翌日から部室で会議が行われていた。
メンバーは奉仕部に彩加を加えた五人、みんなあれから色々考えてくれたのだろう。会議は順調に進んで行った。
「やはり、ベストは川崎さん自身がバイトを辞める決心を固めてくれる事だな。俺達で無理やり辞めさせても、他のバイトを始めてしまえば永遠に解決しないぞ」
「確かにその通りです。そこで一つ提案なのですが、癒しを川崎さんに与えることで精神面からケアを施すのはどうでしょうか」
雪乃にしては優しい提案だな。いや、いつも八幡に精神的ダメージを与えているからこそ出来る発想か。
「うん、具体的には?」
すると雪乃は自信満々に言い放った。
「アニマルセラピーって知ってる?」
……あ、これはアカン
結論から言うと失敗した。
ダンボール箱に猫を置くなんて発想が昭和過ぎると思うが、雪乃が一切引かなかったので八幡の猫をわざわざ用意し実行に移したが、川崎さんの猫アレルギーが発覚しあえなく撤退。雪乃が猫と戯れて終わった。あいつただ猫に会いたかっただけなんじゃ?
さて、どうするかと話し合っていると彩加がおずおずと手をあげてくれた。
「僕も思いついた事があるんだけど……平塚先生に相談するのはどうかな? 学校には知らせちゃダメなんだけど、平塚先生なら内々で済ませてくれるんじゃ……」
成程、確かに平塚先生なら話しは聞いてくれるか……
「平塚先生は他の先生に比べ生徒への関心は非常に高いと思うわ。生徒指導でもあるのだし、人選としては最適じゃないかしら」
「…分かった。平塚先生に事情を説明しよう」
大方の予想通り平塚先生は親身になって事情を聞いてくれた。
「成程、事情は分かった。蒲生、君の判断は正しい。事態が深刻化すれば最悪のケースも有り得たであろう。
ふっ後は大人の私に任せたまえ。なぁに話しを聞くくらい容易いことよ。……それに、別に私が解決してしまっても構わんのだろう?」
……先生、それ言いたいだけでしょ。
無駄にカッコつけ白衣をなびかせながら去って行く平塚先生は、あまりにも噛ませ犬感が凄った。
結果は言うまでもないだろう、川崎さんによる強烈なワン・ツーで平塚先生の心は砕け散り、その場に崩れるようにうずくまった。
そのあまりにも哀れな姿に、八幡は天を仰ぎ、雪乃は溜息を漏らし、結衣と小町ちゃんは気まずげに視線を地面に落とし、彩加は「先生、可哀想……」と呟く。見てるこっちまで精神的ダメージを受けるとは、流石平塚先生だ。
呼び出した手前、俺が何とかせねばならんだろう。俺はそっと先生の肩を抱くと、潤んだ瞳を向けてくる。
「先生……今度飯でも行きましょう」
「……ラーメンだがんな」
涙混じりにそう答えると、ヨロヨロしながら帰って行った。もう、誰かもらってやれよ。
時刻は夜七時を回り、俺達は「メイドカフェ・えんじぇるている」に来ていた。
川崎さんはもう帰宅してしまったので次は勤務先に行くことになり、千葉で「エンジェル」のつく朝方までやっている店は二店しかなく、ここはその一つである。
「八幡、君の提案だったが本当にここに彼女がいるのか?」
そんなタイプに見えないんだが……
「いや、材木座によるとここで間違いないと」
えぇ…一番信用出来ない情報筋なんですけど。
「ゲフンゲフン我を呼んだか八幡よ!」
めっちゃ汗だくじゃん、コート脱げば良いのに……
「おい、材木座本当にここなんだろうな?」
「あぁ間違いない。まぁ黙って我についてこい……メイドさんにちやほやしてもらえるぞ!」
後半本音漏れてんぞ……
ん? グイッとブレザーの裾を引かれ、振り向くと結衣がむーっと膨れっ面である。なんて愛らしい、ガハママそっくりだね♪
「ごー先輩もこーゆー店興味あるんだ?」
「そうね、貴方が行ったら店員が逃げ出しそうだけれど、どうかしらね?」
おい、フラグ立てんな! マジでそうなりそうだろ! 八幡達に助けを求めようとしたが何やらコントしてるし! クソッどうするか……
「……ここメイド体験出来るみたいだな。シフト表を見ることが出来たら川崎さんがいるか分かるんじゃないか?」
「まぁ一理あるわね、由比ヶ浜さん行きましょう」
……どうやら上手く回避出来たようだ。
店内は萌え萌え空間が広がっていて、どうやら俺も怯えられていないようだ。流石プロ!
一通り注文し談笑していると、トレイをぷるぷる震えさせながら近付いてくるメイドさんが現れた。
「お、お待たせしました。……ご、ご主人様」
そこには顔を赤くした愛らしいメイドさんがいた。まさにアキバメイドって感じで、結衣のスタイルも相まって正直ギャルゲーのヒロインである。
それなら、これからする事は決まっている!
「すみません、このメイドさんとチェキお願いします」
「ちょっ! ごー先輩っ!」
「やべぇ、蒲生先輩目がガチだ……」
何やら八幡が言っているが無視だ無視。今はこの可愛いメイドさんとチェキするのが最優先だ。
「何を遊んでいるのかしら?」
振り向くと大英帝国時代のメイドさんが絶対零度の視線を向けていた。……有りだな。
「すみません、このメイドさんともお願いします」
「流石は蒲生氏、上級者でござるぅ!」
「はぁ…ふざけないの。川崎さんは居なかったわ、シフトにも名前は無かったからここはハズレね。……えっ? ちょっと本当に写真を撮る気なの!?」
うん、もちろんさ!
川崎さんは居なかったけど、とっても素敵な写真が手に入ってご機嫌なまである。家宝にしよ♪
今日はもう遅いので解散することになった。やけに雪乃と結衣が顔真っ赤だったけど、まぁ大丈夫だろ。