フォーゼの言うことを聞きなさい!   作:1202155@

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Mの邂逅/美女と探偵

「学校をやすませたぁあああああっ!?」

 

 絶叫がお昼時のクスクシエに響き渡った。それもそのはず。弦太朗がしでかしたことに、よし子が怒りと呆れを覚えたからだ。

 

「お、おう。なんかまずかったか?」

「当たり前ですッ!大学生の貴方なら兎も角ッ!義務教育課程の二人を休ませるなんて、言語道断ッ!バカな大人でも、そんな勝手な理由で休ませてはいけません!」

 

 毎月、一回か二回はよし子と会って話をする弦太朗。というのも、子育てについてど素人の彼が連絡をしはじめたのがきっかけだ。よし子もそんな弦太朗に助言をしつつ、自分の力で何事も成す弦太朗。嬉しく感じていたのだが、流石に今回のことは流石に冷静なか彼女でも、怒髪天をついたようだった。

 

「いいですか?親戚全員が敵な訳ではないんです。ひなちゃんを私に預けるなり、吾郎さんにお願いするなり、すればいいものを!」

「でも、あいつらが色々整理を付けたいって言うしよぉ」

「確かに整理は必要です。しかし、それは日々の生活を普通に暮らしていくことで、整理がついていくものです。空さんと美愛さんには、明後日から普通に学校に通ってもらいますからね」

 

 文句は言わせない、と言った物言いで、弦太朗の反論を雰囲気で押しとどめた。弦太朗はしょんぼりした様子で項垂れる。それに伴い、リーゼントも垂れた。

 

「弦太朗さん、この後、お家に伺って、空さんと美愛さんにもこのことをお話しします。それでは、また後ほど」

 

 そう言うと弦太朗の飲み物代も含めたお金をテーブルに置くと、よし子は席を立って、お店を出ていった。

 

「やっぱり、学校休ませちゃまずかったよなぁ」

 

 頭ではわかっていた。休ませてはいけないということを。だが、良心がそれを留めたのだ。折り合いをつけずに普通の生活に戻れば、彼女達は今よりも喪失感に苛まれることになるだろうと。

 だが、どうすればいいのか、弦太朗にはわからなかった。

 

「あー……空と美愛に悪いことしちまったなぁ」

 

 そうぼやいていると、チャイナドレスに身を包んだ女性が弦太朗の座る席に座ってきた。

 

「大丈夫?弦太朗くん」

 

 座って声をかけてきた女性は白石知世子このクスクシエの店主で、弦太朗をこのお店に雇い入れてくれた人だ。彼女は弦太朗にホットチョコレートの入ったマグカップを渡した。

 

「はい。飲めば落ち着くから」

「どうも……知世子さん」

 

 弦太朗はそれをゆっくり啜った。知世子はそれを優しげな表情を浮かべ眺めながら、尋ねてきた。弦太朗は頷くと、怒られた経緯について話した。それを聞いた知世子は、そうなの、と言うと、少し考えた後で、弦太朗に話しかけた。

 

「ねぇ、弦太朗くん。喪失感って、普通に生活して埋まる人もいるよ。けどね。それだけじゃダメだと思うんだ」

「え?」

「喪失感を埋めるのは、その失った人や物との大切な思い出。そして、それから自分や周りの人が何をしていくか、何をしてあげるかってことが大事なの」

「何をするか……何をしてあげるか……」

「私も彼も、比奈ちゃんも、二年前に大事な家族にも近い子を失ったの」

 

 知世子は優しいげな、だが、どこか悲しそうな表情で語り始めた。

 

「最初はすっごい悲しくて、いなくなっちゃったンだ……って思ってた。けどね、彼はその子のために世界を回る旅に出ることに決めたの。彼の思い出と折り合いをつけるために」

 

 そう言ってクスクシエに飾られた数多くの写真を指さす。それらは、世界の美しい景色やその国の住民の笑顔や暮らしの様子が写されていた。

 

「私はその時に思ったの。じゃあ、私は彼がいつ帰ってきてもいいように、ここで待ってようって」

 

 知世子は思い出し笑いを浮かべ、自分のカップに注がれた珈琲を啜った。

 弦太朗は話を聞いて、小さく呟いた。

 

「折り合いをつける……か」

 

 果たして、幼き彼女ら二人が、その喪失感と折り合いをつけられるのか……その方法が弦太朗には皆目見当がつかなかった……。

 

 

 

 

 

 黒塗りのリムジンが道を進んでゆく。その車の中ですらっとした綺麗な脚を組んで、炭酸水を飲みながらタブレットを弄るのは、仮面ライダー部の名誉会長たる、風城美羽だ。彼女は久しぶりに空いた時間を使って、弦太朗の家に向かう途中だった。だが、そこにはもう一人、本来であれば関わることの無い人物が同乗していた。

 

「すまねぇな。会長さんよ。乗せて貰っちまって」

「いいのよ。このくらい気にしないで頂戴。こっちも聞きたいことがあって乗せたから」

「流石だ。強かだぜ」

 

 同乗していたのは以前、オフューカスの情報をライダー部に伝えに来た際にやってきた左翔太郎だ。彼は現在別の事件を捜査するため、夢見町付近を探索していたところだった。その途中、歩いているところを美羽に拾われたというわけだ。

 

「そっちはどうだ?解決しそうか?」

「無理ね。敵が以前よりも強力だから。もう少しかかりそうよ」

「……だろうな」

 

 翔太郎は申し訳なさそうな表情を浮かべて窓の外を眺めた。

 美羽はそんな彼をちらりと一瞥すると、タブレットを弄りながら問いかけた。

 

「探偵さんは何を探しているのかしら?」

「ん?あぁ、所謂人捜しだ。警察も動いてるが、どうも見つからないんでな。奥さんが俺のとこに来て、依頼してきた」

「探偵らしいわね……そっちは手掛かりはあった?」

「いや。これと言ってな。ただ、気になることがあって、弦太朗の家に行こうと思ってたんだ」

「気掛かりなこと?」

 

 弦太朗の名前が出たことに怪訝そうな表情を浮かべて首を傾げる美羽。翔太郎は、あぁ、と頷くと、メモ帳を広げて、調べたことを美羽に話した。

 

「行方不明の人はコズミックエナジーの分野ではそれなりに有名な人らしくてな。失踪する数ヶ月前にはとある企業に未知の鉱石の買い付けを依頼してたらしいんだ」

 

 美羽は全く話の先が読めず、首を傾げながら、タブレットを脇に置き、話を聞く。翔太郎はそれを見ると、話を再開する。

 

「コズミックライト鉱石を知ってるか?」

「さぁ?聞いたことないわね。宇宙関連の話かしら?」

「あぁ。最近見つかった研究途上の鉱石らしくてな。俺の手掛けてる事件で、捜査線上に上がったから、歌星の坊主ならわかると思ってな」

「なるほど。でも、貴方のところには優秀な相棒がいるのでしょう?だったら、そっちに調べてもらえば……」

「あいつは今、ラブライブ!について調べててな。アテにならないんだ」

 

 翔太郎は頭を抱え、あきれた様子でそう答えた。美羽は、そっちけいなの?彼?と尋ねると、翔太郎はいんや、と苦笑いを浮かべて答えた。

 

「いやな。気になることがあると、一日中でも半日でも、地球の本棚に籠もっちまう。ま、こっちは慣れてるから、その間に足で情報を集めるんだがな」

「ふーん。あなたも大変ね?」

「そうでもねぇさ。それを考えた上で行動するのが……ハードボイルドな男の証拠さ」

 

 帽子を優しく撫で、気障ったらしい態度でかっこつけた翔太郎。美羽はどこかの大文字を思い出して、苦笑いを浮かべた。

 

「……オホンッ!ところで、何でその人は居なくなったの?」

「あー。これはな、俺が調べたわけじゃないんだ。所長の……亜樹子の調べたことなんだが……」

 

 以下が翔太郎と美羽の話した内容である。

 

「居なくなったのは三原一郎。宇宙物理学……とりわけ、コズミックエナジーの分野ではそれなりに有名な人物だ。居なくなる前日は、自宅で娘のエルダとフレイヤ、それから奥さんの千歳さんと一緒にいつものように暮らしていたらしい。

 夜、寝る前にコズミックエナジーを利用した感情記憶型自立稼働進化ロボのT2-GUM1の最終調整を行っていた。

 そこで怪物の襲撃に遭ってしまったらしい。奥さんのほうは、フレイヤとエルダが破壊されながらも、二人が彼女を守ってくれたおかげで、大事には至らなかった。だが、フレイヤとエルダはかなり破損がひどくてな。そのことを伝えに離れの研究室にいた三原博士のところに行ったら、そこには破壊されたT2-GUM1だけが残されていた」

 

「あらましはわかったわ。けど、それとコズミックライトには何の関係が?」

「コズミックライトは三原博士が買い付けていた。それはさっき話したな?」

「ええ」

「コズミックライトは、擬似的なコズミックエナジーを発生させる鉱石だ。そして、T2-GUM1にはコズミックエナジーをエネルギーと記憶媒体に変質させる内燃機関がある。三原博士はその内燃機関にコズミックライトを搭載する予定だった」

「……だった?」

「原石のままのコズミックライトは長時間使えば中毒になるくらいの毒性がある。腐っても放射線だからな。三原博士はコズミックライトを加工して安全に使う研究も同時進行で行っていた。奥さんによれば、それ自体は既に完成させていて、後はコズミックライトが届くのを待つばかりだったらしい」

 

 ここまで話して、翔太郎は渡された炭酸水を飲んだ。そして、一息ついた後で、説明を再開した。

 

「奥さんの証言ではな、研究用のコズミックライト5kgが無くなっていたことと、人間が宇宙に自在に行くために研究していたデーターが入ったパソコンが消えていたらしい」

「宇宙に行くための……?」

 

 美羽はフォーゼを想像しながらそう尋ねると、翔太郎はそのシステムの名を口にしようとした。

 

その時ー

 

「Zero Gravity Suit……フォーゼシステムとメテオシステムのデーターを融合させた、画期的な大気圏外スーツだよ」

 

 頭の中で声がした。驚いて当たりを見渡すと、音もなく、リムジンのボンネットに誰かが降り立った。

 

「うわぁっ!」

 

 運転手が驚いて急ブレーキをかけ、止まる。ボンネットの上に乗る人物はそんな状態でも、微動だにせず、立ったまま。張り付いたような笑みを浮かべて立っていた。

 

「お嬢ちゃん、随分と熱烈なお出迎えだなぁ」

 

 翔太郎がリムジンから出ると、ボンネットの上に立つ少女にそう問いかける。少女はピョンと上から飛び降りると、軽やかな身のこなしとは裏腹に、アスファルトの地面にクレーターを作った。それに驚いていると、少女は逆巻く銀河を模した青いスイッチを取り出した。それを見て美羽が叫んだ。

 

「忘却星座のスイッチ!?」

「そうよ。風城美羽。私は忘却星座の一人」

 

 そう言うとスイッチを押して、マントを振り払うような仕草をする。その瞬間、星座が浮かび上がり、少女の姿は梟の姿へと変わる。

 

「私はノクトゥア。以後よろしくね?まぁ、そこの探偵さんには死んで貰うけどね……ダスタード!」

 

 その声とともに現れたのは白銀のダスタード。色違いのダスタードに困惑する美羽だったが、すぐにリムジンのトランクを開け、中からショックガンを一丁取り出すと、勇ましく、それを構える。

 

「仮面ライダー部名誉会長として宣言するわ!貴女を止める!」

「へーぇ。それが出来るのかしら!」

 

 怪しく笑って、ダスタードに指示を出すノクトゥア。美羽はショックガンをリロードし、慣れた手つきでそれを撃ち込んでゆく。正確な狙いで、倒れてゆくダスタード。しかし、如何せん、数が違う。美羽はショックガンを取るように隣の翔太郎に言おうとするが……。

 

「だから、敵だって……え?にこにこに?エリーチカ?なんだよっ!」

 

 一人虚空に向かって叫んでいる。美羽はそれを見て、恐怖で頭がとち狂ったんじゃないかと、美羽は不安になり、声をかけない。

 ノクトゥアは、あはは、と笑って翔太郎の前に舞い降りると、エネルギー弾を掌に作り出し、こう言った。

 

「気持ち悪い。死んで?」

 

 華やかな声ながら、冷たい一言と共に躊躇いなく突き出される右腕。だが、それはすんでのところで当たらなかった。否、翔太郎がノクトゥアの胴体を蹴り飛ばしていたのだ。

 

「ふぐぅっ!」

 

 ひっくり返りながら、転がってゆくノクトゥア。そんな彼女を見下ろすように立つ翔太郎は先ほどの頼りない雰囲気からは一点。精悍な顔つきに代わっていた。

 

 その表情を美羽は知っていた。闘うことを決意した男の表情であると。だが、彼女の知っている荒々しくも雄々しい物とは何かが違う。大人の余裕というか、纏う雰囲気が全体的にゆったりしていた。

 

「しゃぁねえ……一人でやるか」

 

 呆れた口調で腰から二つスロットのドライバーを外すと、似たような形状の一つスロットのドライバーを翔太郎は腰に取り付けた。そして、取り出したのは、黒一色のガイアメモリにJの衣装が施されたもの。彼はそれを慣れた手つきでドライバーへ装填し、こう呟いた。

 

「俺……変身……ッ!」

《Joker!》

 

 Jのマークになるように変身ポーズを取り、ドライバーを展開すると、メモリの名前を読み上げ、変身音が鳴る。その後に立っていたのは、漆黒の体躯に赤い瞳、頭部にV字のアンテナを付けた、シンプルな戦士が立っていた。

 

「仮面ライダー……ジョーカー……!」

 

 黒い戦士はそう呟くと、左手をスナップしてた後で、ノクトゥアを指さした。

 

「さぁ、いくぜ?」




 翔太郎は相変わらず……な今回のお話。
美羽と翔太郎という異色の二人。なんとなく字面が似てるようで似てないw
 初期プロットでは二人で弦太朗の家に行き、よし子さんのとばっちりに合う……予定でいましたが、なんというか、在り来たりなので、翔太郎の操作内容に美羽が口を突っ込むという形に落ち着きました。

ジョーカーのアンテナの話
 ジョーカーが最後の方に出てきましたが、アンテナはWと同じ物でなく、V字にしてます。というのも、ジョーカー=Wの半分の力なので、アンテナもWを半分に割ると、Vになるので、V字のアンテナと描写しました。

さぁ、次回は
ジョーカー大暴れ
小鳥遊、合唱部やめるってよ

の二本でお送りします!
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