろう?

 あれかな、実際の俳優さんとか女優さんが中にいるから、緊張とかしてるのかな?

 

『ど、どうぞ、お通りください』

「ありがとうございます」

 

 お礼を言ってから、ボクは撮影場所の学校敷地内へ入っていった。

 

 

『エキストラ、なんだよな、今の娘』

『通知見たが、エキストラだったぞ』

『……あの容姿でエキストラって……間違いなく、女優の存在を喰っちゃうんじゃないか?』

『かもしれないな……』

 

 

 敷地に入ると、いろんな車両や、忙しなく動き回っているスタッフの人、撮影機材に、テント? が張られていた。

 よくテレビとかで見るけど、本当にこんな感じなんだ。

 

「どこに行けばいいのかな?」

 

 スマホの通知を見る。

 集合場所は、この学校の体育館らしい。

 まだ、説明の時間まで、十五分はあるね。

 

 う~ん、せめて、五分前くらいにはいたいけど、だとしても、まだ十分はある。

 この十分間をどうしようか……。

 

 色々と見てみたいっていうのもあるけど、もしかしたら、ボク以外の人とかも来てるかもしれないよね。

 うん、そうと決まれば、確認のために気配察知を。

 

「……あ、結構いる」

 

 気配察知を使用して、体育館内部を覗くと、かなりの人数の人がいた。

 これなら、時間をつぶそうと考えなくてもいいよね。

 

「うん、ボクも行こう」

 

 

「こんにちは」

 

 一応、挨拶しながら入るのは礼儀だと思うので、挨拶しながら入ると、シン――となぜか、体育館内が静まり返った。

 

 それと同時に、すごく視線を感じる。

 

 監督さんなのかな? 四十代くらいの男性が、壇上付近にいて、その人が驚愕したような顔をボクに向けている気がする。

 気がするだけであって、本当かどうかはわからないけど。

 

 周囲の反応に疑問を感じつつも、最後尾の方に並ぶ。

 

 やっぱり視線がすごい。

 なんで? ボク、何かやったかな?

 

 なんだか不安になりつつも、一応周囲を見渡す。

 見たところ、男女比は半々ってところかな?

 まあ、学園系のドラマなのに、男女比が偏ってたらちょっとあれだもんね。

 

『で、では、時間になりましたので、説明をさせていただきます』

 

 そんなわけで、周囲の視線が気になりつつも、時間になり説明が始まった。

 

 このドラマは、来週から放送が始まるよくある学園ラブコメ系を題材としたものらしく、原作は少女漫画だそう。

 

 ボク自身、少女漫画とかは読まないからあれだけど、やっぱり少女漫画って恋愛系が主流だもんね。夏目〇人帳がある意味例外なだけで。

 

 で、ボクたちエキストラがやるのは、廊下を歩いたり、日常生活における、普通の学生としての役らしい。

 

 ただちょっと歩いたりするだけだから、問題はないはず。

 

 説明が終わると、今度は衣装合わせ。

 採寸をしてから、その人の体形に合ったサイズの制服を渡される。

 採寸はちゃんと一人一人行われた。

 その際に、

 

『アイドルですか?』

 

 と聞かれた。なんで?

 もちろん、ボクがアイドルというわけはないので、

 

「いえ、普通の高校生ですよ」

 

 とやんわり言ったら、酷く驚かれた。

 

『そんな、こんなに可愛いのに、芸能人でもない、普通の一般人?』

 

 と、何かぶつぶつと言っていたようだけど、声が小さくて聞こえなかった。

 ボクの場合、耳はいいけど、一定の音量を下回るとよく聞こえないからね。だからこそ、読唇術を覚えたわけだし。

 

 っと、話が脱線しちゃった。

 

 採寸が終わり、紙にボクに合った衣装のサイズが書かれていた。

 これを衣装担当の人に渡せってことみたい。

 

 というわけで、その紙を衣装の人に渡しに行く。

 やっぱり、驚かれた。

 本当になんで?

 

 かなり疑問に思いつつも、渡された衣装に着替えに行った。

 

 

 着替えて指示された場所へ行く。

 いい感じのばらつき具合で人が配置されていた。

 自然体で歩いてほしいとのことなので、いつも通りに歩く。

 

 ボクが担当するのは、主人公役の俳優の人と、メインヒロイン役の女優の人が話しながら廊下で話すところ。

 

 その際に、すれ違う普通の生徒役をボクはやる。

 やると言っても、何もセリフはないから、別にって感じだけどね。

 

 そうこうしているうちに、撮影が開始。

 

 ボクは指示された通り、普段通りの自然体で歩く。

 指示された内容の中に、微笑み程度で歩くこと、というのがあったので、微笑みを浮かべつつ歩く。

 

 と、ボクの横を俳優の人達が通った直後、

 

『カット!』

 

 まさかのカットが入った。

 どうしたんだろう?

 周囲の人も何があったのかときょろきょろする。ボクもきょろきょろする。

 

 聞き耳を使って、事情確認。

 

 ……なるほど。

 

 どうやら、俳優の人が、集中できなかったのか、ぼーっとしていたらしい。

 風邪かな?

 気を取り直して、再度撮影。

 

 さっきの通りに、ボクも再び歩く。

 

 そしてさっきと同じように、俳優の人達が近づいてくる。

 

 一回目は緊張したけど、一度やったからか、意外と緊張しないで、普通に自然体でいられた。

 だから、心にゆとりを持てた。

 

 だからこそ、なんとなく、視線を感じた。

 視線の先にいたのは、俳優の人。

 

 よく見ると、普通にかっこいい人だった。

 

 ちょっと長めの黒髪と、きりっとした目元が特徴のかっこいい俳優さんだった。身長は、晶くらいかな?

 

 そんな人が、なぜかボクを見ていた。しかも、変に視線をさまよわせている。

 

 あ、あれ? ボク、変なところでもあるかな?

 内心、ちょっと焦っている。

 

 でも、そこは元暗殺者のボク。ポーカーフェイスを遺憾なく発揮し、平静を装う。

 そのおかげで、表情を崩さずに何とか通り過ぎることができた。

 

 しかし、

 

『カット!』

 

 またしてもカットが入ってしまった。

 

 一度ならず二度もカットになったことから、周囲の人も心配になってきている。

 ボクは再び聞き耳を使用。

 

『どうしたの、夏木君』

『あ、いや、ちょっと……』

『放送は来週なんだよ? ちゃんとしてくれないと……』

『すみません。というか監督。あの娘……あの、銀髪の娘。あれ、本当にエキストラなんですか? 正直、あれで一般人とか笑えないんですが……』

『いや、まあ……僕もね、エキストラであんな娘が来るとは思ってなかったんだよ。だって、普通の一般人が来ると思うだろう? それで、バイト探しのサイトで募集したら、どう見ても一般人じゃないだろ、ってくらいの娘が来ちゃったんだから。宮崎さんはどう思う?』

「私的にも、あれで一般人とか、本当に信じられない気持ちですね。私、完全に敗北した気分ですよ。……まあ、嫌な気持ちに全くならないんですが」

『……あの娘をそのままエキストラとして使っていいものか……』

 

 そこで、聞き耳を使うのをやめた。

 

 ……原因、ボクじゃないですかやだー。

 

 銀髪と言われてる時点で、ボクしかいないよね、これ。

 

 周囲を見てみても、銀髪の人なんて一人もいないし……というか、みんな黒髪だよね。

 

 よくよく考えたら、ボクすっごく浮いてるよね。

 

 ……このアルバイトにするんじゃなかったぁ……。

 

 目立たないだろうと高を括っていたけど、考えてみれば、銀髪の人がいる時点でかなり目立つじゃん……ボク、何やってるんだろ。

 

 明らかにミスだよね、これ。

 

 そんなボクの内心を知る人なんているわけないので、また撮影が再開した。

 さっきと同じように歩く。……ボクのことながら、切り替えが早い。

 

 さすがに、三回目ともあって、ようやく成功。

 ボクの担当していたのはここだけなので、一息。

 

 と、ここでアクシデント発生。

 

 廊下部分の撮影が終了し、階段を降りようとしたとき、ちょうど前の方にさっきのメインヒロイン役の女優さんがいた。

 

 綺麗な人だなぁ、と思いつつ、ボクも階段へ向かう。

 

 ふと、その女優さんの付近で、なにやら悪ふざけしている男性二人組を発見。

 危ないなぁ、と思ったその時だった。

 

『きゃあああああぁぁっっ!』

 

 なんと、女優さんが悪ふざけをしていた男性二人組にぶつかってしまい、階段から落下。

 このままでは大怪我どころじゃすまない。

 

 ……これ以上目立ちたくないけど、助けないわけにはいかないよね!

 

「ふっ――!」

 

 ボクは地を蹴って飛び出すと、空中で女優さんをお姫様抱っこの形で抱きかかえて、目前に迫った壁を三角飛びの要領で蹴って一回転、そのまま着地。

 

「え? あれ? 私、落ちて、ない……?」

「ど、どこか痛いところとか、ありませんか?」

「い、いえ、大丈夫、ですけど……あの……」

「あ、すみません。今下ろしますね」

 さすがに、ずっと抱きかかえたままは失礼だと思って、床に下ろす。

 

 女優さんが目をぱちくりさせているのは、失礼にも可愛いなと思ってしまった。

 すると、

 

『おおおおおおおおおおおおおお!』

「え、な、なに? なんですか!?」

 

 周囲から歓声が上がり、拍手が鳴り出した。

 

『み、宮崎さん大丈夫かい!?』

 

 周囲の歓声とともに、監督さんが慌てて駆け寄ってきた。

 

「あ、はい。この女の子に助けられました」

『君、ありがとう! おかげで、宮崎さんが無事だった』

「い、いえいえ。大したことじゃありませんし……」

『何を言っているんだ! 普通、階段から落ちている人を助けるために、躊躇いなく飛び出したんだ。しかも、あんなにすごい動きをしたのに、大したことなくないよ!』

「そ、そうですか、ね?」

 

 ……うん、まあ、ボクとしてもちょっとやりすぎだったかもしれないと思っているけど、抱きかかえてすぐ着地したら、その衝撃で女優さんにダメージがいきそうだったから、ああいう動きをしたわけで。

 

『しかし君、本当に一般人なのかい? エキストラで出ていたようだが……』

「あ、あはは……ボクはただの一般人ですよ。芸能人でもなんでもなくて、一介の高校生です」

 

 元男だったり、異世界に行っていたりと、普通とは言い難い状態だけど、そう言うことは、言わなければ異常にはならないからね。問題なしです。

 

『あんな動きができたり、とんでもなく可愛い容姿をしていて、一般人……?』

 

 ……ボク、そんなに可愛いかなぁ?

 たしかに、ちょっとは可愛いかも? とは思ってるけど……そこまででもない気がするんだけど。

 

『監督。そろそろ次いかないと時間が……』

『あ、ああ、そうだったね。君、本当にありがとう』

「ありがとうございました。おかげで、怪我一つなく済みました」

「いえいえ。お気になさらないでください。撮影、頑張ってくださいね」

「はい」

 

 その時、妙に女優さんの頬が微妙に紅潮していたことに、ボクは気づかなかった。

 

 

 そうして、撮影は終了。

 いざ帰宅、というところで、ボクは声をかけられていた。

 

「あの、ちょっといいですか?」

「はい……って、あなたは」

 

 声の発生源は後ろ。後ろを振り返ると、そこには女優さんが立っていた。

 

「あ、私、宮崎美羽って言います」

「ボクは、男女依桜です。ボクのことは名前でいいですよ」

「そ、そうですか。じゃ、じゃあ、依桜ちゃんで。あ、私のことは美羽で大丈夫です」

「わかりました。それで、美羽さんは、ボクに何か?」

「あ、はい。今日はありがとうございました」

「お礼はさっき言ってもらいましたので、何度も言わなくて大丈夫ですよ」

 

 何度も言われると、ちょっとくすぐったいしね。

 もちろん、嬉しいことではあるよ。

 

「いえいえ、改めてお礼をと思いましたので」

「そうですか。わかりました、受け取っておきますね」

「はい! こ、これだけなので、失礼しますね!」

「あ、はい。これからも頑張ってくださいね」

「ありがとうございます! また、どこかでお会いできたらいいですね」

「あはは、その時はお願いしますね?」

「もちろんです! それでは、お気をつけて!」

「はい。美羽さんも、お気をつけて」

 

 最後に、すごく綺麗な笑顔を向けてきた。

 綺麗系な美人さんの笑顔って、ギャップがあってすごく魅力的だよね。

 女優さんってすごいなぁ。

 

「さ、ボクも帰ろう」

 

 いい経験になった今日のアルバイトは、こうして幕を閉じた。

 

 

 依桜がエキストラを務めた回は、初回ということもあり高視聴率を記録した。

 それと同時に、エキストラとして出演した依桜が、この日発売された例のファッション誌と共に世間を騒がせた。

 いつも通り、何者か(笑)によってある程度情報が錯綜したが、それでもなお、依桜が有名となるきっかけになった。

 このことを依桜が知るのは、やはり、雑誌が発売された日であり、ドラマが放送された次の日のことだった。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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