それにしても遅いなぁと考えていると、ケンカしながら部屋に入ってくる二人…。
「絶対こっちの可愛いのニャ!」
…前川みく。
「いや、こっちの方がロックで格好いいから、こっちだ!」
…多田李衣菜。
※(アスタリスク)だ。よくユニットにしたよな。でも、『仲がいいほど』ってヤツなんだろうな。
「Pちゃん、こっちの方が可愛いくていいよね?」
「こっちの方がロックでいいよね?」
プロデューサー困ってるじゃねぇか…。
「お二人様ともお静か。お客さまがいらっしゃるので」
「俺のことは気になさらずに」
二人の興味がこっちに向くからやめて。
「誰ニャ?」
「新しいプロデューサー?」
「いえ、違います」
プロデューサー、なんて言おうか悩んじゃってる。まぁ、いいか?
「俺は高垣楓の恋人だ」
「え~!!」
「え~!!」
あっ、揃った。
「う、噂通りで、なかなか格好いいニャ」
「うん、なんかいいね」
なんかゴニョゴニョ言ってて聞こえない。
二人が持っている資料が目に入った。なるほど、衣装でもめてたのね。
「イベントの衣装か、それ?」
「あ、丁度いいニャ」
「公平に第三者に決めてもらおう」
ヤブヘビだった…。
「どっちがいいと思うニャ?」
「参考までに聞かせて」
衣装のイラストを俺に向けてきた。ふむ…、どちらも悪くない。
「ちなみに聞くが、この衣装は継続で着るのか?」
「イベント用ニャ」
「ワンステージのみの衣装なんてロックだろ」
それなら。
「こっちのパンクっぽいのを前川、こっちのフリフリを多田が着ればいい」
「え~!!」
「え~!!」
また揃った。
「ワンステージだけなんだろ?それに、スペシャルだと告知すればファンも興味がわくだろうからな」
「う~、抵抗あるニャ」
「このフリフリは…」
渋い顔をする二人。
「例えば、今回じゃなくてもいい。そうだな、エイプリルフールに限定ライブもしくは限定配信なんかで真逆な衣装にする。もちろん、歌のパートもだ。それで、衣装の一部か…そうだな、マイクなんかに普段の自分らしいものを付けるんだ。例えば、ネコ耳カチューシャとかヘッドホンとかな。ファンはビックリするぞ」
沈黙する二人にプロデューサー。やっちまったか?
「ま、素人の意見だ。気にするな」
「それも、ありかもしれませんね」
「え?」
「え?」
「え?」
俺まで揃っちゃったよ、プロデューサーよ。
「いえ、ゆくゆくはいいかもしれません」
「Pちゃんまで…」
「プロデューサー…」
ほら、二人があきれてるよ。
そんな話をしていると、多田が窓に向かっていった。
「なつきちのバイクの音だ」
窓の外を見ると、バイクが1台敷地に入り駐輪場の方へ。
「あ、後ろに誰か乗ってる…」
「菜々ちゃんかニャ?」
違うな。おそらくはそうであろうと思い俺も窓の外を見る。バイクを降りてヘルメットをとる二人。木村夏樹と…、楓だ。
「楓さんだ。なつきちと一緒なんて珍しい」
「本当ニャ」
「プロデューサーさん、楓が着いたので、俺は行きます。お邪魔しました。二人もあんまりプロデューサーを困らせるなよ」
そう言い残し、楓のもとへ向かう。