中間試験1週間前になり、今日から部活は無い。そこで約束通り結衣、雪乃、彩加と勉強会をする事になった。
「ほら! ゆきのんミラノ風ドリアが来たよ。一緒に食べよー」
「……何処がミラノ風なのかしら? 普通のドリアにしか見えないのだけれど……」
やや一悶着あったが、昼飯を終えた俺達は早速勉強会へうつった。雪乃から早く始めろオーラ漂ってたし……
「では、国語から出題。次の慣用句の続きを述べよ。『風が吹けば』」
「……京葉線が止まる?」
んなピンポイントな慣用句あってたまるか!
「『桶屋が儲かる』が正解だ。では、歴史から出題。桶狭間の戦いは何年に起こった?」
「1600年!」
これは知ってる! じゃないから、間違ってるから。
「そりゃ関ヶ原の戦いだ。桶狭間の戦いは1560年」
ふと声をした方を見ると八幡がぽつんと立っていた。
「八幡! 八幡も勉強会呼ばれてたんだね♪」
彩加が歓喜の声をあげるも俺は何も聞いてない。多分、結衣誘ってないと思うんだが…
いや、結衣さん? その「やっべー呼んでない人来ちゃった〜」って顔止めなさい。もう、バッレバレだから。
「あら? 比企谷くんは呼んでいないのだけど、何か用?」
「雪ノ下、人を傷つけることだけを目的とした事実確認はやめろ」
しっかし、どうすっかな。確実に八幡機嫌悪いし、ここは対八幡決戦兵器を使うか。
「そもそも、お前は『ねぇ八幡、一緒にしよ?』……もちろんさ! 戸塚のお願いならなんだって叶えてあげるよ!」
ホント単純だな〜とりあえず彩加の横に座らせとけば良いか。
お手洗いから戻ると、何やら中学生らしき美少女と男子生徒が同じテーブルに座っていた。
なんとこの美少女は八幡の妹さんなのだとか。アホ毛は似ているな。
「は、初めまして! 比企谷小町です! いつも兄がお世話になっております!」
うわぁーこんな綺麗な90度のお辞儀見たことないやー。えと、川崎大志くん? も真似しなくて良いから。いや、マジでやめて?
「小町落ち着け。確かに蒲生先輩は見た目はヤクザだが、気の利いた優しい人だぞ」
「ほ、ほんとに? 小町売り飛ばされない?」
ちょっと小町ちゃん? お兄さん泣いちゃうよ? あと、そこの毒舌貧乳女、笑ってんのバレてるからな? 絶対許さん!
川崎くんによると、総武校に通っている姉が突然不良化してしまい、どうすれば良いか迷っているらしい。
優しく、料理上手で真面目な女の子。確かにそんな子が急に不良化したら家族は心配だろうな。
「成程、不良化したのは二年からなんだね?」
俺がそう言うと、川崎くんは「はい」と力なく答えた。うーん、かなり深刻な問題みたいだな。
「確か川崎さんはF組だったわね、比企谷くんと同じクラスになってから変わってしまった……と」
ちょっ! 言い方……
「ちょっと雪ノ下さん? なんで俺が原因みたいな言い方してるの? 病原菌なの?」
「そんな事言ってないわ。被害妄想が過ぎるわよ、比企谷菌」
「言ってるから、菌って超言ってるから」
「噛んだだけよ」
○○菌とか、小学校の時流行ってたな……タッチされなくても机とかにやられてな……ちょっと気になっていた女の子までも、めっちゃ嫌そうな顔で俺の机に擦り付けてきてね。悲しかったなー
「帰りが遅いって何時くらいなの? あたしも22時くらいに帰った時はママに怒られるし。高校生だから多少は遅くなるんじゃないかな?」
……後で結衣は説教だな。
「でも、五時過ぎなんすよ……」
それは朝帰りでは? 今日も遅刻して来たそうだし、あまり寝れてないんだろうな。
「そんな時間に帰ってきて、ご両親は何も言わないの、かな?」
彩加の懸念は最もだ。親がちゃんと指導しなくては子供はそのまま行くとこまで行ってしまうだろう。
「そうッスね……うちは両親共働きで、下に弟妹いるんであんま姉ちゃんにはうるさく言わないんすよ。それに、時間的にもすれ違ってて滅多に顔合わせないし……たまに顔合わせてもなんか喧嘩しちまうし、俺には『あんたには関係ない』の一点張りで……」
川崎くんは困り果てたように肩をおとす。
皆の顔を見ても、深刻な相談に戸惑っているのが分かる。特に雪乃は実家に問題を抱えているからだろう、顔を伏せていた。
「結衣達の印象から遊び明かすような友人もいるとは思えない。それなら、深夜バイトをしているんじゃないか? 失礼だが、あまり余裕のあるご家庭では無いようだし共働きのご両親と喧嘩をしていた理由にもなる」
心当たりがあったのか川崎くんが顔を上げる。
「あっそうなんスよ。なんか変な店から電話がかかってきて、エンジェルなんとかって所の店長だとか。もう絶対やばい店ッスよ!!」
途中から興奮し始めた川崎くんをなんとか宥める。まぁキャバクラの名前っぽいよネ。
「これで深夜働いているのが確定したわね。これは由々しき事態よ、直ぐに止めないと」
「そうだな。ことが知れ渡ったら、お姉さんには処分が下されるかもしれん。うちは進学校だからな、停学で済めばいいが最悪自主退学を進めるかもな」
「そ、そんな……」
余程ショックだったのか、川崎くんは崩れるように座った。
「早急にお姉さんにバイトを辞めさせよう。警察や学校側に知られる前に対処しないと手遅れになるやも知れん。……本来なら部活停止期間だが、俺はこの依頼を受けようと思う。どうか、みんな力を貸してくれ」
頭を下げる俺にみんな快く賛同してくれた。本当に良い仲間を持ったよ。俺にはもったいないくらいだ。
参参伍伍様、誤字報告ありがとうございました。