「宇宙キターッ!」
「超進化!」
「わがままを言わないでくれ……」
「私達、三人一緒がいいんです!」
「あんたらがこいつら三人纏めて世話する気ねぇってのがな!」
「どう使うかはお前さん次第じゃ」
路・上・観・撮
ロケん
「眠れねぇ……」
時刻は朝の四時。弦太朗は冴えた目で時計を眺めた。ここに横になって何時間が過ぎたのだろうか、わからないが、彼は全く眠る気にならない自分を呪った。
「どーすりゃいいんだ。んとに……しかも身動きも取れねぇし」
そう言って弦太朗は僅かに柔らかい感触のする右の腕を見る。そこには、寝ぼけて抱きつく空の姿があった。まだ成長途中の寂しい胸が押し当てられ、独特の柔らかい感触を腕に教えていた。
(まぁ、大半はこいつのせいなんだよなぁ)
この地味に柔らかい感触が弦太朗の眠りを妨げていた。
(はぁ……何を言っても無理だろうけど)
何度も揺すり起こすことを繰り返しているが、その度に
「うるしゃい!」
と叩かれ
「にゃによー。あっちいけ!」
とがっちり抱きつかれたまま、弦太朗の腕に噛み付いたりしてくる。弦太朗は、猫みたいだな、と思いながら、空を無理矢理引き剥がそうとする。
「おい、空!ダメだ!結婚前の男女がこんなにくっ付いちゃ!ほら、離れろ!」
「んー……」
どうにか外そうとするが、空は相変わらず眠りこけている。
あげく今度は自分の脚を弦太朗に絡ませてきた。
「おいおい……どうにかしてくれよ……」
弦太朗が溜息交じりにそう言うと、それに応えるように、空が突然呟いた。
「お父さん……」
皆の前にいるときは、失った悲しさに気づかなかったのか、はたまた、二人の前で弱音を吐くわけには行かないと我慢していたのか、空は寂しそうにそう呟いた。
弦太朗は無言で、空の手を握る。
「安心しろ。空、俺が付いててやる。だから、早く寝ちまえ」
不安は放っておけば、大変な物になる。弦太朗は空に不安を感じさせないため、その手を握った。その顔はどこか、娘を見つめる、父のようだった。
朝日が窓の隙間から差し込む。弦太朗はその光に眩しさを感じ目を開けた。同時に半ば覚醒していない感覚が半身の痺れを訴えた。
「……うぇええええっ!?なんで、空が抱きついてんだぁっ!?」
痺れの原因は、ずっと夜じゅうずっと抱きついていた空のせいで、身動きが取れないことによるものだった。
「おはようございます!叔父さん」
ひょこっと、廊下側の襖から首を出して、美愛が声をかけて来た。弦太朗は狼狽えた様子で、空が抱きついて来たことを説明する。
「あ……ああああ、あのな?これは、不可抗力というか、偶然というか、偶発的というか、なんというか、気がついたら、空が抱きついててー
「大丈夫ですよー。叔父さん、年下好きでも、ロリコン好きにも見えませんから」
美愛にそう言われ、安堵する弦太朗。だが、ここで終わるほど、彼女も甘くは無かった。
「でもー、何と無く、嬉しそうにしてるのは頂けませんね?」
「う、嬉しく何かぁ、ねぇぞ!俺だって、女の子に抱きつかれたこと、何度もー……
そう言いかけて弦太朗は指折り数えて一度くらいしかなかったことに気づき、数えていた手をバッと振り下ろした。
美愛がそれを見て嬉しそうにからかう。
「ふふふー、あんまりないみたいですねー」
「ああ。ねぇよ!悪いか!」
開き直る弦太朗。
美愛は息を零して笑うと、姉を見て言う。
「お姉ちゃん、ものすご〜く、低血圧で、朝はこうやって誰かに抱きついて暖を取るのが日課なんです」
「低血圧?ってことは、血の巡りが悪いのか……」
「?ええ。そうですよー」
「んー……体質ならしかたねえ」
そう言って弦太朗は諦めたようにゴロンと横になった。
「まぁ、お前らは夏休みだから、朝遅くても問題ないだろ?俺も、レポート提出に大学に行くだけだし、寝てるか」
その様子を見て、美愛は優しく笑うと、空の隣に横になった。
すると、
「おーい、弦太朗ちゃん?聞いてよー。また、女の子にー」
寝室に通じるドアをガラッと開けながら、男が一人入ってきた。それを見て、弦太朗は目を瞬かせる。
男も目の前の出来事に信じられないのか、目を瞬かせていた。
美愛は男の表情を見て、何か勘違いされたことに気づいて、口に手を当てている。
「よ!仁村。どうしたんだ?」
弦太朗が男のことを仁村と親しげに呼ぶ。
それに応じるように、弱々しく手を上げると仁村は絞り出すように声を出しながら、呟いた,
「あー……弦太朗ちゃん?……まさか
弦太朗ちゃんにそんな趣味があったなんて……わるいけど、帰るわ。さよならっ!」
そう言って、スタコラサッサーと逃げてゆく仁村。弦太朗は首を傾げた。
「なぁーんだあいつ。すぐ帰っちまってー
「叔父さん!すぐに追いかけて!」
美愛の指示が飛んだ。弦太朗はそれに対して疑問を投げかけた。
「ん?追いかける必要あんのか?」
「大有りですよ!多分、叔父さん、あの人にロリコン誘拐・性犯罪者って、認識されましたよ!?」
「いやいや……んなわけ……」
そう言いかけて弦太朗は、美愛の言うことが確かなことに気づいた。そう。まず、弦太朗の横には抱きついて眠る空がおり、そしてその隣には美愛がいるのだ。そう思われても仕方ない。
「……!やっべ!」
弦太朗は空を勢い良く引っぺがえすと、勢い良く駆け出していった。
「いやぁ、ビックリしたよ。弦太朗ちゃんがそんなことするとは、思わなかったけどさ」
弦太朗が追いかけて、仁村を連れ戻してから数分後。如月家のキッチンで、さも当然といった風に料理を作る仁村の姿があった。
「嘘つけ。お前、思いっきり人のこと誘拐犯だの、性犯罪者だの罵って来たじゃねぇか」
追いついた時に言われたことを釘差しながら、弦太朗はまな板に置かれた大根を短冊切りしながら言った。
仁村は、なはは、と笑いながら卵焼きを作る。
「だって、弦太朗ちゃんの性格ならしないって言い切れるよ?けど、いきなり、事情知らないであれを見たら、疑っちゃうって」
仁村の言うことも、一理どころか十理ある、と思うと弦太朗は頷いた。
「んで、今日はまたなんで来たんだ?」
「そうそう!聞いてよー!弦太朗ちゃん!」
仁村が困ったような口調で話しかけて来た。
「いや、なんかねー。メンヘラって言うの?そう言う女の子に手を出しちゃったみたいでさー。昨日も、包丁持って追いかけられててー」
「おいおい。大丈夫なのか?怪我とかしてないか?」
「あぁ。俺のほうが足が速かったからね。何とか逃げ出せたよ」
そう言ってガッツポーズする仁村。その頭を弦太朗は小突いた。
「馬鹿野郎!女を取っ替え引っ換えしてばっかいるから、んな厄介ごとに引き込まれるんだ。ちっとは、反省しろよ」
仁村はその言葉に無言で頷くと、卵焼きを焼き始めた。
卓袱台の上に並ぶのは、純・和食と呼ばれる物ばかり。摘み菜と白菜のお浸し、塩鮭、卵焼き、白米、キュウリの糠漬け、大根と厚揚げの味噌汁。
到底男二人が作ったようには見えない。
「叔父さん、私朝はパン派なんでー
「パン!?お前、よくあんなスカスカな物食って、朝から生きていけんな!燃費?がいいのか?今の子供ってのは」
弦太朗が驚いたような表情を浮かべる。それを隣で聞いていた仁村は、プッと吹き出しながら、注意する。
「おいおい。弦太朗ちゃん。燃費がいいはないでしょ?燃費がいいはないでしょ」
そう言いながら、牛乳を注ぎ、卓袱台の上に置いてゆく。
「お。そっか。デリカシーと配慮に掛けてたな。悪い」
渡された牛乳をそう言うと、グイッと一気飲みする弦太朗。
「パンなんかよりも、ご飯のほうが、腹いっぱいになんだよ。だから、家じゃ、毎朝ご飯だ。パンはねぇ!」
そう言うと弦太朗は胸を張る。それを聞いと、美愛がため息をついた。その顔は朝からそんな重たいもの、食べられないと言わんばかりだ。
仁村が弦太朗に助け舟を出した。
「まぁ、ご飯のほうが、ダイエットには効果的だし、俺は好きなんだけどね」
「そうなんですか?」
「うん。なんでかって言うとー
仁村は女の子に好かれるためなら、普段の生活にあまり必要無い知識を覚える。その努力を他に行かせ!と思うところもあるが、今回はそれに感謝し、美愛の説得を任せることにし、自分は空とひなの面倒を見ることに専念する。
「ひな、ご飯はお茶碗を持って食べるんだぞ。じゃないと、ご飯を食べちゃうぞお化けに取られちゃうぞ」
「たべちゃうぞうお化け?」
「あぁ。ご飯茶碗を持ってない子のご飯を取って行っちゃうお化けだ」
「ひなのごはん、たべられちゃうのー?」
「ぁぁ。だから、ちゃんとお茶碗は持って食わねえとな」
食べちゃうぞうおばけは、如月家に大体伝わる、子供にお茶碗をもたせるための作り話だ。弦太朗も小さい頃はこの食べちゃうぞうおばけに恐怖し、お茶碗を持つようになった。どうやら、子供心にそれは怖いようで、ひなは必死にお茶碗を持って、食べていた。
「空、フラフラしてるなよー。あぶねぇぞー」
横目で隣に座る空を注意する。普段の彼女とは違い、今の彼女は情景反射的な形で、ご飯を口に入れ、食べていた。意識のような物は感じられない。それほど、低血圧が酷いのだろう。
「なぁ、美愛。こいつ、いつもこうなのか?」
親指で空を指す弦太朗。美愛は食べ物を飲み込むと同時に頷いた後で言葉を口にした。
「そうですよー。酷い時は、牛乳をコップじゃなくて、テーブルに注いでる時もありますし」
「んな、バカなー
「あ〜っ!空ちゃん!」
弦太朗の言葉を遮るように、仁村が叫んだ。すると、太ももに突然ヒヤリとした感覚が襲った。見ると、空がコップではなく、弦太朗の太ももに牛乳を注いでいた。
「……あー……美愛、布巾を取ってくれるか?仁村、悪いけど、ティッシュ取ってくれ」
「はーい!」
「あいよ」
弦太朗の支持に二人が機敏に応じる。
空が零したのを見て、ひながきゃはは、と笑う。
「そらねーたん、ぎゅうにゅ、ダッパーンってこぼした!きゃははっ!」
「ひな、笑うんじゃねえ」
弦太朗が優しい口調で注意した。
「いいか?誰だって失敗するんだ。それを笑っちゃ、ダメだぞ」
「うーん……わかった!」
明らかにわかってないようだったが、弦太朗はそれでも構わないと思った。言うことに意味があると、思っているからだ。その様子を仁村がみて、呟いた。
「はは……なって一日でこれって……弦太朗ちゃんってすげーや」
一人の少女が弦太朗の家を眺めていた。その目は異様な程に、黒い。漆黒と言っても過言ではないその瞳は陽光さえも寄せ付けないほど。
「あの人の隣は……私のもの。だから……」
『ラスト・ワン!』
優しく、中性的な声で、手にした黒いボディ銀色のドームのついた何かが、声を上げる。それはゾディアーツスイッチと言われるもの。それはピキピキと音を立てて、割れた。中から現れたのは、青い螺旋の装飾の施されたスイッチ。その螺旋の中心には、赤いボタンが付いている。
「なるほど……深い嫉妬による、執着心か……。自分の思い通りにならないと、気に食わない奴……かな」
黒い髪を無造作に束ねた女性が、悲しげな目で、少女を見つめた。その手には、金色の螺旋の装飾の施されたスイッチが握られている。
「人間と言うものは難儀だな。自分の欲望一つも抑えられないなんて……な」
タキシード姿の男が呆れたように言う。それを女性が皮肉めいた口調で言葉を返す。
「あら、でもそのおかげであなたと言う存在が生まれたのよ。人間には感謝しないと……それに」
そう言って女性は少女を期待の篭った冷たい眼差しで見つめた。
「あの子はのトナカイの星の運命を持つ子よ」
「トナカイ?なるほど。俺たちと同じ運命を持つ、と言うことか……」
「そうよ。新しい仲間が生まれる……楽しみね。フェリス」
「あぁ。全ては盟主様のために」
二人はそう言うと、少女を残し、その場を後にした。
弦太朗と仁村は課題を出すために、家を出、大学へ向かっていた。
「今更、直接課題を出しに来い、なんてさ、非合理的だよなぁ」
「そう言うなって。教授達だって、結構年行ってんだ。しかも、文系の大学だろ?パソコンを今から覚えろってのが、どたい無理な話だろ?」
仁村の文句は御尤も、だと思ったが、教授達の年齢を考慮すれば、パソコンは不要だろう、と思い、教授を擁護するように、仁村に言った。
仁村はそれを聞いて、確かにな、と笑った。
「うちの大学は爺さん教授が唯でさえ多いもんなー。パソコンを教えるのも一苦労だろうな」
「だろ?触らぬ爺に祟り無し、って奴だ。ま、パソコンで打ち込んで言いって言われただけ、まだマシだと思うぜ?」
そう言ってコピー用紙に打ち込まれた課題をぴらぴらとめくった。仁村もそう思ったのか、深く頷いた。
「ところで……弦太朗ちゃん」
「ん?なんだよ。改まって」
弦太朗が不思議に思いながら、歩みを止めた。
「あれ見てみなよ。弦太朗ちゃん、鼻血出すと思うから」
「はぁ?んなわーブッ!」
そう言いながら弦太朗が、仁村の指差した方向を見る。そこには、息を呑むほど、美しい女性が立っていた。だが、その格好が問題だった。
「仁村、何で萊華さんはナースの格好をしてるんだ?」
弦太朗が鼻血がこれ以上出ないように、テイッシュを鼻に詰めながら、そう聞く。仁村は肩を竦めて、さぁ、と爽やかに答えた。
「あの人の考えることがわかれば、そいつはニュータイプか、世界一の女好きか、恋愛上手だろうね」
お前が、それを言うか!、と思ったが、仁村の言うことはやっぱり御尤もで、友達になったが、今だに彼女の気持ちと言うのものを、弦太朗は理解出来ていなかった。
「よし……いい機会だ。何でナース服で居るのか、聞いてやろうじゃねぇか」
「へ?おい、マジかよ!?」
「今日こそあいつの心を開く!」
弦太朗はリーゼントを撫でつけ、気合を入れると、ズカズカと萊華の前にやって来る。
「ウッス!萊華さん!」
「あ、弦太朗。ヤホー」
人形のように無表情で挨拶をする萊華。弦太朗が今まで関わって来た誰よりも冷静なのか、はたまた興味がないこと以外には基本無関心なのか、よくわからない。
弦太朗は気にせず、訊ねた。
「なんで、ナース服なんだ?趣味か?」
「うん。弦太朗の性癖を確かめたかった」
「お、おう。そうか……」
「巨乳・ナース好きと……これでまた一つ、弦太朗の性癖が露顕した……」
そう言うと萊華は、ピースと言いながら、ピースサインを出す。弦太朗は呆れたような、疲れたような表情を浮かべると、すぐに辺りを見渡し、それを促したであろう張本人を探した。
「佐古さんの野郎、どこ行きやがった!」
「ふっふっふ!はーっはっはー!」
どこからか高らかな笑い声が聞こえて来た。弦太朗はその方向に視線を向けると、そこには太った男が腕を組んで立っていた。
「如月弦太朗くん!君は路上観察研究会の部員では無かったかね?」
「知らねぇ!俺はそんな部活に入った覚えはねぇっ!」
「いや、そんな冷たいこと言わないで!ほら、織田くんの胸あげーブッ!」
突如、一陣の風が薙いだと同時に、乾いた音が鳴る。見ると、萊華が白いハリセンを持って立っていた。
「私の胸は私のもの。会長のものでは無い」
「やめ!あぁん!もっと!そこ!いいっ!」
無表情で、物凄い勢いで、喘ぐ中年太りした男にハリセンを振るう美女という、なんとも言えない、賢吾や流星がいたら、絶対にツッコミを入れるであろう状況に、弦太朗は珍しく目眩を覚えながらも、それを無視して、大学へ向かおうとする。そこへ突然、仁村の悲鳴が飛び込んできた。
「うわぁあああっ!」
「仁村くん、いったいたんだね?そんな声を出して」
「仁村くん、煩い……む!」
声の大きさを注意しようと振り向いた二人は驚いた。何故なら、そこにはトナカイのような怪物が立っていた。怪物は仁村を見て猫撫で声を出していた。
「仁村くん、見つけた!ふふふふ。さぁ、私と一緒に気持ち良くなりましょ」
そう言ってトナカイ座のゾディアーツ、タランドスゾディアーツはゆっくりと歩んでくる。仁村がその姿に恐怖を覚え、叫ぶ。
「ちょっ!三人とも!見てないで助けてよ!まじで!」
助けを呼ぶ仁村。そこへ、弦太朗がフォーゼドライバーを片手にその前に割って入った。
「おっと待ちな!」
「はぁ!?何よあんた!邪魔しないでくれる?私と仁村くんのラブラブタイムを」
「ラブラブタイム?……あー、何と無くわかったぜ……」
弦太朗は何と無く、ゾディアーツが仁村を襲った理由を理解した。
「仁村、お前女に現を抜かし過ぎだぜ」
「え?それって……どういうー
「話は後だ!とにかく逃げろ!こいつは俺がなんとかす……る!」
そう言って、弦太朗は突進して来たタランドスの攻撃を避けながらそう言うと、横に転がりながら、フォーゼドライバーを装着。すぐさま、変身シークエンスに移る。
「変身!」
エンターレバーを押し倒し、コズミックエナジーを纏うと、フォーゼへ変身する。
「宇宙キターッ!」
叫ぶと同時に、x時に伸びをすると、その声は地球を一周し、遥か銀河の彼方まで響いてゆく。
「仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせて貰うぜ!」
右拳を相手に突きつけると、驚く三人を尻目にフォーゼが大振りのパンチを放った。
放たれたパンチはしっかりとした起動に乗って、タランドスの胴体を捉える。タランドスはそれを受けて、二三歩、踏鞴を踏むが、すぐに持ち直し、頭の角で突いてくる。
「だっ!うおっ!ぐぁっ!」
三度の突きを食らって吹っ飛ぶフォーゼだったが、スラスターを蒸かして、体制を整える。
「あの角は厄介だな……だったら!」
《ウィンチ、オン!》
フォーゼは自分で考え、この戦況を切り抜けられるスイッチを導き出すと、それをスイッチソケットへ差し込んだ。起動したのは、ウィンチスイッチ。フックを勢い良く打ち出し、その角を介して、電柱にケーブルを巻きつける。
「どぉどぉっ……てな!」
「この……離して!私は仁村くんに、抱きしめて貰うのぉっ!」
「落ち着けって!そんな力使って訴えたって、何も何ねーっ……てぇ!」
「うるさぁああいっ!」
フォーゼはケーブルをしっかり握り、タランドスが動かないようにする。タランドスはそれを引きちぎろうと、地面を何度も蹴り、走ろうとする。
「……埒があかねぇ!だったらこいつで!」
《ファイヤー!》
取り出したのは赤いスイッチ。それをソケットに差し込み、スイッチをオンにする。
《ファイヤー、オン!》
スイッチが読み込まれ、フォーゼのスーツが赤く染まる。同時に肩と胸には三角のアーマーが装着され、複眼とセンサーが緑色に色付く。
20番目のスイッチで変身する、炎を司る第三のステイツ。ファイヤーステイツへと変化する。
「丸焼きにしてやらぁ!」
腰にマウントされたヒーハックガンを取り出し、その銃口をケーブルに向ける。そしてトリガーを引くと、勢い良く炎が吹き出す。同時に、物凄い勢いでケーブルに引火。タランドスを炎で苦しめる。
「熱い!熱い!熱い!」
「へへ!どうだ!痛い目見ないうちに、とっとと、スイッチを手放せ!」
「わ、わかったから……熱い!早く……炎をとめ……て」
「うし。わかった」
そう言って、攻撃をやめようとするフォーゼだったが、直後、何者かが目の前に現れ、振り下ろされた何かで、吹っ飛んでしまう。
「ゴハッ!」
「フンッ。同胞の候補者を殺されてたまるか……無事か、タランドスよ」
地面を転がるフォーゼ。その前に立っていたのは、フェリスゾディアーツだった。
それを見たフォーゼは忌々しげに呟いた。
「てめぇは……猫野郎!」
「フォーゼ、生憎だが邪魔はさせんぞ。これからは我ら二人が相手だ」
そう言うとフェリスは右腕の大爪で、ウィンチモジュールのケーブルを断ち切った。自由になったタランドスは身震いすると、前屈みになり、突進の構えを取る。
フォーゼはヒーハックガンを肩に担ぐと、へっ!と笑う。
「そんぐらいのハンデがねぇと……張り合いがねぇぜ!」
し
そう叫ぶと、ヒーハックガンから火炎弾を連射する。フェリスは見事な爪裁きでそれを払いのけ、露払いをすると、その後ろか、タランドスが突っ込んでくる。
「人の恋路を邪魔する奴は!!」
「っくそ!間にあわねぇ!」
《ランチャー、オン!》
あまりの速さに驚き、叫びながらも、冷静に身体を動かし、ジャンプと同時にスラスターを蒸かして飛ぶと、ドリルスイッチをオンにする。
「ふん!貴様は飛ぶしかないとわかっていたあっ!」
「あんたがこう来るってわかってたぜぇ!」
落下するフォーゼめがけて、フェリスが飛びかかってくる。その大爪を振り下ろさんと、腕を大きく挙げた。フォーゼはすかさず、ドリルキックを叩き込んだ。
「おりゃぁああっ!」
ドリルと爪がぶつかり、火花を散らす。だが、爪と違いドリルは回転し、突貫力が強い。故にフェリスゾディアーツの爪は弾かれ、そのボディにドリルモジュールが突き刺さる。
「なっ!?」
「この距離ならはずさねぇ!」
《リミットブレイク!》
ファイヤースイッチをヒーハックガンに差し込み、リミットブレイクを発動させると、その銃口をフェリスの胴体に密着させ、一切の躊躇いもせずに、引き金を引いた。
「ライダーゼロ距離爆熱シュートォオオッ!」
「グゥウウウウッ!」
ゼロ距離で放たれた火炎砲撃を真面にくらい、両者は互いに吹っ飛び、近くのコンクリート製の壁面に叩きつけられる。その衝撃により、ファイヤーステイツを強制解除され、ベースステイツへ戻る。
一方のフェリスは地面に叩きつけられ、落下する。身体のアーマーはボロボロに炭化し、崩れていた。
「グッ!言うだけのことは……ある!だが、こちらの勝ちだ!」
フェリスは、膝を地面に付きながら、忌々しげに呟いた後で、笑う。
フォーゼは地面からよろよろと起き上がり、フェリスの発言の意味を問おうとしたその時、 タランドスが突進してくる。
「ヤベェっ!除けられねぇっ!」
叩きつけられた痛みで思うように身体が動かず、立ち尽くすフォーゼ。その前にタランドスの鋭利な八本のツノが迫る。
誰もが、それに突き刺されてしまうと、喚起し、恐怖する。
「死ねぇ!フォーゼ!」
「如月くん!」
「げ、弦太郎ちゃん!」
「弦太郎……」
四人の叫びが同時に響く。
そこへ、一筋の青い光が駆け抜けた。
「ホォオオオオワチャアアアアッ!」
《メテオ!リミットブレイク!》
青い光は怪鳥音と、ノリノリの機械音と共に現れ、突進するタランドスをその横側から吹っ飛ばした。否、蹴り飛ばした。
吹っ飛んだタランドスは近くのコンクリート製の壁をやすやすと砕きながら吹っ飛び、やがてその奥にあった民家の居間に壁をブチ抜き、ようやく止まった。
蹴り飛ばした者はトンッと軽い足音を鳴らしながらを降り立った。その者は、呆れの混じった口調で、フォーゼに話しかけた。
「全く、啖呵切って起きながら、敵の罠にまんまとハマるなんて……無事か?」
タランドスを蹴り飛ばしたのは青と黒の戦士だった。その戦士はフォーゼにとっては、敵対したこともあったが、共にその身を呈して共に戦った戦友であり、親友でもあった。
「あぁ。何とかな。ま、ボロボロには変わりねぇけどよ」
「相変わらず無茶をする奴だ……まぁいい。話は後だ。とっとと片付けるぞ」
雑談を切り上げ、青い戦士は正面を向く。その黒のスーツには星が散りばめられており、それを彩るように、流れ星の尾を模した袈裟と頭部は空を駆ける流れ星を意識した形の仮面を纏っている。
「ほう……青い流星のお出ましか……」
「仮面ライダーメテオ、お前達の運命は、俺が決める!」
青い戦士はそう名乗ると、同時に親指を自分のほうに向けた。
複眼はマゼンタの淡い輝きを放った。
のほほんとしたやりとりからの、戦闘シーン。会長と萊香さんは、書くの難しいwww
野生のトナカイは普通はあんなに突っ込んで来ません。ゾディアーツだから突っ込んで来るんです。
さて、本来なら萊香さんに瀬川くんは恋をしてますが、この話での瀬川くんポジションである、我らがヒーロー弦ちゃんは、まだ、萊香さんに恋をしていません。まぁ、どうなるかについては、おいおい考えと来ます。
さて、次回はついに青い流星が大活躍。そして、路研とライダー部の面々が出会ったりと、なんかごちゃつきます。
では、次の話まで、しばしのお暇を!