プレミアムフライデーをご存知だろうか。
働き方改革と連携し、月末金曜日は夕方には仕事を終え、飲み会やら買い物をしよう的なアレである。
えぇ〜? ホントでござるか〜? そんなの都内の一流企業だけなんじゃないの〜? ソースは俺の親。
我が家は共働きなんだが、両者仲良く残業決定らしく晩飯は適当に食っとけと連絡が来た。
そんな訳でいざスーパーへ、財布が薄いのは高校生共通の悩みだろう。適当にカップ麺でも買って後で親にたかるか。これぞ誰も損をしない錬金術である。
スーパーのカップ麺売り場には数多くの商品が置かれていた。ほうほう、新作ですか。最近は有名ラーメン店とコラボしてるのが多いんだな〜早速食べてみますか。
「あれ? ごー先輩?」
ん? この可愛らしい声は……
「やっぱりごー先輩だー! やっはろー!」
やっぱり結衣か。私服姿もカワユス!
「こんばんは結衣、お姉さんと買い物か?」
「えっ? 違うよ〜ママだよ」
「ふふっ初めまして結衣のお母さんです♪ 君がごーくんね、結衣からよく聞いてるわ〜」
ふぁっ!? お母さん!? ガハママわっか!
「もぉ〜! 余計なこと言わなくて良いから!
えと、ごー先輩なに買ってたの?」
誤魔化すのヘッタクソか! 話しそらせてないから、ガハママめっちゃニヤニヤしてるから。
「あ、あぁ晩飯をな……」
チラッと籠をみた結衣がジト目でこっちを見てくる。
「まさか、カップ麺ですませようとしてる?」
「当たり前だ! 安い旨い早い全てを兼ね備え、更に非常食にも適性をもつ日本人のソウルフードと言っても過言ではない!」
「まさかの大絶賛だっ!?」
「そうね〜けど、栄養バランスも偏るし男子高校生には物足りないんじゃないかしら〜
そうだ、良かったらうちにご飯食べにいらっしゃい」
「それいい! ごー先輩おいでよ〜♪」
いやいやいや、何を言ってらっしゃるのですかこの母娘は!?
「それは申し訳ないですし、遠慮します」
「遠慮する事ないのよぉ〜パパが残業になっちゃったから、このままだとせっかくのご馳走が台無しになっちゃうし……ダメ……かな?」
可愛い……はっ! 危うく意識を持ってかれるところだった。う〜ん、これ以上断るのも失礼……か
「そういうことでしたら、お言葉に甘えさせていただきます。何もしないのも申し訳ないので、荷物持ちは任せてください」
「あら、本当? 助かるわ〜」
まるで、俺がそう申し出るのが分かっていたかのように、自然とお買い物バッグを渡された。
ハハッまさか米10キロ買うとは思わなかったよ。やはり、母親は強かなものなんだな……
遂に由比ヶ浜家に着いてしまった……
「たっだいま〜キャーサブレー! よしよし〜♪
ごー先輩も早くあがって〜」
結衣に誘われ玄関に入ると可愛らしい犬が待ち受けていた。おぉーめっちゃじゃれついてくる、かまってオーラ全開だな飼い主に似たのか?
「もぉ〜駄目だよサブレー、ごー先輩荷物持ってるんだから」
ひょいとサブレを抱き抱える結衣。
「ふふっごーくん荷物持ってくれてありがとうね。夕食の準備しちゃうからちょっと待っててね♪」
「いえ、私も何かお手伝いを……」
「だ〜め♪ ごーくんはお客様なんだから、結衣の部屋でちょっと待っててね♪」
ただ待つのも……と願い出るも、ガハママに軽くいなされてしまった。
……えっ結衣の部屋? 良いの!?
「じゃ、サブレも一緒に行こっか。ごー先輩こっちだよ〜」
マジで!?
結衣の部屋は雑貨の類が少なく、どこか落ち着いた雰囲気でまとまっていた。
なんで女子の部屋ってこんないい匂いするんだ!? まずい、全然落ち着かん……どうすれば良いんだ!?
「あ、あんま見ないで……恥ずかしい……」
……はっ! あっぶねぇ! 危うく抱き締めるところだった。マジこの子カワユス!
「えと、何しよっか?」
待って! 俺に聞かないで!
えーマジでどうしよう……無難だ、無難なものにすれば変に思われない……筈だ!
「学校は楽しいかい?」
「なんで親目線!?」
やべっ失敗した。
「んんっ! そろそろテストだが、結衣はちゃんと勉強してるか?」
「ふぇっ? あ〜うん、してるよー」
はいダウトー、絶対してないよねそれ。
「そんなことより! 去年まで奉仕部ってゆきのんとごー先輩だけだったんだよね? どんな感じだったの?」
そういえば、話したこと無かったか……
雪乃が入って来たのは5月だったかな、平塚先生に連れられて来てな。いかにも嫌々入部してあげますオーラ全開で、第一印象は最悪だったよ。
えっ? 今では仲良しなのにだって? あれはつい最近になってだ、最初は業務連絡以外会話すらしてなかったよ。あれだな、借りてきた猫ってやつだ。
それから1年間色々な仕事を受けていく内に、お互いの考え方や性格が分かってきて、少しずつ歩み寄って行ったんだ。
多分、雪乃は居場所が欲しかったんだろうな。
それでな、雪乃と約束したんだよ。
それは……
コンコン
「2人共ご飯出来たわよ〜」
「続きはまた……な。ご飯行こっか」
結衣はブーブー文句言っていたが、お母さんに怒られるぞって言うと渋々ついてきた。ちゃんと教育されてるんだな〜
「お待たせしちゃってごめんね。たくさん作ったからいっぱい食べてね♪」
すげ〜めっちゃ美味そう! 栄養バランスもちゃんと考えてるんだろうな〜やっぱ主婦ってすげーな。
「ごー先輩! 特にこのメンチカツが最っ高に美味しいんだよ! いつも3個は食べちゃうんだ〜」
えっ? 結構大きいんだけどカロリー計算大丈夫?
「それでは、いただきます。
っ! めっちゃ美味い! メンチカツなんて揚げ物とは思えないくらい口当たりが軽い!?」
「ふふっそれはね〜たっくさんキャベツを使ってるからよ♪ お肉とも相性抜群だし、肉汁をしっかり受け止めてくれるから、口の中で肉の旨味が噛めば噛むほど染み渡るの。しかも、とってもヘルシーなのよ♪」
これは結衣がおすすめするだけあるな。今まで食べてきたメンチカツでも1番美味い!
「この漬物も自家製で自信作なのよ〜ご飯もたくさん炊いたからどんどんオカワリしてね♪」
俺は無我夢中で食べ進めた。もちろん美味しいのもあったが、残したらガハママショック受けるだろうし……
この笑顔を曇らせる訳にはいかない!
「ごー先輩そんなに焦んなくても良いのに〜なんか子供みたいで可愛い♪」
な……んだと……結衣が溢れんばかりの母性を発揮している! 君がそれ持っちゃったら最強キャラじゃん!
嬉し恥ずかし体験もなんとか乗り越え
「ご馳走様でした。とても美味しかったです、今日はありがとうございました」
「はい、お粗末さまでした。たっくさんオカワリしてくれて嬉しかったわ〜」
「ホントだよね〜メンチカツ凄い勢いで無くなっていったもんね〜」
「お恥ずかしい限りです……夜も更けてまいりましたし、そろそろお暇させていただきます」
「あら? もうそんな時間かしら? 泊まっても良いのよ?」
それは無理だー!
「いえ、流石にそこまで甘える訳にもいきませんし。また、日を改めてお礼致します」
由比ヶ浜母娘に見送られ、やっとの思いで帰路に着く。はぁなんとかお父さんが帰って来る前に脱出出来たか……
しっかし、こんな遅くまで残業とは……やっぱプレミアムフライデーなんて幻だな!