翌朝、呼鈴が鳴り玄関を開けると雪ノ下が来ていた。
「おはよう、雪ノ下」
「おはよう、比企谷君」
「雪ノ下が一番乗りだ。上がってくれ」
「失礼するわね」
とりあえず、お茶を出して座ってもらう。
「あの…、この前はごめんなさい」
「それはもういい」
「聞いてもらえないかしら。これからやることにも関係するから」
「それは由比ヶ浜達が来た後じゃマズイのか?」
「出来れば、そうね」
「聞こうか」
姿勢を正して聞く。
「実は、結婚した相手の家でトラブルがあるのよ」
「おう、よくある話だな」
「それで、新参者の私は厄介払いで外に出されていたの」
「それで、不機嫌だったのか?」
「…そうね」
「まぁ、俺も楓との関係とか考えてたから不安定ではあったな。普段なら対応出来たはずだ。すまなかったな」
「いいえ、比企谷君は悪くないわ、私が…」
「やめよう。堂々巡りになる」
「そうね、話を戻すわ。このトラブルっていうのが、お金の話なの」
政治家…金…。
「もしかして、表に出ない出してはいけない金の話とか?」
「話が早くて助かるわ。その通りよ」
そりゃアイツらには聞かせない方がいいな。
「それが俺の件とどうかかわるんだ?…まさかとは思うが」
「リークするわ。私が掴んでいる情報だけでも議員辞職モノよ」
やっぱりか。
「ダメだ雪ノ下。そんなことをしたら…」
「私は大丈夫よ、そういうツテがあるの。それに何かあっても『雪乃ちゃんは私が守る!』って姉さんが…」
あのシスコン魔王…。
「しかし…」
「元々、乗り気じゃない結婚だったし…。それにこの話を両親にしたら、実家に戻されたわ。問題が表に出たら即離婚ね」
その情報が検察に流れたら、強制捜査か…。ニュースで流れる段ボール持って車に積み込むヤツ。
「なぁ、それっていつリークするんだ?」
「まだ決めてないわ」
あとはタイミング…か。まだ早いか…。だが、遅すぎてもダメだ。
「そのタイミング、俺に預けてくれないか?」
「あまり待てないわよ」
「わかってる。そんなに遅くするつもりはない」
「わかったわ、姉さんにはそう伝えるわ」
楓の方は記者会見とかするのか?タイミングがあえば、話題は分散する…。
「比企谷君?」
「どうかしたか?」
「何を考えているのかと思ったのよ」
「たぶん、楓も記者会見とかするだろうからな。タイミングを考えていたんだ」
雪ノ下と話をしていると玄関が開く音がした。
「小町か?」
「お兄ちゃん、おはよう。お客さん拾ってきた」
「なんだその表現は…」
「たまたま、道を聞かれたんだけど、お兄ちゃんのことだったから」
「上がってもらってくれ」
「お兄ちゃんのOKが出たのでどうぞ」
部屋に入ってきたのは、今をときめくJK三人。
「お兄ちゃん、楓さんに飽き足らず、女子高生アイドルにも手を…」
「違うわ!!」
「そ、そうだよ!私は瑞樹さんから伝言を預かってきただけだ」
ワタワタしながら真面目に雪ノ下に答える…、神谷奈緒。
「私はキーホルダーのお礼に来た」
…渋谷凛。
「私は楓さんの彼氏がどんな人か見たかったんだ♪」
…北条加蓮。
なんで、俺の部屋にTriad Primusが揃ってるの!
「私、千葉だから一人で来るつもりだったんだけど…」
「奈緒一人じゃ心配だし…」
「凛と奈緒だけ楓さんの彼氏見るとか不公平だから」
一人は完全に面白半分じゃねぇか。
「小町、とりあえずお茶を出してくれ」
「アイアイサー」
三人が座り、神谷が川島さんからの伝言を話してきた。
「瑞樹さんからの伝言。瑞樹さんが常務から聞いたみたいなんだけど、近いうちに記者会見するって。その前に楓さんと楓さんの彼氏と話がしたいみたい」
なるほどな。それからじゃないと、記者会見は出来ないか。
「了解した。楓と相談してみる」
でも、なんで電話じゃなくて、人をよこしたんだ?
「そんで、本当の目的はなんだ?」
「な、なんのことかな?」
何かある…。川島さんは電話で無茶するなと言ってたからな…。
「危ないことやってねぇか、様子見ってとこか?」
「そ、そそそ、そんなわけないだろ」
神谷、しどろもどろだぞ。
「奈緒、もうバレてるよ」
「わかっちゃうんだね」
渋谷と北条が労うように神谷の肩をたたく。
「比企谷君は、そういうところだけは敏感なのよね」
雪ノ下、そんなことため息つきながら言うなよ。
…ん?三人がポカンとしてる。
「え?今の声…」
「ビックリした…」
「楓さんとソックリ…」
まぁ、驚くな。
「比企谷君、そんなに私と高垣さんの声は似ているのかしら?」
「まあな。実際に間違えただろ?」
「そうね」
「まぁ、雪ノ下の声は冷気がこもってるから、微妙に違うけどな」
ん?小町がワタワタしてるけど。
「…比企谷君?」
久しぶりに見た、全てを氷らす笑顔…。
「ご、ごめんなさい…」
「よろしい」
おい、Triad Primusが引いてるぞ。人前でしちゃいけない顔になってる…。