中間試験まで2週間、約束通りファミレスで勉強会をすることになった。
「ゆきのん、サイゼじゃなくてごめんね。ミラノ風ドリアはまた今度だね……」
「私は別にどこでも構わないわ。……そもそもドリアは日本発祥よ、何故ミラノ風にしたのかしら?」
そこはツッコんじゃダメだよ。
各自ドリンクを取りに行き、席は男女向かい合うように座るとようやく勉強会の準備が整った。
「よし、じゃあ勉強会始めよっか」
結衣の開会の合図とともに、雪乃と八幡は流れるようにヘッドホンとイヤホンを装着した。
あ〜音楽聞くタイプだったのか、つくづく勉強会に向かないボッチ体質だな。
「はぁ!? なんで音楽聞くのよ! 違うよ! 勉強会ってこんなんじゃないよ!?」
こら、テーブルバンバンするんじゃありません。はしたない。
「……ごめんなさい。勉強会等したこと無くて、どんなのが勉強会なの?」
「えっと、出題範囲確認したり、問題出し合ったり。飽きたら休憩も挟んで駄弁ったり?」
それ、勉強になってるか?
「それなら一人で勉強した方が余程効率的ね」
そこからは黙って勉強モードに移行した二人に諦めが着いたのか、結衣も勉強を始めた。
「ねぇごー先輩、『ドップラー効果』ってなに?」
分からない問題があったのか、手が止まっていた結衣が質問してきた。
「そうだな。分かりやすく言うと救急車がサイレンを鳴らして近づいてくるとき、音がだんだん大きくなるとともに音が高い音に聞こえ、救急車が通り過ぎたとたんに音が低い音に変わるだろう? このように観測者と音源が互いに近づいたり遠ざかったりするときに音の高さが変わることをドップラー効果って言うんだ」
「あ〜確かに救急車の音って急に変わるよね〜」
なんとか理解出来たのかノートに書き込む結衣。
はぁ良かった。これで分かんなかったらちょっとお手上げだった。
「悪い、ちょっと……」
急に八幡が立ち上がると、凄い勢いで外へ飛び出していった。
「えっ? なに?」
「なんか外見てから顔色変わったが……」
お目当てのものが見つかんなかったのか、八幡が苦い表情で戻ってきた。
「どうかしたか?」
「いや、何故か妹が男と歩いていて……」
「ははーん。さてはデート中だったんじゃない?」
結衣の言葉に余程ショックを受けたのか、八幡はわなわな震え始めた。
「馬鹿な……ありえない……兄の俺にも恋人がいないってのに妹にいてたまるか! 兄より優れた妹なんざいねぇ!」
ちょっと、声大きいよ? 雪乃がめっちゃ睨んでるよ?
「頭の悪い事を大声で言わないで。ヘッドホン越しでも聞こえたわよ」
「それに、兄より優れた弟妹なんていくらでもいるだろう。有史以来、どれだけ御家騒動があったと思っているんだ」
「いや、違うんだ。俺の可愛い妹が今、正体不明の男と一緒だったんだ!?」
「どう見てもただの中学生じゃん。小町ちゃんのこと心配なのは分かるけど、あんまり詮索すると嫌われるよ〜最近、うちのパパも『彼氏いるのか?』って聞いてきてウザイもん」
……それ、俺のせいじゃね? お父さんごめんなさい!
「それは、お父さん可哀想過ぎるだろ……っつーか、なんでお前妹の名前知ってるんだ?」
「えっ? あ〜……この前言ってたじゃん。ごみぃちゃんって呼ばれてるって……」
あったなそんなことも
「ばっかお前、毎日言われてる訳じゃねぇよ。週4くらいだよ」
それ充分多いのでは?
「しっかし、参ったな……妹を愛するあまり無意識に名前を口にしていたとは、これじゃもう少しでシスコン野郎と同じだぜ」
「いや、もう手遅れでは?」
「馬鹿な!? 俺は断じてシスコン野郎ではない! むしろ妹としてではなく、一人の女性として……ギャーっ! ギブギブ! ちょっ!? 蒲生先輩!? 関節極まってるんですけど!?」
アホかこんな危険人物取り押さえるに決まってるだろ。
「雪乃、俺が取り押さえてる間に警察に連絡を」
「分かったわ……この変態……」
既に雪乃は携帯を取り出していて通報3秒前だった。
「ヒッキーマジありえない! ヒッキーキモイ!!」
「すみませんでした。冗談です。だから通報はやめて? いや、ホントガチで!?」
「はぁ貴方が言うと冗談に聞こえないわ。……そんなに気になるなら家で聞けば良いじゃない」
「いや、まぁそうなんだけどよ……それより蒲生先輩? そろそろ技を解いて頂かないと関節はずれちゃうんですけど!?」
おっと忘れていた。
しっかし、もう勉強する空気じゃないな……
今日はもうおしまい、かいさーん!