異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~   作:九十九一

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89件目 師匠の今後

『あー、えっと……師匠はなんでここに?』

『久しぶりに仕事しててな。ちょうど対象を始末して、よし帰ろう、と思ったらいきなり視界が真っ暗に。で、目が覚めたらなんかよくわからん場所に』

『そ、そうですか』

 

 視界が真っ暗、か。

 やっぱり、ボクとはちょっと違うみたい。

 

 ボクの場合は、学園長先生と王様のせいであれだったから、意識がなくなったりするようなことはなかったけど、そう言った要因がないものに関しては、意識が途絶えるのかな?

 

 でも、これで世界各地で見つかっている、っていう人たちが異世界の人って言う確証が得られた……というより、得られちゃったんだけど。

 

「依桜君、この人と知り合いなのかしら?」

「知り合い、というか……一年ほど一緒に住んでた人、ですね」

「……同棲?」

「あながち間違いじゃないと思いますけど、そういう楽しい話じゃないですよ。師匠です、師匠」

 

 それに、ものすっごく部屋が汚い家で一緒に住んでいて、同棲なんて思ったことは一度もないですけどね。

 

「というと、依桜君の暗殺能力の?」

「そうです」

「ふむ……。それにしても、本当に不思議な言語だ」

「ボクたちからしたらそうですけど、向こうの人たちからしたらボクたちのほうが不思議な存在だと思いますよ」

 

 なにせ、魔力も持たなければ、能力、スキル、職業もないわけだから。

 まあ、職業はあるにはあれど、こっちの世界じゃ肩書だけど。

 向こうの世界の職業と言えば、その人本質のようなものだし。

 

『おいイオ、ここはどこだ? つか、そいつは誰だ?』

『あ、すみません、師匠。えっと、どこから話せばいいのか……とりあえず、一言で師匠の状況を言いますと……ここは師匠からみた異世界です』

『ま、マジ?』

『マジです。見ましたよね? 街並みとか』

『ああ。ミレッドランドの建築技術とは全くの別物だったな』

『それに、魔法もなければ、魔物も、魔族もいません』

『そうなのか。……なんだか、不思議な気分だぞ』

『それは、ボクも向こうに行ったときに思いましたよ』

 

 いきなり別の世界に行って、いきなり魔王を倒してくれ、なんて言われるんだもん。

 特に、魔法やスキルがあるということが、不思議でしょうがなかったけどね。

 

『にしても、異世界か……向こうの世界のどこかなら問題はなかったんだが、ここがイオの住む世界だとすると、下手な真似はできない、か』

『そうですね。こっちの世界だと、向こうの世界の人が持つ能力とかは、明らかに異質です。特に師匠。師匠は良くも悪くも目立ちますからね』

『何言ってんだ。あたしは暗殺者だぞ? あまり目立たないだろうが』

『……目立たない人は、代金をツケにしてほしい、なんて言いませんよ』

『それはそれだ。だが……どうしたものか。そもそも、言葉が通じないこと自体が問題だな……。ん? そういや、イオはなんであたしらの世界の言葉が理解できてるんだ?』

 

 あれ、知ってそうなものかと思ったんだけど、意外と知らない?

 

『『言語理解』っていうスキルですよ。もしかしたら、師匠も得られるかもしれませんよ』

 

 師匠だし。

 

『本当か? なら、手に入れておきたいところだな』

『わかりました。ちょっと待ってください』

「会話が途切れたみたいだけど、何かわかった?」

「学園長先生、一旦話は後にして、国語の教科書……できれば小学生くらいのものってありませんか?」

「教科書? ……まあ、あるけど。もしかして、教えるつもり?」

「教えるって言っても、言語理解のスキルを手に入れてもらおうかと」

「そんなことができるの?」

「確実かどうかはわかりませんけど、師匠だったらありかなって」

 

 知らない間に、謎のスキルやら能力やらを入手しちゃってる人だし。

 ボクですら、師匠がどんな能力やスキルを持っているのか分かってないし。

 

 もしかすると、能力やスキルを手に入れやすくする、なんてスキルを持っているのかもしれないね、師匠。

 

「わかったわ。ちょっと待っててね。すぐ持ってくるから」

 

 そう言うと、学園長先生は仮眠室から出て行き、わずか数分程度で戻ってきた。

 

「はい、これでいい?」

「ありがとうございます。スキルさえ手に入れてしまえば、漢字とかはどうにかなりますから」

 

 パラパラと教科書をめくり、中身を確認。

 あ、こんな単元あったなぁ、と思いつつ教科書を師匠のところに持っていく。

 

『師匠、これが教科書です』

『面白い材質だな。しかも……全部紙か?』

『向こうの本は、表紙が紙じゃなくて、革とかでしたもんね』

『そうだな。それで? スキルの入手条件とかわかってるのか?』

『えっと、おそらくなんですけど……異世界の言語を一文字でも理解すること、何じゃないかなと』

 

 ボクだって、いきなり理解できたわけじゃないし。

 女神様に話しかけられた時とか、何語か分からなかったもん。

 話しかけられた直後に、いきなり言葉が分かるようになって、

 

『言語理解のスキルを与えました』

 

 とか言われたからね。

 

 女神様パワーのようなものが働いたのかもしれないけど、それ以外にも、要員はありそうだなって思った時、もしかすると、一文字でもいいから理解か発音ができればいいのかなって。

 

『なるほどな。ふむ……しかし、文字も不思議だな。んー……お? おお?』

『どうかしたんですか?』

『いやなに。もう言語理解のスキルを手に入れたぞ』

『ええ!? ほ、ほんとですか?』

『ああ。なんだったら、こっちの世界のお前が普段使う言葉で話してみな』

 

 そう言われたので、日本語で話す。

 

「これで、大丈夫ですか?」

「ん、おーおー理解できるぞ! すごいな、このスキル。向こうの世界だと二言語くらいしかないから、あまり意味はない気がするが、異世界だとかなり便利だな」

 

 す、すごい。本当に日本語を理解して話してる。

 というか、一瞬で習得してなかった? 師匠。

 ……どうなってるんだろ、この人。

 

「驚いた。本当に日本語で話してるわ」

「ああ、そうだった。お前は?」

「私は、董乃叡子。叡董学園という場所で学園長をしている者です」

「学園……とはなんだ?」

「子供に教育を与え、将来、社会でやっていけるように教えるための機関ですね」

 

 すっごくざっくりした説明。

 学園のトップの人が言う説明とは思えないほどだよ。

 

「なるほど。で、イオはそこの生徒ってことか?」

「そうですよ」

「それで、あたしはどうすればいいんだ? いきなり異世界に来ちまった以上、何かしら職を探さないといけないんだが」

「あー、そうですね」

 

 ボクは召喚された身だったから、問題なく生活できてたけど、今回の場合は特殊で、住む場所も碌に得られない状況。

 師匠だったら、どこでも生きていけそうだけど、こっちの世界だとちょっと肩身が狭いかも。

 

「仕事、か……。戸籍やらなにやらはこちらでどうにかするとして、仕事と住む場所は早急にどうにかしないとね」

「ですね。放置はできませんし……」

 

 そもそも、ボクにそんな選択をする権利はないですしね。

 ……ボク自身、かなりお世話になった人だし、助けないなんて選択も最初からないわけだけど。

 

「向こうのどこかならなぁ、魔物を適当に殺して金を稼げたんだが……この世界には魔物の類はいないみたいだしな……」

 

 いたら怖いですよ。

 魔物がいたら、この世界相当酷いですよ。

 

「一つ、よさげな仕事があるけど、どうしますか?」

「ん、何かあるのか?」

「ええ。最近、うちの学園で体育教師が一人辞めることになっていましてね。もし、あなたがよければ、そこで働いてくれませんか?」

「え、でも先生、師匠には教員免許なんてあるわけないですよ?」

「その辺りは、私がどうにかするので問題なしです。さて……どうしますか?」

 

 どうにかって……師匠も謎だけど、学園長先生も結構謎だよね。

 そもそも、ボクの戸籍を書き換えたり、戸籍が用意できる、って言ってる時点色々とおかしいような……?

 

「ふむ。その体育教師、と言うのがどういう物なのかわからないのだが」

「それもそうですね。簡単に言ってしまえば、運動を教える人です」

「それだけか?」

「まあ、そうですね。一応、保健の授業もあったりはしますが……そちらはパスでいいでしょう。体育の方に専念してもらえれば」

「なるほど。あたしは体を動かすのは得意だ。引き受けよう」

「ありがとうございます。それでは、明日からお願いしますね」

「明日!? 学園長先生、明日って早すぎませんか?」

「問題ないわ。教師には私の方から連絡しますし、その他諸々の手続きは今日中に済ませますから」

 

 笑顔でそんなこと言うなんて……師匠は強さが化け物だけど、学園長先生も権力的な意味では化け物かも……。

 

「さて、住む場所ね。どこか希望はありますか?」

「あたしとしては、イオの所がいいんだが……両親がいるんだろ?」

「そうですね。でも、一応聞くだけ聞いてみますか?」

「イオがいいなら、頼む」

「わかりました。ちょっと待ってくださいね」

 

 師匠にはお世話になっているし、事情を知っている母さんたちならわかってくれるかも、と思って連絡。

 

「もしもし、母さん?」

『あら、依桜。どうしたの?』

「実はね――」

 

 と、学園長先生絡みの部分は濁して、師匠が来てしまったことだけを伝える。その上で、こちらにいる間は家で住まわせてほしいとお願いすると、

 

『全然いいわよ! むしろ、連れて気欲しいくらいだわ!』

「いいの?」

『当然よ! だって、依桜の恩人なんでしょう? なら、私たち的にも恩人と一緒! それに、会ってみたかったのよね』

「ありがとう、母さん。それじゃあ、あとで」

『ええ。お父さんのほうは、私から伝えておくわ』

 

 意外とあっさり決まり、通話を切る。

 

「大丈夫だそうですよ。むしろ、会いたがってました」

「そうか。それはありがたい」

「でも、いいの? 依桜君」

「問題ないですよ。母さんと父さんは、結構能天気ですから」

 

 むしろ、父さんのほうは美人な人が増える! って喜ぶんじゃないかな?

 ……もし、変なことを言ったらお説教しないと。

 

「そう言えば師匠、いつまでそのローブを着てるんですか?」

「ん、そう言えば邪魔だな。脱ぐか」

 

 今の今まで師匠はローブをずっと着用していた。

 暗殺者と言うのは、なるべく顔を覚えられないほうがいいので、こういったローブは必需品。

 おそらく、脱がなかったのも、学園長先生がいたからだろうし。

 

「へぇ~……随分とお綺麗なんですね」

「そうか? あたしはそうでもないと思うが……ま、多少は整っていると自負してるよ」

「ご謙遜を。……そう言えば、まだお名前をお聞きしていませんでしたね」

「おっと、これはすまない。あたしは、ミオ。ミオ・ヴェリルだ。よろしく頼むよ、エイコ」

「ふふっ、名前で呼ばれるのは久しぶり。じゃあ私も、ミオと呼ばせてもらうわね」

「ああ、構わん。これから、世話になる」

「ええ。ようこそ、叡董学園へ」

 

 教師になる人に、ようこそは変じゃないだろうかと思ったけど、こっちの世界の人じゃないし、いい、のかな?

 

 と言うわけで、しばらく師匠がこの世界に住むことに決まった。

 帰る方法に関しては、例の装置の技術を応用すれば問題なく帰れるとのこと。

 でも、師匠がそれを拒んだ。

 なんでも、しばらくはこっちで生活したい、なのだとか。

 一応はたまに帰る予定らしいけど、ほとんど帰らなさそうだった。

 

 でも、体育教師かぁ……。

 ……体育祭の種目に、生徒・教師対抗リレーがあるんだけど……出場する人が、本当に可哀そうだと思いました。

 

 ……師匠の来訪で、かなり大変な未来になる気しかしないのは、気のせいではないと、ボクは思った。




 どうも、九十九一です。
 ……えー、教師的なあれの細かいところは気にしないでいただけると助かります。
 本当にカオスになりそうで怖いです。自分でも、なんだこれ? 状態ですからね。
 頑張りたいとは思っていますが……つまらなかったらすみません。
 明日もいつも通り10時です。よろしくお願いします。
 では。

依桜の異世界に滞在していた三年間の話をやってほしいかどうか

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