異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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80件目 依桜ちゃんの条件

 ボクが恥ずかしい格好でチアガールをすることが決まったわけだけど……ボクだけ、と言うのが腑に落ちない。

 それ以外の人は、きっとボクのよりも露出が少ない衣装を着るのだろうか?

 だとしたら、少し……いや、かなりイラッとくる。

 ……あ、そうだ。

 

「引き受ける条件があります」

『『『条件?』』』

「ボクだけがこんなに恥ずかしい思いをするのはちょっと……というより、かなり嫌なので、男子の人は……そうですね、絵本でよく見かけるかぼちゃパンツを穿いた王子様風の格好を。女の子のほうは、ボクと同じ格好でお願いします」

『『『――ッ!?』』』

「あ、あと、練習中もその恰好で、本番当日は参加種目以外、それでお願いします」

『『『――ひぇっ!』』』

 

 渾身のスマイルを浮かべて条件を言った。

 ボクの出した条件に、男女ともに青い顔をして、一歩引いた。

 晶も晶で、え、嘘だろ? みたいな表情を浮かべてボクを見てる。

 もちろん、晶も巻き添えにしますとも。

 

 ちなみに、男子の服装のほうはなんとなくでも思い浮かんだものを言っただけです。

 一応、上半身にサラシを巻くだけにして、下は学ランのズボンだけ、みたいなのも考えたけど、それだと男子的にも恥ずかしくないと思ったので、今のを思いつきました。

 

「い、依桜? 俺は? 俺は……いいんだよな?」

「ふふっ、ねえ晶」

「な、なんだ?」

「ボクたちって……幼馴染で、親友、だよね?」

「あ、ああ。そうだな」

「だからね……その、大切な幼馴染で親友のボクと同じ苦しみ……味わってくれるんだよね?」

「いや、俺も被害者だよな!? どちらかと言えば、俺も被害者だよな!? 未果に強制的にこっちに回されたんだぞ!?」

「うん、たしかにそうだね。でも……ボクだけが恥ずかしい格好をして、晶が普通の格好をすることを、ボクが許すと思いますか?」

 

 表情を変えず、常に笑顔で晶に言葉を重ねる。

 もちろん、これは本心。

 

 だって、学園祭の時だって、まとまな服装じゃなかったし、女委のせいで、メイド服で二日目を回り、その二日目では、異常なほどに露出度が高いサキュバスの衣装を着させられたんだよ?

 で、ボク以外はまともな人ばかり。未果なんて、巫女服に、チャイナドレス。女委は、ミニスカポリス、ミニスカナースだったけど、それでもまだマシだった。晶だって、燕尾服に、男性のアイドルユニットが主役のアニメキャラのコスプレだった。

 態徒は裏方だったので、コスプレ等はなかった。

 

 ほかにも、ファミレスのウェイトレスのような服装や、教師のような服装、あとは侍のような格好の人もいた。

 ほらね? 結構まともでしょ?

 そんな中で、ボクだけかなりエッチな服装をさせられたりしたんですよ? さすがに、また一人だけそんな恰好で目立つとか、嫌なので、こうしてしまえばいいんです。

 

「……無理、だな」

「そうでしょ? だからね、晶も道ずれにするの」

「……まあ、依桜だけが損なことはできない、か。わかった。俺は条件を飲もう」

「ありがとう、晶」

 

 うん、これで晶は陥落、と。

 あとは、こっちの皆さんだね。

 

「それで……どうしますか?」

『くそ、押しに弱いと思っていたが、まさかこんな切り返しをしてくるとはっ……』

『い、いやしかし、俺たちが恥ずかしい格好をするだけで、男女のエロ可愛い姿が見れるんだぜ?』

『だが、そのためには俺たちも恥ずかしい格好をせねばならない……』

『待て。さっき男女は、女子のほうにもあの格好をすることを条件にもしていた』

『つまり……俺たちが恥ずかしい格好をするだけで、こちらの女子全員のエロい姿が見放題……?』

『どうしよう、依桜ちゃんがまさかあんなことを言ってくるとは思わなかった……』

『だよね。いつもなら、ちょっと押すだけで着てくれるような押しに弱い女の子だったのに』

『くっ、まさか、依桜ちゃんのエッチで可愛い姿を見るために、自分たちもあの格好をしないといけないなんて……!』

『こ、こんなに露出が高いものを着ないと、依桜ちゃんのエッチな姿は見れない……でも、すごく恥ずかしいっ!』

『くっ、まさか作戦が裏目に出るなんてぇ……』

『見たいけど恥ずかしい……恥ずかしいけど、見たい』

 

 思ったよりも効果絶大だった。

 恥ずかしいと思ってたんだ、衣装を作った女の子たち。

 そう思っていたのに、他人に着せようとか考えているとは……。

 呆れるほかないよ……。

 

 欲望と羞恥心が勝つか、欲望が勝つか、という状況かな。

 ボクとしては、あれを着ないに越したことはないので、できれば羞恥心が勝ってほしい。

 自分でやると言ってしまったけど、恥ずかしいものは恥ずかしいのです。ここは、条件と言って着ない方向に持って行こう。

 

『しかし、優勝賞品が『アレ』なんだよな……』

『いやでも『アレ』って優勝賞品じゃなくて、MVPじゃなかったか?』

『だとしても、だ。男女だけでなく、女子全員があの服を着てくれれば……勝てる』

『幸い、各クラスから選出された面子は、レベルが高い。……まあ、男女が跳び抜けて高いが』

『あれと比べちゃダメだろ。可愛いと持て囃されてるアイドルや女優だって、裸足で逃げ出すレベルだぞ?』

『だよな。そんな男女のエロい恰好を見たくないとか、あり得ないよな……だが、男女の言った服装はいささかきついぞ? 小斯波とかは全然似合いそうだからいいが……俺たち、すっげえイケメン! ってわけじゃないからな……』

『仮に、この条件を飲めず、見れなかったとしよう。一、二年生は来年にもチャンスがあるからいいかもしれないが、俺たち三年にそんなチャンスはない! ここはやはり、恥ずかしい思いをしてでも、見るべきではないか?』

『た、たしかに……。そもそも、俺たちだって、来年があるかもしれないが、確実にまた見れるわけでもない……このチャンス、活かすべきなんじゃないか?』

 

 ……あれ。男子のほうが思ったよりも、欲望の方に傾いている気が。

 いやでも、結構きつめの条件にした気がするんだけど。

 

 だって、絵本に出てくるような王子様風の格好だよ? かぼちゃパンツだよ? よほどかっこいい人じゃないと着れない……というより、着たくないよね?

 

 晶はかっこいいので、ビジュアル面では問題ないかもしれないけど、普通の人とかだったら結構しんどいよね。

 ボクだったら、絶対に着たくないです。

 

『ねえみんな。逆に考えるのよ』

『どう考えるの?』

『私たちが依桜ちゃんと同じ格好をする……結構レアじゃない?』

『え、でも、制服とか同じじゃん』

『たしかにそうね。でも、こんなに限定的な服装で同じ格好……よくない? 私たちなんかじゃ、依桜ちゃんのあの女神のような可愛さには勝てないけど、それでも、一緒に同じ格好できると考えたら……』

『……あり』

『たしかにあり。というか、すごくいい気がしてきた』

『それに、もしかしたら彼氏とかできるかもよ?』

『『――ッ!』』

『ちょっとエロいけど、男子的にはきっとドストライクのはず。それに、応援される男子だって、きっと勝利のために頑張ってくれるはず……』

『なるほど……たしかに、一理ある。男子は可愛い女の子が好き。そして、そんな可愛い女の子がエッチな恰好をして応援していたら……限界突破するはず』

『でしょ? そうすると……多少恥ずかしい気持ちを押し込んで出るのが吉よ』

 

 ……女の子たちのほうも、欲望の方に傾いている気がする。

 というか、確実に傾いちゃってるよ。

 おかしい……こんなつもりじゃなかったのに、おかしい。

 あと、別にボクと同じ格好をすることの、どこがいいのかわからない。

 

『ふむ……なら、決まりだな』

『決まりね』

『『『その条件、飲もう』』』

「……そ、そうですか」

 

 結果、まさかの条件を飲んじゃいました。

 あれぇ? ボク、絶対に恥ずかしくて無理、って言うと思っていたのに……。

 なのに、いざ答えを出されたら、まさかの了承。

 

 よく見ると、応援団の人たち目は、欲望でギラギラと濡れている。

 う、うわぁ……。

 ボクがちょっとエッチな格好をするだけで、そこまでする? 羞恥心まで捨てる?

 

「あの、恥ずかしいのなら、無理をしなくても……」

『ふっ、世の中、なんのデメリットもなしに天国に行けるわけがないのだ』

『そうね。何かの対価を払ってこそ、私たちは幸せになれるのよ』

 

 ちょっと何言ってるかわからない。

 そこまで? そこまでして見たいの……?

 他人の気持ちなんて、ほとんどわからないけど……この人たち――というより、この学園の人たちは何を考えているのか、ボクにはさっぱりわからないよ。

 

『じゃあ決まり! 俺たちは当日、男女が出した条件の服装で応援する!』

『『『了解!』』』

 ……回避、できませんでした。

 

 

 結局、依桜が恥ずかしい格好をする、という状況を回避することはできず、そのまま今後の日程と、当日の簡単な概要を説明されて終了。解散となった。

 練習は来週かららしい。

 本来なら、今週からあるらしいが……依桜が出した条件のせいで、服飾部の人たちが参加できない! とのことらしく、結果的に来週ということになった。

 

「しかし、結局面倒なことになったな、依桜」

「あ、あはは……そうだね……」

 

 未果はクラス委員として、何か体育祭関連で仕事があるらしく、今もそっちで仕事をしている。

 女委と態徒は特に用事もなかったので、そのまま帰宅したとのこと。

 未果を待っていようかとも考え、LINNを送ったところ、

 

『待ってくれるのはありがたいけど、まだかかりそうだから先に帰ってていいわよ』

 

 というメッセージが送られてきたので、俺と依桜で帰ることにした。

 

「まさか、俺も巻き込まれるとは思わなかったぞ」

「だって、いっつもボクだけなんだもん。たまには、巻き添えになってもらってもいいでしょ?」

 

 さっきのことを軽く依桜に言うと、少し拗ねたようにぷいっとそっぽを向きながら、そんなことを言ってきた。

 

「……最近、遠慮がなくなってきたな、依桜」

「そう? あんまり変わってないと思うけど」

 

 遠慮がなくなってきたと言うと、依桜はきょとんとした。

 変わってないと思ってるのか、あれで。

 

「変わったよ。なにせ、前までの依桜なら、あんなことを言ったり、俺を巻き込んだりしなかったからな」

「そうだったかな? まあ、晶が言うならそうなのかも」

 

 ここのところ、依桜が少し黒くなる時がある。いや、性格のほうがな。

 大食いの時もそうだったからな。

 あの罰ゲームは結構えげつなかったな。

 

 それに、未果たちにも容赦なくなってきたし。

 いくら幼馴染で親友だからと言って、針を刺すか? しないよな。以前はそんなことしなかったが、学園祭のあの時以降からしだしたものな。

 依桜が女子になって初めて登校してきた時の、態徒とのあれは例外的だが。

 

 そう言った行動にためらいがなくなってきたような気がする。クラスメートにもしていたようだが、その場合は何かしらのトラブルの対処のためだったみたいだ。

 俺たち以外にはあんまりしていない。

 

 ……まあ、だとしても、さっきの巻き添えはちょっときつい。

 こいつ、日頃の恨みでもあるのかね?

 

「でも、あんなことを頼めるのって、ほとんど晶だけだからね」

 

 ……ほんと、狙ってやってるんじゃないだろうな、依桜は。

 顔を少し赤らめ、はにかみが混じった微笑みを浮かべながらのそのセリフは反則じゃないか?

 

「そ、そうか」

 

 思わず、声が裏返ってしまった。

 くっ、やはり、依桜は油断できないな……。

 元々男、と言う事実を知らなければ、あっさり落ちてたぞ、これ。

 それくらい、魅力的なんだよな、依桜は。

 

「それで? なんで俺だけなんだ?」

「だって、みんなの中で、唯一まともだもん、晶」

「まとも?」

「うん。未果は面白がっちゃうと、助けるどころか便乗しちゃうでしょ? 女委に態徒は変態だから、何かしら問題を起こす。でも、晶はそう言うことをしないで、むしろ止めてくれるんだもん。だから、晶なら巻き込んでもいいかなって」

「酷い話だ」

「ふふっ、信頼してるってことだよ」

「……それは、光栄なことだな」

 

 そんな軽口を言いあいながら、帰路に就いた。

 最近、依桜が女子のような言動や行動をとるようになってきたんだが……気付いているのか?

 ……いや、これ無意識だな。

 無意識に、ドキッとする発言をするのだから、本当に質が悪い。

 

 まったく。俺だからよかったものの、態徒がこれを聞いたら、間違いなく暴走するな。

 あと、女委もか。

 未果は……まあ、二人に比べたらマシなものだろうな。

 

 その内、『ボクは男だよ』と言わなくなるかもな、依桜。




 どうも、九十九一です。
 いい感じに、お気に入りされていてちょっとびっくりしました。
 順調と言っていいのかはわかりませんが、まあいいほうなのかな?
 多分、いいほうなのだろうと納得しておくようにします。
 明日は、いつも通り、10時だと思いますので、よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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