これは、とある勉強会の出来事。
「なぁ由比ヶ浜? なんで総武校受かったんだ?」
「どういう意味だっ!?」
結衣がノートで八幡を引っぱたくも、正直俺も同じ事を考えていた。
事の発端は雪乃が作った模擬試験の結果だ。
国語 24点
英語 16点
数学 12点
理科 28点
社会 20点
これには流石の雪乃も絶句していた。
「いや、五教科で合計100点ってヤバいだろ! どこの花嫁だよっ! 知能五等分してんのか!?」
結衣は涙目で唸っているが、正直カバー出来ん……
「なぁ雪乃? 総武校って面接重視だったか?」
「仮にも県随一の進学校なのだから学力重視だと思うのだけど……不正入学かしら」
「ゆきのんっ!?」
言い方はアレだが、これは酷すぎるな……全教科赤点候補なんざなかなかいないぞ。
「……赤点って何個までセーフかな?」
「一つくらいなら放課後に補習くらいだろう、八幡がそれだからな。ただ、全教科赤点だと最低でも、夏休みは無くなるだろうな」
「やだよ〜みんなと遊びたいよ〜!!」
そんな結衣を見兼ねたのか、雪乃が聖母のごとき頬笑みを浮かべ結衣の肩に手を置く。
「由比ヶ浜さん、安心しなさい」
「ゆ、ゆきのんっ!」
「留年しても、私達は友達よ」
「ゆきのんっ!?」
「完全に諦めてんじゃねぇか……」
結衣を助けたいが、もうテストまで日は無い……
「強化合宿をするしかないな。幸い明日から土日だ、泊まり込みで教えるしかないだろう」
「場所は私の家でやるしかないわね。由比ヶ浜さん、御家族に連絡してくれるかしら? 土日は帰れそうにない……と」
結衣は今から勉強地獄を想像したのだろう、ガタガタ震え始めたがこれも致し方なし、結衣の為だ。
「総武校は30点以下で赤点だ。安心しなさい、ギリギリ間に合うかもしれないぞ……死ぬ気でやれば」
さぁ地獄の幕開けだ!
国語
「結衣、小説は読むか?」
「えっ? 漫画なら〜」
「よし、なら方針は決まった。文章題はすてろ!」
「すてちゃうんだっ!」
すてるよ? 時間も頭脳も足りてないもん。
「良いか、文章題には解き方がある。しかし、この短時間で結衣は絶対マスター出来ない! だからすてる、選択問題は神に祈れ! 解くべきはこの漢字の出題だ。
この教師は毎回漢字ドリルから読み書き30点分出す、出題範囲を見ても覚える漢字は6〜70個ぐらいだからな。覚えるまでノートに書き続けろ、暗記だ!」
社会
「結衣は日本史選択か、そして範囲は戦国時代。この教師は信長大好きだからその周辺の合戦と名前、年代丸暗記するしかないな」
「えーでも、家とか義とか多すぎて分かんない……」
まぁ気持ちは分かる、だが説明してやれる時間が惜しい。
「良いか! 絶対名称を間違えるなよ! 漢字ミスはことごとく減点されるからな。選択問題は神に祈れ、暗記だ!」
英語
「結衣にリスニング能力があるなんて、最初から期待していない」
「あんまりだっ!?」
日本語すら満足に聞き取れてないんだから、無理に決まっているだろうが!
「国語と同じで単語の出題が30点分ある。これを取りに行くしかない! なに、精々80個くらいだから勿論覚えられるよな? 選択問題は神に祈れ、暗記だ!」
「うぎゃーっ! また暗記だー!!?」
理科
「結衣は生物選択か、良かったな結衣。今回は簡単だぞ?」
「ほ、ほんと?」
疑わしい者を見る目をしているが、これは本当だ。
「この教師、三年前から問題使い回ししてるからな。ほら、去年の答案。とりあえず全部暗記な?」
「一緒じゃんっ!」
数学
「初めに言っておく、結衣の頭じゃ応用は無理だ!」
「じゃ、じゃあどうするの?」
「ひたすら問題を解きまくり基礎を叩き込むしかない! 良いか、数学にまぐれ当りは存在しない。解けないやつは絶対解けん。覚えるまでひたすら反復練習だ」
「イ、イヤァァァ〜!?」
「……おい、雪ノ下。あれ大丈夫なのか? なんかとんでもない事言ってんぞ」
「しょうがないじゃない……基礎すらない状態なんだから。不幸中の幸いなのは、その空っぽの頭に知識を詰め込めるって事ね」
「んな、メモリーチップじゃねぇんだから……」
「あら? でも言い得て妙だと思わない? 蒲生先輩曰く、初日は由比ヶ浜さんの頭をクラッシュさせることから始めるって言ってたわよ」
「発想がヤバすぎるだろ……あの、雪ノ下さん? 何故俺の腕を掴んでいるんでしょうか?」
「ふふっ貴方も参加するのよ。数学9点さん?」
「い、嫌じゃ〜!あんな地獄に行ってたまるか!? だ、誰かたすけ……小町ぃ〜!!?」
この強化合宿で結衣と八幡は無事に赤点回避出来たようだ。その反動なのか一日寝込む事になったが、夏休み返上に比べたら安いものだろう。