「八幡さん、八幡さん」
楓に体を揺すられる。
「おはよう、どうした?」
「おはようございます。今日はディステニーランドに行きましょう」
『フンスッ』って擬音が聞こえそう。
「どうしたんだ急に」
「デートの定番なのに、今日まで見逃していた自分が恥ずかしいです」
「まぁ定番だな」
「と、いう訳で行きましょう♪」
三日前の俺だったら確実に断っていただろう。だが今は…。
「よし!行くか」
着替えを済ませて電車に乗り込む。車窓はビル群から見慣れた景色に変わっていく。
舞浜駅の改札を出ると楓が駆け足になる。
「八幡さん、早く早く♪」
どれだけ大人っぽくても、やっぱりここへ来ると女の子に戻る。入場口で順番待ちをしている時からどこへ行こうかとそわそわしている。
「耳とか付けるか?」
「はい♪」
入場してカチューシャタイプの耳購入・装着・可愛い。
最初は、あの時に雪ノ下と乗った絶叫系アトラクション。『助ける』なんて、烏滸がましかったんだろう。高校生に何が出来たのやら…。
大した感傷もなく次のアトラクションへ。楓は絶叫系とまったり系を上手くおりまぜてくれている。
いくつかアトラクションに乗っていると喉が渇く。結構叫んでいたからな。
「楓、そこのベンチで休んでいてくれ。飲み物買ってくる」
「お願いします♪」
「チュロスとか食べるか?」
「わぁ、いいですね」
「了解」
さすがに、この夢と魔法の国でナンパはないだろ。
楓と離れ飲み物とチュロスを購入。戻ろうとしたら、声をかけられた。
「先輩?」
「んあ、一色か」
「何をやっているですか?こんなところで」
「見りゃわかるだろ」
購入した飲み物とチュロスを見せる。
「私の分まで、ありがとうございます。…はっ!こっそり私の分を買って出来る男アピールですかディステニーランドだけに運命感じちゃいますけど今日は友達と来てるので二人っきりできて告白してくださいごめんなさい」
「なんで、一色が来てるのを知らないのにお前の分まで買わにゃならん。しかも、相変わらず俺はフラれるし。まあ、俺も連れと来てるからな」
「男だけでナンパ目的ですか?」
「ここでそんなことするかよ。彼女と来てるんだよ」
「エア彼女ですか?雪ノ下先輩が結婚したからって…。悲し過ぎます。今度私が一緒に来てあげますから」
「違ぇよ。ほら、あそこのベンチ」
楓の方を見るとこちらに気がつき手を振ってきた。
「な?」
「う…そ…」
「本当だよ」
「先輩!騙されてないですか?美人局とかじゃないですよね?」
「金銭要求されたことはねぇよ。それとレンタル彼女でもない」
「お、お話しさせてもらってもいいですかね?」
「ま、大丈夫だろ」
一色と二人で楓の元へ。
「お待たせ」
「ずいぶんと可愛い女の子と楽しそうに話をしてましたね」
え?恐い。ヤンデレ?違うよね?違うって言って!
「あぁ、高校の後輩だ」
「一色いろはです。先輩の彼女さんですか?」
「はい」
「本当だった…」
おぉ、見事な『orz』ポーズ。
「結衣先輩も雪ノ下先輩も結婚して、私にチャンスが来たと思ったのに…」
「一色さん、大丈夫ですか?」
「ちょっとショックです…」
仕方ない。俺の飲み物をやるか。
「ほれ一色、これ飲んで落ち着け」
「ありがとうございます」
一気に飲みやがった…。
「で、いつから付き合っているんですか?」
「この前の日曜の夜からか?」
「そうですね。あっ、でも日付変わっていたかもしれませんね」
「雪ノ下先輩の結婚式の日じゃないですか!!切り替え早すぎですよ!」
「まぁ、なんつーのかな、運命?」
「先輩キモイです」
「ほっとけ」
「一色さん、そんなこと言ってはダメですよ」
「はぁ、すいません。…でも、どこかで見たことあるような…」
楓が眼鏡を一瞬だけ外した。
「あわ、あわわわわわ、先輩大変です!た、たか…ムググ」
慌てて口を手でふさいだ。
「騒ぐなよ。でも、その通りだ」
「ど、どうして…」
「結婚式の後に赤提灯でやけ酒飲んでたら出会った」
「本当にあの偶然には感謝しています」
「わ、かりました…」
項垂れる一色…。やっぱり一色もそうだったのか…。
「一色。なんか、すまん」
「謝らないでください。踏み込めなかった私がいけないので…。私は行きますね…」
「悪いが内密にな」
「…わかってます」
一色を見送りベンチに座る。
「やっぱり八幡さんはモテるんですね」
「今思えばなぁ…。あの頃は、勘違いだと自分に言い聞かせてたからな」
「トラウマの話ですか?」
「え?俺、あの時そんな話もしてたの?」
「ええ、してましたよ」
「恥ずかしい」
「でも、もう大丈夫ですよね?」
「ああ、楓が居るからな」