事務所の入り口に行くと、楓が駆け寄ってきた。
…、減速して!スピードゆるめて!
「八幡さん!!」
そのままの勢いで俺にダイブしてきた。
なんとか受けとめることに成功。やっぱり楓は軽いな。
「大丈夫か?」
「はい」
「ずいぶんと遅いから心配したぞ」
楓に優しく話しかけた。
「それは私から説明させてもらうよ」
ヘルメットを持ってこっちに歩み寄ってくるイケメンな女性。
「木村夏樹さんか?」
「お、私のこと知ってるんだ」
「あぁ、さっき多田も騒いでたぞ」
「多田?ダリィか」
すげぇアダ名だな。
「んで、何があったんだ?」
「楓さんを連れだそうとしたら、マスコミに囲まれちまってな」
おいおい。
「そしたら、拓海と亜季が『腕相撲で勝てたら取材させてやる』とか言い出して」
なにそれ、ちょっと怖い…。
「そ、それで?」
「あの二人、男相手にも連戦連勝でさ。その場は涼と里奈に任せて、脱出したって訳」
おう、想像通り。
「拓海ちゃんも亜季ちゃんも、とっても強いんですよ」
楽しそうに、俺の腕の中で楓が言う。
「木村、ありがとな」
「その言葉、アイツらにも言ってやってくれ」
「もちろんだ」
「じゃあ、私はみんののところへ戻るよ。楓さんが居ないって知ったらどうなるか…。またなお二人さん」
颯爽とバイクに跨がり、ヘルメットをかぶる前にこちらに一言。
「しかしアンタたち、なかなかロックだよな」
そう言って去っていった。
「格好いいな」
「はい」
「もし二輪の免許取ったら、後ろに乗ってくれるか?」
「もちろんです」
「行くか」
「はい」
事務所に入り、常務の部屋に向かう。
途中で二人の女性とすれ違ったんだが、その女性一人が匂いをかいできた。
「クンカクンカ。…君いい匂いするね」
近い近い近い!
「どれどれ、フレちゃんもクンカクンカ」
だから近いって!
「どうフレちゃん?」
「ん?わかんな~い♪」
は、離れて!
「志希ちゃんもフレデレカちゃんも離れて!八幡さんが困っているわ」
「おやおや失礼」
「ごめんちゃ~い♪」
「お、おう」
あ~ビックリした。
「そうだ、逃げてる最中だった~。またね~」
「バイバ~イ、ムッシュ、マドモアゼル♪」
な、なんだったんだ…。
「すいません、二人が…」
「あの二人って…LiPPSの?」
「はい…」
なんか自由人ぽい。
また廊下の向こうから…。
「あっ、楓さん。おはようございま~す。志希ちゃんとフレちゃん見なかった?」
「二人なら向こうに行ったわよ」
「ありがとう。…ふ~ん…へ~…」
なんだなんだ、すげぇ見られてるけど…。
「ねぇねぇ君、しゅーこちゃんと遊ばない?」
「は?遊ばねぇよ」
「ダメですよ、周子ちゃん」
からかってるのか?…なんとなくキツネの耳が見えた気がした…。キツネ目だし。
「残念。じゃあ、志希ちゃんとフレちゃんを探しますか。楓さん、またね」
「は~い」
「恐るべし、キツネ娘だな」
「はい」
なんて事を話しているとまた一人。
「あ、楓さん。おはようございます」
「おはようございます、美嘉ちゃん」
おぉ、城ヶ崎姉。
「楓さん、こちらは?」
「比企谷八幡さんです」
「よろしく」
ジーっとこちらを見ている。まったく姉妹揃って可愛いな。
「楓さん、もしかして噂の…」
「はい、私の恋人です」
「ひゃ~!!噂通りのイケメンだ」
そんな噂になってるの?しかも噂通りって…。
「はい…そうなんです」
楓も嬉しそうにクネクネしないで、可愛らしいから。
「今度、ゆっくり話を聞かせてくださいね」
「もしかして、志希ちゃんとフレデレカちゃんですか?」
「そうなの、二人をレッスンに連れていかないといけないから」
ギャルっぽいけど真面目なんだな。
「じゃあ、またね楓さんに彼氏さん」
「はい、またね」
四人に会ったってことは…。
「あら、楓さん。おはようございます」
「奏ちゃん、おはようございます」
やっぱり五人目も来るよね。
「奏ちゃんも二人を探しに?」
「ええ。楓さん、こちらの男性は?」
「比企谷八幡さん、私の恋人です」
「比企谷です」
軽く会釈をする。
「へ~、この人が。速水奏です」
音もなく距離をつめてくる。近い近い近い!LiPPSは距離感おかしいよ!
「不思議な目してるわね」
「目が腐ってるとは言われるがな」
そんなに見つめないで!
「そう?素敵な目よ」
「そういうアンタもな」
もう無理!楓HELP!
「奏ちゃん近づきすぎ」
「うふふっ、ごめんなさい」
クスクスと笑う。つかみどころなさそうなヤツだな。
「問題児二人を探しに行かなくていいのか?」
「そうだったわ。楓さん比企谷さん、またね」
なんか常務に会う前に疲れた…。