ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~   作:弱音御前

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毎度ありがとうございます、私です。

好きに書いていたらそれなりのボリュームになってしまい、まだ長々と続いちゃう見込みです。

今回もどうかごゆっくりとお楽しみいただければ幸いです。


マリッジ・ロワイアル 4話

 前回までのマリッジロワイアルは・・・

 

 

 

 

 

『どれだけ頭の緩い戦術人形でも見ればわかる状況だろうけど、指揮官は我々Bチームが預からせてもらったわ』

 

 

 

 

「2手に別れましょう。1人はFALを追いかける。2人はこの道路の先にいるヤツを押さえる」

 

 

 

 

「降伏を認めて欲しいっていうなら、1ヵ月間、私の部隊に加わりなさい」

 

 

 

 

「97式の指揮ってすごく興味深いのだけれど、どんな指示出すの?」

 

 

 

 

「自由行動。以上、解散! ですって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習開始から15分後 Aチーム〝Yankee〟小隊

 

 

 

「誰が待ち構えてるのか想像に容易いけど、今は静かなもんさ。まぁ、これはレクリエーションの一環なんだ。気楽にやっていこうってところで、通信終わりぃ」

 

 別働隊の45との通信を終える。

 彼女の話しでは、95式、97式姉妹と交戦中との事で、M16の見立てではそれほど心配する必要も無いという結論である。

 45とは同じ任務に就いた事こそないものの、色々な場面でその活躍を耳にしている。

 FALは指揮官から精鋭部隊のリーダーを任される腕前なので言うに及ばず。

 問題はIDWと新人のショットガンだが、優秀な引率2人がしっかり面倒を見る事だろう。

 今はこちらはこちらの事を考えていればいいだけだ。

 

「ねえ、M16。45の方はどうだって?」

 

 M16の顔を覗きこみながら問いかけてきたのは、良き相棒のSOPMODⅡ。

 くりくりとした赤い瞳と幼い顔立ちは実に可愛らしいく、長い付き合いであるM16もついつい頭に手が伸びてしまう。

 

「95式姉妹と交戦中だってさ。厄介な相手だが、なんとか切り抜けてくれるだろう」

 

「そっかぁ。95式の脚、長くて細くてすごく綺麗なんだよね。コレクションに加えたいなって思ってたんだよねぇ~」

 

 可愛い顔をしてこんな発言をするものだから、慣れていない者にとってはたまったものではない。もちろん、M16にとっては日常茶飯事なので、笑顔で華麗にスルーだ。

 

「うぅ・・・SOPⅡさん、怖い事言ってますぅ」

 

 と、耳のすぐそばで怯えたような声が聞こえてくる。

 その主はM16の背中におぶさっていたG41である。

 G41はサブマシンガンタイプの戦術人形と比べても小柄な部類に入り、こうして背中にへばりついていれば、正面から見るとM16に隠れて見えなくなってしまうほどである。

 

「気にすんなって、SOPⅡも冗談で言ってるだけだからさ」

 

 しゅん、としてしまった耳を撫で撫でしながらG41を宥めてやる。

 

「そうだ! 物騒な事を言ってみんなを怖がらせないようにって、指揮官と一緒にお勉強したんだった。今こそ、その成果を見せる時だね」

 

「おお、そうなのか? 自分から進んで勉強するってのは良い事だぞ、SOPⅡ。それで、どんな勉強をしたんだ?」

 

「あのね、指揮官が持ってた昔の映像作品、アニメを見たの」

 

 実写とは違い、僅かに違った静画をコンマ秒単位で連続して流すことで、それを動画として表現する娯楽映像作品、というのがM16のアニメーションに関しての知識である。

 なぜ、それが物騒な性格を直す勉強に使われるのだろう? と、疑問は尽きないのだが、とりあえず今はSOPⅡの話しに耳を傾ける事にする。

 

「そのアニメね、私とソックリな声の女の子が出てたの。その子は〝まほうしょうじょ〟って呼ばれる子で、マシンガンみたいなレーザーを撃ったり、長射程のビーム砲を撃ったりしてすっごく強いんだよ! でもね、自分から好きで戦うような子じゃなくて、ちゃんとお話で戦いを回避しようって思う優しい子なの。私も、あの子みたいにカッコよくて強くて優しい戦術人形になりたいって思った」

 

「〝真砲少女〟っていうのか? 確かにそれは凄そうだな。それじゃあ、この演習で会った相手とも戦わなくて済むといいな」

 

 話しの内容を上手く想像する事ができないM16だが、今までに見た事のないくらい目を輝かせているSOPⅡの様子を見ると、話しの腰を折ることなど出来ようはずもない。

 ひとまず、つい最近、雪原で苦しめられた長距離砲の様な性能を持った戦術人形、という想像で落ちつけて話しを合わせておく。

 

「キャッホー! 平和なら私の出番だね。ピースメーカーの通り名は伊達じゃないってところ見せてあげる!」

 

 いきなり会話にカットインしてきたのはハンドガン、SAAである。

 見た目こそ元気一杯のちびっ子であるが、その実年齢は・・・でお馴染みの彼女とM16は何度か任務を共にした事があり、非番の時を共にすることもあったりとそれなりに関係の深い間柄なのである。

 

「ああ、お前がいればだいぶ気楽にやれそうだよ。ほら」

 

 言って、コーラの入った瓶を放り投げてやる。

 

「キャッホー! コーラだ!」

 

 SAAまるで、ボールを投げられた犬のように空中のコーラ瓶に向けて飛びかかっていく。

 M16達はこのフィールドに降ろされてから、ずっとこんな調子で進行を続けていた。

 フィールドの西側から回り込むように進行中のZephyr小隊。それとは反対に、東から回り込むのがM16率いるYankee小隊である。

 人気の途絶えた市街地を進む事10分あまり、誰にも遭遇することも無いまま、M16達はショッピングモールエリアに足を踏み入れていた。

 先が見えないほど長いアーケードには色とりどりの店舗が軒を連ね、途中には小さな公園やフードコートまで設けられている。

 店内は他の建造物とどうように伽藍洞であるが、人が誰もいないというのが気持ち悪いくらいに綺麗で華やかなエリアである。

 遮蔽物も多く2階フロアからの見晴らしは良好で、まさに絶好の待ち伏せポイントだ。

 

「待ち伏せに絶好の場所だって分かってるくせに、随分と余裕なのね」

 

 あまりにも聞き覚えのありすぎる冷ややかな声と共に、M16達の正面、大樹をモチーフにしたモニュメントの影から戦術人形が姿を現す。

 黒いジャケットに映える長い銀色の髪と真っ白な肌。携える銃火器はM16の妹、M4に良く似た形状をしている。

 

「そっちこそ、せっかく待ち伏せしていたっていうのに姿を現すなんて、かなり余裕じゃないか、HK416」

 

「余裕どうこうの問題じゃないわ。だって、アナタには誰にやられたのかを理解してから脱落してもらわなければならないのだから」

 

 実に彼女らしい考えにM16は思わず苦笑してしまう。

 スティグマによる影響もあるのだろうか、毎度毎度、ここまで目の敵にされるともういっそ清々しい気持ちになってしまうものである。

 

「子守りの最中のようだけれど、手加減はしないわ。みんな纏めてここで脱落してもらう」

 

「随分な言い方だな。こう見えて、お前が相手でも十分に勝算が持てる編成をしたつもりだ。甘く見てると足元を掬われるぞ?」

 

 一色即発。416は傍に誰も従えていないが、すでにトリガーに指をかけて臨戦態勢である。

 傍には誰も従えていないが、店の中か、花壇の影か、或いは頭上の2階フロアからか、視認はできないものの、確実に数人の仲間が控えているだろう。

 相手の戦力が分からない不利な状況だが、相手が仕掛けてきたのなら応戦するしかない。

 M16、G41、SAA、揃って銃を構える。

 ・・・そんな最中だった。

 

「待って。お話、聞かせてほしいの」

 

 こういう状況では先陣を切りたがる筈のSOPⅡが、銃を構えもせず2人の間に割って入る。

 

「おいおい、どうしたんだSOPⅡ?」

 

「ちゃんとお話すれば、きっと分かってもらえる。戦う必要なんて無いんだよ」

 

 そういえばさっきそんな話しをしていたな、という事を思い出すM16。

 だがこれは損傷を負う事の無い演習であるし、戦闘を行う事で練度の向上と仲間同士の信頼を築くという目的なのだし、そもそも、お話で解決するには相手が最悪中の最悪なのだ。

 

「・・・なに訳のわからない事言ってるの? アンタと話し合いするつもりなんかないわ」

 

「どうしても、だめ?」

 

「2度は言わない」

 

「そう・・・なら、私が勝ったら、お話聞いてくれるかな」

 

 そう言って、SOPⅡはゆっくりと銃を構える。

 

「結局戦っちゃうんですね?」

 

 M16も同じ事を思って、でも言わないでおいた事をしれっと呟いてしまったのはG41。

 純粋というのは時に残酷なものである。

 

「鬱陶しいわね! 良いわよ、そっちが勝ったら話しでもなんでもしてあげる。万が一、勝てたらだけれどね」

 

 直後、2階から何かが放物線を描きながら飛来したのが目についた。

 

「っ!? 伏せろ!」

 

 反射的に傍にいたG41を抱えながら、花壇の影に飛びこむ。

 鼓膜を劈くような轟音が響き、赤色の炎がついさっきまでM16が立っていた場所の一面を覆い尽くした。

 

「焼痍手榴弾とは、随分と荒っぽいヤツもいるもんだ。みんな、無事か?」

 

「平気だよ」

 

「私も大丈夫です」

 

「ハットが焼けちゃったよ・・・お気に入りだったのに」

 

 子供の身長ほどしかない高さの花壇を壁に、4人して寿司詰め状態で身を隠す。

 小柄なメンバーを引き連れておいてつくづく幸運だったと思うM16である。

 遮蔽物のすぐ向こうは火の海で、おまけに、射撃精度の高いHK416が待ち構えている。

 下手に顔を出すにはリスクが高い状況だが、先の様子は確認したい。

 そこで登場するのがコレである。

 

「? 小さな鏡なんて出してどうするんですか?」

 

「お化粧直すの? キャッホー、それなら私も」

 

「違うよ。これはM16が良く使う手なんだよ」

 

 鏡を自分に向けたまま、頭上にゆっくりとスライドさせていく。こうする事で鏡面に写した背後の様子を確認できる、といった寸法である。

 ユラユラと、まるで生き物のように揺らめく炎の群れに遮られ、人影までは確認できない。

 角度を変えて周囲を探ろうとした、その矢先だった。

 軽い破裂音を伴い、手にしていた粉々に鏡が砕け散った。

 破片で膝の上にちょこんと座っているG41が怪我をしないように庇う気遣いは忘れない。

 

「今の聞こえたか、SOPⅡ」

 

「うん。0.2秒間で6発。416の射速にしては速すぎるよ」

 

「割れた時の手応えからして、弾丸も特殊な物だ。まぁ、HK416がいるならセットで誰が付いてきてるか分かりやすいか。何だか知らんが仲が良いんだよな、アイツらは」

 

 そんな2人のやりとりを見て、G41とSAAの顔には?マークが浮かんでいる。

 同じ戦術人形とはいえ、こなしてきた任務によって技量には差が生じる。普段から割と無茶を強いられるM16達であれば、銃声からファイアレートを算出するくらい難しい事ではない。

 

「M16は私達を援護。私とG41、SAAで攻め込むっていうのはどうかな?」

 

「そうだな。脚の速い3人で速功をかけるというのは悪くない考えだ。2人はやれそうか?」

 

「はい、任せて下さい!」

 

「キャッホー、ご褒美のコーラは忘れないでよね?」

 

 G41もSAAも意見に口を挟むような事はしない。それだけM16に対しての信頼が厚い証拠である。

 

「分かった。じゃあ、コイツを合図に反撃開始だ」

 

 そう言ってM16が取り出した金属製の筒は、強烈な光と音で対象の感覚器官を麻痺させる支援武器〝フラッシュバン〟だ。

 セーフティピンを引き抜き、一呼吸置いて1秒。

 出来るだけ角度をつけ、思いっきり放り投げて2秒。

 2階に潜む敵と、M16達の正面にいる敵を纏めて巻き込む位置に到達して3秒。

 全身を揺さぶるような爆音を合図にSOPⅡ、G41、SAAが飛びだす。

 そんな彼女達を背中から守るように、M16は花壇を銃座にして構えを取った。

 フラッシュバンの閃光が効いているのだろう、こちらが先手を取るカタチとなる。

 ベンチや階段の段差を、或いは炎を遮蔽物代わりにして3人は上手く散開しているため、相手は自慢の射速を活かしきれていない様子だ。

 

「さぁ、顔を見せてみろ」

 

 SOPⅡ達が順調に進行している事を確認すると、M16は銃口を2階フロアに向ける。

 榴弾が投げ込まれたであろう位置にアタリをつけて視線を向けてみれば、案の定姿を現した犯人の姿が目につく。

 ショートカットの銀髪に、平べったい特徴的な形状のサブマシンガンを階下に向けて構えた戦術人形は、M16に狙われている事に気づいている様子は無い。

 

「ヴェクターか。なるほど、アイツは容赦ないからな」

 

 だから、M16としても容赦をしてやる必要はない。

 

 距離はおよそ200メートル。狙いをつけてから一息も入れずにトリガーを引くと、小気味良い音と衝撃を伴ってマズルが3度跳ねる。

 弾は2発命中し、緑色のシールドエフェクトを伴ったヴェクターが身体を引っ込める。

 その事を確認し、M16も移動を開始する。

 出来るだけ姿勢を下げ、向かう先は通路端の階段。

 頭上を警戒しつつ階段を昇り、2階フロアに足を踏み入れる。

 ヴェクターが潜んでいた位置までは真っ直ぐに伸びた通路の先、100メートルほどだ。

 その間、身を隠せるものといえば壁際に立ち並んだ店舗くらいのものだが、それはヴェクターにも言える事で、むやみに攻撃を仕掛けてくる可能性は低いだろう。

 ひとまずは階下の援護に集中できそうである。

 

『M16、アイツらを炙り出してほしいんだけど、何とかできないかな?』

 

 SOPⅡからの通信を受け、階下に視線を向けると、さっきまでスムーズに攻め込んでいた3人はいつの間にか足止めをくらっていた。

 

「相手はどこだ?」

 

『私達の正面30メートル。大きな石碑の裏側』

 

 そちらに視線を移し、なるほど、SOPⅡが攻めあぐねるのも仕方ないと理解する。

 SOPⅡ達からは狙いづらく、自分達からは狙いやすく、それでいて、M16が頭上から狙ってくる事を想定しているのだろう、M16から援護射撃ができないポジション取りだ。

 まぁ、あれだけ大口を叩いてくるHK416なので、これくらいはやってもらわないと張り合いが無いというものだ。

 

「とはいえ・・・さぁて、どうしたものか」

 

 この演習では、スキル系の武装は各員、使用数制限1つと決められている。補給ポイントに行けば、都度補充はできるのだが、フラッシュバンはさっき使ってしまったのでもう弾切れだ。

 ただ、仮に持っていたところで同じ手が2度通じるような相手ではないだろう。

 他に、何か打開策になりそうなものといえば。

 

「・・・・・・仕方ない、SOPⅡ達の為だ。脅かしくらいにはなるだろう」

 

 そう自分に言い聞かせるように呟いて、ポーチから取り出したのは2つのアルミ缶。まだ封を開けていないので、350ミリリットル一杯に中身が入っている。

 

「SAA、この前、2人で飲んだ時の事覚えてるか? あの時に見せてくれたヤツ、また見せてくれよ」

 

『あの時に見せたヤツって、アレの事? 今?』

 

「ああ、石碑に向けて投げるから、ちょうど真上に差し掛かったところで撃ち抜け」

 

 SAAからの返事も待たず、M16は手にしたアルミ缶を2つ続けて全力投球。

 それだけでは終わらず、またもポーチから同じものを2つ取り出し、それも同じように石碑が建っている方角にぶん投げた。

 一定の間隔を開け、綺麗に同じコースを舞う4つのアルミ缶。

 それらは石碑のちょうど真上に差し掛かった瞬間に盛大に破裂し、中に入っていた液体が周囲に降り注いぐ。

 

『なになに、今の撃ち方!? すっごい連射速度だったよ!』

 

『ふっふ~ん。これが西部を制した奇跡の速撃ち〝ファニングショット〟だよ』

 

 目を輝かせるSOPⅡに対し、銃をクルクルと弄んで偉そうに説明するSAAの姿が容易に想像できる。

 シングルアクションリボルバーのSAAは1発撃つ毎に撃鉄を起こす工程が必要となり、これが、ダブルアクション構造の銃と比べて連射速度に劣る要因の1つになっている。

 ファニングショットは、トリガーを引きっぱなしのまま撃鉄を掌で叩き弾く事で発射工程の一部を簡略化し、本来の手順では追いつかない速射を可能にした技術である。

 以前、2人で飲んでいた時に見せてくれたSAAのこの技術をM16はとても気に入っていたのだった。

 

『なんで缶を撃たせたんですか? ジュースがかかったくらいじゃあ相手は出てきませんよ?』

 

「まぁ、見てろよ」

 

 まるで、石碑の周囲だけ小雨が降ったかのような光景の中、しばしの間銃声が止み、時間が止まったかのような静寂が周囲を支配する。

 と、そんな最中だった。

 

「眼が痛いぃ~! 何このクサイ液体!? 演習で化学兵器使うなんて反則だ~!」

 

 眼を押さえながら悶え転がり出てきたのはG11。

 これがHK416だったら最高に面白かったんだがな、と思ったのはM16の心の中だけの内緒の話である。

 

「ほら、出てきたぞ。撃て撃て」

 

『おっけ~。一斉射撃ぃ~』

 

 苦しみ悶えているG11にSOPⅡ、G41、SAAが容赦ない掃射を浴びせる。

 アサルトのシールド耐久などたかが知れたもので、無防備な状態で受けてしまえば、ブレイクまでそれこそ数秒とかからない。

 

「あぁ~・・・なんかすごい眠い・・・お布団・・・ほしい・・・い」

 

 ガクリ、とG11が力尽きる。

 スヤスヤと安らかな寝息をたてるその表情は、実に幸福に満ち溢れていたという。

 

『アイツ、すっごく苦しんでたけど、何投げたの? まさか、本当に化学兵器・・・』

 

「違う違う。あれはビールだ。合間に飲もうと思って持ってきたのを犠牲にしてやったんだ。感謝しろよ?」

 

『あんな風になっちゃうお酒、怖いです』

 

『キャッホー。ちゃんとしたお付き合いができればお酒は友達だよ。今度、G41にも教えてあげるね』

 

 その昔、競技会での勝者は酒をかけ合って勝利を祝ったという。

 ただ、眼に入ると粘膜を刺激して痛みを引き起こす事から、ゴーグルを着用する者も多かったらしい。

 酒飲みなM16のちょっとした豆知識である。

 

「これで3対2だ。ただ、厄介な連中だから気を抜くなよ?」

 

「その通り。貴女もね、M16?」

 

 コツン、と後頭部に硬い感触に溜息を返事の代わりとして返す。

 

「私が近くにいる事くらい分かっていた筈でしょう? それとも、私なんてアナタの眼にもつかないくらいどうでも良い存在だったって事?」

 

 怒りっぽいというわけではないが、ヴェクターは少し気難しいところがあり、それは銃口が押しつけられた強さが変わったことからも良く分かる。

 こういった手会いでも上手く纏めあげなくてはいけないのだから、指揮官というのも大変だなとM16はつくづく思う。

 

「喋れないわけないんだから、何か言ったらどうなの?」

 

 表情こそ見えないが、口調と気配からも、ヴェクターの苛立ちが募っているが分かる。

 それでも、M16は何も答えず、屈んだ状態のまま身動き一つとらない。

 

「はぁ・・・もういいわ。そのまま眠りなさい。これで、2対2よ」

 

「そんなに話しがしたいなら、1つだけ言わせてもらっていいか?」

 

 いよいよトリガーを引く、というタイミングを見計ったM16がここで口を開く。

 

「どうぞ。恨み事を言われるのは慣れてる」

 

「そんなんじゃない。ちょっとした助言さ。情報を引き出す訳でもなく、利用価値も無い敵はさっさと倒せ。〝お喋りは災いの元〟っていうんだぜ?」

 

 あえて遠回しに言ってヴェクターの思考を乱したのも作戦の内。

 今の会話を通信機越しに聞いていたSOPⅡが1階から狙いを付け、榴弾を2階に撃ち込むまでの時間を稼ぐための時間は十分に稼げた。

 M16は身を投げ出して回避行動を取るが、虚を突かれたヴェクターは間に合わない。

 背後で爆発音。距離が近かった為、M16も爆風と熱でシールドにダメージを受けるが微々たるものである。

 

『当たったかな? これでさっきのビールの分はチャラだね』

 

「助かったよ、SOPⅡ。でも、榴弾直撃は少しやりすぎたんじゃないか?」

 

 銃を構え、煙の中を慎重に進む。

 すぐに反撃に転じてくるようなら、真っ向からの撃ち合いになるな、という懸念もあったがそれは杞憂に終わったようだ。

 煙が晴れた先には、店内の奥まで吹き飛ばされ、真っ赤なシールドに包まれたヴェクターの姿。

 ヴェクターも同時にM16の姿を確認し、座り込んだ状態のまま銃を構える。

 トリガーを引いたのはほぼ同時だったが、かたや無傷に近いシールド、かたやブレイク寸前のシールドだ。勝敗は目に見えている。

 シールドが割れ、ヴェクターは力無く銃を落す。

 緑色のシールドに覆われたままのM16はその様子を確認すると銃口を降ろした。

 

「くっ・・・私の方が劣っているなんて、そんな事・・・」

 

「性能の問題じゃなく、経験の差が勝敗を分けただけだ。お前も、もっと経験を積めば私なんかよりずっと優秀な戦術人形になれるさ」

 

 拗ねたような表情を浮かべ、ヴェクターはゆっくりと眠りに落ちる。

 

「残るはHK416だけだ。すぐ援護に向かう」

 

『こっちは平気だから、M16だけ先に行って』

 

 状況は4対1という圧倒的な優勢だが、下手に粘られて時間を稼がれると敵増援が来る可能性も考えられる。ならば、M16だけ先行してZephyr小隊と合流するというSOPⅡの案も正論といえるだろう。

 

「・・・分かった。頼んだぞ、SOPⅡ、G41、SAA」

 

『また後で、お背中に乗せて下さいね』

 

『キャッホー! どこかでコーラ見つけたら確保しておいてね』

 

 銃撃戦を展開している光景を見下ろしつつ、2階フロアを駆け抜ける。

 やはり、数で勝るSOPⅡが優勢で展開しているように見えるが。

 

「・・・」

 

 駆け抜け際、一瞬だけ交錯したHK416の眼は焦りとはほど遠い、走り去るM16への怒りに満ちたものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~NEXT マリッジ・ロワイアル~

 

 

 

「私はグリフィンの戦術人形の中で一番指揮官の事を想ってる自信がある」

 

 

 揺るぎない自信

 

 

 

「イヤだね。仲間は絶対に売らないよ」

 

 

 鋼の意思

 

 

 

「じゃあ、これ、お近づきの印に一緒に食べよ?」

 

 

 待望の新フレーバー

 

 

 

「そう、これが私の全力全開だよ!」

 

 

 不屈の心はこの胸に!

 

 

 

 

 

 マリッジ・ロワイアル 第5話 Coming Soon

 




Aチーム別動隊のお話、ということでいかがでしたでしょうか?

古い銃も好きなもので、SAAのMOD3実装の折に新スキル〝ファニングショット〟を期待していたのですが・・・残念でしたね。

次回もどうぞお楽しみに~
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