高校最後のゴールデンウィークも明け、久しぶりに奉仕部は活動していた。
前までは文芸部とかしていた暇な時間も、結衣が入ってからは偶に雪乃も混じって駄弁るようになった。
「いや〜もうスグ梅雨だね〜髪が爆発するから、あたし嫌いなんだよね〜」
「まぁ女の子には辛い時期だよな」
「そうかしら? 私はそんなこと無いのだけれど……」
「ホント? ……わ〜ゆきのん髪つやっつやだ〜」
「ちょっと由比ヶ浜さん、あまり触らないで欲しいのだけど……」
お二人さん? あんまイチャイチャしないでね? 目のやり場にすっごく困るんですけど……
「そういえば、ヒッキー来ないね?」
「余計な事でもして、平塚先生に呼び出されたんじゃないか?」
「ん〜よしっ! 探しに行こう!」
「そう……頑張って」
いや、興味なしか!?
ぶつくさ文句をたれる雪乃を連れ八幡を捜索する事になった。結衣はなかなか交友関係が広いのか、いたるところで知り合いに八幡の行方を尋ねるも「比企谷、誰?」と逆に尋ねられる始末……
「も〜全然見つかんないじゃん!」
「ここまで比企谷くんが認知されてないとは思わなかったわ。平塚先生の所へ行った方が賢明ね」
いや、最初からそう言ってるんだが……
そして歩くこと数分、職員室に着くとそこには八幡の姿があった。
「ヒッキーいたー! 部活来んの遅すぎ! わざわざ探しに来たんだからね!」
やっと見つかった八幡に対し、喜びより怒りの方が強かったのか……まぁ気持ちは分かるが……
「貴方って、全然認知されていないのね。人に尋ねても逆にこちらが『比企谷って誰?』って言われてしまったわ」
ちょっ!? それは黙ってた方が良いって……
ほら〜地味に傷付いてるじゃん……
「なんか……悪かったな……」
「いや、別にいいんだけど……その……携帯教えて? ほ、ほら! また探すのもダルいし!」
「ん? グループに誘えば良いだけでは? 結衣まだ八幡に教えて無かったのか?」
「えぇー何も聞いてないんですけどーL○NEやって無いから別に良いんですけどね……」
うっ! 負のオーラが八幡から漂い始めた……
「あ、あはは……じゃあ早くインストールして!」
結衣の言葉にハイよっとスマホを差し出す八幡。
「えっあたしがやるの? めんどくさ。てか、良く人にスマホ渡せるね?」
そう言いながらも、手馴れたように操作を始める。案外面倒見が良いんだよな〜
「まぁ見られて困るもん無いしな。メールの相手も妹かアマ○ンばかりだしな」
「よし、結衣。ネットの履歴復元してみよう」
「すみませんでした!!!」
すぐさま土下座する八幡に、めっちゃ冷めた目を雪乃は向けていた……今の時代、何でも検索出来るもんね! でも、ウイルスには気を付けるんだぜ!
「りれき? まぁいいや。ハイ、ヒッキー出来たよ」
「おう、サンキュー」
「そうだ、私も入れてくれないか? 業務連絡する時、手間が省けるしな」
なんだ、平塚先生やけにソワソワしてると思ったら仲間に入れて欲しかったのか。可愛いなこの人!?
その後、4人で部室に戻りダラダラしていると、結衣が携帯を見ながら曖昧な笑みを浮かべ、深い溜息をついた。
「何かあったか?」
「えっと……なんか変なメール来て……」
「比企谷くん、裁判沙汰になりたくなかったら今後、卑猥なメールを送るのはやめなさい」
内容がセクハラ前提かよ……しかも犯人八幡確定かよ。
「俺じゃねぇよ……つか、証拠はどこにあんだよ。証拠だせ証拠」
「それ、思いっきり犯人の台詞だぞ……」
「いや〜ヒッキーは多分犯人じゃないと思う」
結衣が庇った事に納得していないのか。雪乃は目線で理由を問うてくる。
「なんか、内容がクラスの事なんだよね〜ヒッキー全然クラスに関わって無いし、てか認知されてないし」
「おい、俺も同じクラスなんですけど!?」
「なるほど、それなら比企谷くんは犯人ではないわね」
確かに、それなら納得するな。
「……まぁ無視しとけば良いしね〜気にしない気にしない♪」
「彼女、時々恐ろしい事をさらりと言うわね」
うん。リア充故の処世術か……
結衣は手持ち無沙汰になったのか机にグテ〜ともたれ掛かる。
「あーひまだー」
「はぁする事がないなら勉強でもしたら? 中間試験まであまり時間ないわよ?」
雪乃が諭すように言うも結衣はそのまんま聞き流してるようだ。まぁ人に言われてやるようなら最初からやっているもんだ。
「勉強とか、意味無くない? どーせ社会人になったら使わないよ」
「で、でた~馬鹿の常套句!」
八幡の物言いにカチンときたのか、結衣の目がつり上がる。
「じゃあサインコサインっていつ使うの!?」
「えっと……それはあれだな、使う人は使うんだよ」
「じゃあ、あたし使わないから勉強しないもん!」
おぉー結衣が八幡を論破するとわ。
「勉強は頭の体操だと思うんだな」
「え〜なんかジジくさい」
ゴハッ!
「ちょっと由比ヶ浜? 蒲生先輩めっちゃショック受けてるぞ? 下手したら立ち直れないぞあれ」
「由比ヶ浜さん。貴女さっき勉強は意味が無いと言ったけれど、それは間違っているわ。将来の選択肢を広げる意味でも勉強は大事なことよ」
「むう。……ヒッキーは勉強してるの?」
「失礼な、俺は国語なら学年3位だ!」
「うっそ……絶対ヒッキー馬鹿だと思ってた」
「お前マジで失礼だな。蒲生先輩は3学年首席、雪ノ下は2学年首席。馬鹿はお前だけだな」
「バカはあ、あたしだけなの?」
結衣の言葉に思わず3人で頷くと、うわぁーんと机に突っ伏してしまった。
「安心しなさい。テストの点数は良くても、人間として赤点の人もいるわ」
「おい、なんで今俺の方見たんだよ」
「まぁ結衣達も来年には進路選択や大学受験があるのだから、今から勉強しないとな」
……結衣の場合、今からでは遅いかもだが……
「そうッスね。総武校は進学校ですし、夏期講習受講しようって生徒は多いんじゃないですか?」
「そうだな、早いやつは1年から予備校に通うな」
「予備校かーなんか高いイメージあるし、なんでみんなわざわざ勉強しに行くのかな? 学校でよくない?」
「問題の傾向が学校のテストと入試では、全くの別物だもの。入試対策をするなら予備校に通った方が、独学で勉強するより効率的だと言えるわね」
「それに、大抵の予備校ではスカラシップを用意してるしな。もちろん俺はそれを狙っている」
「すくらっぷ?」
それ、意味全然違うからね!?
「あら? それから狙わなくても現在進行形で産業廃棄物みたいなものじゃない。ねぇゴミ企谷君」
「やめろ。小町にごみぃちゃんって呼ばれる時のこと思い出しちゃうでしょうが!」
「はぁ、スカラシップって言うのは奨学金制度の事だ。成績優秀者には受講料の免除等の優遇措置がある」
「へーじゃあヒッキーは成績良いんだ?」
「まぁな、親から塾代貰ってるからスカラシップ取れば丸々俺の金になるって訳さ」
「それ、詐欺じゃん……」
「貴方って本当にひねくれてるわね……一見誰も損をしていないように見えるのが余計タチが悪いわ」
「はぁ、でも進路か〜みんなはもう決めてるの?」
「私は国公立理系ね」
「国公立文系」
「俺は私立文系だな」
「こっこーりつ……なんか頭良さげ」
「いや、頭良いんだよ……あと別に私立文系が馬鹿って訳でもねぇからな。受ける大学によるし」
「ん〜じゃあ勉強会しよ! テスト1週間前は部活ないしさ、午後ファミレス行こーよ。ああ、そういえば今週の火曜日は市教研で部活ないしそこもいいかも」
「図書館の方が集中出来るんじゃ?」
「それじゃあ相談出来ないし」
そんなこんなで、勉強会が決まってしまった。
メンバーに八幡がいなかったから、後で誘うか……