仕事後のお楽しみはゲーム。
うっかり寝落ち? して、気が付くとそこは……。
オーソドックスなスタートです。
勿論、始まるまで長いよ!
何やら大人気ご家庭用の据え置き型ゲーム機もいよいよ5回目の更新という発表がメーカーから有った頃。
俺は仕事終わりに適当にお惣菜を買い込むと、週末の楽しみを思ってニヤつきを押さえ切れないまま家路を急ぐ。
東京……おっと、念の為に住所はボカすべきか。
えーっと、
帰りに川沿いの土手を歩きながらボケーッと眺めると、川面のほうが俺の住んでいるアパート側の地面より高い位置にある気がする、そんな家賃
とある量販店の裏方担当という、一応は販売店勤務なのに職種を問われたら物流業です、と答えるしか無い仕事内容を思い出してちょっと溜息が出る。
まあ、そういうちょっぴり特殊な立ち位置に居るおかげで、お店勤めだと言うのに土日休み。
問屋さんがお休みだから、出勤しても仕事ないのよ。
え? 接客しろ?
入社当初からほとんど倉庫仕事だから、今更店頭に出ても役に立たないよ?
仕事からの帰り道なので、これ以上仕事のことを考えるのはやめよう。
この週末も、俺はいつもと変わらぬゲーム生活予定である。
……は? 彼女?
居ませんが、何か?(キレ泣)
そんな存在が居たらアレだ、ゲームなんぞに引きこもる休日なんぞ選ぶ訳がないだろう。
ちなみに、土日祝日休みだが日曜日はもうひとつの趣味、自転車で皇居周辺に繰り出す――晴天限定――という用事があるので、ゲームは土曜日・祝日及び毎夜
知人友人に毎週日曜に皇居に行く、などと言えば漏れなく勘違いされ、説明が非常に面倒臭いのは最早お約束だ。
自転車趣味の人は一発で
あ、俺はクロスバイク派っす。
ロードバイクとか本気すぎるのは無理っす。
適当に流すのが面白いし、遠出の行き帰りに気軽に自転車停めてラーメン食うとか、幾ら有料駐輪場近くできっちり鍵かけるからって、ロードバイクで出来る気がしないっす。
それが貧乏人ってモンっす。
俺だけっすか、そっすか。
そんな訳で、帰りにスーパーで買ったお惣菜と飲み物を意気揚々と振り回し――きっと後で後悔するだろう――土手の上の遊歩道をふらりと歩く。
そんな時間も自宅が近づけば終わる訳で。
突然の鉄砲水や謎の堤防決壊等が有るわけもなく、居眠り運転のトラックが入ってこれる場所でもないので、何の問題もなく自宅……っていうか自室に辿り着き、狭い玄関――室内保管の自転車のせい――へと
ご飯だけは出勤前に炊いて出る。タイマー機能は偉大だ。
お惣菜を、もう面倒なのでトレイのまま食卓代わりのPCデスクに並べる。
キーボードは収納してあり、邪魔にはならない。
余談だけど、トレイって
俺だけっすか、そっすね。
一応、彼女が居た時分には、1人の食事の時にも、お惣菜であってもちゃんとお皿に並べ、なんか人並みに食事気分を高めて食事してたモノなのだが。
独り身となると、もう本気でどうでも良いのだ。
……
そんな事だから振られるし、それ以降浮いた話のひとつも無いのだ。
考えるとどんどん悲しくなってしまう。
大丈夫だ、まだ俺は27歳。
まだ余裕はある、ある筈なんだ。
焦る必要は無い。
ゲームを始める前に現実逃避を完了させ、PCで適当に動画を見ながらご飯である。
何か見ながらご飯というのも、あまり行儀は宜しくないが、ゲームしながらご飯、よりはマシという……言い訳だ。
ゲーム中のポテチは食事では無い、それは救済である。
ちなみに、TVは無い。
色々とTVに言いたい事は有るが、一番の理由は買うのが面倒なのだ。
面倒な思いをして買って、それでTVを見るかと言えばそんな事は、俺に限って言えば無い。
興味の赴くままに見るにも、ニュースが気になる時も、天気予報や地震情報すら、今やネットで済んでしまうご時世だ。
TV観れます。チューナー内蔵なんで。あ、HDとか諸々ついているので、色々便利ですぜ。
そう仰られても、レンタルしてきた映像ディスクならゲーム機でもPCでも再生余裕ですし、見ないTVを録画する事はない。
そして、余計な機能のない、ゲーム専用のモニターが欲しいなら、職場のご近所で中古を買えば済む。
そんな訳で、今日のご飯のお供動画をチョイス。
お好みは色んな素材――というか思いつきにしか見えない――で包丁を作り続ける男の動画か、ゲーム実況系。
いつもの
理由なんぞ無い。強いて言うなら、思いつきだ。
そんな訳で、今日のチョイスはボカ○歌ってみた系、ただし海外勢。
一昔前(大げさな表記)に比べると海外の歌い手も選別された感があり(謎に偉そう)、安心して見られるのだ(何様)。
……俺の一人称の筈なんだが、なんで俺に対して刺々しいんだろう。
それはさておき、今日の動画も決定。
食事はのんびりと、味わって食べるべきだ。
お惣菜なのにって?
俺じゃ手の込んだ物は作れないから、こういうのも十二分にご馳走なのだ。
手が込んでいなければ、なにか作れるのかって?
焼くのと炒めるの。あ、魚介系は無理。
カレーとシチューは市販のルーが有れば作れる、というかあれは誰でも行けるだろう。
要するにまあ、その程度の自炊能力と言う訳だ。
……イカン、我が事ながら、情けなくて泣けてきた。
よし、気分を変えてご飯だ! いい加減ハラが減った!
今日は豪勢に唐揚げにチキン南蛮、グリル焼き風チキン。
……鶏肉ばっかだな。
好きで買ったんだけどさ。
こうして並べてみると……こう……自分の浅はか……愚か……。
うん、勢いだけで生きてるって気がして心配だね!
あ、ちゃんとサラダも有ります。
はい、バンバンジーサラダ……!
なんで今日に限って売れ残ってたかな……。
見掛けたら買っちゃうでしょうが!
い、いつもはシーザーサラダなんだからね⁉
期せずして鳥三昧を堪能し、いっそ焼き鳥でも買ってこようかと壁の時計を見上げると時刻はもう22時30分を回っていた。
21時閉店で、従業員一同が力を合わせて締めの作業を行っても、帰宅して一息つくとこんな時間である。
まあ、それも今週は終了、週明けまではお休みだから鷹揚に構えて居られる。
それは良いが、この時間ではご近所の焼き鳥屋さんも終了しきっている。
あと20分も早ければ、閉店作業中の大将が「なんだ、またこんな時間を狙って来やがって」とか言いながら残り物をそこそこお安く売ってくれるのだが、流石にもう遅すぎる。
あ、一応言い訳するけど、休日とかにはちゃんと営業時間中に、ちゃんと表示の販売価格+税で買ってるからね?
ご近所に旨い焼き鳥屋さんが有る幸せよ。
しかもあの店、唐揚げも有ってしかもうンまいの。
……明日の昼は、焼鳥と唐揚げにしようかな。
そんな事を考えながらの食事も終わり、きちんと食器も洗ったし、此処からはそう、ゲームのお時間である。
今日も、仕事のアレコレで軋んだ心に潤滑油を。
この週末こそ、念願の
かれこれ1年そこそこのプレイ時間で、色々試して漸くたどり着いた階層97。
挑むのはソロ。
それはさて置き、いざ。
国民的どころか、世界で大人気のゲーム機を立ち上げ、ゲーム用のモニターに光が入ったその刹那。
室内が暗転し、俺は意識を唐突に刈り取られたのだった。
……。
青空を見上げながら、記憶を辿る。
何度か繰り返したが、結果は同じ。
ゲームを始める直前で、キレイに記憶が消えている。
記憶が喪失してる訳ではなく、自分の名前も思い出せる。
井原賢介、27歳。
思い出しながら、草原にあぐらをかいている。
丘から見えるのは、草原と、今いる丘の右手には馬車の
何が有ってどういう経緯で、深夜の自宅から、気がつけば清々しい晴天の下、丘の上に佇んでいるのか。
どなたか是非お教え頂きたいものである。
これが異世界転生とか言う物か、などと埒も無い事を考えて1人苦笑する。
正解は恐らく、意識を失い見ている夢、といった所だろう。
自分が思っているよりも、疲れていたという事だろうか?
腕組みして思い返せば、週末だし、忙しかったといえば忙しかった。
だが、倒れる程だったかと言えば、いつもの金曜日並でしかない。
というか、昨日今日の疲労で倒れたとかでは無いだろう。
日頃の疲労の蓄積という奴か。
驚きの能天気生物と自認していたが、どうやら人並みに疲れるらしい。
……今、
それはさておき。
目が醒めたら、きっと朝だろう。
せっかくの土曜日だが、健康はあって当たり前のものではない。
素直に病院に行こう、そう心に決めて、今はせっかくだし、夢を楽しむのも良いだろう。
あぐらをかいたまま、両膝、と言うより両腿を叩いて、立ち上がりながら自分が左腕に甲冑を装着していることに気が付いた。
あー。こういうの好きだけどさ。
なんというか、夢の中で自分がこういう格好してるって、なんか恥ずかしいな。
普段からこういうの身に着けたいって思ってるって事だろうか。
照れ隠しに鼻を掻こうとして、指先が硬質ななにかに触れる。
顔の前に、何かがある。
ソレに触れる。
視界が普通に確保されていたので気が付かなかった。
何かを……仮面? ヘルメット? を
夢の中とは言え、混乱しつつ手探りでソレを外す。
何故か手慣れているのが気になるような助かるような、そんな微妙な気分で外したソレを確認する。
のっぺりとした、見た目は金属製のマスク一体型のヘルメット。
いや、ヘルメットと言うには、頭頂部が
それは、まるで、髪を出すため、と言うように。
実際にはメインが仮面部分で、ソレを固定するために簡単な金属パーツがヘッドバンドのように
なのだがそれは、まるで頭部寄りにまとめたポニーテールが邪魔にならないように配慮されているかのようで。
いや。
いやいやいや。
不審なのは、とても外が見えるような造りにはなっていないにも関わらず――実際、こうして手に持ち、しつこく眺めてみても、向こうが透けて見えるわけではないと言うのに――先程はこんな物を
それに、この、ファンタジー臭漂う世界の中で、あまりにもシンプルなこのデザイン、というかいっそ不気味なほどのっぺりとした仮面には見覚えが有る。
いやぁ、俺、こういうの嫌いじゃないけどさ、ねぇ?
……いや、もう目を逸らすのはよそう。
コレは、俺が、ゲームでの愛用キャラに装備させている愛用の頭部装備。
そいつの、見た目を変更させてある物――
恐る恐る、俺は視線を下げる。
夢だと気付いたときから、自分の
しかし、ヘルメットというか、仮面を見て、その正体に気付いた以上……確認しない訳には行かなくなった。
そこに有ったのは、いつもとは違う視点……主観視点で見る、
ゲーム内での最近イチオシの愛用装備。
実装されて即課金した、およそゲームの世界観にはそぐわない、軍服風コスそのものだった。
正直に言おう。
まず、俺はライト層、所謂エンジョイ勢だ。
言うほどガチガチなビルド――装備だけではなく、スキルや潜在能力も含めた構成――じゃない、というか「エンシェント」ランクの装備さえ揃えればそこそこ火力が出せると言うのが気に入り、基本となるその装備に手を出したのだ。
ちなみにゲームではエンシェント装備がゲーム内では上から2番目の等級だったりする。
そうこうしている内に愛用装備に奇跡の上方修正が入り、大幅に火力が上昇した。
武器とサブ武装をあわせて全身13箇所にも及ぶ装備箇所、その全てをエンシェント品に出来れば、驚異の9750%
正直に言って狂気の数値。
まあ、他のガチ系装備はもっとヤバい……条件付きとは言え14400%とかだったりするので、俺の装備ではなんとか
この時点で、ちょっとビルドを意識し始め、ただのエンシェント装備ではなく、自分が欲しい性能とスキルを持つ装備を集め始めた。
最上位を探さないのかって?
探してホイホイ手に入るなら、苦労なんてしないんですよ。
エンシェントだってそうそう
そしてある程度の装備が整った所で、まさかの再上方修正。
今までは指輪の装備枠2つに特定の装備、それもエンシェントが必要だったというのに、同じ機能を持つ宝石――装備に嵌め込んで特殊な効果をもたらすアイテム――が実装されたのだ。
当然条件は有って、今までは指輪2つで装備品によるセット効果を発揮していたのだが、新実装の宝石は「ひとつもセット効果を発揮させてはいけない」となっている。
だが、それは何の問題にもならなかった。
指輪2つは今まで拾ったけど使う機会のなかったエンシェント指輪に変更してしまえばそれで良かったし、寧ろそのお蔭で指輪の持つ特殊効果を2つも獲得できることになったのだから。
今までは指輪はセット効果の為だけのモノだったから、それ以外の効果なんて無かったんだから。
思えば、ゲーム内の俺的快進撃は其処から勢いを増した。
深層領域に潜るのが楽しくなり、ソロだと言うのに90階層を余裕で超え、エンシェント装備を手にする機会も比較的増えて。
装備の吟味を行い、装備の
気が付けば、俺好みのお気楽探索装備が完成していた。
具体的に言えば、ボタンひとつで2つのスキルと2つの追加攻撃、都合4種の攻撃が発動する、お手軽ジェノサイドセット。
操作が簡単である、と言うのがキモだ。
咄嗟に慌ててミスる、なんて言う事故が減るし、なんと言っても最大4重攻撃は火力もそれなりに高いので安心できる。
ああ、強くなったもんだ。
そして此処まで長かった。
おいちゃん――でもまだ27歳――、なんか泣けてきちゃう。
はっとして、冷静になる。
今は自分の装備状況に自分で酔っている場合じゃない。
短時間反省すると、俺は自分がどういう状態かが気になり、恐る恐る――いつもの様に――ステータスを確認する。
手元に馴染んだコントローラーが有る訳ではないが、装備を確認したいと思ったときには、それは目の前に浮かび上がった。
間違いない。
そして、これが夢であることもまた、間違いなかった。
夢という事は、目の前の情報は俺の記憶から引っ張ってきてるものだろう。
装備名やその説明まで細かく覚えてて、ご丁寧にゲームで見慣れたステータス画面になっている事実に自分で引くが、これは。
これは間違いなく、ゲーム内で俺が装備していた物たち。
そして肝心の
俺はステータス画面を消し、改めて、観念して自分の
俺は、女が好きだ。
ゲームで、概ねソロで遊ぶ世界。
言うなれば「俺だけの世界」で、何が悲しくて男の背中を見ていなければならないのか。
そこに居るのは自分の分身、性別変更なんか論外と言う人々が居ることも知っている。
無論、考え方は人それぞれ、楽しめるならソレで良いと思う。
だが、俺はイヤなのだ。
どうせ眺めるなら、男の後頭部より女の尻である。
こんな俺なので、ゲームを始めるに当たって、当然のように自キャラは女。
敢えて声に
ネカマと言うのは女である様に振る舞う事であろう。
俺は、男であることを公言し、女キャラを使用する理由を問われれば――聞かれることなど滅多に無いが――胸を張って上記のように答えたものだ。
そう、つまり。
今の俺は、女ボディの男と言う、最高に王道なステータスを手にしたのだった。
なにが「つまり」なのか、混乱している俺に問うのは控えて欲しい。
愛用の胸当て越しに胸を触って自分でドギマギしてみたり、股間の落ち着きの無さに、失った息子を想い情けない溜息を漏らしたり嘆いたりしつつ、どうせ夢なのだから男に変化出来ない物かと考えるが、そこはうまく行かなかった。
なんでだよ、そうは思うが男キャラなど使ったこともないからそれも当然な訳で。
いや、そうじゃないだろ、元の自分の
大体、女好きなのは俺が「男」だからであって、女になりたいなんて思ったことは1度たりとも無い。
ここは重要なポイントだが、「女好き」と「女になりたい」の間には果てしない距離がある。
ホントに、明日目を覚ましたら即病院行かねば。
ゲーム内で自分の使用キャラになりたかったとか、病んでいるにも程があるだろう。
溜息
それはソレとして、である。
爽やかに風がそよぐ丘と、抜ける様な青空。
どう見てもいつものゲームのダークなファンタジー世界とは違う風景だが、これは一体、俺のどんな逃避願望なのだろうか。
いや、あのゲームの世界に行きたいかと聞かれたら全力で
それはさておき。
変身願望と、逃避願望か……。
本格的にヤバい予感がする。
入院とかになったらどうしよう。
と、暗くなっても仕方ない。
折角見ている夢なのだから、多少遊んでも問題あるまい。
右手を何気なく掲げ、収束魔力束……は流石にアレなので
何気なく、強いて言えば使えるかどうかの確認的な意味で、特に意味も無くソレを1発、放つ、
何かをタゲって居た訳でも無いので、それは僅かに上昇しながら宙を舞い、すぐに切っ先を地面へと向けるとひらりと空を滑りながら、15メートル程先の地面へと落ちていく。
ああ、ゲーム内の挙動と同じだなあ。
ターゲット……敵を狙って居ない時の
そう言えば俺、
そんな事をほのぼの考えて居た俺の目の前に。
見た目に反して大地を大きく抉る
これも、
多分、違う。
ゲームの世界は基本頑丈で、せいぜいがテクスチャで誤魔化してる
あのゲームはハクスラゲーの金字塔と言うだけ有り――かどうかは定かではないが――ステータスがおかしいゲームの一つだ。
序盤は良い。
だが、ストーリーをクリアし、装備を整え――順番がおかしい? いや、この順番で合っている――エンドコンテンツの1つ、「深層領域」に挑むようになると、与えるダメージがおかしなことになるのだ。
まず、ダメージ表記が、気が付くと「30M」とかになる。
メートルではない。
「メガ」表記かな? と思うかも知れないが、正解はミリオンの略である。
意味はほぼ同じだが。
要は、1Mと表示されたらそれは100万ダメージを超えましたと言うことで、30Mとなったらそれは3千万ダメージということだ。
これが4桁、3000Mとなれば、それは30億ダメージと言うことで、途方も無い数字だと理解して頂けるかと思う。
これが、その上になるとどうなるか?
正解は「B」、即ちビリオン……10億ダメージ表記になる。
30Bと表示されたら、即ちそれは3百億ダメージ。
幾らゲームとは言え、そんな馬鹿な、と思うかも知れない。
しかし、このライト層の俺でさえ、自力で1500B
トップランカーなんかはどういうダメージの世界で戦っているのか、想像も出来ない。
ちなみに、被ダメージはそれほど大きくない。
今の俺の自キャラのHPが90万そこそこで、1~3発程度は耐えられる。
その上でダメージカットの障壁を張ってたりするので、そこそこ殴り合いでも耐えられる。
え? ダメージ差が卑怯?
4桁
などと、夢の中で現実逃避と言う離れ業を披露してしまったが、いかん、思考を現実……じゃない、夢では有るのか、とりあえず目の前に戻そう。
先程までの風のそよぎが戻ってきても、抉られ、焼かれた大地はおいそれと元に戻ることはない。
俺は自分のキャラクターの
それは両手に持つそれぞれの武器の効果。
特定スキルのダメージを上昇させるほか、他の特定のスキルたちをも同時に発動させる、チートですか? 以外の感想が浮かび
なにがチート臭いかと言えば、追加で発動するスキルはプライマリ・リソース……
なのに威力は普通に使うのと変わらないのだ。
スキル同時使用でMP消費がスキル1個分とか、別ゲー者に言ったらチート扱いされること請け合いである。
その同時発動の条件だが、実に簡単である。
先程の例で言えば、トリガーとなった魔法が「
それがただ一発で恐らく20M、2千万
意外と低いのは、どちらの装備のスキルとも、発動までに1秒以上スキルを使用し続けなければならない関係上、放ってすぐのダメージはどうしても大したことがないのだ。
え? 2千万で低いのかって?
さっきも説明したが、ダメージの桁がおかしいから感覚が狂うのだ。この辺は、ぜひともあのゲームをプレイして体感して欲しい。
そしてハクスラにハマると良いと思うよ?
冷静に考えると、2千万以上のダメージを叩き出しといて
そして、その
今は何処から降ってきたか見てなど居なかったが、アレは「
その「
本気で隕石だったら、もっとシャレにならないことになると思うので、俺はあれを火球呼ばわりだ。
そもそもあんな至近距離に隕石落下とか、普通に死ぬ。
そんなダイナミックな自殺なぞ、望む所ではない。
とは言え俺の切り札でも有るので、威力は折り紙付きだ。
複数個に分散されているので威力もお約束に従ってそれぞれは低い。
しかし、もう説明も面倒になるようなアレコレの特殊能力の重なりによって、低いとは言え1発あたり1500B~2500Bのダメージになる。
そう考えただけで、トップランカー達の事を考えたく無くなる。
兎も角、最大でそこまでの威力を叩き出す火球群は、幸いにも今はスキルダメージが乗り切らない状態だった。
それでも1発あたり150B
ゲームと違って、
俺の知ってるダメージ値が大地に与える影響というのは、正直ピンと来ていないが、それでも目の前に1個あたり直径20メートル程度のクレーターとして広がって頂くと、大変解りやすい。
一応、曲がりなりにもクレーター状態になって居るので、やはり威力は侮れない。
これで最大威力状態だったらどうなるのか、考えただけでヒュンとしてしまう。
今の俺には、ヒュンとするモノは無い筈なのだが。
そんな、割とすぐ目の前の惨状に、素直な別の疑問も湧いて出る。
俺はなぜ無傷なんだろう?
俺の知っているゲームのそれより遠目に落ちたとは言え、この距離なら充分至近弾と言えるだろう。
衝撃だってそれなりに有る筈なのに、俺は吹き飛ばされもしていない。
……って、そっか、これは夢だったな。
何度目かの自己確認に、途方にくれて空を見上げた俺は、どうせ夢なんだから飛べないかと思案してみたりもしたが。
飛べる事もなければ、いつものゲームの様に、破壊された
飛べない以上、歩くしか無い。
夢だと言うのにユーザーに優しくない。
ゲームだったらマップで行き先指定で一瞬だと言うのに、ゲームの仕様に負ける夢とは一体何だというのか。
なんとなく大地を荒らした現場に居たくなかったので、ついでに街でも探そうと歩き出したのだが。
どうせあれでしょ? この道沿いに歩いたこの先、草原の
夢なんて、
この景色に見覚えがない、って事実はスルーで。
さて、夢の中で出るのは秋葉原かな? それとも、うちの近辺だったりして?
無責任にワクワクしながら、しかし黙々と歩く。
そりゃそうだよ、独り言ブツブツ垂れ流しながら練り歩くとか、どう考えてもアレだろう。
そんな事を考えながら、街道を
街に近づいているのか遠退いているのかもサッパリである。
これ、街に行けないとか言う
いや、いやいや。幾ら夢でもそれは性格が悪すぎる。
信じて進むだけだ。
うん、カッコいい。
単に、引くに引けない距離を歩いちゃってるだけ、とか言ってはいけない。
それにしても、こう、行く宛の無い旅路と言うか、先の見えない道ってのは不安が募る。
俺の夢のクセに、随分と手の込んだ嫌がらせじゃないか。
……どうにかしてこの嫌がらせじみた不安行軍から開放されないものだろうか。
そんな事を思いながら空を見上げた俺は、唐突に思い付いた。
きっと、現実であれば、思い付いても実行などしなかっただろう。
それはバカバカしいから、だけではなく。
可能だった場合、冗談抜きで命に関わると、子供でも
しかし、今は夢の中だ。
寧ろ、これを切っ掛けに飛行能力なんてものに目覚めるかも知れない。
良いじゃないか、夢は自由であるべきだ。
謎の強気で自分を鼓舞すると、俺は……少し考えて周りを見渡し、街道から少し離れた所で、地面に向けて両手を、いつもと違って地面に向けて構る。
右手の剣は切っ先を向けるのではなく、剣の腹を見せるように自分と相手――この場合は地面――とを結ぶ線に対して直角に交差するように、左手の魔宝珠は右手に添えるように、しかし触れないように絶妙な位置で。
いつもはゲームで、ボタンひとつで繰り出す得意攻撃である。
ソレも「
だから、今度は予め「
戦闘とかになるようなら、戻せば良いのだ。
気を取り直して、俺はソレを発動させる。
どうやって発動させるかを考えるより先に、頭の中でコントローラーを操作する如く。
呪文の詠唱どころか魔法名を言うこともなく、ソレは発動した。
収束魔力束。
それはウィザードの代表魔法とも言えるもの。
武器と俺自身の基礎ステータスだけでもそこそこの威力――実は
名前に「束」が2つも入って、完全に日本語ローカライズ班がやらかした感が漂うが、別に修正される事も無い。
読みに非常に困るのだが、俺は開き直って「しゅうそくまりょく
ローカライズ班は、音読しなかったんだろうか。
読みとか名付けの微妙さは兎も角、それ単体でかなりの火力を見込める、主砲と言って差し支えの無い火力。
迸る火線を、俺は迷わず大地に叩きつけた。
ゲーム内で出来る挙動ではないし、遊んでいて反動が有るような様子など見受けられなかったが、きっとアレだ。
凄い魔法技術で制御してるんだろう、きっと。
それにこれは夢だ。
何でも有りの夢だったら、「極太ビーム魔法を推力に飛行」とか、余裕だろう。
言うほど極太じゃないが、代わりに火属性の「魔力拡張」スキルで、同時に2本発射のイカツイ仕様に変更済みだ。
ちなみに、普段は「混沌の産声」というスキルを付与してある。
説明は、夢から覚めて覚えていたら、しようかな。
どうでも良い事を考えてる間に、発動から1秒経過。
急速に威力を上昇させた「
正直、夢だと言うのに滅茶苦茶怖い。
高度感がリアルで、浮遊感がリアルで。
割と遠目になにか城壁のような物が見えた気がしたが、そんな物の確認などする余裕もなく、恐怖心から「
やばい、やばいっ!
慌てて「
落下に拮抗する程の出力を発揮する前に、俺は比較的やんわりと、腕を突き出した姿勢のままで大地に手荒く受け止められたのだった。
激痛にのたうち回ることしばし、これは絶対に腕が折れてる、というか折れてるで済んでる気がしない、そう思いながら何とか
痛みこそ残るものの、俺の両腕は健在であった。
あの高さから、いくらか減速したとは言え腕からモロに落ちたと言うのに、これは……。
そう真面目に考えかけた所で、はたと気が付く。
そう、これは夢なのだ。
途端に、
夢なんだから、どうせならさっき見えた建物? 壁? に向かって飛んでみても良かったな。
そう思う俺だが、じゃあやって見よう、とは思わなかった。
だって怖かったんだもん。
幾ら夢だって言っても、怖いもんは怖いんだよ!
そんな事しなくても、もう歩いて行けそうな距離には見えたし、きっと大丈夫。
さっきの高さとその臨場感を思い出し、足が震えるのに任せ、少しの時間だけ、その場で立ち
ハクスラ楽しいよね!
具体的に言うと、辞め時がわからないくらいに!
主に魔法の名前とか、まだまだ手直しします。