異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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429件目 冒険者ギルドへ

 翌朝。

 

 大体朝の六時くらいにみんな起きました。

 

 いつもは結構寝ている態徒と女委でさえ、早起きです。

 

 ともあれ、二日目。

 

 朝起きたらまずは着替え。

 

 申し訳ないけど、晶と態徒には一度部屋から出てもらいました。

 

 ボクも一応出ようとしたら、にこにこ顔の未果に止められたけどね……。

 

 着替えを済ませたら、食堂に行って朝ご飯を食べる。

 

 お城の朝ご飯は主に、バターロールに似たパンと、サラダ、それからスクランブルエッグとベーコンに、デザートとして果物が出てきます。

 

 本当に、朝から至れり尽くせりだよね。

 

 これが向こうでの朝なら、ボクが早起きしてみんなの分の朝ご飯を作って、掃除と洗濯をして、っていう感じなんだけど、ここでの生活は基本的にメイドさんたちがやってくれる。

 

 正直、すごく申し訳なくて自分でやります、って言うと、

 

『いいえ。これは私共の職務です。ですので、イオ様はどうぞごゆっくりなさってください』

 

 って言われます。

 

 その時の圧力がなんだかものすごいので、引き下がることになるんだけど。

 

 うーん、ボク自身家事が好きだから、ちょっと物足りないというか……まあ、みんなが嬉しそうだからいい、よね。うん。そう思おう。

 

 朝ご飯を食べたら、ボクは一度みんなと別れて王都にある冒険者ギルドへ。

 

 みんなの方は、師匠が守ってくれるそうで、かなり安心。あの人がいるのなら、どこにいても安全だからね。特に、メルたちのことは念を押して頼んでおきました。

 

 それに、なんだかんだ言って、師匠はみんなに対して過保護だもん。

 

 なんでだろう?

 

「えっと……あ、ここだここだ」

 

 お城から徒歩数分の所に行くと、そこには冒険者ギルドが。

 

 一応、ここにあるのは支部。本部は別の国にあるらしくて、かなり大きいんだとか。なんでも、お城くらいのサイズがあるみたい。

 

 ちょっと見てみたい気もするけど、その国に行くのはちょっと辛いかなぁ。

 

 とは言っても、ここの冒険者ギルドもそこそこ大きいみたいだけどね。

 

「たしか、正面から入っていい、って言ってたよね?」

 

 まだ営業前だけど、正面入り口は開いている。

 

 うん、大丈夫だよね。

 

 あ、身だしなみチェックしないと。

 

「髪色……よし。髪型もよし、と。あとは、眼鏡もかけてるから大丈夫、と。うん、変装は問題ないね」

 

 髪色はいつものように黒髪にして、瞳の色も黒に。

 

 髪型はルーズサイドテール(後ろ髪を結わえたものを、肩から前に垂らす髪型)に。

 

 一応、偽名の方も『サクラ・ユキシロ』にしています。

 

 知り合いじゃない限り、ボクだとわからないはず。

 

 あとは、声も少し変えておこうかな。念のためということで。

 

「あー、あー……ん、んんっ。うん、これでよし」

 

 普段の声よりも、少ししっとり感のある声に変更。

 

 イメージ的には、おっとりとしたお姉さんのような声、かな?

 

 これくらいしておけば、大丈夫のはず。

 

「ごめんください」

『すみません、今は営業前で……どちら様でしょうか?』

「えっと、今日一日だけここで受付のお仕事をさせてもらうことになっていた者なんですけど、ギルドマスターさんはいらっしゃいますか?」

『一日だけ、ですか。とりあえず、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』

「はい、サクラ・ユキシロです」

『あ、ユキシロさんでしたか。わかりました、すぐにギルドマスターに伝えてきますので、少々お待ちを』

「わかりました」

 

 よかった。ちゃんと連絡してあったみたい。

 

 これでもし、なんの連絡も行ってなかったら、こっちもかなり困ったけどね。

 

 それからしばしの間入り口辺りで待っていると、奥からガタイのいい男の人が現れた。

 

 身長は二メートル近くあって、顔は何と言うか……強面。その上、スキンヘッド。

 

 体なんて筋骨隆々で、いかにも強そう。

 

 ギルドマスター、なんだ。どちらかと言えば、魔物を自ら狩っていそうなんだけど……。

 

「おぉ、君がガレフの紹介できた娘だな? ほほう……なるほど、変装技術はなかなか、と」

 

 ニヤッと笑ってそう呟く。

 

 うーん、まあ、この人はボクの正体を知っているわけだしね。

 

「うむ、とりあえず、話をしたいので、俺の執務室に来てくれ」

「わかりました」

「こっちだ」

 

 ギルドマスターさんの後を付いて行き、執務室へ。

 

 執務室に入ると、そこは綺麗に整頓されていて、清潔感があった。

 

「とりあえず、そこのソファーに腰かけてくれ」

「それじゃあ、失礼します」

 

 一言断ってからソファーに座る。

 

 あ、ふかふか。このソファー、結構いいものなんじゃないかな? さすが、ギルドマスター。

 

「さて、とりあえず、自己紹介と行こうか。俺は、冒険者ギルド、ジェンパール支部のギルドマスターをしている、テッドだ。よろしくな」

「イオ・オトコメです。こちらこそ、よろしくお願いします」

「お、さっきと声が違うな。そいつはあれか、変声術ってやつか?」

「そうです。師匠に仕込まれた技能の一つでして……状況に合わせて声を変えてるんですよ」

「ほほぅ。面白いな。んで、その髪色と瞳の色はスキルってわけかい?」

「『変装』という能力と、『変色』というスキルです」

「なるほど。あの二つを使うたァ、才能の塊みたいな奴なんだな、イオ殿は」

「い、いえ、ボクなんて師匠に比べたら全然で……」

「何を言う。世界最強の神殺しと比べる時点で、普通は異常なんだよ」

「あ、あははは……そ、そうですね……」

 

 そうだった。

 

 師匠はこっちの世界だと非常識の塊だったよ。

 

 だから、師匠と比べるのは変なわけで……。

 

 うん。ボクもどんどんおかしくなっているような気がするよ。

 

「よし、まずは仕事の話と行こうか」

「はい」

「仕事っつっても、内容はガレフが言ったことで問題はない。平和になってからってーものの、どうにも馬鹿共が騒ぎまくっていてな。近隣から苦情が来てんだよ。一応、こっちも色々と対策はしてんだが……平和ボケってのは、変な輩を生み出しちまうからなァ」

「なんと言うか……申し訳ないです……」

「いや、イオ殿が謝ることはないさ。馬鹿やらかす奴らが悪いわけだしな。ったく、ちょっとあの戦争で戦ったからって、それをだしにうちの受付嬢に言い寄りやがって……」

「あー、やっぱりナンパ、ですか」

「ああそうだ。ほんっと、困った連中さ。一応、冒険者ギルドの受付になるには、いくつか条件があってな。まあ、その一つが容姿が優れていること、なんてーのだ。この辺の理由としては、実に単純だが、冒険者共のやる気を上げる、という目的がある。差別だなんだと言われようが、その方がクエストの効率がいいんだ。文句言う奴はそれ以上の案を出せ、と言ってある」

「な、なるほど……」

 

 まあ、たしかにテッドさんの言う通り、容姿がいい人が受付をしてくれていたら、冒険者の人もやる気が上がるよね。

 

 態徒なんてそれだもん。

 

 ボクは別段気にしないけどね。少なくとも、その人の性格さえよければ容姿は気にしないし。

 

「別の基準としては、仕事がちゃんとできるか、ってとこだな。さすがに容姿だけがいい、なんてのは論外だからな。ちゃんと仕事ができるかどうかも判断基準にしている」

「仕事が出来なかったら意味ないですからね」

「そうだ。だからまあ、結果的に受付の仕事をする奴のほとんどが荒事の対処ができなくてなァ」

「それは王様に聞きましたね。大体は一般人と言えるような人たちばかりだから、仮に冒険者の人たちに無理矢理迫られたら対処できないって」

「そういうこった。だから、今回のイオ殿の訪問はまさに天恵だったってーわけだ。まあ、無理強いするつもりはなかったし、無理なら無理でこっちも対策を考えるつもりだったわけだが……まさか、本当に受けてくれるとは思ってなかったがな」

「正直なところ、ボクもまったくの無関係とは言えませんしね……。それに、そういう話を聞いてしまった以上は、少しでも手伝おうかなって」

「あー……なるほど、ガレフの言う通り、ちょいと異常な面があるなァ……」

 

 少しだけ苦笑いをしながらそんなことを言うテッドさん。

 

「異常?」

「いや、こっちの話だ。で、次は……あー、あれか。仕事内容か。じゃあ、説明するから、しっかり聞けよ」

「はい」

「まずは――」

 

 テッドさんから、受付の仕事の説明を受けた。

 

 受付でする仕事は、大きく分けて四つ。

 

 一つ目は、普通にクエストを受理すること。

 

 二つ目は、クエストの報告を受け、達成か失敗かを判断すること。

 

 三つ目は、冒険者登録の手続きをすること。

 

 そして四つ目、持ち込まれたアイテムの鑑定をすること。

 

 主にこの四つ。

 

 一つ目と二つ目に関してはそのままのこと。

 

 普通に冒険者が持ってきたクエストの紙を受け取り、冒険者カードを受け取ってそれと照らし合わせて受理をするだけ。

 

 この時、稀に偽造カードを使う人がいるらしいので、それを見分けるのも仕事の一つだそう。

 

 二つ目は四つ目と関係していて、クエストで依頼されたもの、採取系ならそのアイテムをこちらに提出し、それを鑑定。そこで依頼内容の物と全く同じだったらクエストクリアと言ことになります。討伐系だったら、その魔物の体の一部を持ってくれば大丈夫とのこと。

 

 この時『鑑定』の能力、もしくはスキルがない人の為に、図鑑のような物も用意されているとのことで、基本はそれを見て仕事をするみたいです。

 

 ボクは一応持ってるので、不要かもしれないけど、一応見ておこう。

 

 そして三つ目、冒険者登録の手続きに関して。

 

 これは読んで字のごとく。

 

 冒険者登録をしに来た人の受付をすること。

 

 登録には三種類あって、一つは討伐系を主にこなす『討伐部門』。次に、採取系クエストを主にこなす『採取部門』。そして三つ目は、その両方を受ける『万能部門』。

 

 討伐部門は、討伐系クエストのみしか受けられない部門。

 

 採取部門は、採取系クエストしか受けられない部門。

 

 そして、万能部門は、その両方を受けることができる部門。

 

 それぞれで合格基準は違っていて、討伐部門なら一定の強さを持っていれば合格。

 

 採取部門は、一定の知識量と体力を持っていれば合格。

 

 万能部門は、その両方を受けて、両方とも基準点以上を出せれば合格となります。

 

 これらの大きな違いとしては、初期に冒険者ランクが違うことかな?

 

 討伐部門なら3から。採取部門は、1から。万能部門は4から、という風になります。まあ、例外はあるんだけど。

 

 ちなみに、冒険者になる資格を持つのは、十二歳以上の人。

 

 十二歳未満の人は、基本的にギルドが運営する、冒険者養成学校に通っているみたいだね。

 

 十二歳と決められている理由としては、肉体的精神的にもまだまだ未発達であることが理由。

 

 でも、十二歳ってがっつり第二次成長期だったような……。

 

 ま、まあ、少なくともこっちと向こうでは基準が違うかもしれないもんね。

 

 あー、えーっと、それでこの各部門の合格基準は、一応指針があるらしく、ギルドがしっかりとそれを提示しています。

 

 討伐部門の合格ラインは、試験管が使役する魔物と戦い、それに勝つこと。この時、最低ラインの魔物を倒すことができなかったら、その時点で不合格になるみたいです。

 

 採取部門は、主に座学テストを受けるのと、体力を測るためにとある場所にある指定アイテムを取りに行くこと、だそうです。

 

 そして、万能部門は、試験管の人が使役する魔物――それもクエストレベルが4に該当する魔物と戦って勝つことと、採取部門のように座学テストを受けて、一定基準の点数を出すこと。

 

 なので、万能部門に関しては狭き門と言われているみたいです。

 

 ちなみに、少し前に初期のクラスについて例外があるって言ったんだけど、どうやらそれは飛び級のシステムがあるからみたい。

 

 例えば、討伐部門で言えば、クエストレベル5の魔物を倒すとか。

 

 採取部門で言えば、クエストレベルが4に指定されているアイテムの採取とか。

 

 その辺りによって、色々と変わるそう。

 

 まあ、飛び級でいきなりランクが6になることは滅多になくて、ランク7に至っては数百年前にとある二人組が取得したくらいらしいけど。

 

 ヴェルガさんでも6らしいです。

 

 ちなみにボクはと言うと……

 

「あぁ、イオ殿は文句のつけようがなく、7だな」

 

 だそうです。

 

 ボク、最高ランクなんだ……。

 

 一応魔王を倒したから、なんだろうなぁ……。

 

 と、そんなことはいいとして。

 

 これらが受付の人の仕事だそう。

 

 うーん、地味に大変そうだけど、意外といけるかも?

 

 本来なら書類仕事もあったりするんだけど、そっちはいいみたい。

 

 さすがに、それもやっていたらボクが疲労で倒れるから、だそうです。

 

 ボク、そこまでやわな鍛えられ方してないけど。

 

「――と、仕事内容は以上だ。何か質問はあるか?」

「そうですね……あ、一応いくつか」

「お、なんだ、なんでも聞いてくれ」

「ありがとうございます。じゃあ早速……。えっと、仮に問題が発生したとして、その場合はどう対処すれば?」

「ああ、それな。ま、そこは一任しよう」

「一任、と言いますと?」

「相手は荒くれみてーなもんだ。実力行使に出るな、とわかった即座に殴り飛ばしていい。というか、それくらいの方があいつらも理解するさ。あれだ、実力の差ってものを見せつけてやればいい」

「なるほど……つまり、お仕置きしちゃっていいと」

「そういうこった」

 

 その時は、そうしよう。

 

 こっちの世界の人相手なら、向こうよりも手加減しなくて済むしね。

 

 その辺りで言えば、普通にこっちの方が何かと過ごしやすかったりするくらい。

 

 それに、冒険者の人たちって、大体は肉体派だから戦闘もしてるわけで……多少の痛みくらい、耐えてくれるよね!

 

 もちろん、回復魔法をエンチャントした攻撃でお仕置きするけど。

 

「それで、他の質問は?」

「あ、そうでした。えっと、他の職員の人ってどんな感じなんですか?」

「ああ、その辺は大丈夫だ。全員、性格はいいぞ。というか、そこも判断基準だしな、採用の」

「そうなんですね」

 

 それはよかった。

 

 これでちょっとアレな人とかがいたら、ちょっと困ってたしね……。

 

「他に何かあるか?」

「えっと、一応今回のお仕事をする過程でボクは『サクラ・ユキシロ』としてお仕事をしますけど、そのことってちゃんと伝えてあるんでしょうか?」

「抜かりない。一応、イオ殿が勇者であることは伝えていないんで、安心して仕事をしてくれ」

「そうですか。ありがとうございます。それが聞けて安心しました」

「いやなに、イオ殿の正体が知れれば、色々と問題が発生するからな。しかも、今は魔族の国の女王でもある。貴族が来る可能性さえあるんでな」

「あ、あははは……」

 

 普通に考えて、他国の女王がギルドで受付嬢をしてるって、結構すごいことな気がしてきた……いや、ボクなんだけど。

 

「あぁ、これ、イオ殿用の制服だ。これに着替えて仕事を頼む」

「わかりました」

「一応それ、魔道具の一種で、最初の着用者に合わせてサイズが変わるから、着れないなんて事態にはならないんで安心してくれ」

「あ、地味に高性能」

「ま、ギルドもその辺はちゃんとやるってな。……よし、じゃあ着替えたらカウンターの方へ行ってくれ。そこにいる奴にあとは聞くといい」

「わかりました。それじゃあ、今日はよろしくお願いします」

「おう、こっちこそな。じゃ、頑張れよ。何かありゃ、極力手助けするんでな」

「はい、ありがとうございます。では、失礼します」

 

 最後に挨拶をしてから、ボクは執務室を出た。

 

 あ、声変えないと。




 どうも、九十九一です。
 二話連続で解説回になってしまいましたが……許してください。こう言うのはちゃんと説明しておいた方がいいかなぁ、とか思ってるもので……。説明不足だと、ちょっと問題が起きちゃいますからね。
 今日も二話投稿出来たらするつもりです。できる気はしないけど、仮にできたとしたら、15時~19時の間くらいになりそうですので、まあ、期待しないでください。
 無理そうなら、明日もいつも通りだと思いますので、よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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  • 知らぬ
  • 単体作品でやってほしい
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