ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~   作:弱音御前

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10月も後半に入り、良い感じに寒くなってきましたね。
毎度お世話になってます、弱音御前です。

相変わらず緩やかに書き上げての投稿になっていますので、どうか、お気楽に読んでいただければ良いかなぁ、と思います。

それでは、ごゆっくりお楽しみください。


マリッジ・ロワイアル 5話

 前回までのマリッジ・ロワイアルは・・・

 

 

 

「うぅ・・・降参です! 降参しますから撃たないでくださいお願いします!」

 

 

「にゃははは。そんなこと言って、本当は私に圧倒されて勝つ術が無いと悟ったのにゃ?」

 

 

「ほら、出てきたぞ。撃て撃て」

 

 

『こっちは平気だから、M16だけ先に行って』

 

 

「・・・分かった。頼んだぞ、SOPⅡ、G41、SAA」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 演習開始から40分 Aチーム Zephyr小隊

 

 

 

「ネゲヴの事だから、このビルを拠点にして私たちを待ち受けるでしょうね」

 

「そう? アナタがそんな風に予想するって事を見越して、前線を上げてくる可能性だってあるんじゃないかしら?」

 

「そんな風に言ってたらキリが無いでしょ? だから、最も確率の高い予想を信じるしかないの。仮に、FALの言うとおりだったとしたらその時はその時よ」

 

 フィールドマップを挟んでの作戦会議はひとまず終了。

 軽く口を尖らせつつも納得してくれた様子のFALは手にしていた食べかけのチョコレートバーに口をつける。

 95式姉妹との交戦の後、しばらく接敵する事なく進行を続けていたZephyr小隊は、途中で発見した補給ポイントで休憩をとることにした。

 弾薬の補給はもちろん、普段よりもグレードの高い配給まで用意されていたりと、ようやくちょっとレクリエーションじみた面が見られたところである。

 マップを片づける45から離れるとFALはさりげなく、でも、明らかにその意図があるのみえみえでスパスに近づいていく。

 スパスは部屋の隅っこで銃のメンテ中。もちろん、お菓子を咥えながらというアイデンティティーは忘れない。

 

「案外、マメな性格なのね」

 

「うん。もう、みんなの前でミスはしたくないから、心配の芽は少しでも摘んでおかないと」

 

 ミスというのはさっきの97式との一件、FALに盾を預けて弾切れを起こした事を言っているのだろう。

 FALに言わせればそんなもの、いちいち気にする事も無い瑣末事だ。

 FAL自身、弾切れを遥かに凌駕するくらい恥ずかしい失敗を経験したこともあるのだから。

 

「FALちゃんの銃もメンテしてあげようか? なんなら、もっと射速を上げられるように改造してみない?」

 

「遠慮しておく。メンテくらい自分で出来るし、私はこれくらいのファイアレートの方が性に合ってるの」

 

 まるで、ごちそうを見つけた犬の様にいきいきとした表情のスパスを華麗にスルーして、FALはスパスの横に腰を降ろす。

 銃弄りに余念の無いスパスに合わせ、FALもマズルの清掃くらいやっておく。

 本当は必要も無いのだが、こうしないとなんとなく場の空気がもたないのだ。

 カチャカチャカチャパリポリ、と無言の2人の間を金属音とお菓子を食べる音が繋いでいる。

 一体いつまでこうしているつもりなのかと、もうとっくにピカピカになっているマズルを覗きこみながら自分に呆れてしまう。

 たった一言を言えば良いだけだ。45とIDWはなにやら下らない会話をしていて、FALの方には見向きもしていない。

 そもそも、そんな状況も見計らってスパスの隣にわざわざやってきたのだし。

 

「・・・さっきの事なんだけど。ゴメンなさいね」

 

「へ? さっきのって・・・1人で97式ちゃんを追いかけて行っちゃった事?」

 

「いや、まぁ、それも悪かったけど」

 

 その事に関してみんなに謝っていないという事を思い出したが、それは結果オーライだったのでFAL的に不問としておく。

 

「演習始まってすぐの時、アナタに向けて怒鳴ったでしょう? その事」

 

「あ~・・・そういえばそんな事もあったね」

 

 ケラケラと笑いながらスパスは答える。

 ここまで気にされていなかった事を謝るとは、かなり肩すかしをくらった気分だが、言ってしまったものはもう仕方ないのである。

 

「謝る事なんてないよ。私、ああいう風に言ってもらえて嬉しかったもの」

 

「アナタ、そういう趣味のメンタルモデルなの?」

 

「違うよ! 私、そんな変な戦術人形じゃないもん」

 

 もちろん、FALも冗談で言った事だがスパスはかなり慌ててしまった様子。

 からかい甲斐のある娘だ、とFALの表情も自然と緩む。

 

「私、グリフィンに来て間もないって言ったでしょ? だから、まだみんなと打ち解けていなくて。FALちゃんみたいにハッキリと私を注意してくれた娘って初めてだったの」

 

「間もないといっても1ヵ月でしょ? なのに、まだダメなの?」

 

 おっとりした優しい性格だが、危機に瀕した仲間を身を呈して守る勇気の持ち主。そんじょそこらの戦術人形よりもよほどまともな性格にも思えるが。本人がそういうのであればそれなりの理由があるのだろう。

 

「それなら、何かあれば私に相談しなさい。出来る事ならばなんとかしてあげるから」

 

「・・・それは、私とお友達になってくれるって事?」

 

「そうね。指揮官風に言えばそういうことになるかしら。私達、戦術人形にそういう言葉が合うのかどうかは分から」

 

「じゃあ! これ、お近づきの印に一緒に食べよ?」

 

 今日見た中でも一番嬉しそうな様子で、スパスはどこからか出したポテチの袋をFALに差し出してくる。

 恐らく、こういう風にノッてくるとグイグイくる性格が合わないという娘もいるのだろう。

 FALとしては嫌いな性格ではないのが幸いである。

 

「私の話しを最後まで聞きなさいよ、まったく。・・・これ美味しいけど、何味?」

 

「トリプルマーガリン味。先週発売されたばかりの新作だよ!」

 

「1枚食べたら重量1キロくらい増えそうな味ね」

 

「だ、大丈夫だよ! この演習で運動する分と差し引きゼロだから! たぶん」

 

 やたらと食べる割には重量は気にするのな、とツッコミどころ満載のスパスなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向こうは楽しそうにやってるにゃ。もう作戦会議は止めて楽しいお話でもするにゃ?」

 

「良いけど。最近、何か楽しい事あった?」

 

「ん~・・・有りすぎてどれから話すか悩むのにゃ」

 

「そ? じゃあ、決まったらまた話しかけてちょうだい」

 

 休める時にはしっかりと休んでおく。演習においてはそこまで神経質になる必要も無いのだが、45にとってこれは実戦に相当するくらい大切な戦いなのである。

 

「45は指揮官の事が嫌いになったのかにゃ?」

 

 藪から棒な質問に、45はすぐには内容が理解できなかった。

 そんな様子でもお構いなく、IDWは話しを続ける。

 

「私だったら、指揮官から貰った指輪は絶対に手放したくないにゃ。ネゲブに煽られたんだとしても関係無いにゃ。たぶん、みんにゃそう思う。それくらい指揮官との誓約は戦術人形にとって大事なはずなのにゃ」

 

 いつになく真剣な言葉と表情のIDWを見て、思わず気圧されてしまう。

 けれども、45としても誤解されたまま黙っているつもりはない。

 

「そんなわけない。私はグリフィンの戦術人形の中で一番指揮官の事を想ってる自信がある」

 

「それなら、なぜこんなリスクを冒すにゃ?」

 

「・・・ここで退いたら、私には指輪を持つ権利は無いって、そう思ったからかな?」

 

 左手に嵌めた指輪。毎日欠かさず磨いてピカピカに光る銀色はこんな時でも色褪せる事は無い。

 もし、この色が消える時が来たらと考えると不安で仕方なくなる時がある。

 今までは、戦場で壊されるとしたって不安など少しも感じなかったのに。

 

「そんな事で指揮官は45の事を嫌ったりしないのにゃ。そんな事を気にする45はちょっとおかしいのにゃ」

 

「そうね。私、おかしくなっちゃったのかもね」

 

 そう答え、それでお話はおしまいという意味を込めて眼を瞑る。

 それでも収まらない不安を押さえたい一心だったのだろう、45の右手は自然と左手に添えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻 Aチーム Yankee本隊

 

 

 

 銃撃は収まり、ようやくショッピングモールエリアに静寂が戻る。

 未だに硝煙と粉塵が漂うその中に佇む戦術人形はただ1人だけだ。

 黒色を纏った銀髪の魔女、HK416である。

 

「すぅ・・・すぅ・・・ご主人さまぁ・・・」

 

「コーラ・・・コーラ・・・うぅぅ・・・コーラぁぁ」

 

 足元で眠る2人など気にも留めず、彼女はモールの中央に位置する、ここのシンボルマークともいえる石碑に歩み寄る。

 ハチの巣のように銃弾の跡が無数に刻まれながらも、なお意思強く佇み続けるその石碑には1人の少女が貼り付けにされている。

 死神よりもなお黒い衣装を纏う赤眼の悪魔、SOPⅡだ。

 ・・・利便上、貼り付けという表現をしたが、正確にはタイバンドで両手を結束されて半ば吊るし上げられているような状態で、決して流血沙汰ではないのであしからず。

 

「なかなか手こずらせてくれたけど、M16がいなければアナタ達なんてこんなものよ」

 

 警戒の欠片も見せず、正面に堂々と立つHK416をSOPⅡは睨みつける。

 これくらいしか反抗できる事が無いという事実が悔しくて仕方が無かった。

 

「・・・投降してやるからさっさと承認すればいい。その気が無いなら、気が済むまで撃ちなよ」

 

「相変わらず、M16の周りは生意気なヤツしかいないのね。でも、骨があるというのはとても良い事だわ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、HK416が近づいてくる。

 G41とSAAはさっさと脱落させたのに、SOPⅡだけ生け捕りにした彼女が何を考えているのか、予想はできている。

 

「Aチームのメンバーと動向を教えなさい。そうすれば、投降を認めてあげるわ」

 

「イヤだね。仲間は絶対に売らないよ」

 

「そうでしょうね。それくらい頑固でないと、楽しみ甲斐がないってものだわ」

 

 そう言って口元を歪めると、HK416は銃を離して、腰元のホルスターに手を回した。

 取り出されたのは1本のナイフ。刃渡りはおおよそ20センチ程で、鏡のように磨き上げられた銀色の刀身が、その切れ味を何よりも雄弁に物語っている。

 

「私を拷問するつもり? この性悪人形! 後で指揮官に言いつけてやる!」

 

「はいはい、どうぞお好きに」

 

 ナイフがSOPⅡに向けられる。

 猛禽類の爪のように鋭い切っ先がSOPⅡの胸に突きつけられ、ゆっくりと滑り上げられた。

 スゥ、と音も無く上着が切り裂かれSOPⅡの雪のように白い胸元と、そして、紅色の下着が露わになる。

 小さな薔薇のモチーフまで付いた、やたらとアレな雰囲気のブラジャーである。

 

「・・・アナタ、見かけに似合わず派手な下着つけてるのね」

 

「こ、これは、指揮官がこういうの好きって聞いたから」

 

「なるほど。俗に言う〝勝負下着〟というものね?」

 

「そう。これが私の全力全開だよ!」

 

「覚えておくわ。貴重な情報どうもありがとう」

 

 もしや、最高機密レベルの情報を漏らしてしまったのではないか、という事に気が付き、尋問に対しての訓練もしっかり積んでおくべだった、と大後悔するSOPⅡ。

 

「さぁ、これが最後通告よ。大人しく吐く気は?」

 

「無い! 絶対に言わないよ!」

 

 その答えに頷くと、HK416はナイフをしまい、SOPⅡの上着を脱がせていく。

 腕は縛られて頭上で組まされたまま、上半身だけはだけさせられる状態だ。

 その光景を眺めながらHK416が次に取り出したのは、動物の尻尾の様なフサフサとした物が先端に取り付けられた棒だ。

 一体それは何なのか? 何に使う為のものなのか? 全く想像すらつかない

 SOPⅡにここでようやく恐怖心が湧いてくる。

 

「な、何だよそれ? 私に何をする気だ!?」

 

「グリフィンの戦術人形同士、危害を加え合うことはできない。それが私達に架せられた制約よ。でも、お互いに楽しく笑わせ合うことであれば、そこに制約は発生しない。仲良く戯れあってるだけなのだから」

 

 言って、フサフサがSOPⅡの腋に近づいてくる。

 ヤバい。これ絶対にヤバいやつだ、と危機感に駆られるが気が付くのが遅すぎた。

 

「ちょ! や、やめ、あは、あははははは! そそそっそこは! よわいかららめなのぉぉぉぉ!」

 

 別に何が楽しいわけでもないのに、強制的に笑わせられることのなんと辛い事か。

 逃れようと身を捩っても拘束は解けないし、暴れる事で余計に酸素を消耗して苦しいし涙もポロポロ出てくるしで本当にもう最悪である。

 

「ほら、楽しいでしょ? 遠慮しないで好きなだけ笑いなさい」

 

「あはははははは! ひひひひひひゃははははははは! も、もももうやめ! くくくくくっううううう・・・うええぇえぇえぇぇぇえぇん!」

 

 予想以上の苦痛を誇るくすぐり攻撃を受けて、もう感情がパニックを起こしてしまったのだろう、まるで、ダムが決壊したかのように大号泣してしまうSOPⅡ。

 本当に、フィールド中に響いているんじゃないかと思うくらいの超泣きである。

 

「え!? ちょっと、そんな大泣きしなくたって・・・」

 

 まさかの事態にHK416は思わず手を止めてドン引き。

 精鋭である戦術人形がくすぐられただけでこんなわんわんと泣きだそうとは、一体、誰が想像できたであろうか。

 

「ふええぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇん!!」

 

「アナタ、M16達と同じ精鋭の戦術人形でしょ!? こんな事で泣きだすんじゃないわよ!  もう止めてあげるから、ね?」

 

 慌ててハンカチで涙を拭いてあげると、そこでようやくSOPⅡの号泣は収まってくれる。

 だが、未だに眼を潤ませている少女の様子を目の当たりにしては、さすがのHK416も罪悪感マックスだ。

 

「はぁ・・・情報を教えてくれればもうくすぐったりしないんだから、さっさと教えなさい」

 

「うぅ・・・くすん・・・」

 

 だが、そんな状態でもSOPⅡは首を横にイヤイヤと振って拒否の意を示す。

 情報は欲しい、だけど、くすぐり尋問を続けてまた泣かせてしまうというのも躊躇われる。

 どうしたものかと思案するHK416の脳裏に、いつか指揮官から聞いた言葉が思い浮かぶ。

 〝押してダメなら引いてみろ〟という、昔の人間の格言である。

 

「それなら、取引というのはどうかしら?」

 

「とり・・・ひき?」

 

「そう。アナタが私に情報をくれる代わりに、私はアナタが欲しいものをあげる。まずは、何か欲しいものを言ってみなさい。渡す情報に見合った何かをね」

 

 その提案を聞いてSOPⅡは思案顔。

 もちろん、そんな取引に応じるなど、兵士としてどうか? と思われるところだが、これはもう指揮官の教育に寄るところなのでHK416の知ったこっちゃないのである。

 

「じゃあ、95式の脚が欲しい」

 

「無理無理。それ、アナタが渡す情報よりも遥かに重いから」

 

「む~・・・それなら、アルケミストのフルセットは?」

 

「生け捕りにしろって言ってるようなものじゃない。ん~、でもまぁ、ウィークリー任務のついでにエースを固めて行けばなんとかできるか」

 

 交渉成立。近いうちに必ず調達する、という口約束だけ交わすとSOPⅡはそこまで話しちゃって大丈夫? とHK416が心配になるくらいの情報をリークしてくれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~NEXT マリッジ・ロワイアル~

 

 

 

(みんな脱落した? でも、それならどこからか救難通信が来たはず)

 

 

 孤立無援のバリスタ

 

 

 

「指揮官、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

 ヤンデレ夜戦っ娘

 

 

 

「離れろ、100式! 援護する!」

 

 

 クロスレンジ・ガンファイト

 

 

 

「ダネル・・・予想以上に優秀ですね」

 

 

 対物ライフルの底力

 

 

 

 

 マリッジ・ロワイアル 6話 Coming Soon

 




インターミッション的な内容の今回、いかがでしたでしょうか?

全体の流れではちょうど中間点の谷場といったところになっています。

次回からはまた戦闘開始という展開が始まりますので、ご期待ください。

本日も足を運んでいただいてありがとうございました。
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