ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~   作:弱音御前

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ようやく寒くなりはじめ、冬! って感じになってきましたね。
どうも、弱音御前です。

長々と続けてきた今作も終わりまであと1歩。
どうかごゆるりとお楽しみいただければ幸いです。


マリッジ・ロワイアル 10話

 前回までのマリッジ・ロワイアルは・・・

 

 

 

「FAL! 大丈夫!?」

 

 

「ハロ~、45姉」

 

 

「このアらシが飲めって言ってんのよ! 言う事聞いてくれらっていいじゃんかよぅ!」

 

 

「ったく・・・お前と関わるとロクな事が・・・ないな・・・・・・」

 

 

「実力で奪い返す。あなたが相手でも容赦はできないわよ」

 

 

「ここには私達2人だけ。思いっきり楽しもう、45姉!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習開始90分後 Aチーム UMP45

 

 撃つ、隠れる、回り込む。サブマシンガン同士の目まぐるし攻防がロビーで展開される。

 お互いに手の内を知り尽くした姉妹だからこそ、その戦いはより熾烈さを加速させていく。

 マガジンが空になる直前なのを察して、残りの弾で9を牽制しながら遮蔽物に潜りこむ。高速でリロードを終えると間髪入れずに、遮蔽物から再び弾丸の嵐の中に飛び込んでいった。

 

(負けていない。落ち着いて対処していれば押しきれる)

 

 致命打こそ与えられていないが、9のシールドは色を変えはじめている。対して、45は9からの被弾数は微々たるものだ。元からシールドへのダメージが重なっている不利な状況から、少しずつ好転してきている。

 勝てる見込みを掴んで、45の士気も上がっていく。

 

「やっぱり45姉はスゴイね! あれだけ撃ってるのになかなか当たらないや」

 

「トリガーを引いてから着弾までのタイムラグを考えなさい。動いている相手を狙うのではなく、動く先を狙うの、っていう話は今までに何度もしたはずだけどね」

 

 戦闘の最中だというのに、ついアドバイスを送ってしまう。

 こんな調子でこなしていた9との訓練は、もう45の記憶では久しい。

 

「それが難しいんだよ。だからね、私なりに色々考えてみた」

 

 9のその言葉をきっかけに、まるで時間が止まりでもしたかのように銃撃がピタリと止んだ。

 

(考えた? 何を?)

 

 一縷の不安を覚え、45も慎重を期して銃撃を止める。

 耳鳴りが響く中での静寂はとても不気味で、45の緊張感を否がおうにも煽ってくる。

 遮蔽物にしている瓦礫の隙間から9の動向を探るが、動きは全く見られない。何かを待っているのか、それとも、単にハッタリをかけて45の混乱を誘う作戦なのか。

 45が下手に動けずにいると、視界の端で転がってくる何かを捉えた。

 咄嗟に銃口を向けて、直後、神経質になり過ぎだったと溜息をつく。

 

(さっき、スパスがほったらかしにした弾薬か)

 

 57を突破する際、火炎弾と入れ替えるのにスパスが装填していた弾を全部出していたのを思い出す。5つのショットシェルが45の右方向、遮蔽物から離れた位置に転がっていたのだ。

 気にするようなものではない、と45が再び9が潜む方へ視線を向ける。それとタイミングを計ったかのように、再び9からの銃撃が始まった。

 しかし、狙いはなぜか45ではなくもっと右寄り。ショットシェルが散乱している位置に集中している。

 

(? なんでそんな位置を狙って・・・)

 

 気付くのが遅かった。

 9の弾丸が直撃したショットシェルは周りの4つを巻きこんで盛大に炸裂。四方に鉛の弾が弾け飛んだ。

 

「きゃあ!?」

 

 当然、その傍に居た45は飛んできた弾をまともに浴びる羽目になってしまう。

 本来ならばブレイクは確実なダメージなのだが、銃で撃たれたものではないという判定なのだろう、シールドへのダメージは皆無。

 しかし、45の注意を逸らすのには十分な脅かしだった。

 

「接近戦で勝負だよ、45姉!」

 

 45が気を逸らしているうちに間合いを詰めたのだろう、9は45が遮蔽物にしていた瓦礫に飛び乗り、そこから45を見降ろす。

 至近距離で向けられる銃口。真っ向からの撃ち合いでは45のシールドがもたない。逃げるにしても、逃げ切る前にシールドを破られるのは目に見えている。

 

「っ!」

 

 最適解を算出したと同時に身体が動く。

 身体を横に逸らして射撃線上を避けつつ、9の銃身を左手で捕まえた。

 至近距離故の強行策だが、効果は上等だ。

 

「おっと!?」

 

 強引に銃身を押さえこまれ、目を丸くしている9に銃口を向ける。

 だが、お互いに立場が同じならば出来ることも同じ。45がやっているのと同じように9に銃身を掴まれ、押さえこまれてしまう。

 

「完全に不意をついたつもりだったのに、45姉ったら無茶するなぁ~」

 

 こう着状態でも9の楽しそうな様子は変わらない。

 45としてはもうギリギリの瀬戸際なのだが、余裕を装った笑みで返してやる。

 

「どれだけアナタと一緒に戦ってきたと思ってるの? 次にどう動くかなんて私にはお見通しよ」

 

「本当に? さっき、45姉ったらすごく驚いたような顔してたけど?」

 

 大正解なわけだが、それを悟られまいと涼しい顔で華麗に受け流す。

 

「じゃあ、こんなのはどうだ!」

 

 言って、9が飛び上がる。

 銃身を掴み掴まれたまま45を軸にして、月面宙返りの要領で45の背後へ華麗に着地して魅せる。

 

「なっ!?」

 

 予想外の行動とその流麗な身のこなしを目の当たりにして、今度こそ45は驚きを隠せない。

 振りかえる間ももらえず、後ろ膝を蹴飛ばされて体勢が大きく崩れる。そのまま腕を押しこまれれば、45の身体はいとも簡単に床に倒されてしまった。

 

「えへへ、今のは絶対に驚いたよね~」

 

 仰向けに押さえこまれる45に対し、9は心底嬉しそうな様子。

 

「そうね。悔しいけど、その通りよ」

 

 仰向けの状態では思うように力が入らず、押さえている9の銃口がジリジリと45へ向けられていく。完全に射撃線上に捉えられた時点で45の敗北だ。

 

「これでもう指輪は私のものだね」

 

 その言葉を聞いて、胸にジワリと違和感が拡がっていく。

 フォアグリップを握る9の指で煌めく指輪は、もう自分の所に戻ってこないのかと思うと、いてもたってもいられなくて、暴れて叫びだしたくなる。

 

「指揮官も私のもの。45姉の代わりにちゃんとサポートするから安心してね」

 

 寝起きをアサルトするのも、人形達の育成プランを考えるのも、一日の終わりに指揮官をからかうのも、今となってはそれら全部が45の役割で生きがいだ。それが全て盗られてしまうというのは、相手が妹の9であっても絶対に看過できない。

 イヤだ。

 絶対にイヤだ。

 

「・・・悪いけどね、9」

 

 指揮官から受け取った想いを手放したくなんかない。

 その想いが45の体をつき動かす

 

「あの人の面倒を見れるのは、私だけよ」

 

 身体を思いっきり振りかぶり、油断しきっていた9の脚をさっきのお返しとばかりに蹴り払ってやる。

 

「くっ!?」

 

 9の体勢が崩れると同時に銃口も大きく逸れたのを見計らい、弾かれるように起き上がる。

 起き際に9の襟首を掴み、背後に回り込んだ勢いを利用して力一杯に背後に引き倒した。

 

「きゃあ!?」

 

 ただでさえ姿勢が崩れていた事もあり、9の身体は背中から床に激突。昏倒は免れないほどの勢いと衝撃だが、今回はシールドのおかげで9自身へのダメージは無い。

 45は続けざまにに9の髪を踏みつけて床に貼り付けると、真っ直ぐに銃口を突きつけた。

 

「終わりよ、9。投降の意思は?」

 

 45の言葉を受けると、9はいつもの無邪気な笑顔を浮かべる。

 9が本当に嬉しい時、満足している時はいつもこんな表情を向けてくれていた。

 

「45姉が教えてくれた事だよ? どんな状況でも、決して敵に弱みは見せない」

 

 虚勢ではない真っ直ぐな言葉を受けて、45は静かに頷く。

 閃光を放ちながら跳ねる上がるマズルを押さえこみ、全弾を9のシールドに浴びせる。

 その間、じっと45を見つめていた9はシールドが砕けると、ゆっくり眼を閉じて寝息をたて

はじめた。

 

『Bチーム全員の脱落を確認しました。演習お疲れ様です、45さん。これより回収に向かいますので、指定の位置にて待機してください』

 

 9を倒した事で、演習終了を告げるカリーナの声が通信機から流れてきた。

 

「了解」

 

 戦闘に勝利し、指揮官との契りは守りきった。

 達成感と安堵感から大きく溜息をつくと45は腰を降ろす。

 回収班が来るまでの間、床に寝むる9を守るかのように45はその場から動かずにいるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習終了から2時間後 グリフィン救護室

 

 テレビ画面には演習の後半組、CチームとDチームの戦闘がドローン中継で放送されている。

 前半組が市街地での戦闘だったのに対し、後半組のフィールドはジャングル。M14がマジ泣きしながらジャングルを駆けまわっている様子を画面越しにぼ~っと眺めながら、演習のフィールドが市街地で良かったと45はつくづく思う。

 銃撃戦が始まり、音が大きくなってきたのでテレビのボリュームを少しだけ下げる。

 傍らのベッドで眠る9を起こしてしまわないようにだ。

 

「ん・・・45姉。おはよ・・・」

 

 けれど、そんな気遣いは少し遅かったようで、眠たそうに眼を擦りながら9が眼を覚ました。

 

「おはよう、お寝坊さん」

 

 優しく頭を撫でつつ、くしゃくしゃに乱れた髪の毛を整えてあげると、9はくすぐったそうに眼を閉じる。妹の可愛らしい様子を前に、45の表情に自然と笑みが浮かんだ。

 

「ぁ・・・そっか。私、負けちゃったんだった。やっぱり45姉は強いね」

 

「当然よ。私に勝とうなんて10年早いんだから」

 

 2人きりの真っ白な室内に2人の笑い声が溶け込む。

 いつもと同じようにまた9が笑顔で語りかけてくれた事で、45は演習が終わってからようやく心が落ち着いてくれた。

 

「45姉、これ・・・ごめんなさい」

 

 一転して、9は申し訳なさそうな表情で手を差し出す。小さな掌には、銀色の指輪が乗せられていた。

 

「本当にごめんなさい。指輪を盗った事、まだ怒ってるよね?」

 

「ううん、もう怒ってないから。そんなしょぼくれた顔しないの」

 

 指輪を受け取って指に通すと、まるで欠けていた自分の身体の一部が返ってきてくれたような安心を感じる。

 もう、これは自分にとってなくてはならなものになっていたのだと改めて痛感させられる。

 

「それにしても、私の知らないうちに随分と面白い戦い方を覚えたのね。ちょっとビックリしちゃったわ」

 

「えへへ。指揮官からこっそりと近接戦闘術を教えてもらってたの。45姉を驚かせたかったから、ナイショの特訓でね」

 

 指揮官と四六時中ベッタリな自覚はあった45だが、まさか9とそんな秘密訓練をしているとは全く気が付いていなかった。

 大好きな指揮官と妹の事だというのに、あまりにも盲目がすぎるというものだ。

 

「久しぶりに45姉と思いっきり戦えて楽しかったよ」

 

「そっか・・・ゴメンね。最近、あなたに構ってあげられなかったから、寂しかったよね」

 

「え? いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけど・・・でも、うん、45姉とお話できる回数が減ったのは少し寂しかった」

 

 伏目がちに答える9が愛おしくて、自然と手が伸びていた。

 胸に抱き寄せた頭を撫で撫でしてあげると、9はまた心地よさそうに目を細めてくれる。これも、今思えば久しぶりに浸る幸福な一時だった。

 

「これからは、今までみたいに9といられるようにするから。アナタにも・・・みんなにも、大切な仲間達には寂しい思いはしてほしくないから」

 

「うん・・・?」

 

 45の言葉を聞いた9が恐る恐るといった様子で顔を上げる。

 ジッと、45の真意を見透かすように見つめていた9に、やがて不安の色が滲み始めた。

 

「えっと・・・45姉? もしかして、イヤな事を考えてたりする?」

 

 澄んだ琥珀色の瞳で何を見たのか、9は45の答えを聞くのも待たず、みるみるうちに表情を曇らせていく。

 

「ダメ! それだけは絶対にダメだよ! 私もそうだけど、そんな事は基地の娘達みんなが望まないよ!」

 

「ちょっと落ち着きなさいよ! そんなに乗り出したらベッドから落ちるでしょ!?」

 

 今にも泣きだしそうな様子で縋りついてくる9に押し倒されそうになりながらも、寸でのところで踏みとどまる。

 人間の言葉で言えば以心伝心といっても差し支えないくらい仲良し姉妹の2人である、45の思惑を察するのも容易な事なのだろうが・・・

 

「まずは私の考えを聞いて。くってかかるのはそれからでも遅くないんじゃない? ね?」

 

「む~、私は絶対に納得しないもん。45姉が考えを改めるまでくってかかるんだからね」

 

 頬をぷく~っと膨らませて拗ねる9のなんと可愛らしい事だろうか。写真をとってグリフィン職員の一部マニアック衆に売りつけてやればちょっとした小遣い稼ぎをできそうなほどである。

 ・・・などと、それだけの精神的余裕を持っているという事が何よりも物語っている。

 絶対に9は45の話に納得してくれると。

 だから、45は落ち着いて、ゆっくりと自分のこれからの心がけを話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~NEXT マリッジ・ロワイアル~ 

 

 エピローグ Coming Soon

 




マリッジ・ロワイアル本編は今話を以って終わりとなります。
次回、最終話は後日談、エピローグになりますのでどうか最後まで温かい目でお付き合いただければと思います。

それでは、私は大型イベント〝異性体〟の攻略に取り掛からなければならないので。
来週もお楽しみに~
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