ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~   作:弱音御前

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今週もやってまいりました。どうも、弱音御前です。

長々と続けましたマリッジ・ロワイアルも今回で最終話です。
エピローグということで、まったりとお読みいただければ幸いかと思います。


マリッジ・ロワイアル エピローグ

 演習終了翌日 早朝

 

「つんつ~ん」

 

 効果音付きで頬を突かれる。

 初めこそ、何事かと飛び起きたものだったが、慣れてしまえばこれはこれでとても良い目覚ましアラームだと思えなくもない。

 今となってはこのまま放っておくところなのだが、今朝は目覚めが良かったということもあり、彼はここで初めて彼女に対しての反撃を試みようという気分になった。

 今にして思えば、なぜ今日この時に限りそんな事を考えついてしまったのか。運命というものは無情なものである。

 

「おはよう、45~」

 

 挨拶と共に彼女、45が居るであろう方向に飛びかかった。眼はまだ瞑ったままだが、狙いは合っていたようで45の頭に両腕をまわして優しく抱きかかえる。

 微かに感じる甘い香りと肌の柔らかい感触に心地良さを感じながら、彼の意識は急速に

覚醒していく。

 ・・・と、そこで同時に違和感にも気が付いてしまった。

 

「し、指揮官!? 抱きついてくれるのは嬉しいんだけど、あの、その・・・」

 

 いつもの45とは香りが違うような気がするし、反応もなんだかおかしい。

 そしてなにより、彼女はこんな声だっただろうか?

 

「? これって・・・」

 

 抱きついた人物の頭を手で探ってみると、左右に房が2つ付いている。

 おっと、これはツインテールだ。

 ならば、彼が抱きついているのが誰なのか? というのは簡単な問題であり、それに気付いた彼の背筋はまるでエアコンの強冷風を当てられているかのように急速に冷えていく。

 

「お前、9か!? な、なんで朝からこんな所に!?」

 

「えへへ、45姉が今朝は付いてきて良いって言ってくれたから、一緒に起こしに来たんだよ」

 

 いつもは45だけで来るのに今朝はどういった風の吹き回しなのか?

 いや、そんな事よりも、今の9の言葉には重大な事実が込められている。

 45と一緒にここに来た、と9は言った。それはつまり45がこの部屋にいるという事であり、今、9に抱きついているという状況はそれはもう致命的であり・・・

 

「おはよう、指揮官。随分と気持ち良さそうなお目覚めでなによりだわ~」

 

 9の背後、彼が見上げる先には笑顔を貼りつけた45の姿。笑顔を剥がしてみれば、その下には鉄血のエリート人形も全速撤退しようというほどの鬼の形相がお目見えしている事だろう。

 もう、鬼気迫るほどの負のオーラが笑顔の隙間から溢れ出まくっているのである。

 

「お、おはようございます、45姉さん・・・」

 

 あまりの恐怖で変な言葉遣いになった挨拶を返しつつ、彼はこの後の展開を想像して頭を痛めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頬を膨らませながら、いかにも不機嫌です、と言わんばかりにずんずんと歩く45の後ろについて廊下を行く。

 45と9を間違えて抱きついてしまった事は丁重に謝罪をしたが、そもそも、彼を起こして良いという許可を出したのは45である。その点を突いてしまったのが藪蛇で、一度は鎮火した45の不満も再燃。執務室に向かう今も不機嫌モードが継続中といった次第だ。

 

(昨日の件もかなり責められたから余計だよなぁ)

 

 昨日の件というのは先の演習の際、彼がネゲヴ率いるBチームに拉致監禁された事だ。無論、

指揮官である彼が戦術人形に拉致監禁されるというのは有り得ない事で、彼はちょっとした余興の一環としてそういう演出を施しただけである。

 指輪を景品にするというネゲヴのいきなりの発言には少し肝を冷やしたが、それもネゲヴなりの盛り上げ方(恐らくは)だと判断してストップはかけなかった。仮に、指輪争奪が本当の事になっていたとしても、45ならば絶対に指輪を守り抜くだろうと信じていたので、どちらにしろ不安は無かったのである。

 演習後、演習のルールやらネゲヴのやりたい放題ぶりに対してくってかかってきた45に対し、そういった一連の顛末を説明して、昨日はなんとか矛を収めてもらったのだが、今日は今日でこれである。

 もっと彼女の事を理解してやらなければ、とつくづく反省する。

 

「あら、おはよう、FAL。まだ任務開始には早いけど、もう出撃準備かしら?」

 

 物思いに耽っている思考が45の言葉で引き戻される。

 廊下の交差点でバッタリと出会ったのはFALが率いる精鋭〝Valkyrie小隊〟の一行だ。彼女達にはいつも高度な任務を任せてしまっているので、演習の翌日くらいは休みを与えたいという考えだったのだが、FALからの申し出もあり、今日もこれから任務を任せていたのだった。

 

「まあね。今日はほら、新入りが2人もいるから。こいつらだけでも先に準備させておかないと。寝ぼすけウサ子はそれから迎えに行くわ」

 

 FALの言葉に続いて、廊下の角から2人の戦術人形が出てくる。

 珍しく元気が無い97式と、朝っぱらから大袋ポテチをバリバリ貪っているスパスである。

 

「うぅ~・・・演習の翌日からハードな任務なんて最悪だぁ」

 

「大丈夫だよ。FALちゃんと97ちゃんのコンビならどんな任務も余裕でこなせるって」

 

「それ、絶対に何の根拠も無しに言ってるでしょ? 私、FALさん苦手だよ。95式お姉ちゃんと同じくらい怖いんだもん」

 

 小さく呟きつつも、97式はスパスが差し出した袋に手を突っ込む。

 普段から交流が少なかった面々で、スパスなんかまだはグリフィンに来てから日が浅い。FALから97式とスパスを新しく部隊に加えたいと提案された時は不安を感じたが、今の様子を見ればそれは杞憂だったと思える。親睦を深められたという点を目の当たりにできて、演習は成功だったと言えるだろう。

 

「おはよう、みんな。演習翌日からの任務を割り当ててしまって申し訳ない」

 

「おはようございます、指揮官」

 

 挨拶と共にFALがビシッと姿勢を正し、それに97式とスパスも続く。

 今はまだ勤務時間外なので、こういった行動をさせるのは彼の主義に反する。

 楽にして良い、という合図を送ると3人共にさっきまでの自然体に戻ってくれた。

 

「いつもと比べたら安全で時間も短い任務を選んだつもりだ。だからといって、気は抜かずにみんな無事に戻ってきてくれ」

 

「本当ですか!? やった~、今日は楽勝任務だ~!」

 

「そうなんだ。じゃあ、新開発した弾丸を試す余裕もありそうだね!」

 

 彼の言葉を聞いて、97式とスパスともに大はしゃぎである。

 

「はぁ~・・・指揮官、その事、あえて黙ってたんだけど。言ったらコイツら調子に乗るって分かりきってたから」

 

「そ、そうだったのか? すまない、FAL」

 

 溜息交じりに頭を抱えるFALに彼は本気で頭を下げる。

 どっちが上官なのか分からない状況を前に、45が小さく笑いを零したのが視界の端に写った。

 

「ごめんなさいね、FAL。指揮官には私からも良~~く言って聞かせておくから、気をつけて行ってきて」

 

 幸運を祈る、という意味を込めた合図を交わしてFAL達と別れる。

 

「というわけで、気をつけてね指揮官。私まで恥かいちゃうから」

 

「はい、肝に銘じておきます」

 

 後ろで手を組んで、さっきよりも気分が良さそうに歩く45の後ろに隠れるように付いて廊下を行く。

 しばらく歩くと、お次は2人並んで歩く戦術人形と出くわした。

 上着の裾を白いマントのように翻しながら歩くネゲヴと、朝からしょんぼりとした様子で俯いている9A91だ。

 

「おはよう、2人とも。昨日はお疲れ様」

 

「指揮官!? お、おおおはようございます!」

 

 彼に気が付くと、ネゲヴは今までに見たことも無いくらい慌てた様子で挨拶を返す。その際、なぜか咄嗟におでこを隠すように両手を当てた。

 良く見るといつもと髪型も違うようで、後ろ髪の一部を前部に回している為、前髪のボリュームが大変な事になっている。

 おでこに見られたくないモノでもあるかのようだ。

 

「ご機嫌よう、ネゲヴ。上官が挨拶しているのに、そんな姿勢で挨拶を返すのは失礼にあたるんじゃないかしら? ほら、両手を下げて姿勢を正しなさい」

 

 そんなネゲヴに対し、45はかなり上から目線な物言いである。

 昨日、色々あった間柄なので仕方ないところもあるが、朝からギスギスとした言い合いが展開されるのは彼の望むところではない。

 

「うぅ~・・・お、覚えてなさいよUMP45~~!」

 

 ネゲヴの性格上、てっきり45に言い返してやるものと思ったが、ネゲヴは予想に反して顔を真っ赤にしたまま、そして両手はやっぱりおでこに当てたまま走り去ってしまった。

 

「あははははははは! 本当、いい気味だわ!」

 

 そんなネゲヴの後ろ姿を見送って、45はその場で腹を抱えて笑いだす。

 一体、昨日の演習で何があったのか? ドローン映像で演習の様子は確認していたが、全容まで把握は出来ていない彼には知る由も無い事である。

 

「あの・・・おはようございます、指揮官」

 

 そんな一連のやりとりが終わったのを見計らっていたのか、9A91は彼の前に立つと小さく頭を下げて挨拶をしてきた。

 普段からやや控えめな性格の彼女であるが、今朝は目に見えて控えめというか、まるで悪い事をしでかしてしまった子供のようにしおらしい感じだ。

 

「おはよう。なんだか元気なさそうに見えるんだけど、どうかしたの?」

 

「先日の事を指揮官に謝らければと思って」

 

 先日の事、と言われても彼は9A91に謝罪をされるような心当たりはない。

 訝しみながら首を傾げる彼の様子を見て、気分を悪くさせたと思ったのだろう、9A91は更に身体を縮こませて話を続ける。

 

「先日の演習で敗北を喫してしまいました。指揮官がご期待して選抜してくださったのに、私、

言い訳のしようもありません」

 

 眼の端を涙で潤ませ、絞り出すように9A91は話す。

 昨日は模擬戦闘とはいえ、あくまでもレクリエーションの一環であって、戦術人形個々の成績に左右するような事はない。

 負けたところでどうという事ではないのだが・・・9A91はとても真面目な性格の戦術人形なので、後ろめたさを感じてしまったのだろうか。

 

「Bチームとしては負けたかもしれないが、キミの活躍はちゃんと見ていたよ。キミ単独で3人を撃破、そのうちの1人は狙撃の名手スプリングフィールドだったじゃないか。十分に胸を張っていい結果だよ」

 

 ライブ映像で観ていた演習での感想を素直に述べると、9A91は更に顔を俯かせてしまう。ただ、顔は真っ赤だし居心地悪そうにもじもじしていたりと、明らかに様子は好転していそうだ。

 

「あぁ、指揮官、ありがとうございます。・・・あの、差し支えなければ、お願いしたい事があるのですが」

 

「ん、どんな事かな?」

 

「その・・・あ、頭を撫でてもらえませんか? G41ちゃんとかMP5ちゃんとかSOPⅡさんにしているみたいに」

 

「よ、よく見てるのな」

 

 思わず頭を撫で撫でしたくなってしまう戦術人形が多いので、つい頭に手が伸びてしまうというのは指揮官としても自覚はあった。周りからけっこう見られているのだな、と判明してしまった以上、これからは時と場所に気をつけた方がいいのかもしれない。

 

「あ、ちょっと待って下さい。・・・はい、お願いします」

 

 一旦、彼を制止すると9A91は帽子を取り、非常に撫でやすい角度で俯いてくれる。

 その隙にチラリと45の様子を確認すると、壁に背中を預けてタブレット端末を弄くっている。指揮官には目もくれていない。9A91を撫で撫でする様子を思いっきり見られていたら後で何を言われるか分かったものではないので、今ならば問題はなさそうだ。

 窓から差し込む陽光を受け、艶やかに流れる髪を手で梳いてあげる。幾人もの戦術人形を撫でてきた撫で撫でマスターである指揮官も唸るほどに優しく温かな手触り。9A91も大人しく撫でられて気持ち良さそうに眼を閉じているので何よりである。

 

「っと、これくらいでいかがかな?」

 

 適当なタイミングで手を止め、9A91に確認する。

 

「・・・指揮官。指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官」

 

 文字がゲシュタルト崩壊を起こす勢いで自分の世界に入り込んでしまっている9A91を見てちょっとだけひるんでしまう。恍惚状態に入ってしまうと外界からの影響は全て遮断され、こっちの世界に戻ってくるのはもう9A91の御心次第だ。彼にしてあげられる事は何もないのである。

 

「じ、じゃあ、俺はもう行くから。無事に戻ってくるんだぞ~」

 

 眼を閉じて未だにトリップ中の9A91を置いて踵を返す。

 

「用事は済んだ? 早く行かないと遅刻しちゃうわよ」

 

「あ、ああ・・・」

 

 結局、今の様子を見ていたにしては何も言ってこない45に違和感を感じつつ、再び彼女の後ろについて歩き出す。

 

「おはようございます、指揮官様」

 

「おっはよ~、指揮官」

 

「おはにゃ~、指揮官!」

 

「しきか~ん、抱っこして~!」

 

 廊下で戦術人形達と会うたびに立ち話をする事になってしまい、業務時間を少しだけオーバーしての執務室到着になってしまった。

 ここ最近、挨拶だけですれ違うことの多かった娘達も立ち止まって会話をしてくれたのは嬉しい事だったが、今日になってどうしていきなり変わったのか、気になるところではある。

 

「はい、遅刻~。この怠慢はちゃんとヘリアンに報告するから、今月はお給料減俸だね」

 

「勘弁してくれよ、45。みんなとしっかり意見交換するのも指揮官の仕事。業務を忠実に行った故の不可抗力だよ、これは」

 

 やたらと座り心地の良い椅子に腰を埋め、45に言い訳を返す。

 デスクで執務の準備を始める彼の元に、45がゆっくりと歩み寄ってきた。

 その様子を視界の端で捉えつつ、いつもとなにやら様子が違う事に気が付く。

 

「ねえ、指揮官。何か変だなって思った?」

 

「ああ、みんなの様子がいつもと違う・・・っていうか、以前のように戻ったって感じ。キミが何かしたの?」

 

「何かしたっていうほどの事じゃないけど。まぁ、ね」

 

 デスクにちょこんと座り、45は膝の上に手を置いた。

 彼女に視線を向けて、その左手に在ったものが無くなっている事に気が付いてしまう。

 自室からここに来るまでにその事に気が付かないなんて、いよいよもって鈍感にも程があると、自分の至らなさに溜息をつく。

 

「気がついちゃった? あのね、昨日の演習で指揮官が離れてしまうという事がどれだけ辛いかって、身に染みて分かったの。私だけが指揮官を独り占めしてる間のみんなの気持を思い知った」

 

 宙に浮いた足はパタパタと、でも、いつになく真剣な表情と声色の45の話しに、彼は静かに耳を傾ける。

 

「だから、みんなの前で指揮官を独り占めするのは止めようって思った。みんな、同等に指揮官に好意を向けてくれて構わない。私達、戦術人形も人間と同様に平等の権利があるから。それで、みんなが指揮官と接しやすいように指輪は外したの」

 

「そう・・・だったのか」

 

 グリフィン内の士気に直結する事柄だけに、45の意見には彼も同意できる。しかし、残念であるという気持ちだけは簡単に拭い去る事はできない。誓約は戦術人形にとってもそうであるように、彼にとっても特別な意味を持つ事柄なのだ。

 

「指揮官は、私を独り占め出来なくなったら辛い?」

 

 伏せ眼がちに45が問いかけてくる。

 いつも余裕綽々で彼の事をからかってばかりいた45。そんな彼女が初めて弱気な様子を見せている。今は自分の想いをハッキリと、真っ直ぐに返してあげなければいけない場面だ。

 

「・・・うん、辛いな。グリフィンのみんな俺の大切な仲間だけど、その中でも、45だけは初めてできた特別だから」

 

 左手の指輪をさすりながら紡いでいく彼の言葉を45は俯いたままで表情は見えないが、じっと聞いてくれている。

 

「けど、45が言っている事は副官として正しい。俺も我儘ばかり言ってられないから、残念だけど誓約は・・・」

 

「ぷっ・・・くくく・・・あはははははははは!」

 

 突如、彼の言葉を遮って45が笑いだす。

 それこそ、今までに見たことも無いくらいの勢いで悶える彼女を前してに、つい言葉の続きを忘れてしまうくらいに呆気にとられてしまう。

 

「あ~もう、指揮官ったら本当に面白いんだから。涙出てきちゃった」

 

「おいおい、そんな笑うような事じゃあ・・・」

 

 再び、彼の言葉は45によって遮られる。

 ゆっくりと抱きついてきた45の身体を、条件反射で優しく抱き返した。

 

「私も指揮官の事、大大大好き。だから、誓約を破棄するつもりなんてないわよ」

 

「え? だって、指輪は外すって」

 

「みんなに見えないように外してるってだけ。指輪はここにちゃんと・・・ほら」

 

 言って、45は首元から服に手を入れると、そこから紐を引っ張りだした。革製の紐の先には、色褪せない銀色の輝きを纏う指輪がくくりつけられている。

 

「指輪って、こういうオシャレな身につけ方もあるんでしょ? カリーナから教えてもらったの」

 

「そ、そっか。そういう意味の話しだったんだな」

 

 本当に、心の底から安堵の息をつく。すぐ目の前では、そんな彼の様子をニヤニヤと面白そうに見つめる45の顔が。

 

「契約を破棄しようって言われると思って焦った? 泣いちゃいそうだった? ねえねえ、そこんとこどうなの?」

 

「くっ・・・言わなくても察してくれ、それくらい」

 

 恥ずかしさを堪えつつ絞り出したその言葉を聞いて、45はいかにも満足そうな表情である。

 もう、45に勝てる日は未来永劫訪れないのだろう、と彼は切実に思う。

 

「普段、みんなの前で大人しくしてる代わりに2人きりの時は思いっきり指揮官に甘えてやるんだから。指揮官もちゃんと我慢しないと駄目だからね?」

 

 45はデスクから降りると、今度は彼の膝の上にぽすんと座り直してきた。

 彼の身体を背もたれ代わりにして身体を預けてくる45を両手で優しく抱きかかえる。まるで猫のようにスリスリと身体を擦り付けてくる仕草がとても可愛らしい。

 

「俺は平気だけどさ、むしろ俺は45の方がちゃんと我慢できるかのほうが心配」

 

「もちろん私は平気よ。こういうのって、我慢した方がその分だけ気持ち良くなるって聞いたし」

 

「誰から聞くんだ、そういう話し」

 

「カリーナ」

 

「あんにゃろう、面倒な事を吹きこんでからに・・・」

 

 そうしてしばらくの間2人して談笑を続け、いつしか自然と本日の業務へ取りかかる。

 戦いと共に在る彼女といつまでこうしていられるのか。一寸先の保証すらも得られはしない。だから、今、こうして一緒に笑いあって居られる間は彼女の優しさも寂しさも、全部を抱きとめてあげたいと思える。

 彼女も自分と同じ思いを抱いてくれているのなら、それはこの上なく幸せなことだろうと、彼は彼女と同じく首にかけた指輪を優しく握りながら思うのだった。

 

                                  

END

 




マリッジ・ロワイアルを最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます。

久しぶりの二次創作及びサイト投稿ということで、とても楽しい時間を送ることが出来ました。やっぱり、読んでくれる人がいる、っていう事が分かるとヤル気も上がってくるものなんですよね。

読んでくださった方々とドールズフロントライン運営陣に感謝しつつ、私は今日も細々と創作活動に勤しみたいと思います。

年末~年始辺りに投稿予定の弱音御前の次回作にもぜひ足を運んでやってください。
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