うずまきナルト憑依物語   作:トーな

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遅くなってすみません。
なんで遅くなったのかとか言うべきなのかもしれないですけど、省きます。遅くなった原因は自分でどうにかするものだし、読者からしても「お前の言い訳とかどうでもいいんだよッ!」みたいに思うかもしれないですから。

でも、とりあえず一言。
マジですみませんでしたッ!!_○/|_ 土下座by作者


第四話

 春野サクラの悲鳴が聞こえたので、影分身は放置して、森中に仕掛けたマーキングを利用して飛雷神で移動する。茂みの中から見てみると、何もない所で倒れている春野サクラを発見した。どうやら、幻覚でも見せられて気絶してしまったらしい。あれの事だから、うちはサスケの何かしらの姿を見て、気絶してしまったとかそんな感じだろう。

 

 そんな春野サクラを観察していると、少し離れた所で戦闘音が聞こえた。どうやら、今度はうちはサスケと戦闘しているらしい。おおかたの場所の見当をつけて、そこにある程度近い場所まで飛雷神で飛ぶ。

 

 そして、視界に入るのは、うちはサスケとはたけカカシの戦闘である。罠とか色々と仕掛けたりしているのを見て、うちはサスケの実力は下忍の中でも上位に入るであろう事は容易に分かる。だが、どうやら思考能力は低いらしい。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 うちはサスケから放たれた特大の火球がはたけカカシに襲い掛かる。お前、山火事でも起こしたいのか。大量の敵がいて、かつ、飛雷神などのすぐに遠くの方へ逃げられる術を持っているのなら、まだ分かる。山火事を起こして、敵は放置して、自分はさっさと逃げればいいだけなのだから。それだけで相手は焼け死ぬか、酸素が足りずに気絶、もしくは息絶えるだろう。

 

 だが、飛雷神の術などの時空間忍術を扱う事は、今のうちはサスケには出来ないだろう。出来たのなら、実力を誇示したいあの性格で、今回の演習で使わない筈がないからだ。

 

 火の粉が木に移る事は無かったようだが、本当に冷や汗が滝のように流れていた。土遁・心中斬首の術で体が土の中に埋まり、頭だけが地上に出ているうちはサスケに、色々と言葉を投げるはたけカカシ。だが、その言葉の中に「山の中で火遁はやめましょう」という言葉は無かった。

 

 本当に上忍なのだろうか……

 

 そろそろ、飛雷神の術で弁当の所に飛ぶ事にしようか。

 

 ──────

 

 弁当を食べるフリをして、俺本体は無事に捕縛された。千年殺しを受けるとか、死んでも嫌だったし、木に吊るされるアホな罠にも引っ掛かりたくなかったので、影分身で代用していただけだ。別に、今はそんなものはないはずなので、本体の俺が捕まっているという訳だ。

 

 縄に縛られ、身動きを取れない俺、その近くに座るうちはサスケ、春野サクラ。その3人から少し離れた所にいるはたけカカシ。その4人がこの場にいた。

 

「演習についてだが、お前らは忍者アカデミーに戻る必要はないな。3人とも、忍者をやめろ。お前らは忍者ナメてるのか?」

 

 単独で任務を行う事など、ほぼないだろう。敵の偵察とかなら、人数が少ない方が良いので、1人という事もあるかもしれない。もしくは、味方を巻き込みかねない大規模な忍術を扱う時等々。だが、それを除けば、忍者とは基本的にチームで行動する。それなのに、この班は単独行動をしてばかり。まぁ、当たり前だろう。

 

 その結果、プライドと実力は一人前だが、協調性が皆無のうちはサスケが苦無を手に持って、飛び出す。はたかカカシを倒して、自分の実力を認めさせてやろうという魂胆だろう。だが、うちはサスケは一瞬ではたけカカシに拘束される。なんとか拘束から抜け出そうと、必死にもがくが、びくともしないようだ。

 

 はたけカカシは、うちはサスケをそのまま拘束したまま、俺達3人にこの演習の真の概要を伝える。

 

「忍にとって、大事な事の1つはチームワークだ。忍者は複数人で任務にあたる事が多い。だから、この試験もそのチームワークを見る為のものだ。鈴が2つしかないのは、仲間割れを誘うように仕組んだものだ。そんな状況の中で、自分の利害を無視して3人で共に行動する。それがこの試験に合格する条件だった。それなのに、お前らときたら、誰も彼も単独行動ばかりで誰かと協力する素振りすら見せない」

 

 はたけカカシは、この演習の目的を話し終えると、俺達3人それぞれにこの演習を通しての評価を伝える。

 

「まずはサクラ! お前は俺やナルトではなく、何処にいるかも分からないサスケの事ばかりを考えていた」

 

 見事に図星だったようで、サクラは俯いて、何も言わなかった。

 

「次にナルト! お前は独走するだけ。誰かと共闘なんてせずに、自分と影分身だけで俺に突っ込んできた」

 

 そうなるように仕向けたから、「上手くいった」程度の気持ちしか湧かない。一応、落ち込んでますよ雰囲気を出しておく。

 

「最後にサスケ。他2人を足手纏いと決めつけて、個人プレイしかしない」

 

 全く正しい評価が俺達3人に下される。

 

「確かに忍者にとって、卓越した技術は武器にもなる。が、それ以上に重視されるのがチームワークだ。チームワークを乱し、自分本位に行動するという事は、それは仲間の命を危険に晒すと同義だ。例えば、こんな風に……」

 

 はたけカカシは、そう言うと、殺気の籠った目で苦無をうちはサスケの首に押し当てて、俺達に向けて言った。

 

「サクラ! ナルトを殺せ! さもないとサスケは死ぬぞッ!」

 

 冗談に聞こえないその言葉に春野サクラとうちはサスケは狼狽える。俺は、一応この流れを知っていたので、特に何も思わないのだが、そうでない2人は動揺しているのがその表情から手に取るように分かる。それがはたけカカシの言葉が正しい事の証明になるのだ。

 

 動揺した様子が見て取れたからか、はたけカカシは、苦無をうちはサスケから離して、うちはサスケの拘束を解いた。

 

「まぁ、こうなる訳だ。単独行動をした結果、人質に取られて無理な2択を迫られる。言う事に従わないのなら、人質を殺して、戦力を削いでから襲う。言う通りに動いたとしても、人数が減った所を襲われる。どちらを取っても、より危険な状態になるのは間違いない。お前らにもう1度だけチャンスをやる。昼からもっと過酷な鈴取り演習だ。やりたい奴だけ弁当を食え。但し、ナルトには食わせるな。ルールを破って、昼飯を食おうとした罰だ。もし、ナルトに弁当を分けたりしたら、そいつはその時点で失格とする」

 

 それだけ言って、はたけカカシは、何処かへ行った。少し離れた所で俺達の行動を監視するつもりなのだろう。

 

 はたけカカシが何処かへ行くと、すぐに2人は弁当を手に取って、食べ始めた。その弁当よりカップラーメンの方が美味しそうに見えるとか、俺はラーメン中毒か何かなのだろうか。そう思うと、何故か悲しくなってくる。

 

「ほらよ」

 

 ラーメン食べたいと思ってると、うちはサスケが弁当を分けようとしてくれた。今まで痛い系コミュ障&ブラコンとか思っててごめんなさい。案外優しいコミュ障&ブラコンに上方修正するする事にします。

 

「ちょっとサスケ君!? さっき、先生が弁当を分けたら失格って……」

 

 春野サクラがうちはサスケの行動に異を唱える。個人的には、今までの行動を見ていたせいか、春野サクラは「うちはサスケイェスマン」と思っていたのだが、その評価は少しだけ改める事にしよう。

 

「大丈夫だ。この近くにあいつの気配はない。昼からは3人で鈴を取りに行く。空腹で足手纏いになられても、こっちが困るだけだ」

 

 うちはサスケには、ツンデレの称号も相応しい気がしてきた。けどね、はたけカカシはすぐ後ろの木の裏に隠れてるからね。思いっきり近くに気配あるから。うちはサスケのその行動に何を思ったのか、春野サクラも俺に弁当を分けてくれようとしてくれた。

 

「……ありがとう」

 

 原作で流れは知っていたが、いざ本人の立場になってみると、普通に嬉しいと思える。「弁当を分ければ失格」と言われたのに、その行動を取るのは難しい事だろう。俺も原作を知らずに、その立場になった時に弁当を分けれるかと聞かれれば、だいぶ怪しい。というか、分けたりしないだろう。

 

 こうして、誰かに感謝の気持ちを抱くのは、これで4人目ぐらいな気がする。今までは三代目火影にイルカ先生だけだった。三代目火影には、「うずまきナルトを化け狐と呼ばない」なんていうルールは、ヤバすぎだろとか思ったけれど、それでも俺個人を気にかけてくれたのは事実だ。イルカ先生は、言わずもがな。そこに新たにサスケとサクラが加わった。人の優しさに触れるのは、いつ経験しても心地良い。

 

 そう思っている時だった。

 

 大きな煙が目の前に突如として現れた。その煙の中からは厳しい表情をしたはたけカカシが現れた。

 

「お前らぁぁぁぁああ!」

 

 はたけカカシが目の前に現れると、サクラは「失格」の言葉が脳裏を過ったのか、絶望した表情を浮かべる。サスケは、何としてでも合格してやるという気持ちがあったのか、すぐに臨戦態勢に入る。

 

「ルールに逆らうとは、覚悟は出来てるんだろうな?」

 

 その言葉と共にはたけカカシは、印を結び始めた。すると、先程まで晴れていた空が雲に覆われ、雲の中で雷が発生し、光り始めた。雷遁の何らかの術だろうが、生憎と俺には雷遁の術などほぼ分からない。

 

「何か言う事はあるのか?」

 

 感情を感じさせない冷たい声音で俺達に問いかける。

 

「俺達はスリーマンセルなんだろ?」

 

 サスケが口を開いて、そう言う。サスケのその言葉に表情を暗くしていたサクラがハッとした表情で続いて、言葉を言った。

 

「そうよ! 私達は3人で1つなんだから!」

 

 それらの言葉に俺も同調する。

 

「3人で1つか……」

 

 3人の反応を見て、はたけカカシは印を解き、俺達を見据える。途端にマスク越しでも分かる程の満面の笑みを浮かべて、俺達3人にとある言葉をかけた。

 

「3人とも、合格!」

 

「合格」。その言葉に3人とも、呆けた表情になる。はたけカカシが印を解いたからなのか、空を覆っていた黒い雲は、たちまち何処かへと消えていき、明るい太陽の光が俺達を照らした。

 

「お前達が初めてだ。今までの奴は、素直に俺の言葉だけを聞くぼんくらばかりだったからな。忍者は、裏の裏を読むべし。けどな、仲間を大切にしない奴は、それ以上の屑だ」

 

 かつての友の言葉を俺達に送るはたけカカシ。その言葉は、はたけカカシにとって、己の根幹とも言える大切な言葉。はたけカカシの過去を知っていれば、その言葉がはたけカカシにとって、どれだけ重要な言葉なのか、容易に分かる。それを俺達に送るという事は、俺達を認めたという事の証なのだろう。

 

「これにて演習終わり。第七班は、明日から任務開始だ!」

 

 ……抜け駆けして、弁当を食べようとした罰なのか、俺は縄に縛られたまま、放置させられた。仕方なく、誰もいないのを確認して、自宅まで飛雷神の術で飛んだ。その後に食べたラーメンは美味しかったとだけ言っておく。

 

 ──────

 

 あれから数日が経過した。その期間に幾つもかの任務を受け、達成してきたのだが、どれも任務と言われても首を傾げる物ばかり。人探しやら猫探しやら物探し。まるで便利屋のような仕事ばかりをしていた。下忍なのだから、重要な任務を与えてもらえる訳がないというのは、重々承知しているが、それはそれ、これはこれである。頭では分かっているのだが、納得は出来ないという、そんな状況である。

 

 簡単に任務をやっている時間よりも、修行に当てたほうが有意義な時間を過ごせるのではないかとさえ思てくる。というか、絶対にそっちの方が今後の役に立つと思われる。あまり表には出していないが、俺以外の班員も似たような事を思っているようで、節々で不満を覚えているのが見て取れた。

 

 今日の依頼は、猫の捜索だった。それを終えて、連れ帰った猫とその飼い主の感動的? な再会を後目に三代目火影の言葉を聞く。

 

「さて、カカシ班の次の任務は……」

 

 それから三代目火影の口から出てくるのは、まぁどうでもいいような依頼ばかりだった。「子供のお守り」「隣町までのお遣い」「雑草抜きの手伝い」等々。三代目火影の言葉を遮って、俺は不満を露わにする。

 

「それダメー! そんなのノーサンキューだってばよ! 俺ってば、もっと凄い任務やりたいの!」

 

 俺も内心で辟易していた為に、いつもは原作主人公を演じる為に心の内と言動が一致していないのだが、今回ばかりは心と言動は一致している。そんな俺の不満に三代目火影の隣にいたイルカ先生が椅子から立ち上がり、俺を叱る。

 

「馬鹿野郎! お前はまだ新米だろうが! 誰でも最初は簡単な任務をして場数を踏んで、繰り上がってくんだ!」

 

「だって、この前からしょぼい任務ばかり──」

 

 言葉の途中ではたけカカシから拳骨が振り下ろされた。その痛みに思わず、言葉を止めてしまった。割と地味に痛くて、たんこぶになってないかが唯々心配である。

 

駄々をこねる俺を見て、三代目火影が口を開く。

 

「ナルト! お前には任務とは、どんなものか説明しとくべきだろう。毎日、数多くの依頼が里に送られる。人探しから暗殺、多種多様な依頼が。依頼の難しさに応じてランク分けがされて、上からS,A,B,C,Dの順で難易度が変わる。里の上層部が上忍、中忍、下忍、それぞれの実力に応じた依頼をそれぞれの忍に与えるのじゃ。そして、お前が所属する第七班は」

 

 そんなもの知ってる。態々説明してもらわずとも、アカデミーで習った事がある。

 

「いつもじいちゃんは説教ばっかりだ! 俺ってば、いつまでも唯の悪戯小僧じゃないってばよ!」

 

 俺が下忍になった日から、三代目火影は何度か家にやって来てくれた。その度に思うのだが、未だに三代目火影は、俺の事をかまってちゃんの悪戯小僧とでも思っているらしい。既に不要だと判断して、悪戯道具は処分しているにも関わらず。波風ミナトの息子である俺に三代目火影が気にかけてくれるのは、嬉しいが、人は時が経てば変わる。俺が少なくとも表面上は変化した事ぐらい見抜いて欲しいとは、思ってしまう。

 

 三代目火影は、今の俺の言葉に何か思った所があったのか、俺の名を呼んだ。

 

「ナルト。そこまで言うのなら、Cランクの任務をやってもらう。それは、とある人の護衛任務だ。入って来てもらえますかな?」

 

 来た。恐らく、原作で言う「波の国編」の開始だろう。いつも通りに俺は、原作主人公の「うずまきナルト」を演じれば問題ないはずだ。

 

 三代目火影が誰かに声を掛けた。その言葉が終わると、後ろの扉から白髪、白髭の眼鏡の爺さんを入ってきた。その手には、酒が握られており、日が出ている内から酒盛りをしていたらしい。だいぶ酒癖が悪い男だというのは、すぐに分かった。

 

「なんだガキばっかりじゃねぇかよ。特に一番小さいアホ面。お前本当に忍者か?」

 

 酔い潰れの言葉は、軽く流しておこう。真っ昼間から酒を飲んで、酔っている年寄りの言葉ほど、どうでもいいものは、ない。里で散々「化け狐」と言われた俺のスルースキルは、この里随一だと自信をもって言える。

 

 ただ、原作主人公の性格上、ここで何かしらの行動を起こすのだろう。

 

「てめぇ! ぶっ殺してやる!」

 

 そう言って、酔い潰れに近付こうとしたら、はたけカカシに襟首を掴まれた。

 

「これから護衛する人を殺してどうする、アホ!」

 

 その言う通りです、はたけカカシ。

 

「儂は橋作りの超名人。タヅナと言うものじゃわい。儂が国に帰って、橋が完成するまでの間、命を超賭けて、儂を超護衛してもらう」

 

 ──────

 

 それから数時間後、動きを阻害されない程度の身支度を整えて、俺達は里門の前で集合していた。門の前で、俺はタヅナと言い争いをしていた。どうやら、俺みたいな小さい子供が自分を護衛してくれるのか、心配らしい。だったら、依頼の内容を偽るなと言いたい所だが、それにも仕方ない理由があったという事で無理矢理納得する事にした。

 

「俺は将来、火影になる超エリート忍者! 名をうずまきナルトと言う! 覚えておけってばよ!」

 

 火影になる気もないし、酒大好きの爺には名前なんて覚えてもらわなくてもいいです。どんな難癖付けられるか、分かったものじゃない。

 

「火影って言えば、里一番の超忍者だろ? お前みたいなちっこいのがなれるとは、到底思えんが」

 

 その後も言い争いをしつつ、俺達は出発した。近くの木陰にこちらに敵意を持った相手が数名いたが、見逃しておいた。原作でも気付いたような素振りは見せなかったはずだし。もしかしたら、はたけカカシは気が付いているのかもしれないが、俺達3人に何らかの経験を積ませようと思っているのかもしれない。まぁ、何にせよ、今はスルーするだけだ。

 

 ──────

 

「ねぇ、タヅナさん。タヅナさんって、波の国の人でしょ。波の国には、忍者っているの?」

 

 サクラのその言葉によって、はたけカカシの有難い授業が開始された。というか、アカデミーで習った覚えがあるのだが、どうやらサクラは忘れているようである。

 

 はたけカカシの口からは、大国、忍の里についての説明がされた。大国の軍事力に直結するのが、忍の里である事。俺が所属する木の葉隠れの里は、火の国という国の中にある。それ以外の国の中でも、火の国を含めた大きな五つの国は、忍五大国と言われ、その頂点に君臨する火影を含めた五人の影は、五影と言われ、忍達の頂点に君臨するという説明だった。

 

 いつか、この世界を見て回りたいと俺は思ったりしているのだが、それが叶う日は来るのだろうか。

 

 それで波の国のような、小さな島国は、他国からの干渉がほぼないので、忍は必要なく、それに伴い、忍の里もないという事らしい。

 

「へぇ! 火影様って、そんなに凄いんだ!」

 

 猫撫で声でサクラが言う。内心では、「あんなよぼよぼの爺がそんなに凄いのかな?」みたいな事が思っているのだろう。俺も俺でそう思っていた事はあったが、修行を開始して、数年が経った時は、忍として三代目火影が強い事ぐらいは、何となく分かるようになっていた。

 

「まぁ。Cランク程度の任務で忍者と戦う事なんてないから安心しとけ」

 

 はたけカカシがサクラにそう言うが、俺には見えた。その言葉でタヅナの爺が目を泳がせているのを。どうやら、ちゃんと依頼内容を原作通りに偽ってくれたらしい。内心では、もしかして原作とは異なり、再不斬を含めた他の忍とか出てこないのでは? と不安だったのだが、そこは大丈夫なようである。

 

 それにしても、今のはたけカカシの言葉はフラグ以外の何物でもない。

 

 どうやら、そのフラグはすぐに回収されるらしい。

 

 後ろに、突如として何らかの気配が現れた。その気配は、木の葉隠れの里を出た時からずっと感じていた気配と同じ者だった。ちらっと後ろを見てみると、小さな水溜りの中から2人の忍が出て来ている場面だった。里から十分な距離を取った為、今が好機と感じたのだろう。

 

 俺達の中で一番実力があるであろうはたけカカシを最優先で排除しようと行動を開始した。はたけカカシは、前の大戦時に他の里から様々な異名を付けられ、恐れられていた忍の一人だ。その容姿は、広い範囲で知られているだろうし、あの忍達もそれを知っていて、はたけカカシを狙った可能性が高い。

 

 金属製の刃の付いた縄という、特殊な形状をした道具がその二人の忍達から放たれ、はたけカカシの体に巻き付いた。はたけカカシが行動を始めるよりも先にその特殊な縄は更に獲物の体を締め上げる。そして、最終的には十八禁確実であろう程の挽肉にされてしまった。

 

「「二匹目」」

 

 はたけカカシが殺された(ように見える)光景に狼狽えている(ように見せている)俺の背後に二人の忍が現れた。二人から特殊な縄が俺に襲い掛かる。

 

 その縄が俺に到達するあと少しという所でサスケが動いた。手裏剣と苦無だけでその縄を木に縛り付けたのだ。俺に意識を割いていた二人の忍は、意識外にいたサスケの行動に対処する事が出来ず、道具が無力化されてしまった。ギリギリ俺に届いていたようで、手の甲には切り傷が出来ていた。

 

 道具が使えなくなり、動揺していた所をサスケに顔面を蹴られる。縄はもう使えないと判断した二人の敵は、縄を捨てる。サスケは脅威だと判断したのか、サスケは狙わず、俺と少し離れた位置にいたサクラとタヅナの爺の所にそれぞれ向かう。サクラは、タヅナの爺を護るようにして苦無を構えたまま、忍とタヅナの爺の間に立った。忍の攻撃がサクラに届く。

 

 だが、その瞬間、二人の忍は、何処からともなく現れたはたけカカシに捕縛させられた。その二人は首を絞められ、気絶した。バラバラにされたはずのはたけカカシだが、変わり身の術を使って、攻撃を避けていたらしい。すぐに出て来なかったのは、咄嗟に俺達がどれだけ戦えるかを見る為だろう。

 

 本当に変わり身の術は便利な技である。

 

「ナルト。すぐに助けれなくて悪かったな。怪我させてしまった。お前がここまで動けないとは、思ってもみなかったからな。とりあえず、サスケ、サクラ。お前らは良くやった」

 

 言いたい事だけ言って、サクラとサスケ、タヅナの爺に向かって歩いて行くはたけカカシ。今まで、原作と同じように負けず嫌いの性格を演じていた為に、ああ言えば、俺がやる気になるだろうと思っての行動だと思われる。中身が違うので、特に何も思う所はないのだが、一応、「何も出来なかった。悔しい」みたいな表情を作っておく。

 

「よぉ。怪我はねぇかよ、ビビり君」

 

 分かりやすく挑発してくるサスケ。思わず、飛び掛かりそうになった(感じを装う)俺にはたけカカシが声を掛けた。

 

「ナルト! あまり動くな。こいつらの武器には、毒が塗ってある。毒を抜くまであまり動くな。動くと、毒が全身を回って、死ぬぞ」

 

 あまり問題は無いのだが、言う事を聞いておく事にする。問題が無いというのは、その言葉通りの意味でそこらに転がっているような毒で俺を殺す事は、ほぼ不可能という事である。元々、俺は生命力が馬鹿みたいに高いうずまき一族の血を引いている。多少の毒で死ぬような事はない。それに俺は、自分で毒の訓練もしている。

 

 食事には、必ずと言っていい程に毒を入れている。時間を使って、体内で様々な毒の抗体を作ろうというあれだ。よく、創作話で見かけるような訓練方法である。それを十数年も繰り返したおかげで、俺の体は、大体の毒を無力化させる。

 

 まぁ、そういう訳で問題ないという訳だ。

 

 襲ってきた二人の忍を木に縛った所ではたけカカシは、二人の忍に関する事を話し始めた。

 

「霧隠れの中忍だ。こいつらはどれだけ犠牲を出しても、戦い続ける戦闘狂の忍だ」

 

 その言葉に反論する事なく、先程から持っていたであろう疑問を忍達は投げかける。

 

「何故、我々の攻撃を見切れた? 死角からの攻撃だったというのにッ!?」

 

 その疑問にあっさりと答えを教えるはたけカカシ。ここ数日は、晴れた日が続いていて、地面は渇いていたというのに、一つだけ小さな水溜りがあって、それを最初から怪しんでいた事を。

 

 俺は疑問なのだが、どうして、態々道のど真ん中で隠れたのかという事だ。道から外れた森の中で隠れていれば、見抜かれる可能性が低くなるだろうに。忍達が使っていたのは、雨の日や雨が止んで間もない時に最も効果を発揮する忍術だろう。それをこんなに晴れた日に行使するのだから、一工夫ぐらい加えるとかしないのだろうか。

 

「あんた、それを見抜いてて、なんでガキに戦わせた?」

 

「私ならば、こんな奴らは、その気になればすぐに瞬殺出来ます。だが、私には知る必要があった。湖の敵の目標が誰なのかを。目標が貴方なのか、それとも私達忍なのか。私は、大戦時に他里の忍から恨まれているでしょうし。私でなくとも、第七班には、他里から狙われてもおかしくない者がいます。だからこそ、見極めたかった。この忍達が誰を狙うのかを」

 

 それがはたけカカシがすぐに出て来ない理由だった。はたけカカシは「写輪眼のカカシ」として恐れられる程に大戦で活躍した。それはつまり、多くの他の里の忍を殺した事を意味する。確かに恨まれていてもおかしくない。それに俺とサスケ。俺は九尾の人柱力として狙われる可能性がある。サスケは、唯一生き残ったうちは一族の生き残り。三大瞳術の一つである写輪眼を持つうちは一族の生き残りとなれば、その価値は計り知れない。サクラは狙われる要因がない為、除外。

 

 逆に狙いが俺達第七班でなく、タヅナだった場合。

 

「今の忍達の目的は間違いなくタヅナさん、貴方でした。忍達は、常に貴方の方を見ていましたから。我々は貴方が忍に狙われていたという話など聞いていない。依頼内容は橋を作り終えるまでのギャング、盗賊からの護衛だったはずだ。これでは、Bランクに相当する任務だ。何か訳ありのようですが、依頼で虚偽の報告をされると困ります。このままの続行は、下忍の彼らでは荷が重い。私は、この任務を放棄し、里に戻る事を考えています。今あった事を報告すれば、私達には、特に何の支障もないでしょうし」

 

 冷や汗を滝のように流すタヅナに、これでもかと言葉を投げるはたけカカシ。忍からの襲撃によって、殺されるかもしれないという恐怖を抱いたサクラは、はたけカカシの言葉に同調する。

 

「この任務、私達にはまだ早いわ。やめましょう! ナルトの傷の手当ても麻酔がいるし。里に帰って、医者に見せないと!」

 

 確かにサクラは、俺の傷を心配している所もあるのだろう。けれど、それ以上にこの任務を続け、これから忍に襲撃に遭う事に恐怖している。多分、俺が傷を負ったのを良い事に、それを口実として里に帰りたいのだろう。

 

 初めての里外の任務で、忍との戦闘。こっちは下忍で、相手には中忍がいる。余程の命知らずでない限り、この状況に恐怖し、逃げたいと思うのは当たり前の話だ。

 

「これは荷が重いな。ナルトの治療ついでに里に帰るか」

 

 こっちを「ちらっちらっ」と見ながら、そう言うはたけカカシ。余程、「うずまきナルト」の事を煽りたいと思える。お世話になった四代目火影の息子、九尾の人柱力等々。色々な理由で俺に期待を抱いているのかもしれない。はたけカカシの期待など、どうでもいいで片付くのだが、俺は原作を再現すると決めている。

 

 ならば、次に移す行動は決まっている。

 

「──ッ!」

 

 自分で自分の手の甲に苦無を突き立てた。襲撃してきた忍の傷口を抉るようにして。手の甲から大量の血が流れ出る。これで毒も血と一緒に抜け落ちた事だろう。

 

 原作を再現すると決めた以上、原作の主人公が受けた傷も当然、自分も受けなければならない。ある程度は、影分身でも代用出来るが、今回のような流血の再現は本体がやらなくてはいけない。影分身から血が流れる訳もないからだ。影分身から血が出るのなら、一瞬で医療の輸血が解決する。チャクラさえあれば、無尽蔵の血液が手に入るのだから。

 

 修行である程度の痛みには、慣れているが、それでも痛い。

 

「これで毒は問題ねぇ。任務続行だってばよ!」

 

 皆に見せ付けるようにしながら、そう宣言する。

 

「ナルト。カッコつけて毒を抜いてるところ悪いが、それじゃ出血多量で死ぬとまでは行かないが、倒れるぞ~」

 

 既に傷口が塞がりかけているのを見て、はたけカカシが真顔になったり、サクラから小言を貰ったり、サスケが鼻で笑ったりしていたが、とりあえずは任務続行という事で話は落ち着いた。

 

 

 

 




次回もいつ投稿出来るか分かりません。なるべく早めに投稿したいですけど、他の作品とかを読んで気長に待っていて下さい

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