腐り目とオッドアイ   作:おたふみ

2 / 36
欺瞞に満ちた誘い

楓は色んなことを話してくれた。モデル時代のこと、アイドルに転身してからのこと…。

俺は過去の黒歴史を披露して、笑われたり慰められたりした。

 

店を出て、ふと時計を見ると終電が終わってる時間だった。さてどうしたものかと悩んでいると、予想外の提案が。

 

「八幡さん、ウチで飲みませんか?」

 

「い、いやマズイですよ」

 

「マズイ?何がですか?美味しいお酒があるんです。あと梅酒も」

 

「梅酒?」

 

「ええ、和歌山から送ってもらった梅で私が漬けたんです。美味しいですよ」

 

「それは是非とも飲んでみたいんですが、ほら、あれがこれで…」

 

しどろもどろになっていると。

 

「ほら、タクシー捕まえましたよ」

 

タクシーに放り込まれた。意外と強引…。

 

半ば引きずられるように楓が住むマンションに。

 

「座っていてくださいね。今、お酒出しますから」

 

本当にマズイと思い部屋を出ようとした。

 

「いや、本当によくないので、帰りま…」

 

上着の裾を強く握られた。

 

「楓?」

 

「…帰らないでください」

 

「で、でも…」

 

「今は一人になりたくないんです…」

 

楓はフラれたばかり…。俺はその人の代わりにはなれない。でも、楓の声は…。

 

「俺は楓の想い人の代わりにはなれない。それに、俺自身が楓を雪ノ下の代わりに見てしまう。そんなのは…欺瞞だ」

 

「それでもいいんです。私は八幡さんに居て欲しいんです」

 

そんなこと言われたら、今の俺は断れない。

 

「…それが許されるなら、俺だって楓と居たい」

 

「私は…居て欲しいんです」

 

「わかりました」

 

楓が俯いてしまった。

 

「ごめんなさい、我が儘を言って…」

 

はぁ、美人には勝てないな。思わず頭を撫でてしまう。

 

「楓みたいな美人の我が儘を聞けるのは本望だよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ほら、飲みなおそうぜ」

 

「はい」

 

もう一度座り、楓が酒を持って来てくれるのを待つ。

 

「ほら、『久○田』ですよ」

 

「え?いいの?」

 

「一緒に飲みましょう」

 

そう言うと、ピッタリ横に座ってきた。

 

「ち、近い近い…」

 

「ここには私たちしか居ないんだから、いいじゃないですか」

 

「いや、ヤバいですよ」

 

「ヤバい?何がですか?」

 

わかってるだろ?

 

「ほら、色々と。ね?」

 

「色々って?」

 

「俺の理性とか…ね?」

 

それを聞くと日本酒を口に含み俺の口に流しこんできた。

 

「な、なななな、何を…」

 

「何って、口移しですよ」

 

た、た、た、高垣楓とキスをしてしまった!!

 

「では、もう一度」

 

酒を流しこんだあと、舌を絡めてきた。

 

「うん…うふ…ん…」

 

い、色っぽい。白い肌がほんのり赤くなっているのがわかる。

 

「そ、そんな、ことされたら俺は…」

 

「我慢なんてしないでください…」

 

「明日の朝、後悔しても知りませんよ」

 

「後悔なんてしません。私は八幡さんのことをもっと知りたい…」

 

「…わかりました」

 

ひとつ、間を開けて楓を見つめる。

 

「俺も楓のことが知りたい…」

 

「八幡さん…」

 

 

 

………

……

 

カーテンから射す朝日で目を覚ます。そっか、昨日は楓と…。

ふと横を見ると楓が居ない。キッチンの方を見ると楓が居た。

 

「おはようございます、コーヒー飲みますか?」

 

「おはようさん。いただくよ」

 

て、なんて格好してるんですか!今着てるの俺のYシャツだよね?

 

「ふふっ、どうしたんですか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんつう格好を…」

 

「『彼シャツ』やってみたかったんです」

 

昨日は見れなかった眩しいくらいの笑顔…。スレンダーな身体。Yシャツから透ける肌。

 

「綺麗だ…」

 

「そ、そんな真顔で言われると…」

 

「す、すまん」

 

「八幡さんに言われると、なんだか嬉しい…」

 

「そ、そうか…」

 

コーヒー飲み、少し落ち着く。

 

「かえ…、高垣さん仕事は?」

 

「楓のままでいいですよ。しばらくオフなんです。最近忙しかったんで、まとめて休みをもらいました。八幡さんは?」

 

「俺は一週間有給を取りました」

 

ふむ、と考える素振りを見せる楓。

 

「八幡さん、休みの間は私の恋人になってください」

 

「はい?」

 

「だから、休みの間だけ私の恋人になってください」

 

「い、いや、天下のスーパーアイドルと期間限定とはいえ…」

 

楓は首を横に振った。

 

「今、アナタの隣に居るのは、只の『楓』です」

 

『お酒が好きな』とつけたし、笑みを浮かべる。

 

こんなの勝てる訳がない。勝てるヤツが居たら、ソイツはホモだ。

 

「じゃあ、休みの間だけ…」

 

「…はい」

 

何はともあれ一旦帰らないとな。

 

「着替えとかしたいので、一旦帰りますね」

 

顎に手をあてて、また考える楓。何をやっても絵になる。

 

「休みの間は、ここで暮らしませんか?」

 

「はい?」

 

思考がぶっ飛んでる。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。