ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~   作:弱音御前

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またまたやらせていただきました。

今回も好き放題に書かせてもらってますので、みなさんもお楽しみいただければ幸いです。


マリッジ・ロワイアル 3話

 前回までのマリッジ・ロワイアルは・・・

 

 

 

 

 

 

『勝利した者が指揮官とお揃いの指輪を受け取る権利を得るのだと、ここに宣言するわ!』

 

 

 

「アナタの話しに乗ってあげる。勝ったチームにこの指輪を譲渡するわ」

 

 

 

「へっへ~、鬼さんこちら~」

 

 

 

「あのガキ・・・絶対に思い知らせてやるんだから!」

 

 

 

「2手に別れましょう。1人はFALを追いかける。2人はこの道路の先にいるヤツを押さえる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習開始から20分後 Aチーム FAL

 

 

 あんな安い挑発に乗って、と45はきっと呆れていることだろう。

 確かに、97式に翻弄されて苛立っているというのは否定しないが、屋内に逃げ込んだ97式を追いかけてきた事に関しては、それなりの勝算を予想してのことだった。

 外から確認できた限りでは、建物の中は空っぽで家具や置き物も無い、広々としたコンクリート張りの部屋が連なっているだけ。遮蔽物の無い近距離での撃ちあいならば火力に優れるFALに分がある。

 それがFALの見立てだったのだ。

 

「くっ! ちょこまかと煩わしい・・・」

 

 銃声が壁に天井にと反響し渡り、どの位置から撃たれているのかも把握できない。反撃に転じたいのは山々だが、こんな状況では室内に転がる頼りなさげなテーブルに身を隠してやりすごすしかなく、FALのフラストレーションだけが着々と溜まっていくだけだった。

 特設フィールド内の建物はハリボテで屋内は伽藍洞、というのは道路から見える範囲だけで、その奥に続く部屋には様々なオブジェクトが設置されていた。

 それも通常の生活に適した配置などではなく、銃弾を防ぐ盾としてお役立て下さい、と言わんばかりの置き方だったのだ。

 こうなってしまっては戦況は一転、小さく取り回しの効く97式に分が寄ってしまう。

 1人で飛びだしてきてしまった手前、後退して45達と合流するというのも躊躇われ、FALはまた97式のいいようにハメられてしまったのだった。

 何発の弾を防いでくれたのだろうか、背中を預けている木製のテーブルが悲鳴をあげ始める。

 

「もう限界か。次」

 

 必ず逆転のチャンスは訪れると信じ、今はただ耐え凌ぐ事を優先で考える。

 身を隠せそうな遮蔽物はFALの右手10メートルほど先に、今お世話になっているテーブルと全く同じものが良い角度で転がっている。

 到達するまで97式との間を遮るものは無くなってしまうが、もう迷っている暇は無い。

 判断するが早いか、FALは小さく息を吸い込むと一気に身体を躍らせる。

 姿勢は出来るだけ下げ、片手で持ったライフルを97式がいるであろう方向に向けて掃射しながら駆け抜ける。

 フルサイズ弾の反動を片手で制御するのは難しく、マズルは暴れて弾があらぬ方向へ飛んでいく。今は当てるのが目的ではなく、遮蔽物に滑り込む僅かな間の牽制になってくれればいいのだ。

 

(もう少し!)

 

 あと数歩。テーブルの影に身体を滑り込ませようとした・・・その時だった。右足に微かな衝撃を感じると共に視界に被弾を表すエフェクトが現れた。

 緑色のクリアシートで身体が覆われた、といった表現が適切だろうか。これは、最近実装されたドローンシステム〝守護妖精〟のエネルギーシールドと原理を同じくするもので、本演習ではこのシールド技術で人形達の安全を確保している。

 97式は特に射速に定評のある娘なので、被弾が1発で済む筈も無く、遮蔽物の影に隠れきるまでに計4発被弾してしまった。

 

「さすがに、これ以上もらいたくないわね」

 

 オレンジ色に染まるシールドに歯噛みしつつ、空になった弾倉を入れ替える。

 シールド残量は緑色、オレンジ色、赤色で表示され、赤状態で被弾するとシールドがブレイク。その際に人形の運動能力を奪うパルスが発生し、行動不能に陥るというルールらしい。

 シールドは時間の経過と共に回復するが、累積ダメージが増える事で回復速度が低下し、限界値に到達すると赤色から回復しなくなる。

 この部屋に来るまでの間で、97式との撃ち合いでFALのシールドがオレンジ色に達したのは2回。すでに回復速度が遅くなっているように感じるのはプラシーボ効果によるものだと思いたいところだ。

 

「ほらほら、隠れたからって安心してちゃだめだよ?」

 

 部屋の奥から撃ってきていた筈の97式の声がテーブルのすぐ向こうから聞こえる。

 97式との戦闘にやりづらさを感じる原因の1つがこれ。やたらと格闘戦をしたがるところだ。

 

「ったく、アナタも戦術人形なら銃で戦いなさい! 銃で!」

 

「えぇ~? せっかくのレクリエーションなんだから、変わった戦い方でも楽しもうよ」

 

 テーブルを乗り越え、97式はFALのすぐ横に降り立つ。

 距離が近すぎて、大型の銃身を持つFALでは銃口を向けられない。

 そんなFALに対して、97式は拳で打つは脚で蹴るはの近接格闘の応酬。正規の格闘術など知らないFALは、持ち前の戦闘勘とノリでそれに対応するしかなかった。

 巷では〝グリフィンCQC〟という切り札中の切り札が存在するという噂だが、そんな眉唾モノに頼ってなどいられない。

 銃による攻撃でなければシールドの耐久は下がらない、というルールなのが唯一の救いか。

 

「銃を使わない戦い方をちゃんと身につけておかないと、いざという時に困っちゃうよ?」

 

「そうならないように戦うのが私達で、しょ!」

 

 バレルを両手で掴み、97式の頭部目掛けてフルスイングをお見舞いする。

 FAL自身もどうかと思う戦い方だが、そんな捨て鉢な攻撃は通用するわけもなく、ブォン、という鈍い風切り音が屈んだ97式の頭上を通過する。

 

「はい、お腹がガラ空きぃ」

 

 言われた通り、ガラ空きの腹部に潜りこまれると間髪入れずに殴られ、宙に浮いた身体が後方に軽々と吹き飛ばされる。

 正確には、殴られるという表現は違うのかもしれない。広げた掌で真っ直ぐに突かれる。これがどういう原理なのか、97式の体躯からは想像も出来ないほどの力が発揮されている。

 彼女のメンタルモデルがそういった近接格闘に特化した能力を持っている、という事なのか?

 今のFALにはどうしたって理解の及ばない状況である。

 

「ああ、もう!」

 

 ガシャーン! と、派手な音をあげて金属製のラックに激突、もろとも床に倒れこむ。

 シールドのおかげで、突き飛ばされた時も今の激突でも痛みは無いが、FALのプライドはもうズタズタである。

 同じ銃種の相手にここまで良いようにやられて一撃も返せない自分のなんと不甲斐ない事か。

 

「よし! じゃあ、そろそろ決めてお姉ちゃんの所に戻ろっかな。っと、リロードリロード」

 

 苛立っているFALを前にしても97式はマイペースを崩さず、呑気にマガジンの交換を始めている。

 

「っ! 銃が・・・」

 

 焦りが不運をも招いているのか、反撃のチャンスにも関わらず倒れたラックに銃身が引っ掛かっていて構えることができない。

 

「はい、FALさん脱落~」

 

 無邪気に冷酷に銃口が向けられる。

 銃から手を離せば逃げる事は可能だろうが・・・しかし、この銃は他ならぬ自分自身だ。自らを手放すことなど、どうしてできるだろうか。

 まぁ、すっ転んだ勢いで止むなく手放してしまうようなおバカは別としてだが。

 

(そんなバカにやられるんだから、いいザマね)

 

 敗北。その事実を受け入れた瞬間、湯だっていた頭が一気に冷えてくれた。

 これは演習だ。負けたところで、評価がちょっぴり下がるくらいのものだし、そんなのはこれからの任務で挽回すればいいだけの事だ。

 ・・・ただ、残念なのは一つだけ。

 指揮官とお揃いの指輪は欲しかったかも・・・と、心で呟いてFALは目を閉じる。

 炸裂音を伴い、5.56ミリ弾の群れが一斉にFALへと襲いかかる。

 全て浴びれば、今のFALのシールド耐久では2秒ともたないだろうが・・・しかし、発砲音は聞こえるのに被弾の感触はいつまで経っても感じない。

 それどころか、自分の周りに弾が飛んできている感触すらも無い。

 不思議に思い目を開けてみると、いつの間にか現れていた人影が97式との間を遮っていた。

 

「ふ~、間に合ってよかったよ」

 

 銃声に紛れて、朗らかな声が聞こえてくる。

 あまり聞かない声だが、FALには覚えのある声だった。

 

「あなた・・・スパス?」

 

 見るからに重厚な盾を展開し、97式の銃撃を防いでくれたのはスパスだった。

 赤色の瞳は宝石のように澄んで、銀色の髪は煌びやかに艶やかに。その姿はさながら戦場に降り立った戦乙女か・・・という感想が思い浮かんでしまったのはプラシーボ効果故だと本気で思いたいFALである。

 

「んもう! これだから装甲持ちは嫌なんだぁ!」

 

 シールド耐久力は銃種と装着可能な装備品によって変わる。

 97式のマガジン2つ分の弾丸を受けてようやくシールド色が変わりはじめるのだから、流石は戦術人形でトップの耐久を誇るショットガンクラスといったところか。

 

「銃撃が収まるまでもうちょっとそこに居てね、FALちゃん。今のうちに銃を構えて構えて」

 

「そんな事、アナタに言われるまでもないわ」

 

 肩の力が抜けたおかげか、さっきまで強情に引っ掛かっていた銃身がラックからすんなりと抜けてくれる。

 

「それじゃあ、ここからショーの始まりだよ!」

 

 盾越しに銃身を覗かせ、スパスが発砲する。

 ライフル弾とは違う、重く身体の芯に響くような発砲音が室内に木霊した。

 これ以上、彼女に借りは作れないFALもスパスの横に並び盾越しに97式を狙い撃つ。

 

「ああもう! これだから散弾は嫌いなんだ~!」

 

 遮蔽物に身を隠す97式だが、一撃でテーブルは軽々と吹き飛ばされてしまう。

 ドアを破る為に用いることから〝マスターキー〟と呼称されるとおり、近距離対物において無類の強さを誇るのがショットガンである。

 逃げ回る97式に被弾エフェクトが現れ、確実に被弾しているという事が目視できる。

 このまま97式を撃退できるという、暗闇の中に見えた光明にFALの戦意も高ぶる。

 

「FALちゃん、この盾持ってて」

 

「は? 持っててって・・・」

 

 せっかくヤル気だった所に水をさされ唖然としているFALに盾を預けると、スパスが97式に向かって突撃する。

 太っ・・・失礼。グラマラスな体躯にそぐわぬ軽快さで遮蔽物を潜り、飛び越え、スパスは逃げ回る97式の正面へと回り込んだ。

 

「もう逃がさないよ」

 

「くっそ~、こうなったら正面突破だ~」

 

 立ちはだかるスパスに向かって、97式はトリガーを引きっぱなしで駆ける。

 対するスパスも撃たれている事を意に介さず反撃。2発3発と空のショットシェルが宙を舞う。

 しかし・・・

 

「あ、あれ?」

 

 カキン、カキン、とトリガーが虚しく空ぶり、ポンピングをしても弾が排夾されない。

 弾切れである。

 そして、肝心の弾薬はというと。

 

「この馬鹿! 弾まで私に預けてどうするのよ!」

 

 改造好きなスパスは盾の裏側にショットシェルを山盛り備え付けており、その盾は遮蔽物の向こうにいるFALが預かっている

 今、スパスのポケットに入っているのはミニサイズのポテチ袋だけである。

 

「ふはは~! 天運は我にあり~!」

 

 相手が撃てないと見るや、97式も射撃を止める。

 佇むスパスの懐に踏み込むと、先ほどからFALを苦しめていた格闘術を披露する。

 狙いは腹部。床を踏み抜いた両脚からの力を上体へ集約させ、ぶつけた左半身を通じて相手に叩きこむ。

 これぞ、古の武術を嗜む95式お姉ちゃん直伝〝てつざんこう〟。

 なんか知らないけど、くらった相手は軽く3メートルは吹っ飛ぶスゴイ技! くらいしか97式はこれに関しての情報は持ち合わせていない。

 とにかく、これでスパスをやり過ごして一旦退却・・・できる筈であったが、そう上手く事は運ばない。

 運というのはいとも容易く流れゆくモノなのである。

 

「つっかま~えた」

 

 なんと、97式が身体をぶつけたその瞬間にスパスは97式を両腕でがっちりキャッチ、そのまま抱き上げてしまったのだ。

 

「うそ~~!?」

 

 〝柔欲、剛を制す〟が武術の決まり文句。

 しかし、〝剛欲、柔を制す〟というのが厳しい現実。

 誰彼かまわずに技を仕掛けるには、97式はまだまだ技量不足だった、ということである。

 ついさっき、97式がIDWにしてやった時と全く逆の状況に陥ってしまう。

 そして、そんな97式の目前には、預けられた盾を重そうに引きずりながらようやく追いついたFALの姿が。

 

「アナタ、よくこんな重い盾持ってられるわね。どれだけ馬鹿力なの?」

 

「私だけじゃないよ? ショットガンの娘達はこれが普通くらいだよ」

 

 会話の通り、97式の身体を抱えるスパスの腕はどれだけもがいても全く解ける気がせず、それでいて、背後ではほんわかとした表情を浮かべているのだから、恐怖を感じてしまおうというものである。

 

「スパス、そのままジッとしてなさい。マガジン一杯の弾丸、キッチリ撃ちこんでやるから」

 

 FALは盾をその場に置くと、まだ弾丸が残っているマガジンを交換する。

 今までやられた分、利子をつけて返す気満々といったFALの様子に恐怖もさらに倍。

 

「は~な~せ~! このままの状態で撃たれたら、あなたも流れ弾でダメージ受けちゃうかもしれないんだよ? それでもいいの?」

 

「平気だよ。これくらいの距離で狙いを外すようなFALちゃんじゃないもの」

 

「そう言われちゃあ余計に外せないわね。もう少し近付いておこうかしら」

 

 2メートルと離れていない至近距離でさえ、FALの腕前なら外すわけないのに、距離は更にその半分の1メートルに縮まり、突きつけられたFALの銃口からは熱と硝煙の香りを感じることすらもできる。

 あまりはしゃぎすぎるんじゃないのよ? という姉からの忠告を聞いておけばよかったと、後悔と恐怖から涙がジワってくる。

 

「こんな近距離でマガジン全弾撃ち込まれたら、シールド破れてもお釣りがきちゃうよ。痛そうだなぁ」

 

「こういう演習にはちょっとしたアクシデントは付きものだから。資材も高速修復契約も十分に余ってるんだし、平気よ」

 

 しれっと会話を交わす二人に挟まれ、ついに97式のメンタルも我慢の限界に達する。

 任務で負傷するのは仕方が無いとして、今回の様なレクリエーションで痛い思いをするのは本当に勘弁である。

 

「うぅ・・・降参です! 降参しますから撃たないでくださいお願いします!」

 

「は? あれだけ好き勝手やっといて、謝るだけで済むと思ってんの?」

 

 泣きの入った97式に対して、FALは銃口を降ろしてはくれるものの、やたらとドスの利いた声で脅しをかける。

 絶対に話し合いだけでは済まない、という事を悟って97式の動揺もピークに。

 

「じゃじゃじゃじゃあ、どうすれば許していただけるのでしょうか」

 

「そうね・・・降伏を認めて欲しいっていうなら、1ヵ月間、私の部隊に加わりなさい」

 

 言われて、97式の顔が青ざめる。それはもう、お姉ちゃんの大切にしている食器を割ってしまった時を凌駕するくらいの青ざめっぷりだ。

 

「? FALちゃんの部隊ってそんなにヤバいの?」

 

「ヤバいなんてもんじゃないよ。任務の難易度も危険度も最高クラスのものばっか請け負って、数日見てないな? とか思ったら、みんな死にそうな顔して帰ってくるんだから。基地のみんなの間では〝ヘル・スカッド(地獄の部隊)〟って呼ばれてるんだよ」

 

「アナタ、部隊長の前でよくもまあ堂々とそういうこと言えるわね」

 

 その話しを聞いて、きょとんとしていたスパスの表情に笑顔が浮かぶ。

 一体、なにが面白いというのか? 97式ざまぁ! という意味なら、スパスは嫌な奴リストに掲載決定だ。

 

「じゃあ、97ちゃんはFALちゃんの精鋭部隊にスカウトされたって事だね。実力を認めてもらえて良かったね」

 

「そ、それは・・・そういう事なのかもしれないけど・・・」

 

 スパスののほほんとした見解を受けて答えに困る97式。

 助けを求めてFALに視線を向けるが、FALも拗ねたような表情で顔を背けているので、まぁ、つまりはそういう事なのだ。

 

「はい、お互いに同意って事で話しはお終い! 投降の意思を承諾するわ」

 

 投降は、する側とされる側、お互いの承諾を以って成立とする。

 投降が成立するとどうなるのかというと、まずシールドの耐久が自動的に下がっていく。97式のシールドが緑から一気に赤色に変化し、そうして、まるで鏡が割れたようなエフェクトと共にシールドがブレイク。

 すると突如、97式の身体に異変が現れる。

 

「あ、あれれ? なんか・・・身体に力がはひらはひぃ~」

 

「なるほどね。運動能力を制限するってこういうこと。これなら騙し打ちもできないし、分かりやすくていいわね」

 

 まるで、睡魔と格闘中の子供のようにウトウトしだす97式を抱っこしているスパスは、さしずめお母さんといったところか。

 

「さて、首尾よくいった事だし45達と合流しましょうか。・・・そいつ、ここに置いて行きなさいよ。私がまたあの重い盾を持たなきゃいけなくなるじゃない」

 

「いいの? せっかくスカウトした大切な部隊員さんなのに?」

 

「あとでこっそり97式に言えば良かったわ」

 

 スヤスヤ寝息を立てる97式を抱きかかえるスパスに続いて、FALは盾を引きずりながらビルの一室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・了解。やってみるから、アナタ達は通りで待機しててちょうだい」

 

 FALからの連絡は、今の45にとってこの上ない吉報であった。

 

「95式! 妹は大人しく投降したみたいだけれど、アナタはどうする?」

 

 前方、100メートルほど先の交差点に設けられたガードブロックに潜んでいる95式に届くように声を張り上げる。

 すると途端に銃撃が止み、恐る恐る身を隠している車両の影から95式の方を覗き見てみれば、案の定、95式が両手を掲げて身を晒し出してくれていた。

 投降の意思表示である。

 45の左数メートル先に転がる、銃弾を受けてズダボロになった電話ボックスの残骸に身を隠していたIDWにサインを送ると、2人並び、周囲を警戒しつつ95式の元へと歩み寄る。

 

「本当に投降してくれるとも思わなかったけれど。明らかに優勢だったのはそっちだったのに」

 

「ええ、確かに。45さん達を退けるのはそれほど難しい事ではありません。ですが、今回は演習という事で、組んでいる97式に指揮の全権を預けていましたので。頭を押さえられてしまっては、私にはもうどうしようもありません」

 

 95式は45が知る中で指折りのエリートである。2対1という状況にも関わらず、結局、攻めあぐねた続けたまま、おまけにこれだけの余裕を見せつけられつつ終わってしまったのは45としては悔しいところだ。

 けれども、今は勝つ事が優先であり、この借りはいつか別の時に返せば良いだけである。

 

「にゃははは。そんなこと言って、本当は私に圧倒されて勝つ術が無いと悟ったのにゃ? 隠さにゃくても全部お見通しなのにゃ」

 

 そう偉そうにのたまうIDWのシールドは真っ赤っか。被弾しては回復し、被弾しては回復し、を何度も繰り返してシールド耐久限界ギリギリまで見事に使いきったというのはもう、ある意味で才能とも言えるのだろうと思えなくもない。

 

「アナタがそう言うのなら良いのだけど。指輪、欲しいとは思わないの?」

 

「私は、私の事を指揮官様が認めて下さって、その証としていただける指輪が欲しいの。その指輪は45さんのモノであって、私が欲しいものではありませんから」

 

 墨を零したように艶やかな黒髪を靡かせ、95式は上品に微笑む。

 戦闘だけでなく、こうした仕草や性格すらもいちいちハイスペックなのは、指揮官を死守する身としてかなり困りものだったりするのだ。

 

「まぁ、頑張ってみればいいわ。ところで、97式の指揮ってすごく興味深いのだけれど、どんな指示出すの?」

 

「自由行動。以上、解散! ですって」

 

 らしさ爆発ね、と3人で笑い合い、和やかな雰囲気のまま投降認証に移るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~NEXT マリッジ・ロワイアル~

 

 

 

「アナタには誰にやられたのかを理解してから脱落してもらわなければならないのだから」

 

 

 復讐鬼の執念

 

 

「ちゃんとお話すれば、きっと分かってもらえる。戦う必要なんて無いんだよ」

 

 

 白い悪魔の再来

 

 

「ピースメーカーの通り名は伊達じゃないってところ見せてあげる!」

 

 

 平和の使者(年齢不問)

 

 

「演習で化学兵器使うなんて反則だ~!」

 

 

 衝撃の展開・・・?

 

 

 

 

 マリッジ・ロワイアル 第4話 Coming Soon

 




読んでいただいてありがとうございます。
本格的に戦闘に突入した今回、いかがでしたでしょうか?

スパスはガンマニアな私の5本の指に入るほど好きな銃なので、ちょっと贔屓しちゃいました。反省はしていませんとも、ええ。

次回も気が向いたら足を運んでやってくださいませ~
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