フォーゼの言うことを聞きなさい!   作:1202155@

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勇者王「これまでの仮面ライダーフォry
空「ストーップ!」
美愛「フォーゼの言うことを聞きなさい!です。この作品は!」
ひな「まちがえたら、だめなんだお!」
勇者王「あ……すいません」

Take.2
勇者王「前回までの、仮面……じゃなかった。メテ聞ry
流星「ホォ〜ワッ!?タチバナさん!?」
友子「流星さんは先ずは私の旦那さんです。だから、まだ、パパにはさせませんからね?」
タチバナ「あー……すまないね。間違えて。つい、流星のほうが、お父さん似合いそうだったから」
隼「流星は……」
JK「違うと思うんッスよねー」
蘭「こんな人がお父さんって……」
ハル「気が休まらないですよ」
流星「おい、お前ら。俺にお父さんは似合わないってか?よーし、大文字先輩以外、表でろ。全員、メテオギャラクシーで火星、木星、土星目掛けてメテオストライクしてやる!」

Take.3
弦太朗「ん?こいつを読めばいいのか。よし!任せとけ!えーっと、何々……
デネブ「瀕死の重傷を負ったこうry
賢吾「っだ!ちがーうっ!」

Take.4
勇者王「これまでのフォーゼの言うことを聞きなさい!」

氷川「お亡くなりに……なりました」
空「三人一緒に暮らしたいんです」
「わがままを言わないでくれ」
弦太朗「俺が三人まとめて育てる!」


祖・父・感・謝

「やぁああああっ!」

「無理無理無理無理!」

 

夕暮れの空の下。フォーゼが飛んでゆく。その片手には、三人の女の子が、ワイヤーでグルグル巻にされた状態で抱えられていた。

長女は目に涙を浮かべ、泣き叫び、次女は楽しそうに過ぎてゆく景色を眺めた。三女は、この飛行の中、スヤスヤと眠っている。

 

「お!そろそろか!」

 

戦士-フォーゼは、自分の家の位置を確認すると、少女達を気づかって、ゆっくりと進路を下に取る。そして、家のベランダに着地するため、ブースターの出力を下げながら、ゆっくりと降下してゆき、軟着陸する。

 

「おーし、着いたぞー」

 

呑気にそう言って、少女達を下ろすフォーゼ。長女はフラフラと覚束ない足取りで、次女はしっかりとした足取りで、三女を姉から受け取って立っていた。

 

「悪いな。緊急事態だったから、部屋片付けてないから、汚いかもしんねぇけどよ。まぁ、中入ってくれ」

 

フォーゼはそう言いながら、変身を解除。弦太朗の姿になると、ベランダの窓を開け、中に入るように促した。

 

「はぁーい!」

 

次女-美愛が愛想のいい返事をして、中に入る。長女は遠慮しがちに、ひなを抱きかかえながら中に入った。

「あぁ、ここ俺の部屋だ。つってもじいちゃんがいる時はほぼほぼ、ここで寝てることが多いんだけどよ。あ、待っててくれ!今、襖取り付けるからよ!」

 

十二畳程の畳の部屋は、丁寧に折りたたまれた布団が二つと、壁際には勉強机が置かれていた。

 

「ここがお兄ちゃんの部屋……」

「結構広いんだね」

 

そう言って話していると、弦太朗が襖三枚を抱えて持ってきた。

 

「よっと!こいつを取りつけりゃ、俺の部屋と簡単だけど仕切れるだろ?」

 

そう言って、弦太朗は襖をレールに取り付けた。少し手こずったが、十分ほどして、それが取り付けられた。

 

「うし。とりあえず、これでいいだろ?って、あとは服か…」

弦太朗はここで、大きな失敗に気づいた。そう、服がないのだ。女の子物の。寝巻きは最悪、弦太朗のジャージを貸せばいいだろうが、余所行きの服は男物では代用出来ない。

 

「ん?そういや、姉ちゃんの服がどっかにあったよーな……」

そう考えた弦太朗は部屋を出て、押入れを開けた。あの祖父のことだ。きっちりと思い出の品は取っておいたはずだろうと、思っていると、本当にあった。しかも、ご丁寧に『祐の字の服』『祐の字の下着』と。

 

「吾郎爺、配慮とデリカシーにかけるぜ……ったく。けど、これならどうにか、今日分はどうにかなる……か!」

 

そう思いながらも、弦太朗は箱に入った祐理の服を持って、自室に向かうのだった。

 

 

 

部屋に残された美愛と空は各々、どうしていいかわからず、座っているだけだった。

 

「お姉ちゃん。良かったね……叔父さん、いい人で」

 

美愛が徐に呟いた。空はそれを聞いて無言で頷く。

 

「あんなに私たちのことを思って叫んでくれてるの聞いてたら、やっぱり、祐理さんの従兄弟なんだなぁって実感しちゃったよ」

「私も。お兄ちゃん凄かったよね」

 

まとめ役の男-信吾の兄で、空たちの叔父にあたる、信好との口論は物凄い迫力があった。

 

「言ってることは、無茶苦茶だったけどね」

 

そう言って苦笑する美愛。空も釣られて笑った。

 

「んー……そらねぇたん、みうねぇたん、ここどこ?」

 

空の腕の中で眠りこけていたひなが目を覚ました。

空と美愛は笑顔で、おはよう、と言うと、場所を教えた。

 

「ここはね、弦太朗おじさんのお家だよ」

「おいたんのおうち?」

「そうだよー。暫くここにいなくちゃいけないの。ひな、いい子だからちゃんと我慢出来るよね?」

 

空がそう言うと、ひなは元気良く、はーい!と返事をする。その愛らしい仕草は二人の心を晴れやかにする。

 

「ふぅ。良かった良かった。見つかったー」

 

そこに弦太朗が現れた。ひながそれを見て、嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

「あ!おいたんだー!おいたん、ここおいたんのおうちなんだお?」

「お!ひな、起きたか!おはような!」

 

弦太朗がそう言って、わしゃわしゃと頭を撫でた。空がそれをジーっと見つめていると、美愛がいやらしく笑って耳元で囁いてきた。

 

「あー、ひなずるーい!お兄ちゃん、私も頭撫でて!……って言ってくれば?羨ましいんでしょー?」

「うん。そーする。……って!?え?ちょっ!美愛!何言ってんのよ!?」

 

顔を真っ赤にして否定する空。逆に美愛は、拍子抜け、と言った風に、口をポカーンと開けた、似つかわしくない表情で、空を見ていた。

そのやりとりを

 

「なんだ、空も頭撫でて欲しいのか。だったら、ほれ」

 

会話が聞こえていたのか、弦太朗が歩み寄り、空の頭をひなとは違い、優しく撫でた。その瞬間、空の顔が真っ赤に燃えそうなほど、紅く染まる。

 

「叔父さん!叔父さん!まずいですって!お姉ちゃん、これ以上やられたら、恥ずかしさで爆発しちゃいますから!」

「マジで!?悪い!」

 

慌てて手を離す弦太朗。本気で爆発すると思っているのか、ひなを抱きかかえ、一定の距離を取っていた。

 

「ひな、そらねぇちゃん、爆発するかもしんねぇけどどうしよ?」

「ばくはつ?ばくはつって、なんだお?」

「爆発?爆発かぁ……んーっとな、ドッカーン!ってなっちまうんだ!……あれ?これでいいのか?」

「ドッカーン!キャハハハハハッ!もっかい!もっかい!!」

 

ひなと弦太朗のやりとりは、親子と言うよりは、さながら仲のいい兄妹と言ったところだろうか。それを見て、美愛が和んでいると、空が声を出した。

 

「お兄ちゃんのバカッ!本当に爆発するわけないじゃない!」

「あ?やっぱり?あんまり顔が真っ赤になってたからよ、つい爆発すんじゃないかって……」

「……だ、誰のせいでそうなったと思ってるのよ……お兄ちゃんのばか」

 

呟くようにそう言うと、空は不貞腐れたようにそっぽを向く。弦太朗はそれを見て、困ったように頭を掻いた。

 

「ところで叔父さん!その持ってきた箱なんですか?」

 

美愛は空気を読んで、話題を変えた。弦太朗は待ってました、と言わんばかりに腕を広げてその箱を見せた。

 

「祐理姉ちゃんが残した服と下着だ。着のみ着の儘来ちゃったから、当分はそれを着ててくれ」

 

二人はそれを聞いて驚いた表情をしていた。それもそうだ。女の子の服が置いてあるはずもない場所に、服があったのだから。

空と美愛はおずおずと、箱を開けた。中には可愛らしいというよりかは、若干、大人っぽい服が入っていた。サイズに関しては少し大きいが、美愛も空も自分達の服を着回し出来るぐらいだから、問題は無いはずだ。

 

「それにしても、良くこんなに置いてあったね。お兄ちゃん」

「祐理姉ちゃんが自分で作って売ろうとしてた服なんだよ。だけど、まぁ、著作権に引っかかるからって、吾郎爺がやめさせたんだ」

 

確かに言われてみると、何処と無く大手の会社が作ったようなデザインの服と被っているようなものがある。祐理の裁縫の技術が高いことを知っていた二人は、苦笑いを浮かべるしか無かった。

 

「さて……夕飯の支度でもすっかな。何か食いたい物あるか?何でもってわけじゃねぇけど、作るぜ?」

 

そう訊ねると、ひながいの一番に答えた。

 

「んーっとね、ひなねー、はんばぐがいい!」

「はんばぐ……あぁ、ハンバーグか!いいぜ!空と美愛は?」

 

弦太朗が聞くと、二人は、なんでもいいです、と答えた。弦太朗は困ったように頭を掻きながら、遠慮することねぇぞ?なんなら、肉じゃがでもいいし、と呟くと、美愛がプッ!と吹き出して、笑った。

 

「あはは!叔父さん!肉じゃがはご馳走じゃないですよー!」

「そうか?……ま、いいや。美愛がやっと、心の底から笑ったみたいだしさ」

 

そう言われて彼女は驚いたような表情を浮かべる。

弦太朗は柔らかく微笑むと、美愛の頭を撫でながら言った。

 

「んじゃ、俺は買い物行ってくるからよ。それまで、家の中でも探検しておけ」

 

そう言い残して、弦太朗は去って行った。

 

 

 

 

もう陽も沈みかけた商店街を喪服姿で歩く弦太朗。彼の人柄は商店街の人に気に入られており、買い物袋を両手に沢山抱えていた。

 

「いやぁ、今月は色々ピンチになりそうだったから、助かったぜ」

 

そう言いつつ、家のある方向へ向かおうとすると、突然声をかけられた。

 

「弦ちゃん!」

 

振り向くとそこにいたのは、弦太朗の幼馴染。城島ユウキだった。

 

「おお、ユウキ!久しぶりだな!なんだ、アメリカから帰って来てたのか」

「うん。早めに報告しようと思ってたんだけど、弦ちゃんここ最近、色々立て込んでるって、賢吾くんから聞いてたから。ごめんね」

「いや。気にすんな。丁度、そのゴタゴタも-……」

 

終わったからよ、と言いかけて、弦太朗は淀んだ。確かに、葬式は終わったが、それは形式場だけのこと。彼女達の心の中ではまだ、それが終わっていない。

 

「終わっちゃいねぇが、もう大丈夫だ」

そう言って胸を張る弦太朗。ユウキはそれを見て、そっか、と言って笑った。

 

「弦ちゃん、大学楽しい?」

「おう!楽しいぞ!俺は宇宙京都大学の宇宙技術部と、大学間交流使って、多摩文学院大学の教育学部に通ってるからよ」

 

大学間交流とは、別々の学部を持つ大学同士が協定を結び、生徒の為にそれぞれの大学の単位を互換出来るようにしていることを言う。

特に宇宙京都大学の場合、学部が宇宙科学部と宇宙技術部という特種な科目しか無い。教養基礎科目も最低限しか取れない。ということで、それでは生徒の将来を考えると、不憫ということで、近隣にあった、多摩文学院大学と大学間交流を行うことに決めた。

弦太朗の場合は宇宙京都大学で教養基礎と副先行の宇宙技術学部、先行は教育学部のため、多摩文学院大学で行っている。

 

「さすが、弦ちゃん。やると決めたら一直線だね」

「はは。まぁな。でも、最初は驚かれたんだぜ?『我が大学を副先行受けるのに使って、多摩文学院大学を先行として使うなんて』ってよ」

 

言われてごもっとも、とユウキは思った。だが、彼にはそんなことは言っても無意味だということも知っていた。それは彼自身が一番良く知っていることだと、わかっているからだ。

 

「ところでユウキはどうなんだよ?アメリカの大学は?」

「面白いよ!!向こうはコズミックエナジーの研究が遅れてるけど、その分、古くからある技術を流用してるから、授業も面白いし!」

 

ユウキは子供のように目をキラキラと、頬を染めて話す。余程、興奮しているのだろう。弦太朗は、相変わらずだなぁ、と言った風にユウキを見ていた。

 

「弦ちゃん、それでね!」

 

こうなったらユウキは止まらない。自分が話終わるまで。

弦太朗は心の中で、空達に遅れることを謝りながら、久しぶりに再開した幼馴染との会話を聞くことにした。

 

 

 

 

「お兄ちゃん遅いな……」

 

ポツリと空が呟いた。美愛のひなは隣で、任天堂64なる古いゲーム機で遊んでいた。

 

「お姉ちゃん、心配しすぎだって!あの叔父さんだよ?何と無く、ケンカ強そうだから、大丈夫じゃないかな?」

 

美愛は、心配ない、と言った風に答えた。

 

「もしかしたら、友達と会って話が弾んでるかもしれないし、それにまだ夕飯には早いから。ひなも、我慢出来るよね?」

「うん!ひな、まだおなかすいてないお!がまんできうもん!」

 

姉の問いかけに、元気良く返事するひな。空は、偉いねー、と褒めながら、その頭を撫でた。

 

「さてとお姉ちゃん。叔父さん言ってたこと、覚えてる?」

「言ってたこと?なんだっけ?」

 

質問に質問で返すと、美愛はため息をついた。そして、得意げな表情で説明する。

 

「おじさん言ってたでしょ?、この家の中、探検しとけ、って」

 

そう言われて、空はそんなこと言ってたなぁ、と思い出した。

 

「叔父さんのエッチな本、見つかるかもよ?」

 

しかし、空は最初からそんなことをする気は毛頭無い。お世話になる人の家を漁る無粋な真似など。というか、あの弦太朗に限ってそんなものが置いてあるとは到底思えなかった。

 

「美愛。勝手に漁ったらダメだよ?これからお世話になるんだから」

「もー、お姉ちゃん釣れないんだからー」

「私は美愛には釣られません」 

「おう!帰ったぞー!」

「あ!おいたんだー!」

 

ひながとてとて、と玄関の方に走ってゆく。空と美愛もその後に続いてゆく。

 

「おいたん、おかえりなしゃい!」

「おじさん、おかえりなさい!」

「お兄ちゃん、おかえり!」

 

そう言って、出迎える三人。弦太朗は幸せそうに笑いながら、ただいま!と返した。

 

 

 

 

「え?いいの?私たちだけ布団使って」

 

夜。布団を敷いていると、空が不安げに訊ねて来た。

弦太朗の家に布団は三枚しかない。弦太朗はそれら全てを空、美愛、ひなに与えようと考えたのだ。自分は居間で適当に寝っ転がればいいか、程度に考えて。

すると、美愛がポンッと手を叩いて、いい考えがあります!、と言い出した。

彼女は布団を横に敷きなおした。そして、枕と大きめのタオルケットを敷く。すると、大きな布団に早変わりする。

 

「ここに四人並んで寝れば、何の問題もないですよね!」

「いや、思いっきりあるわっ!」

 

弦太朗が思わずツッコミを入れた。それもそうだ。年下とはいえ、思春期真っ盛りの少女と大学生の弦太朗が一緒に寝るのだ。問題というか倫理というか、児童ポルノ法など、その辺りに引っかかるだろう。

 

「いや、流石に裕理姉ちゃんと信吾さんが、夢の中でパインアイアンとマンゴーパニッシャー持って追っかけられそうだから遠慮しー

「ひなは、叔父さんと一緒に寝たいよねー?」

 

美愛がひなに訊ねると、ひなはうんっ!と元気良く返事をする。

 

「ほら、ひなもこう言ってますし、パパも裕理さんも、怒りませんよー」

 

ペロッと舌を出し、ウィンクする美愛。弦太朗はうーん、と唸った。すると、空が助け舟を出して来た。

 

「美愛!大人を困らせるんじゃありません!」

「えー?私はお姉ちゃんと叔父さんの為を思って言ってるのにー」

「ちょっ!それ、どういう意味でー!」

「あ、私、歯磨いてくるねー!」

「ちょっとコラ!待ちなさい!みーうー!」

「ねぇたんたちずっこーい!ひなもおいかけっこいれてー!」

 

姉妹喧嘩と言っていいのかわからないが、それを始め仲良く一階に降りて行く二人。それを追いかけてひなも降りて行った。

一人残された弦太朗はヘナヘナと床に座る。

 

「ふーっ……今の内に一階の居間に降りておくか……?」

 

そう思い、空達とは違い、裏口から一階に行こうと、屋根に降りる弦太朗。そこで、突然携帯電話が鳴った。

 

「はい、もしもし」

「弦の字か?ワシじゃよ」

「吾郎爺!?なんで、携帯の番号知ってんの!?」

「なぁに。よし子ちゃんに教えてもらったんじゃよ」

 

携帯の使い方がわからない吾郎が、電話をかけてこれたことに驚きながらも、その理由を知り、安堵する弦太朗。

 

「それよりもお前さん、ちと、啖呵を切り過ぎたんじゃあないのか?」

「ゔ……」

 

思わず言葉に詰まってしまう。確かに、今日のことは若干生意気なことを言い過ぎたと、反省していたからだ。

吾郎はふふ、と息を零しながら話を続けた。

 

「まぁ、お前さんが考えて、悩んだ末に決めたことなんじゃろ?」

「あぁ。決めたよ。育てるって。大学を中退しようが、バイトを増やしても、あの娘達を育てるって」

 

吾郎はそれを聞いて、電話口でカッカッカッ!と笑った。弦太朗は不思議に思い、訊ねた。

 

「怒らないのかよ。『若造が生意気を言うんじゃない!』って」

「怒る理由がどこにある」

 

吾郎は変わらず優しい声で話した。その口調はどこか、誇らしく思っているようだった。

 

「お前さんが適当な理由で、それも思い付きであの娘達を引き取っていたら、ワシは怒る。じゃがな、弦の字。お前さんはちゃんと理由があって、しかも、あの娘達の心を汲んで、それを踏まえて、引き取って育てると啖呵を切った。あの大勢の大人がいる前で」

「……」

「少し、飲まんか?弦太朗」

 

誰かが歩いて来る音が聞こえて来た。ふと下を見ると、吾郎が日本酒を片手に立っていた。弦太朗は電話を切ると、二階から飛び降りた。

 

「いいぜ。でも、少しだけだぜ?」

「わかっとる。星海の丘に行かんか?」

「星海丘?ああ。いいぜ」

 

弦太朗は頷くと吾郎と共にそこを目指した。

 

 

 

 

星海ヶ丘公園。そこは、短く刈り揃えられた草が生えるただの小高い丘の公園だ。だが、そのおかげで、街にいるよりも、良く星が見える為、時折弦太朗はここに来るのだ。

 

「弦太朗……お前さんは相変わらず、破天荒じゃのう」

 

星を眺めながら、吾郎はそう呟いた。その手には大吟醸の瓶が握られている。

弦太朗は気まずそうに頭を掻いた。

吾郎の言っていることが、今日の小鳥遊家の出来事だとしっているからだ。

 

「じゃが、あの三人を引き離すのも、それはそれで酷じゃな。だから、お前の選択は間違ってはおらん……と、わしは思う」

 

吾郎の発言に弦太朗は目を丸くする。てっきり怒られると思っていたからだ。

だが、弦太朗の考えとは違い、吾郎は溢れんばかりの笑みを浮かべて、弦太朗にお猪口を渡した。弦太朗はそれを受け取った。

 

「ワシの、弦の字。おまえは決めたことは一切曲げずに、やり通す男じゃ。だから、あの娘達を引き取る時に、大学辞めてでも、彼女たちを育てようと考えていたんじゃろ?」

 

そう言われ、弦太朗は、あぁ、と返事をする。その口調は、なんでそれを、と驚いるかのようだった。吾郎はふふっ、と笑うと、自分のお猪口についだ酒を飲んでから、答えた。

 

「ワシはお前のお爺ちゃんだぞ?お前のような若造の考えることくらい、お見通しじゃよ。だが、流石にお前さんが、殆ど奇跡に近い形で受かった大学を辞めるのは、死んだお前の両親に申し訳が立たん」

 

両親を引き合いに出され、弦太朗は、うっ、と言葉を詰まらせた。それもそうだ。弦太朗にとって両親は、大切な存在だったからだ。

吾郎は、やれやれ、と言ったふうにため息を着いた。

 

「そこでじゃ。小鳥遊家の皆さんに、あの娘達をお前さんが育てるのを納得してもらうために、ワシが勝手に条件を付けさせて貰ったわい」

 

「条件?」

 

怪訝そうな表情を浮かべて、弦太朗は繰り返した。吾郎は得意げな表情で、簡単なことじゃ、と言って、条件を話した。

 

「『お主が二ヶ月間、大学に通い続け、何の問題もなく、あの娘達を育てること』。それぐらいじゃ」

 

余りに簡単な条件に弦太朗は拍子抜けする。

 

「じゃが、流石にお金も無しにあの娘達を育てて行くのは、中々酷じゃろう。いくら、裕の字の残した積立金と保険があるとはいえの」

 

吾郎の意見は弦太朗も、勿論だと、思った。裕理達の残したお金では、この先安定した暮らしは出来ない。当然、弦太朗が無理くり、働かなくてはならない。だが、それでは弦太朗の身体に無理が生じる。

その問題を解決しようと、吾郎は懐から通帳を幾つか取り出した。

 

「この通帳はな。ワシと婆さんが、今までコツコツ貯めて来た金じゃ。もし、ワシが食っていけなくなった時の為に貯めたの」

「けど、これは……」

「それは、空ちゃん達を学校に通わせるのに使うといい。それだけの金も用意してある」

 

次に吾郎が取り出したのは、四つの通帳。吾郎はそれを渡した。

 

「一つは裕の字がお前さんが何かあった時の為に、コツコツと貯めておいたお金。ワシに預けてくれた奴じゃ。それから、他の三つは信吾くんと裕の字が残した遺産+保険金じゃ。あの娘ら三人分用意されておる」

 

それを吾郎は渡そうとする。だが、弦太朗はそれを首を振って受け取らなかった。

 

「吾郎爺。俺は二つの道を歩くって決めたんだ。大学生としての自分と親父変わりの自分。だから、成る丈、自分の稼いだ金であいつらを養っていくつもりだ」

 

そう言って、胸を叩き、拳を突きつける弦太朗。

吾郎は呆れたように笑った。そう言うとわかっていたようだ。

 

「やれやれ、そう言うと思っとったよ。ま、お前さんらしいのぉ」

 

吾郎はそう言うと、弦太朗の通帳のみを渡した。

 

「弦の字。じゃが、これだけは受け取っておくんじゃ。裕の字から、そう言伝を言われておるからの。『弦太朗が何と言おうと、必ずこのお金を受け取らせて下さい』とな」

「裕理姉ちゃん……」

 

自分の考えを完全に見透かされ、弦太朗は恥ずかしそうに頭を掻いた。だが、嫌な気はしない。それだけ、自分のことを心配してくれているのだから。

故に弦太朗は自分の通帳を受け取る。

 

「……わかった。この通帳は受け取る。吾郎爺、受け取った後は、どう使ってもいいんだよな?」

「あぁ。お前さんの好きにすればええ」

 

そう言われ、弦太朗は不敵に笑った。

 

「じゃあ、この金はあいつらに不自由させないために、使わせてもらうぜ。可愛い娘に、不憫はさせたくねぇからよ」

 

弦太朗は確かな決意を胸にそう言い放つ。吾郎はそれを聞いて、そうか、と呟いた。

 

「お前さんらしいの。なら、そう使えばいい。困ったらいつでも、ワシに声をかけるんじゃ。家族はどこにいても、家族なんじゃからの」

 

そう言うと、吾郎はお猪口に残った酒をグイッと飲み干した。そして、ゆっくりと立ち上がる。

 

「さて、弦太朗。ワシは暫くよし子ちゃんの家に泊まらせてもらうからの。久しぶりに、息子との会話を楽しみたいもんじゃ」

 

嬉しそうに笑顔を浮かべると、吾郎は去って行こうとする。その吾郎を呼び止め、弦太朗は頭を下げた。

 

「吾郎爺っ!ありがとうございます!」

 

それを聞いて、吾郎は二カッと人懐こい笑みを浮かべる。その笑顔はまるで、遠慮しなくてもいい、と言っているように弦太朗には見えた。

吾郎は再び前を向くと、背中越しに手を上げ、去って行った。弦太朗はその背中をジッと眺めていた。

 

やがて、その背中が暗闇に消えて行くのを確認すると、フォーゼドライバーを手にした。

 

「けじめはつけねぇと……いけねぇよな。オレ」

 

弦太朗はもう一人の自分になる、機械を手に語りかける。一見、独白のようにも聞こえるが、フォーゼドライバーはそれに応じるように、鈍く光る。それは、空を駆ける流れ星が反射したものだと、弦太朗は知っていたが、フォーゼドライバーが自分の問いに応じたように考えると、ドライバーを腰に巻いた。

 

「折角、丁寧に育てた娘を三人も貰うんだ。報告くらいはしてやんねぇと……な」

 

そう呟きながら、変身するための工程を慣れた手付きで行い、エンターレバーを握った。そして、胸にこみ上げる万感の思いを振り払うように、レバーを勢いよく押し倒す。

 

「変身ッ!」

 

コズミックエナジーを身に纏い、フォーゼへ変身する。

そして、取り出したのはオレンジ色のロケットのブースターを模したスイッチ。それを装填する。

 

《ロケット!スーパー!》

《ロケット、オン!》

 

「さぁて……撫子。ちょっくら付き合って貰うぜ!俺の父親宣言にな!」

 

そう呟くと同時に、フォーゼの姿は一瞬、青銀色に色付いた後、オレンジに染まる。その複眼は青。両腕にロケットモジュールが装備される。

彼女と弦太朗が心を通わせたことで生まれた、ロケットステイツへ変化する。

フォーゼは両腕のロケットモジュールのブースターを点火する。その勢いを利用し丘を駆け上がる。そして、頂上付近に着くと、勢い良くジャンプ。空中は飛び上がる。

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

叫び声を上げながら、夜街の光を背に、天空を登り上がるフォーゼ。ものの数分で雲をゆうに超え、そこは成層圏。地球と宇宙の境目だ。そこで加速を停止すると、ステイツチェンジを解除。パラシュートモジュールを装備し、フワフワと浮かぶ。

そして、大きく息を吸い込むと、星に向かって宣言する。

 

「おぉおおおおい!裕理ねえちゃぁああん!信吾さぁああああんっ!」

 

拡声器を通したように空に響き渡る声。それが成層圏全体に響き渡る。

 

「空と、美愛と、ひなは俺が育てる!だから!生きてんなら、早く怪我治して向かえに来てやれ!死んでんなら!安心して成仏しろよぉおおお!」

 

児玉し、広がってゆき、遠ざかる彼の声。弦太朗はそれを最後の最後が消えるまで聞くと、ユラユラとパラシュートモジュールに揺られて、落下していった。

余談だが、この後ジェット気流に巻き込まれて、弦太朗の帰宅は深夜の一時過ぎになるのだった。

 

 

 

 

「ふぃ〜。やっとついた」

 

訳合って、大西洋まで飛ばされた弦太朗は這々の体で、帰ってきた。その際、フラッシュモジュールとネットモジュール、スクリューモジュールを使用し、海中にいる魚を取って来たのだが……。

 

「もう、空たち寝てるだろうし、居間で寝るか」

 

当初の予定通り、居間で寝ることにした弦太朗は居間に向かった。すると、そこには心配そうな面持ちで、居間のテーブルに座る空と美愛の姿があった。

 

「ただいま!大西洋で魚取ってたら、遅くなっちまー」

「お兄ちゃんのバカッ!」

「勝手にいなくならないで下さいッ!何か合ったのかと思って、心配したじゃないですか!」

 

弦太朗を見つけるとすぐ様駆け寄り、抱きつく二人。同時に怒る。弦太朗は、なははは、悪かったな、と言うと、二人の頭をポンッと撫でた。

 

「色々合ってな。魚取って来たんだ」

 

そう言って、ビニール袋に入った魚を見せる弦太朗。彼は空達には小鳥遊家から提示された条件を言わないつもりだった。それは、無駄な心配をかけ、無駄な気遣いをさせないという、彼なりの配慮でもあったのだ。

 

(家族は家族らしく、暮らして行かなくちゃなんねぇもんな)

「お兄ちゃん!」

「叔父さんっ!」

 

そう物思いに耽っていると、空と美愛の怒声が響き渡る。

 

「はいっ!」

 

弦太朗はその怒声に何処か懐かしさを覚えながら、居住まいを正す。

 

「叔父さんは……怒られてる自覚が足りませんね。バツとして、上で私達と一緒に寝てもらいます!」

 

「ちょっ!待て!それは可笑しい!待て!おかしー」

「問答無用!美愛!行くわよ!」

「うん!お姉ちゃん!」

「まてぇええええっ!」

 

弦太朗は抵抗も虚しく、彼は二人に二階へと連れ去られたのだった。

 

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