やはり先輩の青春ラブコメはまちがっている   作:チキチキ

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その種は芽生えの時を待ち望んでいた

 戸塚彩加強化プログラムが開始され1週間が過ぎた。

 ランニングから始まり食事管理、呼吸法、筋トレ、体幹等の基礎トレをみっちりやったおかげか、戸塚くんの身体能力はぐんぐん上昇していった。

 

「そろそろラケットを使った練習も始めようか」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

「まぁ落ち着け、これからも基礎トレはみっちりやるつもりだからな。まずはランニングして来い」

 戸塚くんは元気よく返事をし、比企谷くんとランニングに行った。うん、声もよく出てるし調子は良いみたいだな。

 

「ごー先輩、まだ基礎トレやるの? もう充分じゃない? 必殺技とか派手なヤツなんかないの?」

 んなもんあるか! 

 

「由比ヶ浜さん、それは間違っているわ。基礎を蔑ろにしては、決して上手くならないのよ。技を覚える事はその次よ」

 

「そうだな。基礎トレを続ける事でしっかりとした土台をたてる。それが地力に繋がるんだ。試合で勝負を決めるのはなんだかんだコレだからな。

 そして、基礎トレをやり遂げる事で自信にも繋がる。戸塚くんはどこか自信なさげのようだったからな。メンタルトレーニングも兼ねてるんだよ」

 

 実際、記録を取らせたことで、日に日にレベルアップしてることを自覚させた。すると、更にやる気があがり質の高い練習が出来るようになる。

 言うのは簡単だが、やる気を維持させるのはなかなか大変だ。そこはトレーナーの腕の見せ所だと思っていたが、どうやら俺は戸塚くんを侮っていたらしい。

 

「ほへ〜ごー先輩色々考えてるんだね〜」

 

「まぁそれも戸塚くんのやる気があってこそさ、彼は一流になれる大切な素質を持っているよ」

 おっと、もう戻って来たのか。

 

「蒲生先輩ランニング終わりました!」

 

「よし、次は柔軟とアップだ。怪我をしたら元の子もないから柔軟はしっかりやるんだぞ。終わったら球出しをするからな」

 

「はい! 八幡、今日もよろしくお願いします」

 

「おお! 戸塚の為ならなんだってやるさ!」

 こんなやる気のある比企谷くん初めて見たな……

 

 

 

 それからの練習は日を追う事に質が向上していった。

 

「今日は実戦形式でやろう。雪乃と俺は球出しと指示を交互にやる。結衣はボール出しとボール拾い、八幡はスマホで撮影を頼む」

 

『はい!』

 

 サポートをする奉仕部にも戸塚くんの熱は伝わり、みんな真剣な表情で仕事に取り組んでいた。

 どうやら、この依頼は奉仕部の親睦を深めるいい機会になったようだ。

 

 

 しかし、基礎体力はかなりついたとはいえ、特訓を始めてまだ1週間、戸塚くんの体力は限界に達していた。

 

 ドシャッ! 

 

「さいちゃんっ!? 大丈夫!?」

 

「うん、少し擦りむいただけだよ心配しないで?」

口では大丈夫だと言っているが、かなり疲労が溜まっているのが見てとれた。

 

「とりあえず一旦休憩をとろう。俺は救急キットを持って来るから水分補給をしていてくれ」

 少し無理をさせすぎたか……

 練習メニューを練り直す必要があるな。

 

 

 比企谷八幡side

 

「本当に大丈夫か? テニス部の意識改革が目標なんだし、んな無理する事はねぇんだぞ?」

 実際、戸塚は頑張っていると思う。

 腕立て伏せ5回も出来なかったのに、今では100回連続で出来るようになった。

 それ故に不安も感じるのだ。責任感やら罪悪感で突き進んでも危険なだけ、いわばストッパーの壊れた暴走列車だ。行き着く先はけっして幸せとは言えないだろう。

 

「うん、最初はね、僕もみんなを引っ張っていけるくらい上手くなれたらって思ってたんだ。

 でも、蒲生先輩やみんなが一生懸命手伝ってくれて、僕はどんどん上手くなれた。

 わがままだけどね、僕もっと上手くなりたいってそう思えたんだ」

 キャプテン失格だよねっと苦笑いする戸塚に俺は思わず違うって叫んでしまった。

 

「戸塚は間違ってねぇよ。それは当たり前だろ」

 

「そうだよ! さいちゃんは間違ってない! 

 あたし、部長とかキャプテンとかやった事ないから難しい事はよくわかんないけど……でも、さいちゃんだってプレイヤーじゃん! 上手くなりたいって思う権利はさいちゃんにだってある!」

 

「そうね、やっと芽生えた素直な気持ちなのだから、もっと大切にしなさい」

 

 俺達の気持ちが届いたのか、戸塚はそっと顔を伏せる。

「みんな……アリガト……よしっ! 練習再開しよっか!」

 

「よーし! がんばろー!」

 後はテニス部の奴らがやる気になってくれたら万々歳だなと思っていたが、どうやらそう簡単には終わってくれなさそうだ。

 

 

「あれ? テニスやってんじゃん♪ あーしテニスやりた〜い♪」

 耳障りな声の方を向くと、トップカーストのリア充軍団がこちらへ向かっていた。

 チッまた面倒な奴らが来やがって……

 

 

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