でも………
それではお楽しみ下さい。
照井から話を聞いた宇宙・仮面ライダー部は一路、弦太朗の家に向かって歩いていた。
「弦太朗に従姉妹のお姉さんがいるのか」
「おう!祐理姉ちゃんの飯は上手いんだ!隼も皆も気に入ると思うぜ!」
「でも、この人数入るんですか?」
「うーん……俺の部屋の襖も取り外せば入るだろ」
そう言った瞬間、二人の乙女の目が光る。言わずもがな。美羽と蘭である。
(弦太朗さんに女の子らしさを見せれば、もしかしたら……!)
(弦太朗の部屋……そういえば、行ったことなかったわね。……面白いものが見えるかも……ふふふ)
二人の背後から、桃色の波動が出ているのを友子は感じたが、あえて無視した。(片方については、悪戯心だろうが)
ラノベなどによくある、展開になると、分かり切っていたからだ。
「お、ついたついた!姉ちゃん!飯出来てるかー?友達連れてきたぞー!」
一階は整備場兼工場として使われている。二階は寝室と弦太朗の部屋がある。前に来た時は一階の居間で、鍋を囲んで食べたことを美羽は思い出していた。
「はいはーい。って、あんたは相変わらず友達作るの上手いわね〜」
返事をしながらキッチンから現れたのは、ショートカットの美人な女性。弦太朗と同じく人懐こい笑みを浮かべている。
「弦太朗、この人はお前の従姉妹なのか?」
「おう!俺の従姉妹だぞ?」
「なんで語尾が疑問になってるんだ?」
と何時ものように話し始める三人。すると祐理がパンパンッと手を叩いた。
「はいはい。そのやり取りは後にして。あ、自己紹介はまだだったね。私は小鳥遊祐理。弦太朗の従姉妹よ。さてと、ご飯を食べましょうか。皆、上にあがって。ご飯の準備は出来てるわ。弦太朗、手伝って!」
「おうっ!じゃあ賢吾、皆を俺の部屋に案内してやってくれ!」
賢吾にそう告げると弦太朗はキッチンへ入って行った。
キッチンに入った弦太朗は祐理が作った料理の多さに驚いた。
「相変わらず姉ちゃんは料理作るの多いな」
「当たり前じゃないの。あんたは昔から友達多かったんだから。このぐらい作らないと足りないわよ……そんなことより」
ニンマリ笑って祐理は弦太朗の顔を覗き込んだ。両の手は弦太朗を逃がさないように、ガッチリ弦太朗の肩を掴んでいる。そして、顔を覗き込む。
「ねぇねぇ弦太朗。友達の中に弦太朗の好きな子はいないの?三人とも別嬪さんじゃない」
そう聞かれて弦太朗は考えた。そして
「皆好きだぞ!」
「へっ!?ちょっ、それって!?」
「当たり前だろ。ダチなんだからな」
そう聞いて祐理は肩を下ろした。同時に全く、と言った風に笑う。
「そうじゃなくて、女の子として意識したことはないの?」
そう言った瞬間、弦太朗は何かを思い出したのか、キッチンの窓から見える夜空を見つめ、悲しげに呟いた。
「いるよ……。今は遠くに行ってるけどな」
その言い方がまるで、生きていないかのように祐理には聞こえた。だが、こんなに悲しげな表情をしている弦太朗を見るのは初めてだった祐理はただ一言、そう、と頷くしか出来なかった。
蘭は弦太朗の部屋を初めて来た。そして、来て早々やることは勿論決まっていた。それは……
「弦太朗が持ってる、 Hな本を探すわよ!」
「はい!美羽先輩!」
「ふふふ。洗いざらい見つける……」
三人はめちゃくちゃやる気のようだ。
それを見て男子四名は大人しく用意されたテーブルに座り、様子を伺っていた。
「女の子に本が見つかったら弦太朗さん、可哀想ですね」
「でも、弦太朗さんッスよ?案外と持ってないかもしれないじゃないッスか?」
「弦太朗も男だ。持ってるに決まっている」
「大文字先輩、それは自分が持っていると認めているようなもんだぞ」
と会話をしていると、突然美羽が悲鳴を上げた。
「きゃっ!」
そちらに目を向けると、美羽が弦太朗のパンツを握りしめて立っていた。
「げ、弦太朗のパンツよ」
「ぱ、パンツ///」
「って、こんなのはいいのよ。本よ、本!」
そう言ってパンツを放り投げると、ベッドの下などを覗き込む美羽。
だが、一向にそのような本は見つからなかった。
「ないわねー」
そうこうしているうちに祐理が沢山の料理をお盆に乗せて持ってきた。仕方なく、三人は、探すのを諦め、大人しく席につくことにした。
「はー、お腹いっぱい!」
「祐理さん、ご飯美味しいです」
「いやぁ、美味かったなぁ」
「お袋の味、ここに極まりッスね」
「いいなー、私もこんな風にご飯作れるといいな」
「蘭の作る料理は、殺人兵器だもんね……」
「納豆が足りない……」
「いや、野座間、それはいらないんじゃないか?」
そう言いながら、ライダー部一同は食後のお茶を啜っていた。
祐理の作る料理は和食が多く、その和食の味はまさにお袋の味と言っても過言でなかった。
なお、これを食べた隼がお袋の味を極めるために、料理を学ぶのは別のお話……
「よろんこんで貰えて嬉しいわ。弦太朗はちゃんと自炊してるのかしら?今まで見たく、ユウキちゃんの家にお世話になってない?」
そう尋ねられ、自信満々に弦太朗は頷いた。
「勉強と一緒だ。ダチになりゃ上手く作れるぜ。って、まぁ……姉ちゃんの味には勝てねぇけどよ」
弦太朗がそう言うと皆が笑った。
「そりゃそうだろう。向こうは主婦なんだ。毎日料理してる人に勝ってしまったら、お前は天才料理人になれる」
「でも、以外ッスね。弦太朗さんが料理出来るなんて。高校の頃は一回も作って来て無かったような…もしかして、彼女が出来て、教えて貰ってたとか?」
ジェイクは弦太朗の高校時代のことを思い出す。すると、弦太朗は恥ずかしそうに頭を掻きながら話した。
その様子を見た、美羽と蘭の目が光る。
「いやぁ、春休みの間、暇だったからよ。遥先生に料理の作り方教わってたんだよ。そしたら、案外と楽しくてな。遥先生、教えんの上手いんだわ」
それを聞いて、賢吾は笑った。
「なるほどな。そういうことか」
「なるほどって、どういうことだ?」
「いや。宇津木先生が妙に嬉しそうにしてたと思ってな」
宇津木遥は弦太朗と賢吾が高校二年生の時に担任になった先生だ。
それを聞いて、蘭の湯呑みにヒビが入った音がする。蘭の隣にいた弦太朗が自分の持っている湯呑みにヒビが入ったのかと勘違いし、湯呑みを見たり、触ったりして確認していた。
賢吾は飽きれたような表情を浮かべる。
「まったく………いい加減、自分に向けられている好意の向きがどういうものかくらい、キッチリ分けられるようになれ……まぁ、ムリな話だろうが」
そう言って賢吾は蘭をチラリと見た。その顔は賢吾の言ったことに賛同したのか、頷いていた。
如月弦太朗を一人の男として好まれているのが多いことを賢吾は知っていた。
それは目の前にいる蘭もそうだが、他には、宇津木遥、敵として闘った、ホロスコープスのアクエリアス・ゾディアーツことエリーヌ・須田やスコーピオン・ゾディアーツこと園田紗理奈もそうだ。後一人は……
(高村優希奈もだな。あいつは……一番分かり易い)
知っているだけで6人もの女性が弦太朗に好意を持っていた。
賢吾は、リア充爆発しろ、と思ったが、その考えを振り切る。弦太朗が他に恋が出来ない理由を知っているからだ。
(まぁ、本人のことだ。何れ自分への好意に気づくだろう)
ああ見えて弦太朗は感が鋭い。賢吾はそれにかけてみることにした。
「賢吾、それどういういー
「あ、そうそう、弦太朗。あんた、来週暇?」
タイミング悪く、予定を聞かれた弦太朗は、渋々、バックの中からメモ帳を取り出した。そして、予定表を見る。
テストも終わり、後は自由レポートだけなので、祐理に暇であると告げた。すると、祐理はニッコリと天使のような笑顔を浮かべると、弦太朗に両手を合わせて頭を下げた。
「じゃあ……うちの娘たちを見てやってくんない?」
「お、おう。いいぜ」
「「「えーっ!?」」」
すんなり頷いた弦太朗にライダー部の面々がツッコミを入れた。
「安請け合いしすぎだろ!?」
「弦太朗さんもしかして……」
「嘘よね?弦太朗は年下が好き……」
「なる程。弦太朗はロリコンなのね……」
と変な反応をする面々。それを賢吾がどこからか取り出したハリセンで頭を叩いた。
「弦太朗が小さい子好きなわけないだろう!……すいません。祐理さん。お話を続けて下さい」
祐理は笑いながら話を続けた。
「いやぁ、弦太朗が快く引き受けてくれて助かるわ」
「私たちね、ちょっと出かけなくちゃならなくて、泊まりに来てくれた日には一回帰ってこれるんだけど、その次の日からまた朝早く出掛けて、いつ帰ってこれるかわからないの。それでね、娘達三人じゃ、色んな意味で心配だから、弦太朗に夏休みの間だけ、見てもらいたいなぁって思ってね」
そう言われて弦太朗は娘三人のことを思い出した。
「空に美愛にえーっと、ひなだっけか?とりあえず面倒見ればいいんだろ?任せとけ姉ちゃん!この如月弦太朗!何がなんでも、見守ってやるぜ!」
胸を二回叩き、人差し指を祐理に突きつける。祐理は弦太朗が了承したことを嬉しく思い笑っていた。
「さて……まぁ、流石に弦太朗一人だと不安なところもあるから……女の子で誰か一人、ついて来てくれないかしら?」
弦太朗は思いっきりズッコケる。
「姉ちゃん、それどういう意ー
「まぁまぁ、弦太朗さん。落ち着いて。お茶を飲みましょ?ね?」
ジェイクが弦太朗を無理矢理座らせる。
祐理はそれに感謝し、軽く会釈をしながら女子を見つめる。すると、美羽がシュバッと勢い良く立ち上がる。
「お姉様、私が弦太朗と一緒に子供達の面倒を見ますわ」
堂々と言う美羽。すると、その横からおずおずと手を上げるものがいた。
「わ、私も子供達の面倒を見たいです!」
そう言った瞬間、美羽と蘭の間に火花が散る。見かねた祐理は二人に提案する。
「ジャンケンでどっちが先に行くか決めればいいんじゃないかしら」
「そうね。その手があったわ!」
「そうしましょう」
二人は対面するように立つと、拳を突き出した。そして、近くに立つハルを睨む。
ハルは蛇に睨まれたカエルのようにすくみ上がる。二人の目はそれほどまでに恐ろしかったからだ。
「ハル、掛け声と審判をお願いするわ」
「ちゃんとやってね?」
「は、ハイッ!」
そう言われてハルはしっかりと返事をした。そしてハルはハッキリした声で掛け声をだす。
「さいしょはグー。ジャンケン…ポイッ!」
蘭と美由はその掛け声に合わせて、同じタイミングで繰り出した。
沈黙……
お互いに出した手は同じ、グー。美羽と蘭の顔が悔しそうに顰める。
「それじゃあ、仕切り直しで…あいこーでー……」
その瞬間、大音量で演歌が流れる。静寂かつ、緊張がはしっていた空間に突然流れた音は、周りにいるものを驚かせた。
同時にその演歌が着信音である携帯の持ち主をライダー部の部員達は知っていた。
「弦太朗!!(さん)」
「うおっ、俺!?違うぞ!?」
「あ、私みたい。ごめんねー」
その音源の主は、祐理の携帯だった。祐理は謝りながらも、電話に出る。
同時に賢吾の持つアストロスイッチカバンに警告音が鳴り響く。急いでカバンを開けると、ディスプレイには、コズミック・エナジーの放出を確認するマーカーが記されているる。
「ゾディアーツの反応だ!場所は……近いぞ!」
「私が行きます!」
蘭はそう言うと急いで飛び出して行った。その後をサポーターであるハルが20個のスイッチの入った、アタッシュケースを持って追いかける。
「賢吾、フォーゼドライバーはまだか?」
賢吾に尋ねると、リュックサックからノートパソコンとケーブル、そしてフォーゼドライバーが出てきた。
「最終調整が済んでない……。専用の設備と回線がないから難しいが……10分でこいつを仕上げる。ジェイク!蘭に10分持ちこたえるように言っておいてくれ!」
「了解ッス!」
ジェイクは携帯を取り出すと、サポーターのハルに連絡を取り始める。
一方の友子は部長として指揮出来ないことに腹が立ったのだろう。ドス黒いオーラを吹き出していた。
「隼、わかってるわね?」
「あぁ。夜道にレディを一人で行かせるのは危険だ。俺も行ってくる」
隼はそう言うと、ハルの後を追いかけた。
「さてと……俺は何をすればいいんだ、友子。いや、部長」
弦太朗がそう問いかけると友子は満足そうな表情を浮かべ、賢吾を指差した。
「弦太朗さんは、ドライバーの仕上がりを待つ。私は会長と一緒に現場の指揮」
「そうね。その方がいいわね!弦太朗。レディをいつまでも待たせないようにね?」
「おう!すぐに行くから待っとけ」
軽口を叩きながらも、美羽と友子は去って行った。
「弦太朗……」
「どうした。祐理姉ちゃん。顔真っ青だぞ!?」
あまりの青さに心配になる弦太朗。
祐理は震えながら話した。
「空が……空が怪物に襲われてるの!」
公園の芝生に一人の女子中学生が転がっていた。薄桃色のブレザーは所々土に汚れ、ボタンはほつれている。
スカートの下の素足は擦り傷が多く、血が滲み出ていた。
少女ー小鳥遊空は目の前にいる怪人に恐怖していた。
いきなり声をかけられたと思いきや、押し倒され、なんとか逃げたものの、怪物は空よりも早く走り、何度も何度も空を転ばせてきた。そして、何度目かわからないうちに、彼女は足を捻ってしまい、芝生の上で倒れてしまった。
「さぁて……久しぶりに女子中学生を犯しますか……」
恐怖で頭が回らない。身体に力が入らない。
目の前の異形の怪物はその手の爪を研ぐように動かすと、勢い良く振り下ろした。
空は思わず目を瞑る。
「セェイッ!」
「ニャッ!?」
頭に響くほどの掛け声。そして、その後に聞こえた不甲斐ない、叫び声。
空が恐る恐る目を開けるとそこにいたのは、月明かりを受け、青いブレザーとチェックのスカートを纏ったポニーテールの少女。夜風にポニーテールが靡いている。
その少女は空の方に向き直ると、にっこり微笑んだ。
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫で…ッ!」
立ち上がろうとしたが、足を捻ったことを思い出し痛んだ。目の前の少女は誰かの名前を呼ぶ。やって来たのは、優しい面立ちだが、少し頼りなさそうな少年。だが、少年はその外見とは裏腹に、テキパキと空の足に湿布を貼り、包帯を巻くと、今度は消毒液を取り出し、手当てをし始めた。
空が困惑していると、少女が優しい口調で言う。
「大丈夫。無理しないで。私があなたを守るから。ハル、お願いね」
「うん。そっちも頑張って」
少女、蘭はポーチから薄い赤色のドライバー、フォーゼドライバー二号機を取り出した。それを腰に当てると、しっかりと固定される。
「ゾディアーツ!この街の平和は私達、宇宙仮面ライダー部が守る!」
「じーっゃま、しやがってー!折角、犯せるとおもったのに!ダスタードォッ!」
そうゾディアーツが叫ぶと、彼の身体から光が飛び出し、数体のダスタードと呼ばれる忍者を作り出す。それらの手には鉤爪が握られている。
蘭は一歩前に出ると、フォーゼドライバーのトランススイッチを弾き、右手をレバーに手をかけ、左手を斜め前に伸ばす。
『3』
ダスタードが鉤爪を砥ぎ、
『2』
ゾディアーツが爪を舌で舐め、
『1』
空が困惑した表情で蘭の後ろ姿を見る。
「変身ッ!」
レバーを倒した瞬間、蘭の身体は山吹色のコズミック・エナジーに包まれ、一瞬でその姿を変える。
薄桃色のスーツに、赤いライン。バイザーアイが山吹色に光ると、赤いラインに光が流れる。
この姿こそ、蘭が仮面ライダーとして街の平和を守る姿。
その名前はー
「仮面ライダー蘭花(ランファ)!この街の平和は私が守る!」
そう名乗ると、襲いかかるダスタードに向かってゆく。
鉤爪が振り下ろされるが、蘭花はその腕を受け止め、投げ飛ばす。投げ飛ばされたダスタードは他のダスタードにぶつかり、倒れてゆく。
蘭花の得意な技は投げ技だ。なので、攻撃パターンは守りが多いが、蘭の実力が高いゆえに、それを気にする必要はない。
「よっ!はっ!」
投げ技だけでなく、蹴り技主体の攻撃を繰り出す。次第にダスタードの数も減っていく。
振り下ろされた鉤爪を回避しつつ、蘭花は□のスイッチソケットに装填された、アロースイッチを起動する。
「ボウガン、オン」
左腕がボウガンモジュールに変わると、回転しながらジャンプし、右腕でトリガーを引くと、360°全方位にコズミックエナジーの変質した、エネルギー矢が放たれ、それらが全てダスタードを貫き、消滅させる。
「こいつー!これでも喰らえ!」
ゾディアーツの目から怪光線が放たれる。それは蘭花に当たり、爆発する。蘭花は膝をつくが、すぐに起き上がると、○のスイッチソケットにある、スイッチを起動させる。
「ランス、オン」
電子音と共にランスモジュールが起動。蘭花の右腕が一本の鎗に変化する。それを、蘭花は勢い良く突き出す。すると、巨大な鎗のエフェクトが現れ、ゾディアーツを突き飛ばす。吹っ飛ぶゾディアーツ。
その隙に蘭花一気に間合いを詰める。どうじに、右腕の複合端末である、ランフォンを操作し、画面に表示されている、電気と表示された、部分をタップする。
「エレキ・セットアップ」
その瞬間、ランスモジュールに電気が走る。蘭花はそれをゾディアーツに目掛けて振るう。
「あびゃびゃびゃ!」
ランスモジュールに流れる電撃の瞬間最大出力は20億ボルト。これだけの電気はゾディアーツといえど、麻痺をさせるのは十分。
ゾディアーツは片膝をつく。
「おのれぇ、邪魔をしよってからに!」
「女の子が襲われているのを、黙って見逃せるわけないじゃない!言い訳は病院のベッドで言いなさい」
そう言うと、蘭花はドライバーから、ランススイッチを抜き取り、ランフォンへ、装填。指紋認証した。
「リミットブレイク!ランス!エレキリミックス!」
膨大な電気が、ランスに迸る。それを蘭花は勢い良く突き下ろす。
「ライダーボルトラーンス!」
必殺技の名前を叫び、繰り出されたそれは確実にゾディアーツを倒せる。誰もがそう思っていた。
ーーーーーーーー刹那ーーーーーーー
蘭花の腹部に途轍もない衝撃が走る。そして、後方に勢い良く吹っ飛んで行った。地面を何度もバウンドし、転がったことで、ようやく止まった。
すぐに起き上がろうとするが、腹部に感じる痛みで立ち上がれない。それどころか、身体が麻痺したように、痺れて重かった。
見上げると、自分の立っていた場所にはもう一体、別の怪人が拳を突き出した状態で立っていた。
「蘭!大丈夫か!」
「蘭!」
「蘭ちゃん!」
美羽と隼、友子が駆けつけ、蘭花を抱き起こす。 殴られたであろう腹部は強化スーツとその下の制服を消し飛ばす程の威力があったのか、白い素肌が丸見えだった。
それを見てすかさず、美雨が自分の着ているカーディガンを巻きつける。
強化スーツを持ってしても、受け止めきれない威力。それがどれほどの衝撃かは想像に難くない。
「ふふふ。噂の仮面ライダーとやらも、他愛ないなぁ」
ターバンを巻いたような頭部と、その頭頂には大口を開く蛇。身体をマントで覆い、手には巨大な笛を持つ、長身の怪物。
挑発するようにそう言うと、その笛を蘭花に向ける。
「それとも……青い流星と、白い宇宙がこの場に居ないと力を発揮できない、甘ちゃんですか?」
そう言われた瞬間、蘭花は勢い良く立ち上がり、走り出した。
全身が鉛のように重い。麻痺していた肉体を無理やり動かしたためか、身体中の筋肉が悲鳴を上げる。その走りは、生まれたての子鹿のようにたどたどしい。それでも、何とかたどり着こうと、鉄の意志で、身体を動かそうとする。
(私は、弦太朗さんや流星さんの代わりに、この街を守るんだ!こんな敵にっ!)
だが、その思いも虚しく、やがて、蘭花はターバンの怪物の元にたどり着くことも出来ずに、その途中で倒れこんでしまった。
ターバンの怪物は飽きれたようにため息をついた。
「やれやれ。一時的にコズミック・エナジーを大量に浴びせることで、肉体を麻痺させてますのに……無茶をするねぇ」
蘭花を見下ろすかのように見つめる。
その目はゴミを見るように冷酷だった。
やがて踵を返したように後ろを向いた。
「さて……このフェリスゾディアーツは本来の姿を取り戻していない。しっかりとした『姿』を確立出来た上で、皆様の前に現れるとしましょう。その時は、そこの紛い物で無く、本物(オリジン)と闘わせなさい」
そう言うと、ターバンの怪物は笛を地面に突くと、フェリスゾディアーツと共に消えてゆく。
それを蘭花が悔しそうに見つめていた。
「クッソオオオオオッ!」
叫び声と共に蘭花の拳が、公園の地面を叩いた。
冷たい夜風が、その叫び声を虚空へと浚っていった……。
「ああ。そうか。わかった。詳しい話は明日しよう。黒木は?そうか……いま、二人をそっちに連れて行く」
NSマグフォンにかかってきた電話を切り、賢吾は弦太朗に指示を出した。
「弦太朗。祐理さんを連れて、病院に行ってくれ」
「わかった。蘭の奴は?」
訪ねると、賢吾は無言で首を振った。「そっか」と言うと、弦太朗は祖父の工場でメンテナンスデッキに乗せていたマッシグラーを取りに向かう。ついでに、一階のキッチンに座っている祐理の元に向かった。
「姉ちゃん、空のとこ行くぞ」
「病院、わかるの?」
「おう。俺のダチが連れてってくれたみたいだ」
それを聞くと祐理は安心したような表情を浮かべる。
「良かった……。何もされてないといいけど……」
その『何も』の意味がわからず、首を傾げていると上から賢吾の声が叫んできた。
「弦太朗!早くしろ!」
「おーう!……うっし、姉ちゃん行くぜ?病院へ!」
カーテンをあけ、棚においてあるヘルメットを渡すと、弦太朗はマッシグラーに跨る。そして、エンジンを入れる。
水素エンジンが起動すると、後ろのブースターから火が噴き出した。
「さて、姉ちゃん。乗ってくれ!」
祐理がマッシグラーに乗り込むとシャッターが開いた。ジェイクが開けたようだった。
「サンキューな、ジェイク!」
「弦太朗さん、ズルイっすよー!人妻とはいえ、こんな美人を乗せられるんスから」
「今度乗せてやるから!早く免許取れ!」
「約束ッスよ!」
「おう!」
そう言うと弦太朗はマッシグラーを走らせた。
病院についた祐理は一目散に教えられていた空の病室に駆け込んだ。
「そらっ!空、大丈夫!」
「祐理さん!」
扉を開けるや否や、祐理と空が互いの名を呼び、抱き合った。
「怪我は?何もされてない!?」
「私は大丈夫。そこのお姉さん達が助けてくれたから」
空が顔を向けると、仮面ライダー部の面々が立っていた。祐理を見ると軽く会釈する。
祐理は空を助けてくれたことを感謝し、礼を述べた。
「弦太朗の友達……空を助けてくれて、ありがとうございます」
「いえ。私達はこの街の平和を守るのが部活動ですから。むしろ、娘さんがこんなに怪我をしてしまって……もう少し見回りを強化します」
そう言った友子の目はやる気に満ち溢れていた。
不謹慎だと思うだろうが、友子がこうなるのも無理はない。
何せ、ゾディアーツ事件も解決し、街の見回りくらいしか無かった為、部長としての手腕や采配が満足に振るえなかったのだが、ゾディアーツが動いたとなれば、ライダー部は再び本格的に動けるからだ。
まぁ、ゴスは基本的に不謹慎なんだけどね、とはジェイク談
「それは頼もしいわね。けど、あんまり無茶しないでね」
「大丈夫です。空ちゃん?を襲った犯人みたいなのとは、何回も闘ったことがありますから」
「それに、もしよかったら対策も考えますよ。うちには優秀なブレインがいますから」
そう言って友子はハルを見る。
ハルは恥ずかしそうに笑って頭を下げた。
実はハル、賢吾達が卒業するまでの半年間で、賢吾にアストロスイッチのことやフォーゼドライバーのことを習っており、さらにそれぞれのスイッチの組み合わせもしっかりと考案しているのだ。
つまり、賢吾無きライダー部でも、しっかりとしたブレインがいるのであった。
「そう。なら、いいんだけど……って、あら?弦太朗は?」
祐理の言葉に誰もが辺りを見渡した。
いつもであれば、大声で入ってくるのであろうが、何故か見当たらない。あの万年、友人作りお節介小僧が珍しく入ってこないことは相当不可思議といえた。
仮面ライダー部の面々も言われて始めて、弦太朗が入ってこないことに気づいた。
これは何かあるぞ、とライダー部の面々が思っていると、美羽が、あっ!、と声を上げる。
誰もが美羽に注目する。
「 oops!そう言えば蘭も居ないわねぇ……」
美羽は怪しく笑った。それは、これは何かあるぞ、と思っていたからだ。
「お邪魔な私達は失礼して、弦太朗を探して来ましょうか。友子」
「ええ。会長。そうしましょう」
「隼、ハル、病室の外で待ってて。私は弦太朗と蘭を探して来るわ」
そう言うと美羽と友子は怪しい笑みを浮かべて、病室を後にした。
残された隼とハルは顔を見合わせてため息をついた。
「やはり、女子は怖いな」
「部長も会長も例外じゃないですね」
二人はそう言いながら、病室の外に出て行った。
弦太朗は病院の外にあるベンチで、コーヒーを飲みながら座っていた。空の病室に行こうとしたが、空が自分のことを嫌いだと言うことがわかっていたからだ。
「はぁ……嫌われてるっていうか、前にはっきりと嫌いって言われたからなぁ」
祐理が唐突に、会せたい人がいる、と吾郎の変わりに、高級なレストランに連れて行かれたのを弦太朗は覚えていた。
髪型はその時には完全にリーゼントだった。確か、あまりに不良の外見だったため、祐理の夫である、信吾に驚かれ、空には大泣きされた挙句にはっきりと、嫌い!、と言われ、やむなくトイレの水道でワックスを洗い流したのを覚えていた。
「はぁ……。やっぱり、この髪型じゃ、すぐに嫌われっちまうよなぁ」
そう言ってリーゼントを弄る弦太朗。すると、誰かの足音が近づいて来た。
振り返るとそこにいたのは、浮かない顔をした蘭だった。
「なんだ。蘭か。どうかしたか?浮かない顔して」
そう尋ねると蘭はいきなり弦太朗に抱きついて来た。いきなり抱きつかれて、弦太朗は慌てた。
「ど、どうした蘭!?」
「弦太朗さん、私、負けちゃいました……」
「……そうか」
弦太朗は蘭がいきなり抱きついて来た理由が何と無くわかった。
「負けて涙が出るのは、精一杯闘った証拠だ。悔しさは次に行くためのバネだ!特訓に付き合ってやるから、一緒に頑張ろうぜ!」
「はい!」
そう言って蘭の頭を撫でる弦太朗。
蘭は嬉しそうに返事をした。同時に、呟くように言った。
「弦太朗さん、闘ってみてわかったんですけど。やっぱり、実際に相手にすると、わからないですね……スイッチの使い方とか、相手の力量とか……」
「んー、俺はそんなの気にしたことねぇんだよな」
「え!?そうなんですか?」
蘭が驚いたように顔を上げる。すると、ちょうど蘭を見ようとしていた弦太朗と目が合ってしまう。蘭は弦太朗の目を見ていると恥ずかしくなってしまい、目を逸らした。
弦太朗は構わず話しかける。
「おう。俺はいつも、ゾディアーツになっちまった奴とダチになることしか考えてなかったからな。一生懸命ぶつかって、そいつが道を踏み外すのを必死で止めようとすることしか考えてなかった。俺はそこまで、器用な奴じゃねぇしな。考えるのは賢吾の仕事だ。あいつの考えた戦術で俺や皆が闘う。そうやって俺たちは闘ってきた」
弦太朗の話を聞いて、蘭はあっけらかんとしてしまった。同時に疑問が浮き出てきてしまい、問いかけた。
「弦太朗さんは誇がないんですか?」
そう訪ねられ、弦太朗は笑って答えた。
「別に俺に誇りがないわけじゃねぇよ。俺の誇りは、ダチだかんな。まぁ、すっげぇ誇り持ってる奴なんか実際はもっとすげぇ人間が持ってるもんだと思うんだ。俺はそんな人間じゃねぇ。だから、ダチの誇りが今の俺の誇りだ」
そう言って誇らしげに笑う弦太朗。その笑顔は蘭の考えを改めさせた。
(皆の誇りが……自分の誇り……なるほど。弦太朗さんらしいや)
友情を重んじるこの男らしい誇りに蘭は妙に納得してしまうのであった。
弦太朗は戸惑っていた。何故なら、蘭がいきなり抱きついて来たからだ。上目遣いで見つめられた為、弦太朗の中で何かが揺れ動いた。
(やべぇ……蘭がなんか色っぽい)
しかし、抱きしめられている手前、ここで動揺してしまえば、変態扱いされてしまい、最悪は初めて会った時のように、投げられてしまう。そう考えて弦太朗は頭の中で必死に素数を数えようとする。
(こういう時は素数を数えなきゃな。……って、素数ってなんだ?)
関数や分数、奇数、偶数、因数は分かるが、素数は全く知らないことに弦太朗は気づいた。
「なぁ、蘭?」
「は、はい!何ですか?」
びっくりしたようすで、返事をする蘭。
弦太朗は構わずに質問する。
「素数ってなんだ?」
「……」
沈黙。
弦太朗は蘭が黙ったことに疑問を覚える。すると、ガシッとその腕が掴まれた。首を傾げる弦太朗。その瞬間、彼の視界がグルリと一回転し、直後に背中から衝撃が走る。その後に来るのは鈍痛。
逆さになった視界で見えたのは、眉間に皺を寄せ、怒った様子の蘭。
「……確かに、弦太朗さんが、ニブチンでヤボテンだってのは……その……わかってましたけど……何もここまでやらなくてもいいじゃないですか…………。しかも、素数って……私の存在は、素数以下ですか……」
「おい、蘭。何を言ってー
「弦太朗さんのぉおお……バカーッ!!」
「ちょっ!おまっ!ぐぇええっ!」
横たわる弦太朗目掛けて、蘭の拳が弦太朗の鳩尾目掛けて、叩き込まれる。その一撃は弦太朗の意識を宇宙の彼方に連れ去るには十分過ぎる威力だった。
「もう知りません!」
そう言うと蘭はスタスタと去って行った。
「弦太朗と蘭はどこかしらね?」
「会長、いました」
友子が指を指した方向には、怒った様子の蘭が歩いていた。
「蘭!弦太朗見なかった?」
「弦太朗さん?知りませんっ!私、帰らせて頂きます!」
そう言うと蘭は足早に去って行った。
友子と美羽は顔を見合わせると首を傾げた。
「なんかあったみたいね」
「でも、時間も時間ですし……引き上げましょう」
「そうね。夜更かししてたら、お肌に悪いし」
モデルとして駆け出し中の美羽にとって、夜更かしなど言語道断。時刻は10時過ぎ。
「友子、良かったら乗せて行くわよ。迎え呼ぶから」
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えます」
「ふふ。遠慮なんかしなくていいわよ。私の妹分みたいなものなんだから」
そう言って、笑い合う二人の姿は本当の姉妹のように見えた。
次回
「おじさん、お久しぶりです」
「弦太朗さん、それはいくらなんでも……マズイですって……」
「おじさんのバカ!不良!」
「それ、ひなのだお!ひーなーのー!」
「空ちゃぁん。こんばんわぁ!」
「見ておいてハル。弦太朗さんの闘い方を」
「宇宙キターッ!」
「仮面ライダーフォーゼ !タイマン張らせてもらうぜ!」
『従・姪・育・児』
〜フォーゼキターッ!〜
【仮面ライダー蘭花(ランファ)】
黒木蘭が変身した仮面ライダー。
フォーゼのスイッチチェンジによる多種多様な汎用性の高い攻撃と、メテオギャラクシーを元に、フォーゼ用に開発していた、ステイツ複合端末ランフォン使うことで、格闘戦や格モジュールに属性付与を可能とした。
蘭の戦闘スタイルは、相手の動きを待ってから、投げ技などで体制を崩してから、攻撃に移行することが多い。
必殺技は、右足にコズミック・エナジーをチャージし、空中に飛び上がってから、一回転して落下の勢いを利用して踵落としを叩き込む「ライダー雷落とし」
【フォーゼドライバー2号機】
メテオとフォーゼシステムを元に、賢吾の元で作られたフォーゼシステム。
新型というよりは、既存の技術を組み合わせ、性能を向上させて組み上げたものである。
M-BUSにあった、メテオドライバーの予備パーツと、賢吾独自に開発した、フォーゼドライバー用の補修パーツで構成されている。
外見は完全にフォーゼドライバーそのもので、違いらしい違いといえば、カラーリングくらいなもの。
自動的にスイッチを転送できるようになっているため、オリジナルのような、入れ替え作業がなくなっている。
【ステイツ複合端末 ランフォン】
スマートフォン型の液晶タッチパネルと、その下の○型セットアップソケットを配置の二パーツ構成。
元々はフォーゼのために、賢吾が開発していたが、それよりも早く、メテオが仲間になったため、開発が中断された。
蘭花に搭載されたのは、ステイツチェンジ無しの通常状態で、電気、炎熱、磁力を扱えるようにするためである。誰もが扱えるようになってはいるが、反面、オリジナルのステイツチェンジよりも出力が低いため、申し訳程度の攻撃力しかないが、それでも、攻撃の多彩差はオリジナルに勝るとも劣らなくなっている。
フォーゼにも装備が可能だが、その時は賢吾曰く『どうなるかわからない』とのこと。
使用方法は、画面に表示されている、『電気』『炎熱』『磁力』のどれかをタップし、本体の赤いリミックスボタンを押すことで、使用可能となっている。
【新型モジュール】
No.44ボウガンモジュール
高速射撃を可能としたモジュール。ランチャーやガトリングは面制圧に特化はしているが、速射性は無い。そこで、速射・貫通性を持った、ボウガンモジュールが作られた。
コズミックエナジーをエネルギー矢に変換して打つことが出来る。
No.41ランスモジュール
打撃と貫通性に特化したモジュール。ランフォンとのコンビネーションを想定して作ってあるため、耐久性はシールドモジュールを越す。
5月29日、編集しましたー