異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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71件目 依桜ちゃんとハロパ2

 昼休み。

 いつも通りにボクたちは同じグループで昼食を食べる。

 気分転換ということで、屋上で食べることにした。

 今日は比較的暖かかったからね。

 

「そういや、仮装してパーティーをするってことだったけどよ、そこで着るものってどうするりゃいいんだ?」

「んっとね、学園側が用意してくれるみたいだね。でも、先着順ってところを見ると、いいものから先にどんどん取られてくって感じかな?」

「なら、早めに行ったほうがいい、か?」

「あ、そうでもないみたいだよ。自分で用意するもの可って書いてあるし」

 

 多分、学園側が用意してくれるって言うのは、あまりお金がなかったり、わざわざ買わなくても、という考えの人のため、って言う部分が大きい気がする。

 でもまあ、生徒全員分は平気で用意しそうだけどね。

 

「どうする? 私は別にどっちでも構わないのだけど」

「まあ、わざわざ買う必要はないだろうが……見に行くだけ行ってみるか」

「それなら、わたしの行きつけのお店に行く?」

「行きつけのお店って言うと……学園祭の時のやつか?」

「そそ! 多分、時期的にちょうどいいし、わたしが行けばサービスもしてくれるから!」

「ふーん、それなら、明後日はちょうど土曜日で前日だし、行ってみましょうか」

 

 ということになった。

 うちのクラスの大半の人は、学園祭でコスプレを経験済みだからね、多分もう慣れてると思う。

 

 ボクは……まあ、あの時のサキュバス衣装じゃなければ問題ない、かな?

 あの時は、本当に恥ずかしかった……。

 あんな格好で激しい動きをしてたし、お客さんの頭上を平気で跳んでたし……。

 

 今思い出してみると、本当にとんでもないことをしてたよね、ボク……。

 だから、今回はごくごく普通のものにしよう。うん。

 女委や態徒が変なものを勧めてきても、ボクは絶対に拒否しよう。何が何でも拒否しよう。

 

 

 依桜たちが屋上で昼食を食べている頃。

 依桜のクラスでは、ハロパの話で盛り上がっていた。

 

『お、そういや日曜日のハロパで、男女が料理作ってくるらしいぞ』

『え、マジ? どこ情報よ』

『いや、HRの後に男女たちが話しててよ、ちらっと聞こえたんだが、本人が言ってたし、間違いねえ』

『ま、マジか……。だが、料理はいつものメンバーのため、だろうなぁ』

『そりゃそうだろ。いくら優しい男女と言えど、全員分作れるわけねーし。そもそも、どうやって持ってくるんだ、って話だろ』

『だよなぁ……ま、男女が参加するだけでもいいか』

『そりゃなぁ。突然美少女になったり、美幼女になったりするような変な奴ではあるが、超美少女だからな、どんな仮装するんだろうなぁ』

『男女の性格から考えると、あの時のエロい服じゃないだろうが……可愛いやつに決まってるよな!』

『だな!』

 

 という、男子の会話もあれば、

 

『ねえねえ、ハロパどんな服着てく?』

『仮装なんだよねー。一応、自前で用意もありって話だけど、そこまでお金ないしなぁ』

『だよねぇ~。まあ、早く行けばいい衣装が確保できそうだし、それでかなぁ』

『学生がわざわざ衣装買うのも難しいもんね』

 

 と言う女子の会話もある。

 これらはあくまでも、男女別。

 男女混合で昼食を食べているところなどは、

 

『ずばり、誰の仮装が見てみたい?』

『断然、晶君!』

『いやいや、男女だろ!』

『俺は委員長だなぁ』

『あ、私、女委ちゃんの見てみたいかも』

 

 誰の仮装が見てみたいか、と言う話になっていたりする。

 見ての通り、依桜たちのグループは人気が高いのだ。

 ちなみに、態徒だが……

 

『変態ってどんな衣装着ると思う?』

『変態だからなぁ。まあ……きのこ、とか?』

『いや、それはないでしょ。ま、変態は置いておくとして……あそこのグループがどんな衣装着るか楽しみよね!』

 

 こんな感じで、態徒の人気などない。

 ただ、態徒は決してモテないというわけではなく、一部の人から人気があったりする。

 まあ……大抵は同じ波長をしている人ばかりだが。

 余談だが、依桜が言っていた、態徒に好意を抱いていた女子生徒は、何気にこの学園に通っていたりする上に、未だに好きだったりする。

 

『つーか、女子人気が高いのってやっぱ、小斯波なのか?』

『恋愛とかの意味ならね。でも、依桜ちゃんの人気が今は高いかなー』

『さすが『白銀の女神』だな。男女構わず人気とか……』

『まあ、依桜ちゃんって、男子だった時からモテてたからねぇ。本人は全く気付いてなかったけど』

『男女は鈍感だもんなぁ』

『アピールとかしても、気づかなそうだよね』

『わかるわかる。それなりにストレートに言った言葉とか、『ご、ごめん聞こえなかった』とか、平気で言いそうよね』

『それ言われたら凹むわ』

『たしかに』

 

 依桜が鈍感であることは、クラスメートならば大抵の人が知っていることだった。

 それほどまでに、依桜は鈍感である。

 そんな鈍感に対して有効的な手は、ドストレートに伝えることだが、あまりの依桜の可愛さに言葉を失う人がほとんどであるため、結果的に微妙に遠回しな言い方になる。

 つまり、依桜に対し、ドストレートに告白できる人間は、依桜を見ても恥ずかしがったり、動揺することなく、伝えられる人間だけ、である。

 なので、依桜に告白できた他校の生徒はある意味、勇者だ。

 

『でもさ、依桜ちゃんって不思議だよねぇ』

『まあ、突然女子になったり、幼女になったりしたからなぁ』

『そうそう。その上、学園祭の時の依桜ちゃん、たしかにかっこよかったんだけど……あれって本当にイベントだったのかなぁって』

『ああ、テロリスト襲撃イベント? イベントって言うならイベントだったんじゃないか? 別に、本当に被害出たわけじゃなかったしさ』

『え、でも、未果ちゃんの近くにいた人が言うには、本当に血が出ているように見えたらしいよ? それに、その傷を依桜ちゃんが手を翳しただけで治したとか。その時、ちょっと光ってるように見えた、って話だよ』

『魔法みてーだな。でもよ、イベントって言ってたんだし、間違いないんじゃね? たしかに、男女って急に運動神経がよくなったように感じるし、変態を簡単にあしらえるくらい強いけどさ、ただ単に男女も武術かなんかやってただけだろ』

『……それもそっか!』

 

 このように、依桜が異常とはいかずとも、不思議な存在だと思っている生徒がそこそこいたが、結局はすべてイベント、ということで納得した。

 

 元々、叡董学園はイベントの多さが売りなところもあるので、必然的に通う生徒はお祭り好きが多くなる。

 ある意味、依桜の持つ能力や、性転換の真相を隠しやすい環境、ということだ。

 

『あーでも、また男女幼女にならねーかなー』

『きもっ――と言いたところだけど、あれは本気で可愛かったもんねぇ。気持ちはわかるわ』

『個人的には、あの姿で学園祭初日の服を着てもらいたい』

『私、猫よりも狼とかがいいなぁ』

『なぜに狼?』

『可愛いじゃない』

 

 と言うような会話が、繰り広げられていた。

 

 

 時間は進んで土曜日。

 例によって、ボクたちは女委の行きつけのお店に来ていた。

 そして、女委を除いたボクたち四人は、絶句していた。

 

「ん? あらぁん、女委ちゃんじゃなぁい? どうしたのぉ?」

「どーもー、田中さん。明日、学園でハロウィンパーティーがあるので、何かいい仮装がないかなーって」

「なるほどぉ、そういうことなのねぇん? んー……それにしてもぉ……随分可愛らしいお嬢さんにぃ、かっこいい男の子を連れてきたわねぇ? お友達?」

「そうですよー」

「そぉなのねぇ? わかったわ。それでぇ、どんな衣装がいいのかしらぁん?」

「みんなに似合う衣装かなぁ」

「わかったわぁん。とりあえず、適当に見繕ってくるわねぇん?」

「お願いしまーす」

 

 惚けているボクたちをよそに、女委だけで話が進行していく。

 えーっと、会話を見ればわかる……と思うんだけど、その……すごく、キャラが濃い人でした。

 色黒で、筋骨隆々で、190近い高身長に、パンチパーマヘアー、そして、所々にフリフリのエプロンドレスを着た……男の人。

 いや、うん。本当にキャラが濃いと思います。

 というか、田中って……田中って!

 名前は平凡なのに、すでに外見と言動が平凡じゃないよ!

 

 え、こんな人がこの街にいたの!? 十六年も住んでて初めて知ったんだけど!

 未果たちの方を見ると、この世のものじゃない何かを見るような顔をしていた。

 その気持ちはわかるけど、そう言うのは顔に出しちゃいけないよ、みんな。

 

 でも、晶だけは比較的普通だった。

 まあ、モデルをした時の碧さんとタイプがほとんど同じだからね。

 なんか、気が合いそうだよ。

 少しの間待っていると、田中さんが戻ってきた。

 

「お待たせぇ! とりあえず、似合いそうなものを持ってきたわよぉ」

「ありがとう田中さん! じゃあ、みんなも着替えよっか!」

「う、うん」

 

 というわけで、それぞれ試着室で別々に着替えてお披露目しようとのことになった。

 

 

「みんな着替え終わった~?」

「ボクは大丈夫だよ」

「私も」

「俺も問題ない」

「こっちもOKだ」

「はいはーい。じゃあ、せーので出ようね。せーの!」

 

 バッと、一斉にカーテンが開き、みんな試着室から出てきた。

 

「あらあらぁ! すばらしいわぁん! やっぱり、若い子はいいわねぇ!」

 

 出てくるなり、田中さんが体をくねくねとさせながら褒めてきた。

 ほ、本当に濃い。

 

「こうしてみると、みんな似合ってるねぇ」

「そうね。というか、依桜がすごくぴったりなのだけど」

「そうねぇ! どことなーく、魔女、って感じがしたからそれにしてみたのだけどぉ……ワテシの目に、狂いはなかったわねぇん!

「あ、あはは……」

 

 ボクが田中さんに渡された衣装は、魔女だった。

 よくある、広いつばにてっぺんの方が折れ曲がった三角の大きな帽子に、黒を基調としたミニスカート風のワンピースに、ニーハイソックスに、茶色のブーツ。

 いかにも、魔女です、と言わんばかりの服装。

 

 ちなみに、見た目もあるんだろうけど、未果がぴったりと言ったのは、実際にボクが魔法を使えるからだと思います。

 晶たちもうんうんと頷いてるし。

 

「えっと、みんなのコンセプトって何?」

「私は多分、雪女なのかしらね?」

「そうよぉ、未果ちゃんはとっても綺麗だったからぁ、和服の方がいいと思ったの。とはいえ、ほとんど和服を着るだけに近いしぃ、仮装とは言えないかもしれないけどねぇ」

 

 未果は着物を着ていた。

 水色を基調としていて、氷の結晶や雪などが所どころに描かれている。

 雪女、なのかな?

 これって、ただ単に和服を着ただけのような……。

 

「これだけだと、ただ和服を着ただけになっちゃうからぁ、これ、着けてみてぇ?」

 

 そう言いながら田中さんが渡したのは、簪だった。

 しかも、こちらも氷の結晶をモチーフにしたものらしい。

 

「えっと、どう、かしら?」

「うん、似合ってるよ」

「そうだな。未果は和服系が似合うし、かなりいいと思うぞ」

「そうだねぇ、仮装じゃないかもしれないけど、別に普段と違う衣装を着ていれば、それも仮装になるだろうしねぇ」

「それだったら、私服もってことになるぞ?」

「そうかもねぇ」

 

 と軽く言い合い、次へ。

 

「晶は……吸血鬼かな?」

「多分な」

「そうよぉ。依桜ちゃんの言う通り、晶君は吸血鬼。最初は執事服を、って考えていたんだけどねぇ? 前に女委ちゃんが執事服を買っていったのを思い出したのよぉ。もしかしたら、着たのは晶君なんじゃないかなぁって思ってねぇ? だから、吸血鬼ってわけよぉん」

 

 す、すごい。読みが当たってる。

 田中さんってすごい。

 

 今の晶は、以前着た執事服に似た服を着て、マントのようなものを付けていた。

そして、とても分かりやすいのが、付け牙を付けていたこと。

 どこからどう見ても、吸血鬼だね。

 わかりやすくていいと思います。

 

「似合うわね、晶」

「執事服とか似合ってたからね。晶はかっこいいし、基本なんでも似合うよね」

「いやー、やっぱり晶君はいいモデルだよ」

「ほんと、晶はイケメンだからずりーよなぁ。けっ」

 

 ボクと未果は基本的に普通な反応。

 女委は、明らかに自分が書いている同人誌のネタとして見てるね、あれ。

 態徒は、唾を吐き捨てるかのような仕草を。

 イケメンが憎いのだろうか?

 まあ、態徒の場合は、単純にモテないから、って言う理由だろうけど。

 

「それで、態徒は?」

「フランケンシュタインか? これ」

「そうよぉ。態徒くんはぁ、結構がっしりしているから、そう言うのがちょうどいいかなぁって」

「いやまあ、結構いい感じっすけど」

 

 実際の所、態徒のフランケンシュタインの仮装は普通に似合っていた。

 頭に、ねじ? のようなものが貫通して見えるカチューシャに、ネクタイのないスーツのような衣服。

 元々大柄な男、みたいなイメージのあるフランケンシュタインだからね、ちゃんと筋肉がついててがっしりしている態徒にはぴったりだと思う。

 

「似合ってるよ、態徒」

「そ、そうか?」

「そうね。できれば、ほとんど言葉を話さず、下ネタ的なことにも興味を示さなくなってくれればいいんだけどね?」

「いや、それをしたらオレがオレじゃなくなる」

「たしかに、変態じゃない態徒とか、味のないガムみたいものだからな」

「その例えは酷くね?」

「でも、的は射てると思うよ~」

「ま、マジか……オレは、ガムなのか」

 

 あ、そこ?

 ネガティブな人は見たことあるけど、自分がガムと思う人は初めて見たなぁ。

 

「まあ、ともあれ。最後は女委ね。それは……?」

「見ての通り、バニーガールだよ!」

「あ、うん。そうだよね」

 

 女委が着ていたのは、なぜかバニーガールだった。

 あの、カジノとかにいそうなあれです。

 うさ耳カチューシャにハイレグ? のような服に、網タイツにヒールを履いている。

 しかも、結構露出度高めだから、女委の胸が結構見えちゃってるわけで……。

 

「依桜には劣るけどよ、女委も十分エロいよな」

「ふふふー。褒め言葉として、受け取っておくよ、態徒君」

「でもまあ、意外と違和感ないわね、エロいのに」

「たしかにな。普通、高校一年生で似合うって言うのが変だと思うが」

「女委、だからね」

 

 だって、学園祭で着ていた服と言えば、初日はミニスカナースだったし、二日目はミニスカポリスだった。

 どっちもミニスカートだったのは、女委のこだわりだったのだろうか?

 でも結局、露出度が高いことに変わりはなかったのでちょっとあれだった。

 

「それで、どうかしらぁ、ワテシの見立てた服は」

 

 一度、元の私服に着替えて試着室から出ると、田中さんが服の感想を訊いてきた。

 

「ボクは気に入りました」

 

 これなら、あまり目立たないし、どちらかと言えば地味だからね。

 ちょっと、胸元が見えてるのが気になるけど、学園祭の時に着た服に比べたら、そこまででもない。

 それに、態徒と女委が変な服を選んでくるんじゃないかと思っていただけに、ちょっとほっとした。

 

「俺も、これならいいかな」

「私は……まあ、いっか」

「オレもこれはこれで動きやすいからいいな」

「わたしは当然!」

 

 みんなも異論はないみたいだった。

 実際、田中さんは結構センスが良かった。

 女委のはちょっと特殊かもしれないけど……。

 

 というかあれ、女委本人が選んだんじゃないだろうか?

 知り合いみたいだし、その可能性は否定できないよね。

 わざわざ、学園祭でミニスカポリスにミニスカナースをやるくらいだから。

 

「それならよかったわぁん」

 

 にこにこと嬉しそうにくねくねする田中さんは何と言うか……不審者みたいだった。

 いや、だって、ね?

 いい人って言うのは理解しているんだけど、筋骨隆々で190センチもあって、フリフリのエプロンドレスを着ている人が、笑顔でくねくねしてたら、ね……。

 

「あ、それで金額は?」

「んー、そうねぇ……一人、二千円くらいでいいわよぉ」

 

 ボクが値段を尋ねると、結構安い値段を提示してきた。

 

「おお、田中さん太っ腹だね!」

「え、でも、いいんでしょうか? 結構高そうなんですけど……」

 

 女委とは反対に、未果がおずおずと申し訳なさそうに田中さんに訊いていた。

 

「ンフフ♪ 女委ちゃんにはいいものを見せてもらったしぃ、ワテシも楽しかったからいいのよン♪」

 

 未果のセリフに対して、田中さんは嬉しそうにまたくねくねしていた。

 やっぱり、不審者にしか見えない……。

 

「そう言うことなら、それでお願いします」

「はいはーい。それじゃあ、五着で一万円になりまぁす」

 

 みんなが自分の分の代金を財布から取りだし、レジへ。

 学園祭の時の臨時収入が大きかったからね。

 二千円くらいなら痛い出費にならない。

 まあ、ボクの場合はエキストラのバイト代もあったりするけど。

 

「ちょうどねぇ。はいこれ。それじゃあ、気を付けて帰ってねぇん♪」

「それじゃあね、田中さん」

「ええ。みんなも、よかったらまた遊びに来てねぇ!」

 

 終始笑顔だった田中さんに軽く会釈をして、ボクたちはお店を後にした。

 

 

「いやぁ、ずいぶん濃い人だったなぁ」

「そーかなぁ? よく会ってるし、あまり濃いとは思わないんだけどなぁ」

((((まあ、女委も濃いし))))

 

 女委を除いたボクたち全員、同じことを思った気がした。

 

「ともかく、これで明日の準備は問題ないな」

「そうだね。あとは、ボクが料理を作ってくるだけだから、みんなはこれで準備OKだね」

「依桜に任せっきりで悪い気もするけど、お願いね」

「いいよいいよ。みんなには助けられてるしね」

 

 それに、料理を作るのは好きだし、誰かのために何かをすることも好きだから全然苦にならないし。むしろ、楽しいくらいだよ。

 

「俺たちの方が助けられてる気がするけどな」

「そうかな?」

「そうだよ」

 

 んー、特に何かをしたって言うのはない気がするけど。

 強いて言えば、学園祭の時、未果を助けたくらいなんじゃないかなぁ。

 

「あとはまあ、これと言って問題が起こらなければ、明日は普通にハロウィンパーティーだな」

「そうだね」

「この中で問題が起こりそうなのは、依桜だけだけどな!」

「ちょ、やめてよぉ。これで何かあったらどうするの?」

「んー、まあ、大丈夫じゃない? なんだかんだで、依桜が小さくなった時だって、そこまで問題にはならなかったし」

「ボクの中では大問題だったけどね」

 

 できることなら、もう二度と起こらない欲しいものです。

 あれは本当に不便だからね。

 

「でもどうするよ、これで明日、また小さくなってたら」

「あはは、さすがにないよ」

 

 三日ほどしかまだ経過してないけど、小さくなるような兆しは見られない。

 まだ油断はできないけど、少なくともまた小さくなる、なんてことはないと思う。

 確実にあれは、解呪の失敗による、呪いの追加効果のはずだからね。

 それに、もう呪いは完全に定着しちゃったから、発動中の違和感のようなものは感じない。

 だから問題はないはず。

 

「さて、と。ここでお別れね」

「うん。じゃあ、また明日ね、みんな」

「ああ」

「そんじゃ、オレは適当にぶらついてから帰るんで、じゃな」

「依桜君、明日楽しみにしてるからねー。じゃあ、みんなバイバーイ」

 

 いつもの分かれ道でボクたちはそれぞれ帰路に就いた。

 

 

 その夜は特になく、明日の料理の簡単な下準備をしてからボクは自分の部屋に戻った。

 すると、

 

「ん……眠い……」

 

 そこまで疲れていたわけではないのに、なぜか抗いがたい睡魔にボクは襲われていた。

 なんとか抗うものの、結局生理現象に勝てるわけもなく、倒れこむようにしてボクは眠りに落ちた。

 

 

 そして、なんだか妙な違和感を感じて、ボクは目が覚めた。

 目を開いて、時計を確認すると、七時半だった。

 目覚ましは八時にしておいたんだけど……。

 

「おきよ……」

 

 すごく眠いけど、ここで二度寝したら余計に起きるのが辛くなるので、ここでしっかり起きることに。

 ベッドから降りようと、立ち上がろうとした瞬間。

 ずるっ! ゴンッ!

 

「いたい!」

 

 何かに足を滑らせて頭から床にダイブしてしまった。

 その時に、思いっきり額を打ち付けて、ゴロゴロと床を転がる。

 うぅ、痛いよぉ……。

 ……何で滑ったんだろう?

 ぶつけた額をさすりながら、ベッドを確認すると、

 

「あ、あれ、ずぼん……?」

 

 そこには、穿いていたはずのずぼんが落ちていた。

 よく見ると、パンツも落ちている。

 

 ……そう言えば、妙に下半身がスースーする。

 ……あれ、そう言えば、声が変だったような?

 例えるなら……そう、小さくなった時に近い声。でも、あれよりももっと幼いような?

 それに、頭のお尻の辺りに感じているこの違和感はなんだろう?

 なんか、全く知らない感覚……というか、神経が延長されているような……って!

 ボクははたと気付いた。

 

「し、してんがひくい……ま、まさか!」

 

 ボクは慌てていつもの姿見の前へ。

 そして、そこに映っていたのは、以前よりも少し幼いボク……だけではなく……

 

「な、なななな…………なにこれ――――っっっ!?」

 

 もうお約束の声を上げながら、ボクは自分の頭の上と、お尻の辺りを見た。

 そこには……ふさふさの狼の耳と、ふりふりと揺れている狼の尻尾があった。

 ボクは……人間を辞めていた。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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