三日目は映画館からスタート。最後に観た映画ってなんだっけ?
…プリ○ュアだった…。
当たり障りのないハリウッド大作。爆発すげぇな、いくら使ってるんだよ。そんな映画を目をキラキラさせながら楓は観ている。俺の評価は伝えないでおこう。
「楽しかった♪」
「単純明快、気分爽快な映画だったな」
「八幡さんは、どんな映画が好きなんですか?」
「プリ…、もっと文学的なヤツかな」
「フランス映画とか?」
「ま、まぁ…」
プ○キュアなんて、絶対言えない!
「楓ちゃん?」
映画館を出たら、楓が声をかけられた。この声はまさか!
「瑞樹さん!変装してたのに、よく私だってわかりましたね」
目の前には、『わかるわ』でお馴染みの川島瑞樹が…。すげぇ、本物だ。って、隣に『高垣楓』が居るんですけどね。
「まぁね、楓ちゃんだし。…そちらは?」
「初めまして、比企谷八幡といいます」
「私の彼氏で~す」
「!!」
「!!」
「か、楓ちゃん?」
「お、おい、それは言ったらマズイだろ」
「そうですか?」
「き、君、比企谷君っていった?」
「はい」
「ちょっとこっちに」
「瑞樹さん、私の八幡を盗らないでください」
「わ、私のって…。ちょっとお話しするだけだから」
「もう!ちょっとだけですよ」
川島さんに引っ張られ、人気のない階段に。
「アナタどういうつもり?」
「どうって言われても…。まぁ、恋人同士としか…」
「アナタは、あの『高垣楓』と居るのよ!」
「そうっスね、一週間だけですけど…」
「それって、どういう…」
川島さんは、たぶん楓が心をゆるしている人だ。嘘がないように伝えよう。
「この前の日曜日に、赤提灯で飲んでいたら、声をかけられたんです。…フラれたからって、高垣さんをフった相手に似てるからって…」
「…そんなことが」
「高垣さんの声、俺が好きな人に似ているんです」
「それって…」
「そうです。お互いに心の隙間を埋めているだけなんです。偽物とわかっていて…」
「そんなのって…」
「わかっています。よくないことぐらい…」
「じゃあ…」
「でも、高垣さんの…、楓のあんな悲しそうな顔はみたくないって思ってしまったんです。たとえ偽物でも、偽物の俺でも、楓が笑顔になってくれるならって…。それで、一週間だけの恋人になることを了承したんです」
川島さんがジッと俺の顔を見ている。
「嘘は言ってなさそうね」
「わかるんですか?」
「こんな魑魅魍魎だらけの芸能界に居れば、それくらいわかるわ。それに…」
楓の方を向くと。
「彼女の笑顔は本物よ」
「そうか、本物の笑顔なんだ…」
「アナタのあの笑顔も…」
「え?」
「ううん、気にしないで。一週間だけだけど、楓ちゃんのこと、よろしく頼むわね」
「うっす」
「よし!」
川島さんが背中をパーンと叩く。
「い、痛いっすよ」
川島さんと楓のところに戻る。
「楓ちゃん、お待たせ」
「八幡さん、瑞樹さんの色気に惑わされてないですか?」
「大丈夫だ。俺は楓一筋だから」
「もう!ノロケちゃって」
また背中を叩かれた。だから痛いって。
「楓ちゃん、この子離しちゃダメよ」
「はい♪」
「絶対によ」
「はい♪」
そう言って、楓は俺の腕にしがみついてきた。
「君も楓ちゃんを泣かせないようにね」
「うっす」
「じゃあ、私は行くわね」
「瑞樹さん、また飲みに行きましょうね」
「はいはい」
あっ、そうだ。
「川島さん、ひとついいですか?」
「何?」
「『やっはろー』って、言って、もらっていいですか?」
「や、やっはろー?」
「ありがとうございます」
うん、似てる。
川島さんが去った後。
「川島さんには、『若みずき』を進呈しよう」
「若みずき?」
「千葉の蔵元で作ってる日本酒」
「へぇ、いいですね。和歌山には『楓』ってお酒があるんですよ」
「それは是非飲んでみたいな」
「一緒に飲みましょうね」
「その前に昼飯だ」
そう言って、映画館をあとにした。