ドールズフロントライン ~マリッジ・ロワイアル~ 作:弱音御前
新しいMOD3として、ようやくM14が実装されますね。
世界3大バトルライフル揃っての主力編成を組めるのが楽しみな今日この頃です。
というわけで、佳境に突入した今作、ゆっくりとお楽しみくださいませ。
前回までのマリッジ・ロワイアルは・・・
「私とした事が、油断しすぎね」
「ブレン・テン、スプリングフィールドの両名をダウン。次のポイントに移ります」
「敵襲! 9A91です!」
「・・・分かりました。でも、私は負けてないっていう事も認めて下さいね?」
「近、中距離での戦闘ではアナタが圧倒的に不利です。投降するのならお早めに」
「お前のシールドが限界なのは知っている。少しでも掠めれば私の勝ちだ」
演習開始60分後 Aチーム Zephyr小隊
「これ以上は待っていられない。X-rayが上手くやってくれてる事を信じて敵陣に踏み込む。異論は無いでしょう? 45」
「そうね。IDW、スパス、出発するわよ」
突入開始はX-rayが位置についた事を確認してからという予定だったが、目標地点に到着しているであろう時間を過ぎても、両隊からの連絡は無い。ダネルのものと思われる銃声が聞こえてきたことからも、交戦してしまった可能性が非常に高いという予想だ。
こういった事態に備えて、X-rayへの増援は送らないと決めている。敵陣を強襲して、X-rayと交戦中の敵の注意を惹きつける事で援護とし、その間は護衛のブレン・テン、100式に頑張ってもらうしかないのだ。
「IDWはスパスにくっついてなさい。弾丸が1発でも掠めたら脱落なんだから、よ~~く考えて行動しなさいよ?」
「分かってるにゃ。撃たれたらササッと避けちゃえば良いのにゃ」
もうコイツは戦力として考えない方が良い、と心の中で溜息をつく45。これから突撃だというのに、不安感アップである。
「待たせてゴメンね」
最後に準備を終えたのはスパスだ。休憩中はずっと銃弄りに余念の無かった彼女は、やたらと嬉しそうな表情を浮かべて、黄色のショットシェルを3つ握っている。
「それ、私の榴弾を材料にして作ってたやつ? 何なの?」
「えへへ~、それは使ってからのお楽しみ。あっと驚くような弾丸なんだから」
補給ポイントという事で、戦術人形各々、弾丸と榴弾の補充が可能となる。
FALはここまで榴弾を使用しなかったので、補給の必要はなかったが、それならば、という事でスパスがFALの持っていた榴弾をもらい、何かしらの改造に利用したのだった。
「これから向かうのはBチームの拠点よ。各自、細心の注意を払って行動する事」
45の号令でZephr小隊が出発する。
補給ポイントからオフィスビルまでの6ブロックの距離を4人で陣形を組み、周囲を探りながら前進する。
誰かしらと遭遇するであろうという予想はあったが、意外な事に接敵する事もなくオフィスビルに辿りついてしまった。
「・・・外から見る限り、誰かいる気配はないわね」
「見張りを数人つけても良いところだけどね。本当、あの桃色の考える事は分からないわ」
とはいえ進行中のネゲヴ隊と衝突はしなかったのだから、ネゲヴがここを拠点にしている可能性は依然として高い。
「X-rayの様子も気になるし、さっさと入って巣をつついてみましょうか」
ビルの窓から狙われている様子が無い事を確認し、45が進行サインを出す。
一糸乱れぬ歩調で大通りを渡り、敷地に足を踏み入れる。
緑色の芝生と植え込みが鮮やかな庭園を横切りエントランスに差し掛かると、巨大なガラス張りの自動ドアが45達を迎えてくれた。
まだシールドに余裕のある45とスパスを前衛に後衛をFAL、その間に挟まれるように風前の灯であるIDWを置き、ゆっくりとビルに侵入する。
「わぁ、すごい大きなビルだね」
「あっちもこっちもガラス張りでスゴク綺麗なのにゃ」
ビルの中央は吹き抜けになっており、各階にはビル壁面の四方を繋ぐエアウォークが通っている。上空から見たらビルは〝田〟の字に見えるような構造である。
陽光を取り入れる為の設計だろうビルにはガラスが多く使われ、各階の外周及びエアウォークまでガラスで造られているという凝り様。仕事の為のビルだろうに人間はどうしてこういう事にまでこだわりを持つのだろうか? 45にはまだその気持ちが良く分からない。
「見学は後にしなさい。各員、警戒を怠るな」
ゆっくりと踏み出す足音すらも響き渡るほどの静寂。
自分を中心とした半球方位の全てを警戒しなければならないという緊張感。
このフロアで身を隠せる場所として目を付けたのはロビーの中央に置かれた受付カウンター。
まずはそこまで移動すると、4人してカウンター内に潜りこむ。
「いくらなんでも静かすぎるわね。どこか違う場所に拠点を移したのかしら?」
「にゃはは。きっと私達に恐れをなして逃げ出しちゃったかにゃ?」
「みんなお腹が空いて、どっかでお食事でもしてるんじゃないかな?」
3人共に予想を立てているが、まともな案はFALのものだけである。残り2人のポンコツ具合はこの演習で良く分かったので、もう気にしない事とする。
「いや、ネゲヴは間違いなくここに居るわ」
「その根拠は?」
「アイツは私の相手をすると言った。なら、私が予想する行き先で待ち構えていなくてはならないでしょう? このビルが、私とアイツ共に考える場所なのよ」
45の言わんとする事は分かっていても、いまひとつ納得しきれていない様子のFALだが・・・
「ようこそ、UMP45。ちゃんとここまで来れたのね。偉いわ」
突如としてビル内に木霊する偉そうな声を聞いて、完全に納得してくれたようだった。
カウンターから頭を出し、声のする方を確認する。
同じフロアの真北、メインエレベーターの正面にいつのまにか現れていたネゲヴとその横に戦術人形が1人付いていた。
白い長髪を、まるでウサギの耳の様な黒いリボンで纏めた彼女の手には、一丁の拳銃が握られている。
「ねえ、FAL。あの桃色の横に立ってるの、アナタのとこのでしょ?」
言われて、FALは45の傍から先の様子を覗き見ると、大きな溜息と共に、さも憂鬱そうに頭を抱えた。
「57だわ。あのウサ子がBチームに居たのね」
ハンドガン〝57(ファイブセブン)〟。FALと出身を同じくするハンドガンで、同じ部隊でずっと一緒にやってきた戦友である。
FALが彼女の姿を見て頭を抱えたのは、友達と戦いたくないという感傷からではなく、相当に厄介な相手が出てきてしまったというめんどくささからだろう。彼女の戦果は副官である45も良く聞き及んでいる。
「いつまでも隠れてないで出てきなさいよ。ちょっとくらいお話しましょう?」
明らかな挑発であるのはみえみえで3人共、乗るなという視線を45に向けている。
「アイツが言うとおり、隠れていても仕方ない。いざとなったら頼むわ」
そう言い残して45はカウンターを出ていく。
ネゲヴと会話できる距離まで歩み寄る最中、周囲の様子を確認するが、他の戦術人形の姿は無い。誘い出してすぐに攻撃、というつもりではなさそうだ。
そうして、45は普通に会話ができて、かつ、最も攻撃しやすい射程距離で足を止める。
「たった4人で踏み込んでくるなんて、思ったよりも根性あるじゃないの、UMP45」
「根性あるとか、そういう問題じゃないわ。勝つつもりしか無いから来ただけだもの」
この挑発合戦は先にキレた方が負けである。
まぁ、戦略がどうこうというものではなく、単にプライドに根差すところが大きい言い合いなだけなのだが。
「大人しく指輪を渡して投降するなら、承認してあげてもいいわ。アナタだって無様に負ける姿を指揮官に見られたくはないでしょ?」
「ん~・・・実は、これまでの流れでなんとなく言いだせなかった事があるんだけどね。この指輪、私の名前が彫ってあるんだけれど、それでも欲しい?」
45の思いもよらぬ発言に、一瞬、場の空気が凍りつく。
ネゲヴと57はもちろんの事、カウンター内に潜む3人もである。
「え? ウソ?」
「ホントホント。私と指揮官の名前と、その間にハートマークまで彫ってあるの。もう私専用って感じの指輪なのよ、これが」
衝撃の事実に加えて指揮官とのラブラブっぷりまで見せつけてドヤ顔の45。
「ちょっと、ネゲヴ! 話が違う! これじゃあ指輪が手に入っても意味無いわ!」
「落ち着きなさい、57。・・・平気よ。名前が入ってる箇所を埋めるなり削るなりして名前を消せば良いのだから。流石はスペシャリストな私、完璧な解決策だわ!」
くってかかる57に堂々と言い返すが、そういう問題じゃないだろう、とはきっとこの場にいるネゲヴ以外が揃って思った事である。
スペシャリストとは一体・・・
「まぁ、指輪問題は後で解決するとして。会話を引きのばして時間を稼ごうって考えても無駄よ。誰もアナタ達を助けには来ないわ」
「あら、どうしてアナタにそんな事が分かるのかしら?」
分の悪い話しはさっさと捨てて、再び偉そうな態度で話題を切り替えるネゲヴ。
こういう点は少しだけスペシャリストらしさを感じなくもない。ほんのちょっとだけ、である。
「Yankee小隊、M16、SOPⅡ、G41、SAA全員脱落。X-ray小隊、ブレン・テン、
スプリングフィールド両名脱落。同じく、100式、ダネルも脱落は時間の問題。他に、何か欲しい情報はあるかしら?」
悔しいが、これには45も驚きを隠せない。
チーム編成は演習開始まで知る事はできず、演習相手のチームなど接敵しなければ誰が居るのかも分からないのだ。
だとすれば、45達もやろうとした事だが、Aチームの誰かに口を割らせたのだろう。
脱落したうちのいづれかなのだろうが、SOPⅡなんかは子供っぽいところがあるように見えて仲間想いで意思も硬い戦術人形なので口を割るとは思えない。大方、SAAをコーラで釣って吐かせたのだろうと45は予想する。
「うふふ、その表情を見れただけで十分だわ。さて、楽しかったこの演習も、そろそろ終わりにしましょう」
ネゲヴが指を鳴らすと、2階の外周に沿って設置された通路に3人の狙撃手が現れる。
東には祖国の誇り、〝M1ガーランド〟
西には氷雪のホークアイ、〝SVD〟
南には黒髪のツンデレヒットマン、〝WA2000〟
性能も性格も尖ったライフル勢揃いである。
「わ、私だけ性能も性格も地味だと思うんですけど・・・」
そう謙遜するのはガーランド。さすがは最も輝かしい功績を残したと謂われるライフルである。
「まずはUMP45、アナタから始末する。それから、カウンターに潜んでる3人をじっくり炙り出して、私達Bチームの勝利よ」
ネゲヴの言うとおり、3つの銃口は全て45に向けられている。
3人共に腕は超一流で、射撃指令が下されたらもう45に成す総べはないだろう。
「さっきの指輪の話し、アナタ達も聞いたでしょう? それでもネゲヴの言う事に従う?」
これで上手く懐柔できればラッキー、という事で試しに揺さぶりをかけてみる。
「私は演習だっていうから参加してるだけだし。別に、指輪がどうとか私の知った事じゃないけど・・・くれるって言うなら、貰ってやってもいいけどさ」
「エリートとしての実力を示せるならば何も問題は無い。指揮官は私が認めた有能な男だからな。放っておいても、おのずと私の元に誓いの証を持ってくるだろうさ」
「え~と、私も演習だから参加してるわけで。でも、指揮官から指輪をもらえるのは嬉しいかなって思ってて。・・・なんか、普通の事しか言えなくてゴメンなさい」
残念ながら、3人共に手をひいてくれる様子は無い。
全員グリフィンが誇る優秀な戦術人形として、この程度の提案は蹴り飛ばしてくれるくらいで当然である。
「万策尽きたところで、もういいかしらね? まだ何かあるなら、最後のチャンスをあげるわ」
「そう? 優しいのね。じゃあ、お言葉に甘えて」
言って、45は両手を上げる。
「あれだけ大口たたいておいて降参するの? ただ1人、指揮官と誓約した戦術人形も大した事ないのね」
ネゲヴのこの言葉には、さすがの45も頭にきた。
しかし、今は後への反撃に繋げるためにポーカーフェイスを装う。
「そう見えるのなら随分と平和な頭をしてるのね、ネゲヴ。情報っていうのは、与えられたものをただ鵜呑みにするだけじゃあ役に立たないの。目の前に並んだ膨大な情報を精査し、排除して、残った情報を上手く繋ぎ合わせる事でより正確で有用な情報として使う事が出来る」
これは指揮官の受け売りである。
この言葉を知り、実践した事で45は自らが率いる部隊をより効率良く、安全に指揮する事ができた。彼を信頼して本当に良かった、と改めて惚れ直してしまった一幕だ。
「・・・何の話をしているのかしら?」
「Yankee小隊は全滅だとアナタは言ったわね。どこから入った情報だか知らないけど、ちゃんと自分でウラをとらないとダメよ?」
挙げた右手の指でSVDのいる方向を指す事で攻撃開始の合図を送る。
直後、ライフルのものではない、もう少しだけ小さい連射式の銃声がロビーに木霊した。
「まさか、この私が・・・出オチ・・・だと・・・」
無念の台詞と共に、2階にいるSVDが倒れた。
もう1度、続けて銃声が鳴り響く。
「くっ! 私が・・・人気も性能もトップクラスの私が・・・こんな扱い・・・」
怨念がましい呟きと共に、WA2000が力尽きる。
「アナタは、脱落したはずでは?」
ガーランドが銃口を向ける先を移す。
あまりにも予想外、という表情を浮かべつつも、ライフルを構えるその姿勢には微塵のブレすらもみせない。
「45がいま言ったばかりだろう? アイツが何を考えてそんな情報を流したのかは知らないが、情報の真偽くらいは確かめないとな」
〝ブラックライフル〟という通り名の通り、光を呑みこむほど深い漆黒の銃身と黒髪を揺らし、M16が2階の北側通路に姿を現した。
「HK416のヤツ・・・何で私にウソの情報を?」
「ああ、あの娘からの情報だったのね。ダメよ、アイツの事を信用したら。どういう思考回路してるのか指揮官にだって分かってないようなヤツなんだから」
ましてや、急ごしらえのチームで彼女を御しきろうなどと甘い考えである。
特に、今回はM16が絡んでいる話しなので尚更の事、一見してクールに見えても、腹の内はもう暴走特急状態と見て間違いないだろう。
まぁ、そのおかげで45はこうして起死回生に成功したわけなので、あの不思議ちゃんに今回ばかりは感謝だ。
「ふん! いいわよ、どっちにしたってこちらの有利は揺るがないのだから」
ネゲヴが銃を構える。
頭上から狙われていない今なら、多少の被弾は覚悟で距離を取ることも可能だ。
周囲の地理、ネゲヴと57の性能を考慮、最速安全な回避ルートを瞬時に計算する。
そうして答えを叩きだしたのも束の間の時だった。背後で、シュポンっ、という間の抜けた音が鳴り響いたのを耳にする。
これは、アサルトライフルが榴弾を発射した時の音である。
「45、スコール!」
続いてFALの叫び声が耳に届く。
スコールとは聞き慣れないサイン。本来の意味で考えれば、熱帯雨林特有の集中豪雨を意味する言葉だ。
榴弾を発射したのだろうFALが集中豪雨だと注意を促している。
そして、45の頭上に何があるのかというと・・・
「ガラス張りの・・・ちょっ!!?」
ガシャーン! と、耳を覆いたくなるほど激しい破壊音を伴い、巨大なエアウォークを構成する全質量のガラスが破片となって降り注ぐ。
ガラスのスコールを目の当たりにして慌てて退避するネゲヴに続き、45もFAL達が身を隠すカウンターへ向けて駆けだす。
ガラス片は尖った先を下に向けて落下するという性質をもつ。45は無数のナイフが降り注ぐ中を走り抜けているようなもので、当然、全て避けることは不可能である。
「いや、本当にシールドがあって良かったわ」
銃でなければ破れないという特殊シールドのおかげで、ガラス片が当たった感触こそあれ、切創を負う事は無い。
これがレクリエーションだった事に感謝しつつ、45は命からがら3人の元へ帰還を果たしたのだった。
「かなり無茶してくれたわね、FAL。こんな大胆な事する性格だったかしら?」
「これ、私じゃなくてIDWとスパスの案だから。私は反対したんだけど、2対1の多数決で仕方なくやったの。本当よ?」
視線を移せば、ポンコツコンビは笑顔でVサインを出している。
「もう、次からはもうちょっとまともな案を考えられるようになりなさいね」
「頑張って考えたんだけどなぁ。怒られちゃった・・・」
「今のにゃんて怒られてるうちに入らないのにゃ。むしろ、ニャイスな作戦だったけどあまりにも無茶だったから褒めるに褒められにゃいしどうしようかしら? って悩んだ結果の答えだとみたにゃ」
IDW大正解。
しかし、それを認めたらまた何を言われるか分かったものではないので、ここはあえて無言を貫いておく事にする。
「M16、聞こえるかしら?」
『ああ、聞こえてるよ。無茶しやがって。誰が考えた作戦だ? 演習が終わったら酒をたんまり奢ってやるから覚悟しておけよ?』
実にM16好みの作戦だったのだろう、かなり危険な位置にいたというのにそれはもう上機嫌である。
「ガーランドはどう? こちらからだと確認できないのだけど」
『目を白黒させてるが、戦意は失っていないようだ。このまま私がガーランドの相手をする。お前達はネゲヴを』
カウンターから顔を出し、ネゲヴの様子を確認する。
ガラスの敷き詰められたフロアでネゲヴと57は何やら会話をしており、57が頷くと、ネゲヴは踵を返してメインエレベーターへと歩いていく。
「逃がさない」
追撃をかける為にカウンターから躍り出る45。
しかし・・・
「っとぉ!?」
踏み出した足先数センチの所を弾丸が抉る。
思わず飛び退いて、再びカウンターの中に転がり込んだ。
「無茶するんじゃないの! M16が相手しているとはいえ、ガーランドが目を光らせているっていう事を忘れないで」
FALから思いっきり注意されて45は返す言葉も無い。
まだ、さっきネゲヴに言われて頭に来た事が後を引いているようである。
『慌てん坊なお姫様だな。よし、私が合図を送るから、耳を澄ませて大人しく待ってろよ?』
M16からの通信が終わると、頭上から一層に激しい銃撃音が聞こえてくる。
自分の方に惹きつけるかのようなM16の銃撃にガーランドも応戦している。
最中、銃撃に混じって、キィン、という甲高い音が響いた。金属を弾いたような、耳を澄まさなくても聞こえるくらい大きな音だ。
『ガーランドは弾切れだ。行け行けぇ!』
ガーランドは金属クリップで纏められた弾丸を給弾口に指しこんでリロードを行う。弾丸を全て撃ち終えると、最後の排夾と共にクリップも弾き飛ばされるのだが、この際、非常に大きな金属音が発生してしまう。敵に弾切れを知らせているようなこの性質は、ガーランド本人も戦闘の際にとても気にしていた事だった。
どんな銃でも一長一短があるもの。それを補い合う為にチームがあるのだから、もっと胸を張って戦ってくれてもいいのに、と45はガーランドの戦績を見て常々思っていた事だ。
とはいえ、今は敵として戦闘の真っ最中なので、利用できるものは何でも利用させてもらうのが45の流儀だ。
「スパス、前をお願い」
「オッケー。ちゃんとついてきてね」
盾を展開したスパスを先頭に、4人並んで突撃する。
向かう先、閉じるエレベーターの中にはネゲヴの姿は消え、フロアに残った57が1人で45達を迎え撃つ。
「にゃはは~、4対1で勝てると思ってるのかにゃ?」
ここで調子に乗ったIDWが、まだサブマシンガンでは精度が出づらい距離だというのにスパスの盾から身を乗りだして攻撃を始めてしまう。
真正面から撃たれているというのに、57は当たりっこないと理解しているのだろう、その場で佇んだままだ。
57が銃を構える。両手でグリップをホールドし、狙いを定めるが早いかトリガーを引いた。
IDWが放った9ミリ弾の雨の中を逆らうように駆ける1発の5.7ミリ特殊弾は見事にIDWのシールドを撃ち抜いてみせる。
「にゃんだって~!?」
「この馬鹿! 良く考えて動けって言ったばかりでしょう!?」
身体の力が抜け、その場で倒れるIDW。
しかし、突撃の真っ最中なので構ってあげている暇はない。おバカはそのまま放置である。
続き、57はスパスの盾に向けて攻撃を開始する。片膝をつき、マシンピストルもかくやといった連射弾が前衛のスパスに襲いかかった。
「ハンドガンの火力じゃあ私の盾は抜けな・・・あれれ?」
97式の火力でもほとんど色が変化しなかったシールドだったのに、57の連射を受けて色が変わり始めている。
「っ! 2時の方向。あれに一旦隠れましょう」
FALの号令で一斉に方向転換を行い、榴弾攻撃で落下したエアウォークの骨組みに3人して飛びこんだ。
「57ちゃんってこんなに火力高いの? ビックリしちゃった」
回復していくシールドを眺めながらスパスは、ほぇ~、といった擬音がピッタリな表情を浮かべている。
「ウサ子の弾は特殊弾頭で、さりげなく貫通性能が高いのよ」
「こら~、FAL! 私の事をウサ子って呼ぶなぁ~!」
57との距離はまだ50メートル以上あり、おまけに2階からは銃声が響き渡っている。それでいて今の会話が聞こえるとは、どれだけ地獄耳なのだろうか。
「はいはい! 悪かったわね、ピョン子! 普段の戦闘だと分からないくらいの徹甲効果だけど、今回は特別に効果が表れるようにしているんじゃないかしら」
スパスのシールドを貫ける攻撃性能を持ち、すばしっこさにも定評のある57がエレベーターの門番というのはツイてない。
ダメージ覚悟で突撃すれば突破できるだろうが、後に続く戦闘の事を考えると無茶は控えたいところである。
「ウサ子の相手は私がする。2人は隙をついてエレベーターに乗り込みなさい」
「隙をつくって言っても、それが最高に難しいんだけどね。何か良い案ある?」
「はいは~い! 私、良い考えがあるよ!」
嬉しそうに手を挙げながら言うと、スパスは何を思ったのか装填していた弾を全部イジェクトしはじめた。
鶏が卵を産むかのように次々とショットシェルが床に落ちていく。
そうして空になったところでスパスが取り出したのは、ついさっき、休憩中に工作していた黄色いショットシェルだ。
「これで57ちゃんを驚かして隙を作るよ」
「本当に平気? 言っておくけど、アイツああ見えてかなり度胸ある娘よ?」
「これを見たら誰だって驚くに決まってるもの。でも、真っ黒焦げにしちゃう危険もあるから、気をつけて使わないとね」
黒焦げってどういう事? と不安一杯な45とFALを余所にスパスは特別製ショットシェルを3つ装填する。
「他に案も無いし、スパスの自信を頼るしかないわね。私の発砲を合図に行きなさい。私はここで2人を援護してからウサ子とタイマンよ」
「57ちゃんにある程度近づいたら、これを使って退かせるよ」
「その隙にエレベーターを呼んで乗り込む。異論は無いわね?」
3人揃って頷くと、FALが遮蔽物から身を乗りだして銃撃を開始。続き、スパスと45が突撃を開始する。
FALと45揃っての精密射撃には、さすがの57も足を止めていられない。
ウサギのようにピョンピョンとステップを踏んでかく乱させながら、スパスに銃撃を浴びせる。
ジリジリとシールドを削られながらも脚は止めない。そうして、目当ての射程に到達したところで、スパスは57から少し横にズレた位置に銃口を向けてトリガーを引いた。
重低音を響かせてスパスの銃口から鉛の弾・・・どころの騒ぎではなく、巨大な炎が吐き出される。マズルフラッシュなんかとは比べ物にならない、火炎放射機もかくやという本格的な炎だ。
「きゃあ!!?」
これにはさしもの57も度肝を抜かれ、炎と反対側に大きくピョ~ンと跳躍。エレベーター正面がガラ空きになる。
立ち位置を戻させまいと57を追撃するFAL。
走り込んできた勢いのままエレベーターのボタンを押す45。
2人ともに平静を装って行動しているが、その心境は全く同じである。
スパス、半端ねぇな・・・と。
エレベーターが最上階から降りてくるまで待たなくてはいけないのだが、その間、スパスは件の火炎をもう1回吹き出し、57の接近を許さなかったので時間稼ぎは容易だった。
電子音と共に扉が開いたところで2人して乗り込み、最上階のボタンを押す。
扉が閉まるほんの僅かな合間、サインを送ってくるFALに返事を送った。
エレベーターが動きだし、銃声の喧騒とは隔絶されたところで45とスパス同時に大きく息をつく。
「ねえ、スパス。さっきのアレ、何?」
「えへへ、驚いた? ペレットの代わりにFALちゃんから貰った榴弾の火薬をいっぱい詰め込んだ火炎弾。名付けて〝ドラゴンブレス弾〟だよ」
ドラゴンとは、たしか遥か昔のおとぎ話に出てくる、炎を吐く巨大なトカゲの怪物だったか。単に火炎弾と呼べば良いだろうに、やたらとカッコイイもの好きな戦術人形である。
「それ、ネゲヴに対しては直撃させていいから。思う存分やってちょうだいね」
りょーかい、と元気よく返事するスパスとタイミングを合わせたかのように、エレベーター
カーゴ内に通信機のコール音が鳴り響いた。
~NEXT マリッジ・ロワイアル~
「グリフィンの厳しさを教えてあげるわ!」
スペシャリストの戦い方
「いっけえええぇぇぇええぇぇぇ!!」
起死回生の荒技
「お、お腹空いてきちゃった。ポテチ食べて良い?」
余裕のトリプルマーガリン味
「っ~~~~~! アンタのそういう余裕ぶった性格、大っ嫌い!」
でも、お姫様はそれが大嫌い
マリッジ・ロワイアル 8話 Coming Soon
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
スパスの火炎弾は、CODシリーズのどこかで出てきたものをモチーフにしてみました。
あぶないので、良い子のみんなはマネしないでね!
次回もどうかお楽しみに~