一応の目安として、この作品の1話あたりの文字数は7千〜1万文字ぐらいになるようにしてます。
明日には、アカデミー入学式が控えている。原作ではアカデミー卒業間近のと事からスタートしていたはずだから、原作開始が目に見えてきた。だからと言って、何かしら特別な事をする訳でもない。いつも通り、原作前のナルトのように「問題児」「化け狐」「ぼっち」「落ちこぼれ」の4つを演じる裏で修行するだけである。
いつも通りに過ごす。それは三代目火影を見殺しにするという事実に他ならない。三代目は火影という忙しい立場であるにも関わらず、俺を気にかけてくれている。なんなら、昨日は俺の家にだって来てくれて、一緒にご飯を食べてくれた。その時の三代目の心境はどんななのだろうか。
化け狐である俺になんて関わりたくないとかは流石に思っていないだろう。それなら、俺と関わる事などしないはずだ。俺の父、四代目火影の忘れ形見として育てているのか、里のパワーバランスの為に幼い俺を人柱力とした事に何かしらの思いを抱いているのだろうか。俺には人の心の内を読めるような忍術も洞察力もない。だが、複雑な気持ちであるのは間違いないだろう。
直接、手を下すのが俺でなく大蛇丸にしても、知っていて何もしない俺は殺害の一端を担っていると言っても過言ではないだろう。俺がアカデミーを卒業して、下忍になった時期に「気を付けて」の一言でも言えば、もしかしたら生き残る事が出来るかもしれない。それでも、俺は何かを言う事は無いだろう。未来が変わる事を恐れる臆病者である俺は。
話は変わるが、年は年なんだから、三代目はタバコとカップラーメンは止めておいた方が良い気がする。タバコは言わずもがな、カップラーメンも体に悪い物が詰め込まれている。体に悪い物ダブルパンチである。家に来る度に苦言を呈しているのだが、聞く耳など持ってもいない。一向に生活態度に改善が見られないのは、如何なものか。
修行をしているおかげで螺旋丸を会得する事は出来たし、亡き父が得意としていた飛雷神の術も会得する事が出来た。父のように特注のクナイでもあればいいのだが、そんな代物を俺に作ってくれるような人などいない。
俺の場合は、クナイの柄にマーキングを施した札を括り付けるような簡単なものだ。それにしても、飛雷神はとても便利なものである。「マーキングがある場所限定」という制限はあるが、どこでもドアのようなものだ。家の壁にマーキングでも施せば、一瞬で帰宅する事が出来る。
俺のマーキングのマークは、六芒星の中に渦巻き模様が描かれた単純なものである
多重影分身のおかげで、螺旋丸に性質変化を加える事にも成功し、螺旋手裏剣も会得が完了した。今は原作のように影分身を併用しなければ、成功しないのだが、ゆくゆくは単独で成功できるように修行中である。修行中の怪我(主に螺旋手裏剣)が原因で片手が数週間動かなくなったりで大変だったのは、今でも記憶に残っている。うずまき一族由来の生命力の高さのおかげで、死にかけるような事があっても、生き延びる事が出来たのは幸いだった。
九喇嘛との仲も比較的良好で今は「良き隣人」程度の認識である。あとは、俺の前世について知る唯一の者である。もしかしたら、封印に組み込まれた父と母も俺の精神世界に住んでいるようなものなので、その2人が知っている可能性もあるにはあるが、それを確かめる手段はない。いや、あるにはある。俺が封印を解こうとすれば父が、九喇嘛と戦おうとすれば母が出てくるだろう。だが、前世の云々を確かめる為だけにそれをやるのは、流石に駄目だろう。もしかしたらの時の為に温存しておくのが無難だろう。
あとは俺の知る原作の内容を記したメモ帳なんかもある。俺が忘れないようにする為である。明日も、その明日も俺が過去を覚えている確証など何処にもない。「前世の記憶を持つ」なんていうイレギュラーな事態がどう変化するなど、俺なんかでは予想する事も出来ないから。よく見かける「世界の修正力」なんていう謎の力が働いて、俺の記憶から前世など消えるかもしれない。
そうなったら、メモ帳ごと消えていそうだが。そういえば、そのメモ帳を書いている時に気が付いたのだが、原作のNARUTOの展開を事細かに全て記憶していたのだ。NARUTOという創作物は、とりあえず長い。完全記憶能力でもない限り、事細かに全ての展開を覚えるのは、困難を極めるだろう。
だが、そうでなかった。それについては、疑問を持ったのだが、今の俺が気にした所でその疑問を解決出来る訳でもない。そういう事で気にするのも無駄だろうと思い、途中で考えるのを止めた。
とりあえず、色々と記したメモ帳である。誰かに見られると厄介事では済まされないような代物だから、対策はしている。正しい番号で開かなければいけない錠を施してある。番号は適当で「
下手な隠蔽として、机の引き出しを2段重ねにする仕掛けもしておいた。引き出しの底には、メモ帳を隠して、その上に木の板を置く事で簡単に見つからないようにしている。自分でもやり過ぎなのかなと思うかもしれないが、まぁ、やらな過ぎるより、やり過ぎの方が良いだろう。
あとは時々、うちはサスケを見かける事がある。俺程ではないが、腫れ物のような扱いを受けている。だが、それもそうだ。うちは一族唯一の生き残りという肩書きを持つサスケに対して、普通に接しろと言うのが土台無理な話だ。かと言って、俺とサスケが仲が良いという事はないのだが。
アカデミー入学前にあった事といえば、これぐらいだろう。明日からアカデミーに入る事を考えると憂鬱にしかならない。里では「問題児」「化け狐」と名を馳せている俺だ。アカデミーで厄介事に巻き込まれないなんていう考えは捨てておいた方が良い。
原作のナルトは、春野サクラという少女に恋をしていたし、それを公言していた。個人的には、別に興味も無ければ、目も奪われない。ぶっちゃけ、タイプでも何でもない。そこらにいる里の人と同じにしか感じない。思い入れが全くない人を好きと言うのは、中々に抵抗がある。だが、春野サクラとの接点がほぼ無かった場合、班分けが原作とは異なる未来も有り得る。そうなった場合、未来にどんな影響が出るのか、想像もつかない。その事を考えると、『うずまきナルト』と同じように振る舞った方が良いのだろう。
全くもって憂鬱である。
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アカデミーに入学して、数年が経った。アカデミーでは実技や座学があるのだが、ほぼ退屈な授業だった。座学では、新鮮味のあるのは忍の歴史ぐらいだろう。計算の授業などもあるのだが、前世の記憶がある俺からしたら、退屈以外のなにものでもない。実技では「落ちこぼれ」を演じるのは、中々に骨が折れた。誰かと組手をする時に、反射的に反撃しそうになるのを抑えるのが大変だった。影分身での戦闘経験の大量の蓄積故に「相手が○○をしたら○○で反撃する」というのが体に定着しているのだ。
もはや、癖と言っても良いだろう。それを意識的に抑えるのが本当に、本当に大変だった。
大変な事ばかりで嬉しかった事もない訳では無い。アカデミーに通う裏では、いつも通りに修行をしている。その修業が実り、新たな忍術を会得した時は嬉しいものだ。新技とか、少年心が揺さぶられる。螺旋手裏剣を影分身を使わずに、単独で使う事が可能になったりもした。忍具の扱いも向上したが、一番大きな成果は「仙人モード」に慣れるようになった事だろう。
仙人モードとは、自然エネルギーを取り込んだ仙術チャクラを練った状態のこと。自然エネルギーとは、世界に満ちるエネルギーである。身体エネルギーと精神エネルギーという2つのエネルギーを練って作られるのが一般的にチャクラと呼ばれるものである。だが、仙術チャクラとは、その2つに自然エネルギーを合わせて、3つのエネルギーを練り合わせて作られる特別なチャクラの事だ。
仙人モードになると、まず基礎能力が向上する。それは身体能力であったり、感知能力であったり、忍術の威力であったりと、色々な恩恵がある。これだけ聞くとメリットしかないように聞こえるかもしれないが、デメリットもある。
まず、仙術チャクラを練る間は一歩も動く事は出来ない。次に仙人モードにも制限時間がある。戦いの中で一歩も動く事が出来ないというのは、致命的だ。戦う前に仙術チャクラを練ったとしても、戦いの最中に切れる可能性も高い。
そんな感じで一長一短の力なのだ。ただ、仙術チャクラを練る時間が1秒ぐらいの人もいたりする。そういう人には、デメリットなど存在しないようなものだろう。切れてもまた一瞬で練り直せばいいだけなのだから。
流石に俺は、そこまでの化け物にはなれなかった。俺がチャクラを練り終わるまでには、凡そ10秒程かかる。修行をしているおかげか、少しずつだが、時間が縮まってきている。それでも、まだ実践投入には程遠い。戦いの中で10秒も止まっていれば、敵に「どうぞ殺してください」と言っているようなものである。
ちなみに仙人モードになる為には、秘境と呼ばれる地で修行をするのが一般的である。今の俺に秘境に行けるような伝手もないので独学で会得した。原作の『うずまきナルト』が1週間ほどで会得したのに対して、俺の場合は2年弱かかっている。あの多重影分身を併用した修行方法でさえ、それ程の時間が掛かるのだ。本当だったら、より多くの時間が掛かっていたのは間違いない。
確かにこれ程の時間が掛かるのなら、秘境に行って誰かに修行を施してもらった方がマシだろう。
仙人モードになると、目元にオレンジ色の隈が浮かび上がる。原作の主人公は、瞳が蛙のような形に変化していたのだが、俺の瞳は至っては特に変化しなかった。秘境で修行をしていないのが影響しているのだろうか。
そんな感じで修行をしていたおかげで俺本来のチャクラ量も増大した。「お前は何処に向かっているんだ」とは、九喇嘛の言葉である。九喇嘛曰く、俺の本来のチャクラ量は今は尾獣一歩手前らしい。このまま修行を続けていると、その内には尾獣すら超えるのではないかとさえ懸念しているようである。
長い時を生きてきた九喇嘛でも、ここまでのチャクラ量を持つ人は見た事もないらしい。そもそも、俺の血反吐を吐くまでやり続ける修行方法は、常軌を逸しているらしく、俺の修行は忍の歴史の中でも類を見ない程に苛烈らしい。確かに原作の体術バカを見習って、手足に重りを付けたりもしているが、それ程だろうか。
250kgの重りを4本の手足にそれぞれ付けているから、合計で1000kg。前世で分かりやすく例えると、軽トラ1台程度である。漫画の世界とは素晴らしいもので修行をすればする程に強くなっていく。俺の前世でこんな事をすれば、起き上がる事さえままならないだろう。
……それを考えれば、常軌を逸していると言ってもいいかもしれない。
だが、反論はある。実は、仙人モードになると、この10倍ぐらいの重さぐらいなら楽勝で持ち上げられる。それぐらい仙人モードが凄いと言えるのかもしれないが、そんな仙人モードでも原作の主人公は、ペイン六道という敵に苦戦している。というか、あれは仙人モードオンリーの勝利とは言えないだろう。尾獣のチャクラで暴走して戦ってもいたから。
しかも、そこから敵はさらに強くなっていくのだから、今の修行でも足りないように思えてくる。まだ、その敵が出てくるまでに時間があるとはいえ、このままで勝てるのだろうかと不安になってくる。
そんな不安を感じてしまう原作もあと1年もしない内にスタートしてしまう。原作は、主人公達がアカデミーを卒業して、下忍になる辺りでスタートする。アカデミーを卒業する為には、課せられた試験をクリアするのが条件だ。原作の時は、その条件は分身の術を先生の前で成功させる事だった。
そして、今日、アカデミーから知らされた内容によると次は分身の術の試験らしい。つまりは、原作開始であるという事だ。
大丈夫。今までも原作通りに進める為に何度もシュミレーションしてきたのだ。失敗などするはずもない。失敗など許される訳がない。
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無事に分身の術の試験を落ちる事が出来た。試験に落ちたのにも関わらず、無事にという言葉が適切なのか、全く自信がないが、原作通りの展開にする事が出来たはずだ。アカデミーの前にある木にぶら下がった1つのブランコ。それを漕ぎながら、アカデミーの試験に合格した人達を眺める。
「1人だけ落ちたらしいわ」
「ふっ、いい気味だわ」
そんな大人2人の会話が聞こえてきた。あの距離で聞こえないとでも思っているのだろうか。もし、そう思っていたなら、脳の異常を疑うレベルである。まぁ、そんなのはこの里にいる殆どの大人に当てはまる事だから。集団で異常が発生しているとか、この木の葉隠れの里には未来がなにのかもしれない。
そんな風に思いながら、ブランコを漕いでいると横から声を掛けられた。
「ナルト君」
そっちに顔を向けると、白髪の大人がいた。アカデミーに努める先生の1人であり、原作ではナルトを唆した男である。名前は覚えていないし、覚える気もないし、覚える価値もないだろうが。面倒だし、白髪と呼ぼう。
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「君にとっておきの秘密を教えてあげよう」
白髪との会話はどうでもいいので、雑な相槌を打って、言葉を左から右へ流していると、そんな言葉が飛び出してきた。
曰く、火影が持っている「封印の書」を持ち出せば、下忍として認めてもらえると言うのだ。
「んな訳あるか」
そう言いたい衝動をなんとか抑えて、とりあえずは興味を持ったように見えるように顔を輝かせておいた。その瞬間、白髪の顔がいかにも悪そうな笑みを一瞬だけ浮かべていた。本当にその言葉を真に受けたとでも思っているのだろうか。よくもまぁ、そんな意味不明な言葉で騙せると自信を持ったものだ。
やっぱり、この里には頭がおかしい奴らしかいないのではないかという不安は的を射ているのかもしれない。この里、やべぇな。
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日も暮れ、辺りが暗くなる頃、俺は里の中にある林にいた。
足元には「封印の書」と書かれた大きな巻物が置かれている。影分身やら穢土転生やらが記されている。だが、俺は穢土転生なんぞする気もないし、影分身も既に会得している。つまり、この書の中を見る必要など皆無という事である。
封印の書はそこら辺に置いておいて、目的の人物、イルカ先生が来るのをひたすらに待つ。
既に何人かの忍が来たのだが、イルカ先生ではなかったので姿を見られないように後ろから一発食らわせて、気絶させておいた。あとはそこら辺にポイッと捨てておいた。もし、俺にやられたと分かっても、誰かに言うような事はないだろう。「見下していた九尾のガキにやられた」なんていう醜聞を好き好んで、ばら撒くような人がこの里にいる訳がない。
あ、来た。
「ナルトッ!」
後ろにいたイルカ先生が俺に拳骨を振り下ろした。避けることも出来たが、わざと食らっておく。
「いてぇええ!?」
ついでに演技で痛がる振りもしておく。これで完璧。その瞬間、イルカ先生が何かに気付いたように顔を強張らせ、俺を突き飛ばした。イルカ先生の背後から無数の苦無が飛んできて、イルカ先生に刺さる。イルカ先生の服を真っ赤な血が赤く染め上げる。
ある木の上には、俺を唆した(と思っている)白髪がふんぞり返っていた。あの嘘を本当に信じたとでも思っているようだ。頭の中がどれだけお花畑なんだ。バカにしたいのを必死に抑えて、状況が飲み込めていないような表情を作る。俺がどれだけの間、顔を作って来ていると思っているのだ。これぐらいの事、朝飯前だ。
白髪は、悪そうな笑みを常に浮かべて、とある話をし始めた。
曰く、12年前に里には、とある掟が作られた。
曰く、それはナルト、要するに俺には話してはならない。
曰く、その掟は俺が化け物である事、九尾の正体である事を口にしてはならないというもの。
……全部知っているし、しかも、その掟には間違いもあるが、口にはしないでおこう。俺は正確には九尾でなく、人柱力である。その間違いのある掟のせいで里の連中は俺に殺意を向けてくるが、それは本当にバカである。
俺を殺したら、中にいる九尾は表に出てくるだろう。俺の中に九尾を封印したのは、四代目火影である。しかも、命を賭けてまで。つまり、俺を殺すというのは、四代目火影の決死の思いを踏みにじる事と同義である。それを里の連中に知らされたら、どんな反応をするのか、ッ個人的には楽しみであるのだが、言うつもりはない。
ちなみに、白髪の話を聞いていた九喇嘛は、爆笑していた。
白髪の話を聞いた俺は「なん……だと……」みたいな表情を作っておく。それを見た白髪は気を良くしたのか、聞いても無いのに、ぺらぺらと語り始めた。やれ、里の連中は俺を憎んでいるだとか何とか。あれだけ、里の大人は露骨に嫌悪感を丸出しにしているのに、そんな事に気が付かないとでも思っているのだろうか。
まぁ、俺を憎むというのも分からんでもないというのが本音である。俺の中には、里を滅茶苦茶にした九喇嘛がいる。操られていたからとは言え、里の連中がそれを知る手段もない。しかも、俺は原作通りに悪戯ばかりをしていた。「俺ってば、クソガキだなぁ」と自分自身でも思っている。
九喇嘛と悪戯。その2つが揃ってもなお、俺を嫌わない人がいたら、それは相当なものだ。それが当てはまるのが、イルカ先生なのだが。
そんな事を思っていると、白髪は背負っていた巨大な手裏剣を俺に向けて投げてきた。回転しながら、俺に迫る手裏剣。俺はそれを見て、立ち尽くすしかない。そうするしかないのだ。
「ナルト伏せろッ!」
イルカ先生がそう叫んだ。その言葉通りに伏せると、グサッと柔らかい物に鋭い物が刺さったような音がした。見てみると、イルカ先生の背中には白髪が投げた手裏剣が刺さっていた。こうなるようにしたとは言え、それを直に見ると何も思わないはずもない。
他の人ならば、特に何も思わなかっただろう。「あ、手裏剣刺さった」ぐらいの事を考えて終了である。だが、イルカ先生は違う。俺を「
ちゃんと人として見てくれるイルカ先生には、少なからず思う所がある。
「苦しかったよな…… 寂しかったんだよな…… ごめんな、ナルト」
イルカ先生が涙を流しながら、謝罪の言葉を口にした。臆病者で厄介者な俺を気に掛けるとか、この先生は本当に良い人だと思う。すぐに治療をしたいと思える程の人だが、それは出来ない。その場から走って離れた。
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ある木の裏に気配を消して隠れる。すぐ近くには、イルカ先生と白髪の人がいた。イルカ先生は俺の姿に変化して、白髪を
「あの化け狐が巻物に書かれた術を使えば、なんだって思いのままだ。あの化け狐が巻物の力を利用しない訳がない!」
そんな事を自信満々に言う白髪。生憎と、巻物の力なんぞなくとも強くなれた。
「そうだろうな。化け狐ならな。けど、ナルトは違う。あいつは俺が認めた優秀な生徒だ。努力家で、一途で、それでも不器用で、誰からも認められない。周りのやつらはあいつを化け狐としか見ない。けど、ナルトはナルトだ。あいつは木の葉隠れの里のうずまきナルトという人だ!」
あぁ、本当にイルカ先生は良い人だ。そんな人を原作通りに進めたいからという身勝手な思いで、傷付けた俺自身に反吐が出る。臆病者にしかなれない自分を嫌悪する。
「お前を後回しにすると思ったが、気が変わった。とっとと死にやがれぇ!」
そう言って、白髪は巨大な手裏剣を投げようとする。あれを食らってしまえば、イルカ先生の命が危ないだろう。だが、そんな事にはさせないし、ならない。
「ぐはっ!?」
イルカ先生に夢中になり、周りを見れていなかった白髪の顔面を1発殴る。予想にもしていなかった行動に白髪は数メートル吹き飛ばされた。投げる瞬間に攻撃を加えたおかげで、手裏剣は明後日の方向へと飛んで行く。
「やってくれるじゃねぇか、化け狐が」
白髪が鼻から血を流しながら、立ち上がった。本気で殴ると死にかねないと思ったが故に加減をして殴ったのだが、手加減し過ぎたようだ。次はもう少し強めに殴るか。
「その封印の書をこっちに渡せ。そしたら、苦しまないように殺してやる」
気色の悪い笑みを浮かべながら、そう言ってくる。その目は俺を取るに足らない相手だと語っている。というか、苦しまないように殺してやるって、そんな事を白髪如きが出来る訳がない。出来たとしても、その瞬間に木の葉隠れの里が文字通りの意味で終わるだけなのだが。
それに封印の書に書かれた術は、何れも莫大なチャクラを必要とする術ばかり。白髪が持つチャクラ量では術を発動した瞬間に気絶して終了だ。
「そんなに欲しいならくれてやるよ」
封印の書を白髪に投げる。まさか、素直にくれるとは思ってもいなかったのか、一瞬だけ驚いたような顔をしていたが、新しい玩具を手に入れた子供のような笑みを浮かべた。だが、その顔はすぐに歪む事になる。
「なっ──」
封印の書は白い煙を立てる。その煙の中から出て来たのは、俺と全く同じ顔、同じ体をしたうずまきナルト。そのナルトが握り締めた拳が白髪の頬を貫いた。何が起こったのかというと、至極簡単。影分身1体を巻物に変化させていただけの事だ。それで今、その変化の術を解いてぶん殴っただけの事である。
「そんな簡単にお前みたいな下種に渡す訳がないだろ」
ぶん殴られた白髪は、口の中を切ったのか、口の端から血が垂れていた。白髪は、その流れる血を拭い、俺を睨みつける。さっきから俺に攻撃されてばかりでろくに反撃も出来ていないのに、それでもまだ俺に勝つつもりでいるらしい。もしくは、頭に血が昇り、まともな思考が出来ていないのかもしれない。
「舐めんじゃねぇぞ、化け狐がぁぁああ!」
目を血走しらせながら、白髪が俺に向かって走ってきた。そろそろ、倒してもいいか。
「多重影分身の術」
両手の人差し指と中指を交差させて、術を発動する。その瞬間、大量の煙が発生する。その大量の煙の中から出てくるのは、大量の俺の影分身達。大体100体ほど召喚した。単独でも余裕で勝てるぐらいには、俺と白髪の間には力の差があるが、どうやら白髪は彼我の差を理解できない無能らしいので、分かりやすく数の暴力でいく事にした。
100対1。分かりやすい事この上ない数の差。非力な子供であろうと、100人も集まれば、大人1人ぐらい倒せる事は容易だろう。もっともっと、今のこの状況は地図を変える化け物100匹と唯の大人1人というのが正しいのだけれど。
「ひぃっ!?」
その光景を見た白髪は怯える。その顔は先程までの嘲笑や憤怒に染まった顔が嘘のように、酷く情けない顔だった。
その顔を浮かべたのが合図だった。100人の俺が白髪へと殺到した。
──────
辛うじて意識を繋ぎ止めている白髪を見下ろす。その体はボロ雑巾の方がマシなのではないかと思える程に無残で、地に伏していた。体は動かす事が出来ないように、腕、足の付け根を脱臼させておいたから、誰かに治してもらうまでは動かす事が出来ないだろう。
誰かに見られているような気配がしたので、白髪をボコす場所は途中で変えた。
大量の影分身が群がる中で本体である俺と白髪だけを飛雷神の術でマーキングをしておいた場所へと飛ばした。場所は里の外に広がる森の一角である。マーキングは、アカデミーの授業の一環で里の外に出た時に施しておいた。
誰かの目を誤魔化す為に、影分身1体を白髪に変化させて、それを影分身達がボコるように演出をしておいた。そのおかげで、今は誰かに見られているような感覚は無い。俺から視線を外す事に成功したようだった。
白髪の首に苦無を当てる。切っ先が首の薄皮を切ったのか、血が少し垂れる。
「俺は里の殆どの連中に対して興味が無い。生きようが死のうが、俺の心が動く事は一切ないだろう。だが、それでも俺に優しくしてくれた人にはそれなりに情がある。だから、イルカ先生を傷付けた貴様には嫌悪感が湧く。もしも、今後、俺の視界に貴様の顔が入った瞬間、貴様を殺す」
少しだけ九喇嘛のチャクラを解放して、白髪を脅す。九喇嘛との仲はそれなりに良好なので、お願いすれば、ちょっとは九喇嘛がチャクラを俺に分けてくれるのだ。
尾獣の、しかも9匹いる中で最も強い九喇嘛のチャクラを浴びた白髪は一瞬で白目を剥いて気絶してしまった。多分、白髪の中で俺に対する恐怖心は限界を超えているだろう。
もう、俺の前に現れる事はないはずだ。