比企谷八幡side
こちらへ向かって来るのは葉山、三浦を中心としたリア充軍団。俺達のことなんて、まるで見えていないようだ。
「ねぇ隼人〜テニスやろ〜よ〜。戸塚? あーし達も遊びたいからコート使っていいっしょ?」
「……僕達は遊んでるんじゃない! 部活動として使っているんだ! 遊びたいなら他所に行ってよ!」
戸塚の態度が予想外だったのか目を丸くする三浦。
戸塚が自分の意見をちゃんと言えるようになるなんて……やばい、泣けてきちゃう。
「でも、部外者もいんじゃん? なんであーし等はだめなんよ?」
「私達は奉仕部としてテニス部の練習を手伝っているのよ。邪魔だから他所へ行って貰えないかしら?」
「はぁ!? なに喧嘩売ってんの?」
チッこういう輩は話しを聞きやしねぇなおい。
「……ねぇヒッキー? ちょっとやばいんじゃ……」
由比ヶ浜が不安そうに先行きを見ている。
「安心しろ。こっちには切り札がある」
「きりふだ? ……あっ! ごー先輩!」
そうだ、俺達はあくまで蒲生先輩が来るまでの時間稼ぎをすればいい。
「まぁまぁ落ち着けって。そんな喧嘩腰になんないでさ。みんなで遊んだ方が楽しいじゃないか」
…まったく見当違いもここまでくると滑稽だな。
「悪いんだけどよ。俺達はお前らとやってもつまんないんだわ。そんなに遊びたいならROU○D-1でも行ってろよ」
ここまでストレートな悪意にさらされた事が無いのか。流石の葉山と言えど、動揺している。
「……それなら、俺達と試合をするのはどうかな? 見たところテニスを出来そうなの雪ノ下さんだけみたいだし、あまり質のいい練習は出来ていないんじゃないか? 優美子は中学県選抜だし良い練習相手になると思うよ?」
「悪いが……「あら、安い挑発ね? その薄っぺらいプライドごと叩き潰してあげるわ」
「雪ノ下何を言ってるんだ!? わざわざ挑発にのることないだろ!?」
慌てて雪ノ下に詰め寄るも、どこか諦めた様子だった。
「ああいう輩は群れをなす生き物よ? さっき彼が試合をするって言ったから、直ぐに人が集まって来るわ。そうなれば勝負を受けざるを得ないのよ」
「マジかよ……」
雪ノ下の言ったとおりテニスコートには多くの観衆が詰め寄っていた。何あいつ、ヘタな政治家より人気あるぞ。
由比ヶ浜には審判をやってもらい、メンバーは戸塚、雪ノ下、俺をローテーションで回すことに。
序盤は雪ノ下の活躍により一進一退の勝負を見せていたが、スタミナが無いことを見抜かれすぐさま劣勢になってしまった……
「不味いわね……このままじゃジリ貧よ」
雪ノ下の顔にも焦りの色が見える。
スパーンッ!
ここに来て葉山のサービスエースで5点ビハインド、あっちはあと1点でマッチポイントになる。
「どうする? まだ続けるかい? もう勝負はついたと思うけど」
「……そうだな。勝負はついた。俺達の勝ちだ」
そう、俺の視界には観衆を真っ二つに裂きながら悠然と歩いてくる蒲生先輩が見えていた!
いや、モーゼじゃねぇんだから……
比企谷八幡sideout
「これはなんの騒ぎだ?」
俺がいない間に事態が進展しすぎてついていけない件
とりまグロッキー状態の八幡に詳しく聞いてみるか。
ほうほう、なるほど〜なんでこんなに話しが拗れてるんだよ!
正直やりたくないが、もうやるしかないか……
「遅れて悪かったな。彩加、怪我は大丈夫か?」
「うん、問題ないよ。雪ノ下さんに絆創膏貼って貰ったから、まだ出れるよ」
よし、それなら俺と彩加で勝ちに行くか!
「ちょっと早くしてくんなーい? 時間もないし〜隼人パパっと決めちゃって〜」
「しょうがないか……悪いけど一気に決めさせて貰うよ」
そう言い放ち鋭いサーブが俺達を襲う……が!
ズバーン!
俺が打ち返した球は葉山のラケットに当たり、その衝撃で葉山は尻もちをつく。葉山の表情には恐怖の色が見え、観衆は絶句しているのか静まり返っていた。
「悪いが、俺も後輩をいたぶられて気が立っているんだ、手加減はしない」
それからは俺のサーブで圧倒し、一気にマッチポイントまでもってくる事が出来た。
しかし、あちらも落ち着きを取り戻したのか強気な視線を向けてくるようになった。
俺のサーブを、葉山が遂に打ち返しラリーに入る。テクニックはあちらが上なのか、なかなか返しずらい所へ打ち込んでくる。
「これで流れを断ち切る!」
葉山の強烈なショットが彩加を襲う。結衣や八幡の焦りの声が聞こえるが……
「彩加! ここで決めろ!!」
「はぁあぁああああっ!!!」
彩加の気合いがコートに響きわたる。
「優美子下がれ! 強打が来るぞ!」
俺の強烈なサーブが未だに頭に残っているのだろう。今なら彩加のショットは必殺となる!
スッ……ポン……ポン……ポン……
「ど、ドロップボレー!? あれは高等テクニックのはず、戸塚いつの間に習得してたんだ!?」
「やった……やっった〜!!! 蒲生先輩! 遂に完成しました!」
彩加が満面の笑みで駆け寄って来る。
彼には筋力が無かったが、しなやかな手首と優れたバランス感覚を持っていた。
そこで、足腰と体幹を重点的に鍛えたことで、あそこまで威力を殺すドロップボレーが完成した。
「彩加、あのショットは今までの集大成だ! 本当によく頑張ったな!」
「本当だよ! さいちゃん凄い!」
結衣や八幡にもみくちゃにされながら泣く彩加を見ている雪乃も目尻に涙が浮かんでるし、俺も胸がいっぱいになってくる。
「キャプテン!」
ん? まさかテニス部員か? 観衆の中にいたのか……
「みんな、来てくれたの?」
「すみませんでした! ……俺達見てることにしか出来なくて、キャプテンがピンチだって分かってたのに……」
「良いんだ。みんなが来てくれただけで、僕は凄く嬉しいよ。良かったらみんなで練習しよ? こんな僕でも上手くなれたんだ、きっとみんなも強くなれるよ!」
彩加の言葉に感極まったのか、泣きながら抱きつくテニス部員達……
依頼は無事完了ってところだな。