いやー、難産難産。
ちゃんと書けてるといいんですが……
考察等は後書きに書くことがありますので、読んでいただけると幸いです。
あっという間に一週間の月日は流れた。弦太朗はこの日、約束通り、祐理達が暮らす、家にやってきた。その隣にいるのは……。
「………」
「………」
「………」
「ど、どうしたんだ?三人とも」
弦太朗の隣にいるのは蘭。そして、その前には赤い車が止まっており、その車には、蘭を送り届けた、隼と賢吾が乗っていた。
三人は弦太朗を見て、驚いていた。同時に、目の前にいる人物が本当に弦太朗なのか疑わしくなった。だが、話し方や、格好が完全に弦太朗なのだ。
恐る恐る、賢吾が挨拶をする。
「げ、弦太朗おはよう。そのー……髪型はどうしたんだ?いつになくマトモな髪型なんだが……」
「あー……これか。いやな、今日の朝、姉ちゃんから連絡あってよ。『リーゼントにしたら、空とひなが怖がるから、マトモな髪型して来い』って、言われて……仕方なく……な」
そう言う弦太朗は哀愁漂うサラリーマンのような背中をしていた。
それを見て、何も言えなくなる三人。すると、弦太朗は蘭がいることに気づいたのか、申し訳なさそうに言った。
「本当に来なくても良かったんだぞ。蘭。お前も他に用事があったろうによ」
実はあの空が襲われた後、仮面ライダー部では弦太朗と共に、行く女子を決めていた。どうせなら、ということで、女子全員参加+女の子の扱いがわかる隼で、双六で先にゴールした順に、日替わりで弦太朗と共に、従姪の家に行くことになったのだ。
結果は一番は美羽、二番は蘭。三番は隼。四番は友子となった。
だが、ここで思わぬ問題が発生。一番最初の美羽が、その日に急なモデルの仕事が入ったために、出れなくなってしまい、急遽、休日のため、ライダー部の活動で見回りをしていた蘭が弦太朗と共に行くことになったのだ。
閑話休題
「まぁそう言うな。蘭はお前が心配で来たんだからな」
隼がそう言うと、蘭が頷いた。
「そうですよ。弦太朗さん。聞けば二人ほど年頃の女の子だそうじゃないですか。そんなデリカシーを何十にも巻いて、なおかつ、低反発材をつけて接していかなきゃいけない年頃に、弦太朗さんみたいなド・ストレート且つ、心の中思いっきりさらけ出せるような人と触れ合ったら、速攻嫌われますよ?……まぁ、弦太朗さんといられるのは嬉しいですけど」
弦太朗の心の中に、『嫌われる』の文字が重くのしかかる。
直後に膝を抱えて「俺は触れちゃいけないのか」とナイーブになる弦太朗。
見かねた賢吾が、蘭に話しかける。
「弦太朗はああ見えて嫌われるのを嫌がるんだ。……というか、黒木、言い過ぎだぞ。いくら弦太朗でも……ってまぁ……事実ではあるんだがな。もし、弦太朗が失礼な発言したら、遠慮なく投げてくれ」
「……はい。解りました」
最後の方を小声で話すと、蘭はクスリと笑った。
「賢吾さん、案外と友達思いですね」
「そうかな。それも、そこのバカのおかげさ。皆、あいつのおかげで変わったよ」
そう言って、弦太朗を見る賢吾の目は温かみがあった。
「さて……そろそろ時間ですね。それじゃ、そろそろ行きますね」
「ああ。弦太朗を任せたぞ。それじゃ!」
そう言って走り去ってゆく、隼の赤いスポーツカー。それを見送り、振り向くと、復活した弦太朗が立っていた。
「うっし!嫌われたって構わねぇ!俺はあいつらとダチになる!」
「……ま、まぁ。嫌われないように頑張りましょう」
そう言うと二人は、小鳥遊家のインターホンを押した。
暫くして、可愛らしい少女の声がスピーカーから聞こえてきた。
「はーい!どちら様ですか?」
「俺は如月弦太朗!お前らのお袋さんの従兄弟だ!」
「あー、弦太朗さんですね!鍵開けてありますんで、どうぞー!」
そう言われ、玄関の扉を開けると、そこにいたのは、金髪のツインテールのハーフの女の子。小鳥遊家三姉妹次女、美愛だ。
弦太朗は笑みを浮かべると、挨拶をした。
「よっ!久しぶりだな。俺は如月弦太朗。よろしくな!」
「!!覚えててくれてて嬉しいです!それで、隣にいる方は叔父さんの彼女さんですか?」
蘭を手で指す美愛。
蘭は首をブンブン振ると、咳払いを、何回かしてから答えた。
「ち、違うよ!オホンオホンッ!私は黒木蘭。弦太朗さんの後輩で、貴女のお母さんに頼まれてきたの。だから、別に、恋人とかじゃないの」
そう言うと美愛は、なぁーんだ、とがっかりしたような、面白がるような口調で言った。
「そうだぞ美愛。俺なんかが蘭の彼氏さんなんかするには勿体ねぇ!蘭にはもっと相応しい奴がいるからな」
そう言って、人懐こい笑みを浮かべる弦太朗。だが、蘭は容赦なく弦太朗の腕を掴むと、足払いと共に、横転させた。ものの見事にひっくりかえる弦太朗。
蘭は踵を返すと、美愛に話しかけた。
「さ、この人は放っておいて、美愛ちゃん、案内してもらっていいかな?」
「はい。蘭さんみたいに強い人が来てくれて助かりました!あ!おじさん、配慮にかけますよ?」
そう言い残し、美愛と蘭はリビングへと向かっていく。一人、残された弦太朗はどうにか立ち上がると、呟くように言った。
「最近、投げられてばっかじゃね?」
這々の体でどうにかリビングについた弦太朗。痛む腰を擦りながら、リビングのソファーに腰をかける。
冷房が効いているのか、垂れていた汗がスーッと冷たくなってゆく。
リビングダイニングの作りは大型の液晶テレビを囲むようにソファーが置かれていた。と言っても、弦太朗がここに来たのは二年前。その時は仮面ライダー部として活動していた記憶のほうが濃いため、あまり覚えていない。そのため、家具の配置が前と変わっているなんて、覚えていないのだ。
「ん?なんだこれ」
そう呟いて手にしたのは、タブレット端末。無造作に置かれていたそれに触れると、画面が休止状態から回復する。画面に映っているのは、英語のキーが配置された、アプリ。弦太朗は試しに『A』をタップする。
「ACCEL」
「へぇ。今の子はこんな難しいのもわかるのか」
と、ツッコミもせずにタップしていく弦太朗。伊達に器が大きい男とは流星談。……いや、単なる馬鹿だ、とは賢吾談。
「BIRD」「CYCLONE」「DUMMY」と押す。
「賢吾にこれつくってもらうか。そうすりゃ俺も英語出来るようになるかも」
そう言いながら押していると、突然背後から声がした。
「おいたん、誰?」
振り返るとそこには、純粋な目をした幼子が一人いた。幼子は小鳥遊家三姉妹の三女、ひなだ。
「おいたん、それ、ひーなーのー!」
そう言って、とてとて、という表現が合うかのように、弦太朗に近寄ってくるひな。
弦太朗は事前にはなに名前を聞かれていた質問も踏まえて答えた。
「俺は如月弦太朗。お前のおじさん的な存在だ。んでー、悪かったな。お前の遊んでるもん、取っちまって。ほれ」
そう言って、タブレットを渡す弦太朗。ひなは嬉しそうにそれを受け取り、画面を連打する。
「JO-JO-JOKER!」
それをぼんやり眺めていると、段々と眠くなって来た。
(そういや……昨日、寝ないでレポート纏めてたんだったな…………眠い……)
弦太朗はうとうとしていくと、やがて、意識を失った。
仮面ライダー部の仮部室がある、天ノ川学園高校に、賢吾と隼はやって来た。ライダー部を卒業した身ではあるが、ゾディアーツに関しては賢吾の知識が無ければ、どうにもならないし、資材運搬用ロボであるパワーダイザーの運用も、主に隼がやっていたためだ。
卒業まで仮部室となった部屋を開くと、すでに友子とハル、ジェイクが机に座って待っていた。
賢吾は『星座大辞典』と書かれた本を手にしながらやって来た。
「空ちゃんを襲った相手の星座がわかったぞ」
そう言って、賢吾は辞典のページを開いて、それをみんなに見せた。そこには『ねこ座』と書かれていた。
「ねこ座だ。今は認定されておらず、昔に消された星座だ」
「そんな星座がなんでまた……」
ジェイクが疑問を口にすると、賢吾はクリアケースから資料を取り出した。
「これは江本教授がホロスコープやゾディアーツについて纏めた資料だ。その中には、ねこ座……フェリスゾディアーツについてのことも書かれている」
そう言って賢吾は部員に資料を見せながら、声を出して読んだ。
『ゾディアーツには一般に認知されている星座以外にも別の星座が存在する。それらは通常よりも強力かつ、凶悪な心身汚染を引き起こす。その能力は通常の状態で超新星前のホロスコープスに並ぶ程の力を誇る。
他のホロスコープスメンバーや我望の話によれば、それらは複数おり、影で暗躍を続けているらしい。そのもの達を定義上、オブリビオン・アスタリズムス(忘却星座)と名付けられている。
忘却星座が生まれるためにはいくつか条件がある。
一つ目は、スイッチャーが特定の物事や人に対して、ある種の執着心があることだけだ。
一見すると、条件が高い気がする。しかし実際、人間というものは執着してしまいやすい。その心の闇によって、忘却星座が生み出されるのだ。例えそれが、部活や勉強に打ち込む気持ちだったとしても。
そのため、忘却星座は通常のゾディアーツよりも強力なパワーと破壊力を持っているのだ。
二つ目は、そのスイッチがへびつかい座のホロスコープスによって渡されないといけない点だ。
へびつかい座のホロスコープスは突然変異的な存在であるため、元来誰が変身しているのかすら、我望でさえもわかっていないという。唯一わかっていることといえば、彼の渡すスイッチが、一般的なものに比べて早く、ラスト・ワンになりやすいことだけだ。
他のことについては、現在調査中である』。
「……以上が、教授が残してくれた資料に書いてあったことだ」
話を聞いた部員達は押し黙る。それほどまでにこの話の内容が濃かったのだろう。理解するのに時間がかかっていた。
(ゾディアーツやフォーゼの力を使うのに必要な、ザ・ホールも再び活性化を始めている。何かの片手間で活動を続けられなくなっている状況じゃなくなってきたな……)
賢吾はそう言いながら、リュックサックを一瞥する。仲には完璧とは言えないまでも、調整が完了したフォーゼドライバーがあった。
(コズミックエナジーの研究もしたかったが、理事長の残した不始末を消すのも後進の務め……なら)
賢吾は、友子の名前を呼ぶと頭を下げた。
「野座間……いや。仮面ライダー部部長、すまないが、OBとしてでなく、現役の仮面ライダー部の部員に戻らせて貰いたい!」
友子は少し驚いたような表情を浮かべた。
「賢吾さんは、コズミックエナジーの研究がありますよね?そっちを優先にさせても……」
「今、目の前に起きてることはコズミックエナジーが関係してる。それは、父さんや理事長が研究してきたことだ。そして、この事件はその研究の不始末によって生まれたようなものだ。なら、自分の研究をする前に、この不始末を片付けることが一番大事だ」
そう言った賢吾の目はキラキラと輝いていた。同時に、友子には彼の背中に燃え盛る炎のようなオーラが噴き出るのを感見た。
(そっか……仮面ライダー部があるのも、こうして皆がいるのも、弦太朗さんだけのおかげじゃないんだ……)
仮面ライダー部のこのメンバーが集まったのも、今こうして皆が生きているのも、弦太朗がいたからだ。だが、それが本来のきっかけではない。
その弦太朗が仮面ライダーになったのも、仮面ライダーとして闘えたのも、元を正せば、歌星緑郎という賢吾の父と我望光明の研究によって開発された、フォーゼドライバーとアストロスイッチ、ゾディアーツスイッチなのだ。その二人の意思を引き継いで、研究をしようとしている賢吾に、今起こっている事件を自分の研究の片手間で解決しようと思うほど、彼は冷たい人間では無かった。
無視出来ないわけではない。だが、無視をしてはいけないと、もし、彼の父の親友であった江本がいたらそう言うに違いない。そう、彼は思っていた。
「賢吾さん。わかりました。卒業する前にみたいに、全力で仮面ライダー部をサポートしてください。はい」
そう言って片手を差し出す友子。賢吾は恥ずかしそうに笑って皮肉を口にする。
「新部長も友情バカか」
「私はそこまで、一直線じゃありませんよ」
そう言って二人は、弦太朗直伝の『友情のシルシ』を行った。
そこへ、ゾディアーツの襲来を告げるブザーが鳴り響いた……。
すーっ……するり、かちゃっ、キュッ、ジーっ……。
衣の擦れる音が、脱衣所に聞こえてきた。肩口まで伸ばした髪が、水を吸って重たげに揺れる。少女の顔は中学生らしく、あどけなさと大人びた面立ちをしていた。その表情はどこか心配そうであり、不安げにも見えた。
下ろしたての上下セットの下着は、まだ年齢に不相応な黒い、レースの刺繍の施された下着だ。
「お兄ちゃん……」
心配げに口を開くのは、小鳥遊家の長女、小鳥遊空だ。茶色に近い髪を櫛とドライヤーを使いながら乾かしてゆく。
ドライヤーをかたづけると、彼女はお腹を触った。ちゃんと括れているように見えるが、彼女は不服なのだろう。ため息をついた。
「もう来てるんだろうな……」
お小遣いを貯めて買った下着を着た自分を鏡で見つめると、彼女は、よしっ!と何かしらの決意をこめてから服を着た。服は年相応の服装をしていた。
着替を終えて、リビングダイニングに向かうと、そこには見慣れない人物がソファで寝ていた。そのソファの横では、妹のひなが、紫色と金色の大剣と青と金色の棒を振り回して遊んでいた。
空は恐る恐る、ソファを覗き込んだ。そこには、よーく見ると見覚えのあるイケメンが安らかに眠っていた。
「髪を下ろしたお兄ちゃんって、結構かっこいいんだ……」
感嘆の呟きを漏らす空。何故なら、小さい頃に出会った彼は、髪型が不良そのものであったために、そう勘違いしてしまう程だったからだ。だが、月日を経て出会った彼は、髪型が普通のものに変わっており、その姿は完全にイケメンと呼ばれる部類になっていた。
「びっくりするよね。普段はあんな髪型なんだもん。たまにこういう髪型になると余計に」
声をかけられ、そちらを向くと、そこに立っていたのは、編み込まれた髪を後ろで束ねた、長髪の少女。見るからに美少女だ。空はその少女が先日自分を怪物から救ってくれた美女だと、いきなり声をかけられたことに驚いたことと重なり、ようやく気付いた。
「あのー……!!?せ、先日はありがとうございます!」
「ん?あー……怪我大丈夫?」
そう訊ねられ、空は姿勢を正しながらブンブンと頷いた。空のイメージでは彼女は、どんな男も一捻りであり、不良や悪行を許さない、正義を愛する女子高生というイメージがあったからだ。
すると、それに気付いたのか、少女はプッと吹き出しながら、話す。
「私なそんな強い人じゃないよ。あ、私は黒木蘭。天ノ川学園高校二年生。よろしくね」
「あ……た、小鳥遊空です!よろしくお願いします」
そう言って、恥ずかしそうに挨拶する空。
蘭がそれを見て笑っていると、ドアの開く音がした。そこにはコンビニで弁当を買ってきた美羽が入ってきた。
「あ、お姉ちゃん帰ってきたんだ!おじさん、めっちゃくちゃイケメンでしょー」
「そ、そうでもないわよ。不良みたいで怖かったから、ちょうどいいわよ」
と、先程と打って変わって、ツンケンした口調で話す空。蘭は「確かに……」と小声で空の言うことに頷く。
美愛は軽く、はいはい、と慣れたようにあしらいながら、弁当を温め始めた。
寝ている弦太朗を背に、女子だけで昼食を食べ始めた。
美愛の気遣い凄まじく、蘭と空を一瞬で仲良くさせてしまった。
「うちの高校は校則が自由なんだよ。だから、色んな制服が許されるんだ。学ランとか、丈短くしたり、ズボンにしたりとかさ」
「それいいーですね!蘭さんは、そういうのやってますか?」
「ううん。やってないよ。というか、制服の色が青って珍しいでしょ?だから、選んだようなもんなんだよね」
「制服が青……かぁ。……あれ?お兄……弦太朗さんもその制服着てたんですか?」
空がそわそわしながら、訊ねる。弦太朗がどんな服装をしていたか気になったからだ。
「弦太朗さん?んーっとね……あったあった!」
そう言って見せてきたのは、弦太朗の写真。弦太朗は短ランと呼ばれる短い服にぼんたんを履いていた。
それを見た空とマ美愛はげんなりした表情を浮かべた。
「やっぱり、不良だったんだ……」
「時代錯誤すぎや……しません?」
そう呟く二人を見て、蘭はクスリと笑った。
「そうだね……。でも、見てくれは不良でも弦太朗さんの行動は全然不良じゃないんだけどね」
そう言う蘭の表情は優しげだった。
「非行に走ろうとする生徒を必死で止めたりとか、先生が間違ったことやろうとしてたら、それを必死で食い止めたりとか……弦太朗さんは学校の平和を守るために必死になってた」
仮面ライダー部のことは口外出来ないため、あえてそう言う言い方になってしまうことに、蘭は不甲斐なさを感じたが、怪人の名前を出さなければ、概ねこういう内容にならざるえなかった。
空は蘭の話を聞いて、弦太朗が生徒会か何かに所属しているものだと考えた。それは美愛も同じなのだろう。感心した態度で聞いていた。
そこへ、テレビから音楽が聞こえて来た。その方向を見ると、弦太朗とひながゲームで対戦していた。
「ライダーキーック!」
「りゃいだーぱーんち!」
格闘ゲーム『仮面ライダー・戦獄バトルロワイヤル』をやる二人。お互いに互角の勝負が続いていた。
「ひな、やるじゃねーか!だったら次は!電光ライダーキック!」
「おまえもな!ごろんごろーん!」
弦太朗の使う仮面ライダー1号の必殺技を、ヒナのショッカーライダーが、回転回避で避ける。何気に難易度の高い回避方法に弦太朗が目を丸くしていると、そこにひなのショッカーライダーのライダーキックが決まり、1号ライダーのライフゲージが残り1になってしまう。
「こうなりゃ意地とやけっぱちだ!」
そう言って弦太朗はシンプルかつ、ベストなライダーキックを放つ。ひなはそれを投げ技で掴むと、勢い良く投げ飛ばした。決め技エフェクトと呼ばれるものが入り、1号ライダーは勢い良く壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。
「ひなのかちだもんねー!」
「いやー、強いなひなは!ほれ」
そう言って手を差し出す弦太朗。ひなはその手を握る。
弦太朗は、握手、腕相撲握り、握りこぶしを三回打ち付ける動作を行う。
ひなが首を傾げていると、弦太朗はその行為について説明した。
「こいつは友達のシルシだ。友達になった奴と必ず行う行為だ」
ひなはそれを聞いて顔を輝かせた。
それを見ていた蘭が慌てた様子で訊ねる。
「弦太朗さん!い、いつ起きたんですか!?」
「ん?ほんの数分前だ。ひなにゲームやろうって、せかされたからよ」
そういって、わっしわっしといった風にひなの頭を撫でる弦太朗。なんとなくだが、その姿が似合っていた。
「んで……俺は何をすればいいんだ?」
何か用事があるとおもっているのか、弦太朗が訊ねると、美愛がきっぱりと答えた。
「何もありませんよ。おじさんはゆっくーり、寛いでて下さい!」
そう言われて弦太朗は暫く目をしばたかせる。その後に、そうか、と言うと、ひなとゲームをしに居間に戻って行った。
「お兄ちゃん……」
そんな弦太朗を空が羨ましそうな目で見つめていた……。
「ん?ひなの奴、寝ちゃったか……しゃーねぇ」
そう言うと弦太朗は、ひなを起こさないように、そう抱きかかえると、ゆっくりとソファの上に寝かせた。
「さてと……空も美愛も買い物に行ってるし、蘭もその付き添い……か。一気にやることなくなったな」
ガラーンとした広めのリビング。それを見渡すと弦太朗は何かやることが無いか探す。だが、流石は祐理と言ったところか。隅々まで綺麗に掃除されている。
一宿一飯の恩義を返したい弦太朗にとっては由々しき事態だった。
「んー……やることねぇな。どうするか」
そう考えていると、携帯に着信が入った。弦太朗はそれに応じる。
「はい、もしもし」
「久しぶりだな!弦太朗!」
「その声、流星か!」
電話をかけてきたのはかつて、仮面ライダー部で共に戦い、最後まで背中を預けて来た、戦友。現在はインターポールの一人として、世界の第一線で戦い続けている、男。朔田流星だった。
「珍しいな。電話かけて来るなんて」
「何。休暇のついでに、こっちで起こりそうなきな臭い事件の解決に向かわされるのさ」
そう言った流星は、上司の無茶振りにうんざりするような、反面、嬉しさを隠しきれないような、微妙や口調でそう言った。
「上司……あー、インガか。お前も苦労してんだな。……ってか、よくこっちでゾディアーツの事件が起きたってわかったな」
「おいおい。宇宙(そら)にあるM-BUS」の存在を忘れたか?あれはゾディアーツの反応があれば、メテオスイッチに連絡が入るようになってるんだ」
「そうだっけか?技術関係に関しては、全くなんだ。悪ぃな」
「相変わらずだな……。それより、黒木くんはしっかり仮面ライダーやれてるか?」
流星の問いに弦太朗は自信を持って頷いた。
「おう。しっかりやってくれてるぜ!こないだは負けちまったけどな」
「そうか……わかった。俺もあと一週間すれば、そっちに向かえる。待っててくれ」
「おう!頑張れよ!流星!」
「ああ!そっちもな」
お互いにそう言うと、どちらとも無く電話を切った。
「あら、お友達から?」
そう言われて振り向くと、そこにはいつの間にか祐理とその夫である、信吾が立っていた。
「ああ。ちょっと海外に行ってる奴でよ。野暮用で日本で仕事することになって、こっちくるんだとよ」
そう言って弦太朗は祐理の後ろに居る信吾見た。信吾は優しげな笑みを浮かべて挨拶をしてくる。
「久しぶりだね。弦太朗くん!いやぁ、大分芳しくなったようだね」
「うっす!信吾さんも元気そうで……祐理姉ちゃんに尻に敷かれてないといいんっすけど」
「あー……ご明察だ。いつも尻に敷かれてるよ。夜の営みの時も……彼女がうーーー
ザクッ
二人の間に一本の包丁が刺さっていた。恐る恐る見ると、すでに包丁を無数に持った、祐理がギラついた目で睨んでくる。
「信吾さん?これ以上言うと……包丁が飛ぶわよ。弦太朗。あんたは……ご飯抜きよ?」
「「はいっ!すいませんでした!!」
そう言って瞬時に土下座をする二人。祐理は、よろしい、と言うと車のキーを持って外に出て行こうとする。信吾がそれを訊ねる。祐理が笑って答えた。
「ど、どこいくんだい?」
「ああ。美愛達ったら、買いすぎたみたいでね……。荷物が多くてもてないから、迎えに行って来るわ。弦太朗。信吾さんと待っててね!」
そう言うと祐理は再び去って行った。残された二人は顔を見合わせると、ゲームをやろうということに、なり、ゲームを始めることになった。
「はー、買いすぎちゃったねー!」
「本当に。これは持てないね」
「お母さん呼んだから、大丈夫よ」
美愛、蘭、空は近所のスーパーで夕飯の買い物をした。料理を作るのは祐理がおこなっているが、買い物は大抵自分たちで行っている。今日は偶々、持ちきれない量の食材を買ってしまったため、祐理に迎えをお願いしたのだった。
「祐理さんは何を作ってくれるかなー」
「祐理さんのご飯美味しいんですよ」
「へー。それは楽しみだなー」
そう話をしながら、道を歩いていると、黒ずくめの男が現れた。
「ふむ……小鳥遊空。小鳥遊美愛。二人とも珍しい星の運命を持つか……覚醒と絶望させれば、新たな力が生まれる……」
そう呟きながら取り出したのは、青色のゾディアーツスイッチ。
それを見た蘭は美愛と空を自分の後ろへ隠す。
「あなたは何者!」
「私は……忘却星座の一人。そこのお嬢さん方は珍しい星の運命を持っていてね。それを覚醒させる手伝いをしに来たのだよ……そして、まだ熟れていない、青い果実を食す為にね…」
ローブのフードで顔は見えないが、夕日に照らされた口元は、舌で唇を舐めまわしていた。
その言動は空と美愛を怖がらせ、同時に不快にさせるには十分だった。
蘭は怒りに顔を歪めながら、フォーゼドライバーを装着し、勢い良く赤い四つのスイッチを弾き、変身シークエンスに移る。
「変身!」
エンターレバーを勢い良く押し倒すと、その瞬間、光が降り注ぎ、蘭は仮面ライダー蘭花に変化する。
「はぁああっ!」
「盟主の言う通り……」
男は笑いながら、スイッチを押した。
《ラスト・ワン》
低い男の声でスイッチが渦巻く螺旋のような形へ変化する。その中心を押すと、男は肉体ごとその姿を変えた。
それを見た蘭花は驚きの声をあげる。
「なっ!なんで!?」
驚くのも無理はない。今までライダー部で活動して来た先輩から聞いた話では、ラスト・ワンでゾディアーツへ変わると、肉体は繭に包まれ、精神だけがゾディアーツとして実体化するらしかった。
だが、今目の前で変わった男は、ラスト・ワンなのにも関わらず、その肉体ごとゾディアーツへと変わってしまったようだ。恐らく、普通のゾディアーツと何かが違うのだろう。
フェリスゾディアーツは前回よりも大きくなった五本の爪を研ぎ、ながら、蘭花に襲いかかる。蘭花はそれを避けると、得意の投げ技で投げ飛ばし、空や美愛達からフェリスゾディアーツを遠ざけようとする。だが、それも無意味だった。フェリスゾディアーツは怪力で投げ飛ばそうとした蘭花の腕を逆にねじ伏せた。
「-ッ!」
痛みを感じた瞬間、蘭花の身体は軽々と持ち上げられ、次の瞬間、勢い良く叩きつけられた。
「ガハッ!」
女の子に似つかわしくない、生々しい声と共に、衝撃によって肺の中にある空気が全て吐き出される。
「くっ!」
《カノン・オン》
左足の側面に鋼色の砲身、前面にグリップシールドがついたモジュール、キャノンモジュールが装備される。蘭花は左足を勢い良く蹴り上げると、その砲身をフェリスゾディアーツへ叩きつける。ゴウンッ!と、鈍い鉄がぶつかる音がした後で、蘭花は念じる。その瞬間、光が迸り、砲身からコズミックエナジーを変換した、極太のビーム砲が放たれる。
「ぐぅっ!」
ビームをまともに受けて、吹っ飛んで行くフェリスゾディアーツ。蘭花はヨロヨロと起き上がると、空に声をかける。
「今のうちに逃げて!」
「でも!」
「いいから!」
蘭花は空たちを逃がそうとした。だが、すでに遅かった。吹っ飛ばされると同時に、フェリスはダスタードを呼び出していたのだ。その数おおよそ30体。容易に倒せる数ではない。
(1人ならともかく、2人を抱えては流石に……)
下手にモジュールを扱って戦えば、スピードが遅くなる。かといって、素手でこの数を倒すのは難しい。しかも、先ほどの闘いで蘭もダメージを受けており、万全の状態ではない。どうするべきか、攻めあぐねていると、空と美愛の悲鳴が聞こえて来た。どうやら2人を後ろから襲おうとしたようだ。
だが、その瞬間、襲いかかろうとしたダスタードが吹っ飛んだ。驚いて3人が振り返ると、そこには巨大な機械の巨人が立っていた。そして、その脇から光が放たれ、複数のダスタードが吹っ飛んだ。
「まったく、レディ3人相手に寄ってたかって情けない」
機械の巨人は若干エコーのかかった声でそう呟きながら、蘭花達の周りにいるダスタードを蹴散らしてゆく。その巨体から繰り出される一撃は
強力で、数多の敵を一度に薙ぎ払っていた。
「パワー……ダイザー……?」
蘭花はこの巨人の名を呟いた。パワーダイザーはフォーゼをサポートするために作られた、ワークローダーだ。そして、これに乗れる人物はライダー部に2人いるが、これほどまでにパワフルかつ、ダイナミックな動きをする人は1人しかいない。
「大文字先輩っ!?」
「蘭、安心しろ。雑魚は引き受ける!」
そう言いながら、ダスタードを掴み上げ、投げるパワーダイザー。そのコックピットの中で、隼はいつものポーズを取る。
だが、大ぶりな攻撃には必ず隙が出来る。それをついて、逃れたダスタードが蘭花達に襲いかかる。だが、それらは放たれた光弾によって吹っ飛んでいった。
「恥を知った方がいいっスよ」
「蘭、あなたも私達を呼んでくれれば良かったのに」
そう言いながら現れたのは、薄桃色のワンピースを纏った美羽と、天高の制服を着た、友子、JK、ハル、白衣姿の賢吾だった。
「忘却星座のフェリスゾディアーツ。お前達の目的はなんだ?」
賢吾は手にしたショックガンを肩に担ぎながらフェリスゾディアーツに尋ねた。
「ふふ。私達の同志を増やすため。そして何より、その2人の大事なものを奪うためだ」
そう言って爪を研ぐフェリスゾディアーツ。友子と美羽は問答無用で、ショックガンを撃ち込んだ。
「最低ね」
「そういうのは好きな人とロマンチックなところでやるからいいの」
冷めた目でフェリスを見つめ、銃を構える2人。その迫力に賢吾は完全に呑まれてしまい、何も聞けなくなる。
フェリスは痺れを切らしたかのように駆け出すと、美羽と友子に襲いかかろうとする。
「ええーい!煩い!貴様らも襲ってやるわ!」
物凄い速度で駆け寄り2人に爪を振り下ろそうとするフェリスゾディアーツ。だが、その横から誰かが踊り出た。
「ウォオオオオラァアアッ!」
だが、次の瞬間勢い良く蹴り飛ばされ、地面を転がってゆく。その姿を見た瞬間、美羽と友子は笑って軽口を呟いた。
「弦太朗さん。遅いですよ」
「クイーンを危険な目に合わせるなんて、騎士失格よ?」
「よく言うぜ。自分から煽ってたじゃねーか。それに、騎士じゃねーし」
弦太朗はそう呟くと、リーゼントヘアを整える仕草をした。
祐理が出て行って数十分。ゲームをしている弦太朗と慎吾。マリオパーティはそこまでややこしい操作が無いため、機械音痴の弦太朗でも簡単に操作が出来た。
「なぁ、弦太朗くん」
「なんすか?慎吾さん」
徐に返事を返すと、慎吾は手を止めて、弦太朗の方に向いた。
「君がリーゼントをしている理由、聞かせてくれないか?」
そう訊ねられ、弦太朗は何の疑問も持たずに答えた。
「前に会った時は俺『リーゼントは男の勲章』って言いましたよね。でも、最近になって、もうひとつ理由が出来た……つーか、なんか気づいたんすよ」
弦太朗がリーゼントにしたのは両親が死んだ直後だ。その後にすぐに吾郎に引き取られた。
その際、父の残した漫画を見て、リーゼントに憧れを抱き、髪型をリーゼントにするようになったのだ。
だが、それとは別にもう1つ理由があった。
「リーゼントって、小さい頃に見たときふと思ったんすよ。髪の先っちょが前を向いてて、なんかそれが前を向いて歩け、って言ってるような気がして……それでリーゼントにしたんだと思うんすよ」
それを聞いて慎吾は何と無く理解できた。両親を一度に失い、何かにすがっていかなければ、生きていけなかったであろう幼少期。確かに、リーゼントを見れば、そう思えてしまうかもしれなかったからだ。それは、恐らく、祖父や天国の父母を心配させないための、彼なりの願掛けだったのだろう。
「そんなことを知らずに、不良と決めつけた私を、許して欲しい」
「気にしないで下さい。そう言われんのは慣れてますし、そう言うこともわかってますから」
そう言って弦太朗は手を差し出した。慎吾はその手を握り返す。弦太朗はその手を腕相撲のように握り、真ん中、下、上の順に拳を打ち付けた。
「これで慎吾さんともダチッス!」
「僕と友達になってくれるのかい?」
「ええ!慎吾さんは理解しようとしてくれたんすから、それだけで友達になれますよ」
弦太朗の友達の定義のわからなさに吹きだきそうになりながらも、笑った。
「じゃあ、髪を戻してきなさい」
「え?でも……」
「祐理には話しておくよ。さぁ」
促された弦太朗は髪型をリーゼントに戻すため、洗面所へ向かった。
暫らくして、危急を告げる電話が鳴った。弦太朗はそれを受けて、一目散に家を飛び出して行った……。
「蘭!空、美羽!無事か?」
弦太朗が声をかけると3人は無言で頷く。それを見て弦太朗は安心したように笑うと、ライダー部の面々と合流する。
「悪いな。遅くなってよ。慎吾さんと、色々話しててな」
「別にいいさ。間に合ったんだからな。それに、お前がその髪型にしたってことは、空ちゃんのお父さんがそれを認めたってことなんだろう?」
そう訊ねられ、弦太朗は、おう!と頷く。その目は輝いており、認められた嬉しさが見て取れた。
「貴様ら!何者だ!」
起き上がりながら、フェリスゾディアーツが訊ねてくる。ライダー部の面々は交互にそれに応えてゆく。
「俺たちは」
「学園と」
「街と」
「宇宙と」
「地球の平和を守る」
「宇宙・仮面ライダー部だ!」
皆がそう答えた後に、友子はショックガンを構えて冷静に話す。
「私たちは貴方のように、ゾディアーツになった人を止めるのが使命なんです。よければスイッチを切って下さい」
「バーカ!こんな素晴らしい力を誰が手放すか!ダスタード!」
ダスタードが補充され、フェリスを守るように立つ。それを見て、美羽がすかさず指示を出す。
「弦太朗、賢吾君から贈り物貰って!」
「贈り物?」
「弦太朗!」
そう叫ぶやくやいなや、賢吾は弦太朗に半透明のボディにレバー、色取り取りのスイッチが収まった、ドライバーを投げ渡す。
「改修は完了した。以前よりも馴染むはずだ」
「おう!サンキューな。賢吾」
ドライバー……フォーゼドライバーを受け取ると、弦太朗はゆっくりと一歩前に出る。
「蘭。後は俺がやる。ゆっくり休んどけ」
「そんなっ!まだ私も戦えまッ!」
「無理して身体ダメにしちゃ、元も子もねぇ。それに、お前は女の子だ。その身体はお前だけのもんじゃねぇ。だから、休んでどけ」
弦太朗に言われ、蘭は渋々といったふうに、変身を解除する。同時にその体が、支えを失ったかのように、倒れてゆく。その体をジェイクが抱きとめるように支えた。
「やーっぱり、立ってるのがやっとだった。無茶しちゃダメだよ?」
「すいません……気が抜けちゃって……」
「気にしない。気にしない。俺にはこういうことしか出来ないから。それよりも」
ジェイクは視線を弦太朗に向ける。ドライバーを手に立つ後ろ姿は、言葉では言い表せない、安心感があった。彼は蘭に呟くように言った。
「学びなよ。蘭ちゃん。弦太朗さんから。仮面ライダーがどういう存在かを」
そう語ったジェイクはいつもと違い、真面目に見えた。
フォーゼドライバーを腰につけた弦太朗は腰にベルトが巻きつく感覚を覚えながら、空と美愛に背中越しに話しかける。
「空、美愛。怖いか?」
2人は震える声で、大丈夫です、と答える。弦太朗は、そっか、と呟くと、赤いプレートを弾きながら、安心させることを呟いた。
「待ってろ、すぐに終わらせて帰るぞ。祐理姉ちゃんのところに!」
右手でレバーを掴み、左腕を顔の前に構える。同時にカウントダウンが始まる。
《3.2.1……》
「変身ッ!」
レバーを押し、右手を天に掲げる。それと同時に大量のコズミックエナジーの光が降り注ぐ。その光が止んだ瞬間、弦太朗の姿は変わっていた。
宇宙服を模した白い体躯、ロケットのように尖ったヘルメット、オレンジ色の複眼、両手足の○X△□のパーツ。
「宇宙ーッ………」
弦太朗が変身したそれは、ゆっくりと腕を縮こませながら、しゃがむ。
「キタァアアアアアアアーッ!」
そう叫びながら、勢い良く立ち上がり、X字に背伸びをする。その叫びは地球を声、太陽系を超え、M78星雲にまで届くほどの声だった。
「仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせて貰うぜ!」
右拳を突きつけるように構えると、ダスタードの一体へ殴りかかった。不良が喧嘩する時のような大振りのパンチだが、強化スーツを纏い、パワーの増した一撃はダスタードを吹っ飛ばすのには十分な威力だった。
「しゃーねぇ……蹴散らすぜぇっ!」
《ランチャー・オン!》
ランチャーモジュールを右足に装備すると、そこから四発のミサイルを発射する。それらはダスタードに着弾し、爆発。その爆発で四方向の数多のダスタードが吹っ飛んでいった。
《チェーンアレイ・オン!》
《ガトリング・オン!》
右腕に赤銅色のトゲ付き鉄球を持つチェーンアレイモジュールを装備すると、それを勢いよく振り回す。同時に、左足をガトリングモジュールへ変えると、弾丸を乱射する。弾丸のばら撒きによる撹乱と、チェーンアレイによる中距離からの変則的な打撃により、ダスタードはさらに数を減らしてゆく。
「動くやつ!みーつけた!」
フェリスゾディアーツがチェーンアレイモジュールに興味を示したのか、飛びかかって来た。フォーゼは鎖を握るとそれをタイミングを合わせて、勢い良く飛びかかって来たフェリスゾディアーツに叩きつけた。悲しき猫の習性か、今まで横に動いていたものに飛びかかろうとしたフェリスゾディアーツはその頭部にトゲ付き鉄球を叩きつけられた。それにより、地面に勢い良く、落下する。
「弦太朗!雑魚掃除は俺たちに任せろ!お前はフェリスを倒せ!ッハァッ!」
ショックガンを持った賢吾がダスタードを蹴り飛ばしながら、フォーゼを促す。フおう!、と威勢のいい返事をすると、ドライバーのスイッチを入れ替えた。
《クロー・オン!》
《チェーンソー・オン!》
《ホイール・オン!》
《シザース・オン!》
右腕にクローモジュール、右足にチェーンソーモジュール、左足に機動性確保のための、ホイールモジュール、左腕にシザースモジュールを装備すると、身体を傾ける。ホイールモジュールがそれに反応し、加速を始める。
「みじん切りにしてやるぜ!」
空恐ろしいことを言いながら、フォーゼはクローモジュールを振り下ろした。フェリスゾディアーツの爪とぶつかり、火花を散らす。そこへすかさず、ホイールモジュールを叩き込む。ホイールモジュールのタイヤが回転し、バチバチと火花が散る。
「くっ!」
よろめきながら、距離を取ったフェリスゾディアーツは、再び爪を振るう。フォーゼはその鉤爪をクローモジュールに噛ませた。驚くフェリスゾディアーツ。
「なっ!?」
「家で猫を飼う時は、爪は切ってやんないといけねぇって、美羽が言ってたな。それ」
そう言ってシザース・モジュールで鉤爪を挟み込み、切り取る。バチンッ!と音がして、片手の爪が切り取られた。切り取られた爪が落下し、バラバラと落ちていく。
「俺の爪がーっ!」
「ウオラァアアッ!」
驚くフェリスゾディアーツを無視し、フォーゼは鋭い前蹴りを繰り出すと同時に、チェーンソーモジュールを起動させる。幾つもの刃ががフェリスゾディアーツの硬いボディを削り切ろうと、ガリガリと刃を立てる。
「こいつッ!」
フェリスゾディアーツが怒り任せに爪を伸ばし、それを振り下ろして、フォーゼを吹っ飛ばす。その攻撃でフォーゼは地面を勢い良く転がる。
「痛ってー!こうなりゃ、やけくそだぁっ!」
ホイールモジュールとクローモジュールのみを残して、他のスイッチは解除する。そして、再びドライバーほエンターレバーを倒す。
《クロー!ホイール!リミット・ブレイク!》
コズミックエナジーが使用可能量ギリギリまでチャージされる。
ホイールモジュールの回転数が上がり、そのスピードが高まる。一瞬でフェリスゾディアーツに近寄ると、すれ違いざまに、クローモジュールを一閃させる。
「ライダー!ハイダッシュ!大切断!」
ネーミングセンス皆無な、技名を叫ぶ。放たれた一撃はフェリスゾディアーツのボディに爪痕をつけた。
「ぐっ……!」
コズミックエナジーが、爪痕からコズミックエナジーが漏れ出す。フォーゼはそんな彼にスイッチを出すように要求する。
「おい!スイッチを切れ!間に合わなくなるぞ!」
「ふん!戯け!まさか、この程度で忘却星座がやられるとでも?雑魚と一緒にされてもらっては……困るよ!」
そう言って、変身ポーズを取るフェリスゾディアーツ。
「超進化!」
その瞬間、彼は姿を変えた。
逆立ち、金色に色づいた全身の毛。大きく肥大化した、耳。目は釣り上がり細くなる。
これが、忘却星座の真の能力。『超進化』。
「うおっ!何かかっこ良くなりやがった!」
「気をつけろ弦太朗!奴のコズミックエナジーの総量は、全部解放したらこの日本を丸ごと吹き飛ばせるぞ!」
ややこしくなったと感じた弦太朗に、賢吾がアストロスイッチカバンのディスプレイに映る、フェリスゾディアーツのエネルギー量を見て、焦りながら忠告してくる。弦太朗は、それを聞いて小さく、やべぇな……と呟いた。
危機感を覚えたのだろうか。蘭、美愛、空はフォーゼひに逃げるように説得をし始めた。
「弦太朗さん!逃げて!」
「あんなの相手にしてたら、死んじゃいますよ!」
「お兄ちゃんが死ぬなんて……やだよ!」
涙ながらに説得をする蘭と美愛。空に至っては、号泣していた。
だが、フォーゼはそれを笑って返した。
「安心しろ。3人共。仮面ライダー部は、何度もこんな危機を乗り越えて来てんだ……。今回だって!」
《コズミック!》
取り出したのは、最強最後の40番目のスイッチ。それは、ライダー部の持つ『絆』を力に変えるもの。
ソケットに装填し、スイッチを読み込むと、パーツを下げ、起動ボタンを押した。
《コーズミーック・オン!》
40個全てのスイッチがフォーゼの周囲に浮き上がり、それらが一体化する。
地球を模した青いボディ。近未来のロケットを模したヘルメット。
この姿こそ、フォーゼの単体での最強の姿であり、ライダー部の部員との絆の結晶。
仮面ライダーフォーゼ・コズミックステイツへと、姿を変える。
「皆の絆で、宇宙を掴む!」
そう叫ぶと、右手に握ったバリズンソードのレバーを引く。カバーを開き、中に収まっていた刀身を解放する。それを構えると、勢い良く振り下ろして、フェリスエボリューションに当てる。フェリスエボリューションも、肥大化した爪をぶつける。互いのパワーは互角なのか、拮抗し、火花が散る。
「なるほど!これが、盟主の言っていたフォーゼの力か!中々やるな!」
「ッ!なんか、お前、さっきと性格が違くないか!?」
不快さと変態が入り混じった通常の時とは違い、今のフェリスは何処と無く雄々しさがあった。
「ふん!忘却星座はスイッチそれぞれに個性がある!超進化をすれば、その人格に変わるだけの話だ」
「なるほどな!洗脳されてるようなもんか!」
そう言いながら、互いに距離を取る。フォーゼは胸についたスイッチングラングを操作し、ランチャースイッチを召喚。それを、ソケットに装填し、起動させると同時にフリーズスイッチの能力を付与させる。
コズミックステイツの特性は、同部位のスイッチの能力を掛け合わせることが出来ることにある。そのため、ランチャーモジュールにフリーズモジュールの凍結が付与されたことで、着弾した瞬間、周囲の爆炎ごと、フェリスエボリューションをを氷漬けにする。
《ファイヤー!》
《ファイヤー!オン!》
ファイヤースイッチをバリズンソードのスイッチソケットへ差し込むと、起動させる。すると、コズミックエナジーが炎へと変換され、巨大な炎がバリズンソードを覆う。
「うぉおおらっ!」
しなる炎の剣。それを勢い良く振り下ろし、フェリスエボリューションを氷ごと斬り裂き、焼いた。
しかし、フェリスエボリューションはその攻撃を受けても、苦しそうにしているようには見えなかった。
「ふん。なるほど……中々」
そう言って、フェリスエボリューションは、少しだけフラフラした様子で立ち上がった。
「やるじゃないかフォーゼ!今度はこちらから行かせてもらうぞ!」
そう言うとフェリスエボリューションは爪を前に構える。その瞬間、彼の姿は一瞬にして、消えた。
「やはり、耐久力はホロスコープス並……というわけか」
賢吾が小さく呟いた。その表情は若干の焦りが見えた。ここまで、忘却星座の超進化が強いとは考えていなかったのだろう。
「賢吾くん、あいつを倒す方法は無いの?」
美羽が冷静に問いかける。賢吾は少しだけ考えてからその答えを出した。
「現状のスイッチの組み合わせであいつを倒すとなると……攻撃系のスイッチでは……」
攻撃主体のスイッチ同士の組み合わせをシュミレーションする賢吾。その中に効果的なスイッチは無い。険しい表情になる賢吾に、ハルが意見を述べた。
「賢吾さん、もしかしたらですけど、カメラとレーダーを組み合わせたらどうですか?」
「カメラとレーダー?……そうか!」
この結果はシュミレーションしなくてもわかった。賢吾はこの結果をフォーゼに伝えるべく、レーダーモジュールに通信を入れた。
「ぐぁあああっ!」
駆け抜ける金色の風。その風がフォーゼの周りを駆けるたびに、フォーゼのボディから火花が散る。やがて、耐えきれずに地面に崩れ落ちる。
フェリスエボリューションは通常よりも速い速度で移動し、フォーゼを撹乱。その肥大化した爪でフォーゼを苦しめていた。
「さぁ、フォーゼ!俺を倒さなければ、中にいる人間は救えんぞ!このままではそうだなぁ……エネルギーを使い果たし、カラカラに乾いた状態になるだろうかな」
煽りながら、フォーゼに向かって勢い良く爪を振り下ろした。だが、フォーゼはそれをギリギリで、起動させたシールドモジュールで受け止めた。
「っざけんなよ……」
「ん?」
「人の命をなんだと思ってやがる!」
叫びで勢いをつけ、立ち上がると、片手でバリズンソードを振り下ろす。それはフェリスエボリューションのボディを斬り裂き、傷をつけた。
「なっ!?」
「オラァっ!」
前蹴りを叩き込み、相手を吹っ飛ばしながら、自分も背部のスラスターを蒸かして、後方へ下がる。この後の攻撃をどうするか考えていると、呼び出し音が鳴る。シールドモジュールを解除し、レーダーモジュールを起動させた。そのディスプレイに賢吾が映し出される。
《弦太朗、奴を完全に倒すにはスイッチの意思を一度完全に経つ必要がある4番と6番を重ね掛けして、スイッチ本体の場所を調べたら、3番と39番の重ね掛けでそこを一気に潰せ!》
「おっしゃぁ!やってやるぜ!」
《マジックハンド・オン!》
《エレキ!》
バリズンソードにマジックハンドスイッチを装填し、さらにエレキを重ね掛けする。その瞬間、伸びた刀身に電気が走る。不規則な起動を描く斬撃が高速で回避しようとするフェリスエボリューションを翻弄し、斬り裂く。
「椀飯振る舞いで行くぜぇーっ!」
《ランチャー・ネット・オン!》
ランチャーモジュールにネットモジュールの能力を重ね掛けし、ミサイルを放った。それらは、フェリスエボリューションに着弾し、その体をネットが覆った。
「ぬおっ!拘束だと!?小癪な!」
そう言って、ネットを引きちぎろうとするフェリスエボリューション。その隙にフォーゼは賢吾のアドバイスを元に、カメラモジュールの能力をレーダーモジュールに重ね掛けする。それを相手に向けるとディスプレイに映し出されるのは、相手の体内。やがて、チリンチリンと警告音が鳴り、相手の体内にあるゾディアーツスイッチを見つける。
「そんでもって!こいつらだ!」
《ロケット》
《ドリル・スタンパー・オン!》
ロケットスイッチをバリズンソードへ装填、続けて、ドリルモジュールにスタンパーモジュールを重ね掛けする。
バリズンソードにロケットスイッチの能力が付与されたことで、より推力が高まる。ドリルモジュールはその回転数を上げ、唸りを上げる。レーダーモジュールにより、ターゲットをロックしているため、フォーゼは正確にフェリスエボリューションのスイッチがある場所目指して、突っ込んで行く。
「ライダー!ロケット・ドリル・スタンパーキーック!」
安直なネーミングを叫びながら、フェリスゾディアーツのボディをドリルモジュールが刺し貫いた。フォーゼは勢いが殺しきれずに、地面にドリルモジュールを突き刺したまま、クルクル回る。
その後ろで爆発せずに、フェリスエボリューションはライダー部のマークを付けた状態で、苦しむ。
「ぐっ!おのれぇええっ!ふぐっ!なんだ!俺の意識が!消える……まさか!スイッチのみを的確に!?ぐぁあああっ!」
スタンパーモジュールの効果『蹴りの威力で爆発のタイミングや威力を変える』が発動し、爆発を起こす。
「そのまさかだ!さて、決めさせて貰うぜ!」
《リミットブレイク!》
バリズンソードにコズミックスイッチを差し込み、リミットブレイクを発動させると、勢い良く横薙ぎに振り払った。
「ライダー超銀河フィニッシュ!」
放たれた一撃はフェリスエボリューションの胴体を切り払う。直後に切り口から元になった人間が崩れ落ち、フェリスエボリューション本体は爆発して消滅する。
「よっと!」
飛んできたゾディアーツスイッチをキャッチしようと、手を伸ばす。だが、その瞬間、何者かが、フォーゼを殴り飛ばした。
「グァアアッ!」
「弦太朗(さん)!」
ライダー部の面々が悲痛な叫び声を上げる。そして、その視線の先には科学的なボディを持った戦士が立っていた。その戦士は、受け取り手を無くし、落下したフェリスゾディアーツのスイッチを手にすると、それを何処かにしまった。
「あんた何者だ!」
起き上がりながらフォーゼが訊ねると、戦士はゆっくりと呟いた。
「忘却星座のリーダーさ。フォーゼ。君は強いね。けど、まだ私と戦えるレベルには至っていないようだ……残念だけど……」
そう言って、落ちていたバリズンソードを拾い上げると、そこに刺さっているコズミックスイッチを抜き取ろうとした。
「やめろ!そんなことすれば、コズミックスイッチが!」
「もちろん……そのつもりさ。歌星賢吾くん」
やがてコズミックスイッチは真っ二つに折られた。装填された部分をバリズンソードに残して。
「なっ!あぁああああああっ!」
コズミックスイッチが壊されたことに驚きの声を上げると同時に、フォーゼのスーツがスパークを放つ。コズミックスイッチによって、統制且つ、一体化していた39のスイッチが暴走を始めたのだ。
「弦太朗!」
賢吾が危険を顧みずにフォーゼに駆け寄る。ドライバーはスイッチを制御しようと、していたが、処理能力が追いつかず、オーバーヒートを起こしており、いつ暴走してもおかしくなかった。
「歌星賢吾くん。君は彼の力を過小評価し過ぎているよ。この如月弦太朗は、やがて宇宙を呑み込む男だ。では、さらばだ」
壊れたコズミックスイッチとバリズンソードを持って、戦士は消えた。
賢吾はそれが消えるのを見て、悔しく思ったが、それよりもフォーゼのシステムを解除するのが先決と考え、すぐにフォーゼドライバーの赤いプレートを全て上げた。その瞬間、システムが強制解除され、フォーゼのスーツが粒子となって消える。
「無事か!?弦太朗!」
「おお……賢吾か。何とかな……悪い。コズミックスイッチが壊された上に、奪われちまうなんてよ」
賢吾が心配そうに声をかけると、弦太朗は謝ってきた。それほどまでにスイッチを壊され、奪われたことに責任を感じているようだった。賢吾は弦太朗らしい、と思いながら、大丈夫だ、と優しく言った。
「データーならある。作り直すことも出来るさ。それより、君の身体は本当に大丈夫か?」
賢吾がそう訊ねると、弦太朗はよろよろと立ち上がった。どうやら、大量にコズミックエナジーが流れ込んだことで、身体が拒否反応を示しただけらしく、外傷と言う外傷は無いようだった。
「んー、特に痛くは無いし、大丈夫だろ?」
そう言うと、若干よろめきながら、空と美愛の元に向かった。
「待たせたな。帰るぞ。祐理姉ちゃんとこに」
弦太朗の言葉に二人が目を丸くした。その気持ちを、蘭が代弁した。
「げ、弦太朗さん!?あんな、苦しそうにしてたのに、大丈夫なんですか?」
「ん。大丈夫だろ?特に痛いとこもねぇしよ。ほれ!」
そう言いながら、数回跳ぶ弦太朗。その際、右足を若干庇っているのを友子は後ろから眺めて、思っていた。
「弦太朗さん、あれ右足完全に庇ってますね」
「え?あぁ。蘭くんも、空くんも美愛くんも気づいてないみたいだねー」
ジェイクがそう言うと、その肩を隼が掴んだ。その顔は弦太朗を敬うかのような表情をしていた。
「あいつは、レディに自分が苦しむ姿を見せて悲しませたことに、少し負い目を感じているんだろう。だから、何ともないように、アピールしているんだ。心配をかけないために……な」
そう言って、キュピーン!とウィンクする隼。その彼の言葉を聞いて、元・名誉会長である美羽は、ほぅ、と呆れと心配の混じった表情で呟いた。
「それはそれで、結構なことなんだけれど、気づいてるこっちとしては、心配になるわね」
「会長の言うとおりだ。心配になる。だが、本人が何とも無いと言っているし、それに、バガミールとアストロスイッチカバンで、少し見て見たが、体内のコズミックエナジーの線量がいつもより多いくらいで、特に気にする必要はない」
賢吾の手際の良さに思わず声を上げるライダー部の先輩チーム。
「明日、丁度大学でコズミックエナジーを測るスキャナーを試験するから、その時に弦太朗に詳しい調査をしてみますよ」
「そう?なら安心ね。よろしく賢吾くん」
そう言った美羽の表情は若干心配そうになっていた。それを見て、賢吾は笑いそうになりながらも、それをこらえ、皮肉と共に頷いた。
「ええ。会長も弦太朗を心配している素振りを見せないと、彼女らに取られちゃいますよ?」
そう言って指を指すと、そこには仲良く話す、弦太朗、ハルに蘭、空、美愛がいた。美羽はそれをみて、賢吾に問いかける。
「賢吾くん?どういう意-あら?賢吾くんは?」
そこに賢吾は居なかった。美羽が首を傾げていると、隼が美羽に告げた。
「賢吾なら、小鳥遊家に用事があるからって、先に帰ったぞ?」
「そう?なら、小鳥遊さんの家に行くわ……弦太朗!」
「!ハイッ!……て、美羽か!どうした?」
弦太朗を呼びかけると、弦太朗は背筋を伸ばして、おっきな声で返事をした。それを見て、かわいい、と思ったのは内緒だ。
「小鳥遊さんの家に用事が出来たの。悪いけど、案内してくれる?」
「ん?まぁいいけどよ。何もないぞ」
「おじさん!?それはちょっと酷くない!?」
「おじさん、配慮にかけますよ!っていうか、おじさんが言うセリフじゃないですよね!?」
住人2人にそう言われ、頭を掻く弦太朗。2人のツッコミのうまさに隼とジェイクが舌を巻いたのは言うまでもない。
「空ー!美愛ー!迎えに来たわよー!」
そうこうしているうちに、祐理が迎えに来た。
「お、姉ちゃんが迎えに来たみたいだな」
弦太朗がそう呟くと、美羽が弦太朗に妖しく笑ながら話しかける。
「弦太朗。私、お姉様に話があるから、少し待ってて」
「ん?おう」
そう言って美羽は祐理のほうに向かって行った。
その夜、小鳥遊家は宴会状態だった。
何故なのか?
理由は簡単。
祐理と美羽が少し会話をした直後、祐理がいたく、美羽を気に入り、ライダー部全員を自宅に招待したのだ。
慎吾は完全に酔っ払っており、隼と一緒に飲んでいた。
ジェイクとハル、賢吾は酔っ払った祐理に捕まり、最近の男について、を聞かされていた。2人共、死にそうになっていた。
「だいたい、最近の男ってのは、みんないくじがないのよ〜!あんた達も、なよなよしてると、いい貰い手がなくなっちゃうわよ〜!げんたろうは、恋をしてるのかしら?はぁ〜、心配だわ〜」
大半が弦太朗のことを心配することばかりだったが。
美羽と空、美愛は恋愛トークで盛り上がっていた。
「弦太朗ったら、驚いた表情してて、思わず笑っちゃったのよ」
「おじさん、おっちょこちょいみたいなところ、ありますもんねー」
「あら?空、どうしたの?私の話がツマラナイかしら?」
「違うよねー?お姉ちゃん、美羽さんに嫉妬してるんだよねー?」
「ち、違うもん!おじさんのことなんてこれっぽっちも……ハッ!?」
大半が空がからかわれていたが……
弦太朗は1人、小鳥遊家の縁側ねで酔い覚ましをしていた。先程まで、隼と慎吾のペースに合わせて飲んでいたため、酔いが早く回りそうになった為、今は1人で落ち着いているところだった。
ふと、月を見る。今宵は満月。そして、その下を星の川が煌く。七夕が近いため、天の川が空を流れていたのだ。
「お隣、いいですか?」
そう声をかけられ、振り向くとそこには友子が立っていた。
「いいぜ。どした?疲れたか?」
「いえ。そういうわけじゃないです」
そう言って、指を天に向ける友子。どうやら、天の川を見に来たようだ。
「織姫と彦星は1年に1度しか会えないから、その過程を見に来たんです」
「まるで、お前と流星みたいだな」
そう言うと、友子は少し怒ったような、だが嬉しそうな唸り声を上げた。弦太朗はそれを、怒っていると勘違いし、急いで謝った。
「ゔー」
「悪い!?友子!呪わないでくれ!」
「ふふ。丁度試したい呪いがあるから、それを試させて貰います……ふふふ!」
「おいおい。野座間。俺の友達を呪い殺すのはやめてくれ。まぁ、幸せになる呪いなら、構わんが」
妖しく笑う友子。その頭をポカッと優しく丸めた紙で叩いたのは、酔いを覚ましに来た、賢吾だった。
「今日は散々だったな」
「まぁ、生きてるんだからいいじゃねえか」
そう呟く弦太朗。もう、コズミックスイッチを失ったことに、未練は無いようだ。賢吾もそれを悟ったのか、ふふ、と笑うとそれについて言及することは無かった。
「弦太朗、明日はお前の身体に以上が無いか、大学の施設を少し借りて、調べる」
「おう。頼むぜ賢吾」
賢吾は無言で頷いた。
「なぁ、賢吾、友子」
「なんだ?」
「はい?」
弦太朗の呼びかけに2人が振り向いた。
「絶対に止めような。忘却なんたらって奴らをさ」
その目は闘志に満ち溢れていた。賢吾と蘭は無言で力強く頷いた。
次回
「何とも無し……か」
「いや、おかしいからね!?」
「お父さんと……お母さんが?」
「なんでだよ……なんで!?」
「何も分かってねぇのはあんた達の方だ!こいつらは、一度に両親を失ったんだぞ!一番家族で一緒に暮らさなくちゃなんねぇこの時期に!」
「お兄ちゃん……」
「男、如月弦太朗。決めたぜ。この子達のパパになってやらぁ!」
【父・親・宣・言】
本日の組み合わせスイッチ
ランチャー+フリーズ
着弾後、相手を爆炎ごと凍結させる。動きを封じるのにも使用。本編でも複数回使用した。
マジックハンド+エレキ
マジックハンドによる刀身の伸縮に、エレキの電撃を重ね掛けした組み合わせ。
本小説オリジナルの組み合わせ。
ランチャー+ネット
着弾後、相手を拘束するネットが現れる。本編ではジェミニ戦で使用。
レーダー+カメラ
レーダーの探知能力にカメラの映像記録能力を付与した組み合わせ。これにより、敵の体内にあるゾディアーツスイッチの居場所を的確に狙える。本小説オリジナルの組み合わせ。
ドリル+スタンパー
ドリルにスタンパーを重ね掛けした組み合わせ。貫通後、ライダー部のマークを模した穴が、時間差で爆発する。