異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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444件目 魔界と天界

 場所は変わり、別の存在へ。

 

「くくくく……愚かな人間じょもっ……~~~~っ」

『……悪魔王様、今、噛んだ?』

「……か、噛んでないっ、ぞ? わ、我が噛むわけにゃかろう!」

『いや、今噛んだよね?』

「うぅぅっ……そうだよ! 噛んだよ! 悪い!?」

『悪かないけど……威厳的なもんとか……』

「くぅっ、これも全部人間どもが悪いのだ! 我は悪くなどないのだ!」

『……この悪魔王、なんで王なんかやってんだろ』

「む、なんか言ったか?」

『いえ、何も言ってないぞ』

 

 ここは、魔界。

 

 簡単に言ってしまえば、悪魔たちが棲む世界である。

 

 そんな魔界の中心部に位置する城にて、何やら間抜けなやり取りをする者たちがいた。

 

 そこにいたのは、黒い靄的な何かで形成された、人とも、獣ともとれるよくわからない存在だった。

 

 その靄的な何かは『悪魔王』と呼ばれていた。

 

 依桜がどっかの悪魔から耳にした悪魔王という人物である。

 

 その横にいるのは、無駄にイケメンな風貌の悪魔だ。女性にモテそうだ。

 

『それで、何を言おうと?』

「う、うむ。最近、人間どもが我々悪魔を恐れないではないか」

『まあ、そうっすね』

「昔はあれだけ恐れられていたというのに、なんでこうも恐れられなくなったのだ? というか、あいつら我々のこと覚えてるのか?」

『さぁ? 憶えてるんじゃないっすかね? 法の世界の方にある、にほん、とかいう国では悪魔は広く認知されてるらしいっすよ?』

「ほほう。やはり、恐れられているのか?」

『いやー、それがっすねぇ……どうも、萌えの対象にされてるっぽいっすよ?』

「もえ? とはなんなのだ?」

『こういうのっす』

 

 そう言って、イケメン風悪魔が一冊の本を手渡した。

 

 まあ、同人誌である。

 

 そこには、山羊のような角が生えて、無駄に露出度の高い美少女がちょっとエロい表情で描かれていた。

 

 ちなみに、どことなーく、どっかの銀髪碧眼美少女に似ているのだが……。

 

 まあ、多分違うことだろう。作者の所に『謎穴やおい』と書かれているが、きっと違っているに決まっている。

 

「むむ? これは……なんなのだ?」

『どうじんし、とか言う書物みたいっすね。なんでも、エロを届ける本だとか?』

「意味がわからんのだ」

『まあ、中見りゃわかるっすよ』

「そうか。ではちょっとだけ………………む!? な、なんなのだこれは!? え、エロい! エロいではないか!」

 

 黒い靄的な何かは、同人誌をパラパラとめくると、興奮気味に騒いだ。

 

 心なしか、楽しんでいるように見える。

 

『でしょー? オレらも結構エロい! とか思ってるんすよねぇ。ちなみにそれは男悪魔に受けてますが、女向けもありやす』

「ほほう! そっちはどんなのなのだ?」

『その本の後半がそうらしいっす』

「どれどれ……ふぉ!? お、男同士で絡み合っているのだ!? な、なんと、人間どもはこんな領域にまで到達してしまったというのか……!」

『そいつは、びーえる、とか言うらしいっすね。ちなみに、前半の部分は、百合とかいうものらしいっす』

「ほほう、びーえるに百合とな。……お、面白いのだ。特にこの、表に描かれている銀髪の女が好みなのだ」

『あ、それ男悪魔のほぼ全員が好きらしいっすよ』

「ほーう。男どもはこういう女が好きなのか……」

『まあ、現実にいるわきゃないんすけどね! どうもこの女、とんでもない完璧超人らしいんで』

「人間は不完全だからな。当然なのだ」

 

 などと言う、謎の同人誌談義が繰り広げられた。

 

 ちなみに、この悪魔たちは同人誌は初見である。それどころか、こう言った娯楽物が割と初である。

 

 悪魔たちの娯楽と言えば、人間界に行って人間にいたずらしたり、黒歴史をバラしたり、相手に合わせて姿でいかがわしいことをしたりすることだ。

 

 なので、こう言った娯楽は初なのである。

 

 というか、これを娯楽だと理解していない事だろう。

 

「ふーむ、法の世界は魔力が薄いから、あんまし呼び出しがかからないのに……これは、どうやって入手したのだ?」

『ああ、それですかい。実は、法の世界から何名か魔の世界に渡ったらしいんすよねぇ』

「なぬ? 人間がか?」

『いえすいえす。なんでも、旅行だとか? いやー、人間は進みましたねぇ』

「いやいやいや! おかしいと思うぞ!? そもそも、異世界を転移するとか、神じゃないと無理なのだぞ!? なぜ、人間如きが異世界に行けてるのだ!? あれか!? 魔の世界お得意の、異世界人召喚か!?」

 

 イケメン風悪魔の何気ないセリフに、悪魔王は思いっきりツッコミを入れていた。

 

『んー、オレたち悪魔みたいに、『孔』を通れるわけじゃないっすしねぇ』

「当たり前なのだ! あれはいわばずるのような物なのだ。最近、どーいうわけか、『孔』が増えているようだけども!」

『別によくないっすか? それで楽しめてんだし』

「……まあ、そうなのだが」

 

 ここでいう『孔』とは、『空間歪曲』のことである。

 

 まあ、正式名称はないので、悪魔たちは『孔』と呼び、叡子たちの方では『空間歪曲』と呼んでいるだけであって、別に何でもいいのだ。

 

 ちなみに、天使でも若干違う名称があったりする。

 

 あっちは『(ひび)』である。

 

『で、話を戻すと、法の世界から訪れた人間の内の一人が、これを広めだしましてねぇ。気配を偽るのが得意な奴が盗って来たらしいんすよ。まあ、殺されかけたんすけどね、そいつ』

「ほほう……って、ちょっと待つのだ。え、殺されかけたの? 悪魔が?」

『はい』

「それってもしかして、クソ天使?」

『いえ、人間です。……いや、あれ人間なんか?』

「に、人間が悪魔を殺しかけたん?」

『ええ。いやー、ありゃヤバいっすね。黒髪ポニーテールの女なんすけど、なんつーか……とんでもなく長生きしてましたねぇ』

「よし、その悪魔の情報を共有するのだ。我に」

『へいへい。……こんなんす』

 

 イケメン風悪魔は魔力で悪魔王と繋げると、黒髪ポニーテールの女の情報を伝達させた。

 

 その情報が伝えられるなり、悪魔王は思わず、

 

「ぶはっ!?」

 

 噴き出した。

 

『何してるんすか』

「ちょっ、お、おまおま……こ、こいつっ……こいつぅっ!」

『どうしたんすか。悪魔が聖属性魔法喰らったような雰囲気出して……』

「我悪魔! って、んなボケはどうでもいいのだ! こいつ、絶対ヤバいのだ!」

『いやー、ヤバいっすよねー。年齢だけでもヤバそうなのに、魔力ギンギン。しかも、神気もバリバリ。オレたちドキドキ』

「上手くもないラップ調で話すでないわ。いいか、こいつだけは絶対に手を出すなよ!」

 

 悪魔王は慌てたような口調で、絶対に手を出さないように釘を刺した。

 

 それを言われたイケメン風悪魔は、きょとんとする。

 

『どうしてっすか?』

「こいつ、メッチャミリエリアの気配放ちまくってるから!」

『あー、あの創造神の。たしか、数百年前くらいに死んでましたよね?』

「そうなのだ! というか、神って死んだら転生するのだ! 何に転生するかは神によって違うらしいが、ぜってーもう転生してるから! 死亡年数的に!」

『へぇ、お会いしたことがあるので』

「あるわ! あ、あの時は、お、恐ろしい目にぃぃ~~~っ……(ガクブル)」

 

 悪魔王は靄でわかりにくいが、両腕をさすりながらガクブルと全力でビビっていた。

 

 一体、何があったのだろうか。

 

『何があったんすか』

 

 イケメン風悪魔も気になったのか、普通に尋ねていた。

 

 しかも、どこかわくわく君である。敬意というものは無いのか。

 

「お、襲われたのだ……! 『あら、好みの方ですね~……これはチャンスなのです!』とか言って、わ、我を手籠めに……ひぃぃぃぃ! も、もうだめだって! もうできないってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

『……本当に何があったんすか』

 

 ガチビビり状態の悪魔王を見て、イケメン風悪魔はわくわくから一転して、ガチで心配した声を出していた。

 

 まあ、自分たちの王がマジビビりする時点で、ヤバいと思ったのだろう。

 

「くぅっ、お、思い出したら微妙にイライラして来たのだ! これは、やはり計画を早めるしかないのだ! おい、ゼファ!」

『なんすか』

「全悪魔を招集するのだ! 計画を前倒しにするのだ!」

『あー、あれっすか』

「そうなのだ! 早くするのだ!」

『了解っすー。いやー、楽しみになってきたっすねー♪』

 

 鼻歌交じりにイケメン風悪魔は広間を出て行き、悪魔たちの招集に向かった。

 

「……楽しみになって来たのだ。そして、このイライラをぶつけるのだ! ――人間に!」

 

 100%八つ当たりなのだろうが、悪魔たちはどうやら動き出すようである。

 

 

 再び所変わって別の場所。

 

「はぁぁぁ~~~っ」

 

 そこでは、一人の天使が蕩けるような表情を浮かべ、身悶えていた。

 

 ノエルである。

 

 ここは天界。

 

 天使たちが棲む場所であり、神界の一つ下の世界である。

 

 法の世界の人間で言うところの、会社である。

 

「どうしたのですか、ノエルぅ?」

 

 そんなノエルを見て、一人の天使が声をかけて来た。

 

 その人物は、なんかやたらと光りまくっていて、姿がシルエットでしか見えない。なんか、エル〇ャダイを髣髴とさせる。

 

 まあ、その人物が光っているのではなく、後光が半端ないことになっているからなのだが。

 

「あ、これは天使長様。いえ、少々素晴らしいお方に出会いまして……」

「あらぁ、そうなのですかぁ? 一体、どのような方でぇ?」

「はい、魔の世界で出会ったのですが……なんと、神気をお持ちの方がいらっしゃったのです!」

「あらぁ! それは本当なのかしらぁ?」

「本当です! しかも、ミリエリア様と仲がよろしかった、ミオ様までいらっしゃりました」

「それはすごいですねぇ。ミオ様は、お元気でしたかぁ?」

「はい! お変わりなく!」

「それはよかったですぅ。……して、その神気をお持ちの方は、どのようなお方だったのですかぁ?」

「どうやら、ミオ様のお弟子様のようでした」

「それはすごいですねぇ。あの人のお弟子様だなんてぇ……」

 

 後光のせいで表情が全く見えないが、天使長と呼ばれた天使は、頬に手を当ててどこか感心したような声音で答えていた。

 

「しかも、しかもです! そのお方――依桜様とおっしゃるのですが、なんと……私に優しい言葉をかけてくださったのです! 『愚痴でも聞きますよ』と!」

「そ、それは本当なのぉ!?」

 

 ノエルのセリフを訊いて、天使長は思いっきり瞠目した。

 

「はい! しかも、『ありがとうございます』とまで言ってくださいました!」

「お、お礼の言葉をぉ……!?」

 

 さらなるノエルのセリフを聞いて、さらに瞠目した。

 

「わ、我々天使に優しい言葉をかけてくださる方がいらっしゃっただなんてぇ……これほど嬉しい日はありませんっ……!」

 

 天使長、後光で顔は見えずとも思いっきり涙を流している。

 

 どんだけお礼を言われていないのか。

 

 これを依桜が知ったら、きっと戸惑いながらも慰めてくれたことだろう。依桜だし。

 

「あぁ、神は我々天使を見離していなかったのですねぇ……!」

「はいっ! 天使長様、依桜様はとても素晴らしいお方であると断言できます!」

「そうなのですねぇ。(わたくし)もお会いしてみたいわぁ……そして、優しい言葉をかけてもらいたいものですぅ……」

 

 天使、割と限界が近そうである。

 

 天使長からしてここまで言うほどということは、労働環境が恐ろしくドブラックなことだろう。ブラック企業も真っ青かもしれない。

 

 ちなみに、この二人の近くで聞いていた他の天使たちも、

 

『我々に優しい言葉をかけるお方が……!』

『どうしよう、直に聞かせて欲しいのですが!』

『き、気になります……! 依桜様というお方が!』

 

 と、マジトーン、マジ泣きしながらざわついていた。

 

 天使という生まれ持っての職業、一体どれほどブラックなのか……。

 

『も、申し上げます!』

 

 と、ここで一人の天使が現れ、天使長の前に跪き、そう声を上げた。

 

『魔界にて、悪魔たちが大きく動き始めたとの報告が入りました!』

「……そうですかぁ。悪魔のみなさんがぁ……みなさん、聞きましたねぇ? どうやら、お馬鹿さんたちが行動を起こすようですぅ。これはきっと、人間の方々にとって対処が不可能な事態となりそうですぅ。すみやかに、各々準備を済ませておいてくださいぃ」

『『『はいっ!』』』

「では、行動を開始してくださ~い!」

 

 天使長が号令を出すと、さっきまでのざわつきはなんだったんだと言わんばかりに動き始めた。

 

 ただ……どこか目が死んでいるのは気のせいだろうか? たまに、

 

『ふ、ふふふ……休日出勤……』

『代休が欲しいよぉ……』

『ふへへへへへ……この休日出勤が終わったら、休むんだぁ……』

 

 と、壊れかけているかのようなセリフを漏らしているというのも……なんだか怖い。

 

 果たして、天界は大丈夫なのだろうか……?




 どうも、九十九一です。
 今回は依桜たちは登場しませんでしたね。まあ、必要な回だったので……今後の話的に。
 地味~に世界観に関わってくるかのような物が出て来てましたね。主に魔界サイド。まあ、伏線回収のための章でもあるので、別にいいんですが。
 一応、悪魔王と天使長は、キャラの属性が決まってはいるんですが、私に動かせるかどうか……頑張らねば。一応、この作品にまだ出て来ていないタイプの属性とだけ言っておきます。
 明日もいつも通りだと思いますので、よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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  • やらなくていい
  • どっちでもいい
  • 知らぬ
  • 単体作品でやってほしい
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