やはり先輩の青春ラブコメはまちがっている   作:チキチキ

20 / 26
やはり彼女は道を誤る

 結衣が部活に来なくなって一週間が過ぎた。職場見学で何かあったのだろうか……

 

 本当ならすぐにでも結衣に会いに行きたかったのだが、ここ最近風邪で寝込んでしまい奉仕部にも顔を出せないでいた。

 

 

 

 ラ○ン♪ 

 

 

 

 ん? メールか……雪乃? 珍しいな……

 

 

 

 ……なんとなく事情は分かった。

 

 しっかしすれ違い……ねぇ、彼奴らの場合ハリネズミのジレンマな気がするがな。お互い傷つきたくないし傷つけたくないんだろう。

 

 一度変わってしまえば、もう二度と元には戻れない。そんな当たり前な事に躊躇してしまうのなら、きっとそれはあの場所を大切に思っている証拠だ。

 

 人との関わりから逃げてきた彼奴らが、よくここまで成長したもんだ。俺は今年で卒業……せめてこの場所だけでも残してやりたい。

 

 pipipi

 

 あっ結衣? 土曜日会えないかな? 

 

 

 土曜日の朝、俺は由比ヶ浜家にやって来ていた。

 結衣に事情を聞くのもあるが、先日の御礼を渡せていなかったので丁度良かった。

 

 ピンポーン

 

「は〜い、あらごーくん♪ よく来たわね、ほらあがって?」

 ガハママっ! 今日も素敵です! 

 

「おはようございます。朝からすみません、お邪魔します」

 

「良いのよ〜結衣呼んで来るから、リビングで座っててね」

 二回目とはいえ、少し緊張するなぁ。えと、リビングはこっちだよな。

 

 ガチャ

 

「はじめまして、君が蒲生剛健君かな?」

 が、ガハパパァァァ!!? 失礼のないようにせんと! 

 

「はじめまして、蒲生剛健と申します。先日はお父様の不在の中、夕飯をご馳走していただきまして。こちらはほんのお礼です」

 スっとお土産の品を渡すと、ガハパパの眉がピクッと動いた。……セーフか?アウトか? 

 

「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!!!」

 アウトォォー!? 

 荒々しく立ち上がると、目を血走りながらこちらを睨みつけていた……ガチギレである。

 

「……パパ何してるの?」

 どう怒りを鎮めるか考えていると、恐ろしいほど冷たい声がリビングに響く。振り向くと結衣がとても親に向けるとは思えないほど冷たい目をしていた。

 

「ゆ、結衣? パパはその……この男を見極めようと……」

 

「そういうのいらないから」

 こ、怖っ! ちょっとガハママ大丈夫なのこれ? 「あらあら」なんて言ってる場合じゃないよぉっ!? 

 

「ごー先輩やっはろー! 早く部屋いこー」

 結衣は先程までの事はまるで無かったかのように俺を部屋へ誘う。後ろから「ゆい〜ゆい〜」と啜り泣く声が聞こえるがガン無視である。

 やっぱ女子って怖いっ! 

 

 

「えっと、ごめんねパパが変なこと言って……」

 部屋に着くなり、恥ずかしそうにそう切り出した結衣だが、正直その後の対応のインパクトが強すぎて半ば忘れていたまである。

 

「いや、気にしてないから。朝からすまんな、今日来たのは奉仕部のこれからについて話したくてな」

 本題を切り出すと結衣はビクッと身体を震わせた。

 

「こ、これからの事?」

 

「あぁ結衣も奉仕部のメンバーだからちゃんと話したくてな。最近、部活に来てないけど何かあったんだろ? 聞かせてくれないか?」

 おそらく俺が会いたいと言った時から、なんとなく聞かれる事は分かっていたんだろう。短く息を吐くと、おずおずと話し始めた。

 

「実は私とヒッキーはね……」

 

 30分、いや1時間は過ぎただろうか。ゆっくりとだが一つ一つ言葉を噛みしめるように説明してくれた。

 八幡が入学式の日に事故で入院、それは結衣のペットであるサブレを救う為だった……か。彼奴らしいと言えばらしいか。

 問題だったのは八幡が結衣の事を知らなかったことか。奉仕部での関わりは全て事故の罪悪感からだと信じて疑わず、結果としてその気持ちが職場見学の時に溢れてしまったんだろう。

 

「はぁ……お前達は本当に拗らせ過ぎだぞ……」

 思わずため息とともにこぼすと、結衣はウッと言葉を詰まらした。

 

「なぁ結衣、本当に奉仕部にいたのは八幡への罪悪感からだったのか?」

 すると、結衣は慌てるように立ち上がった。

 

「ち、違うよ! そりゃ最初来た時はヒッキーへのプレゼントの為だったけど、ゆきのんやごー先輩、ヒッキーを見てて思ったの。私もこんな風になりたいって、自分に自信を持ってみたいって! それに……凄く楽しかったから、四人で奉仕部にいるあの空間が好きなの」

 きっとそれは結衣の本心なんだろう。俺も四人でいる部室が好きだよ、紅茶の香るあの場所が……

 なんて言ったら正しいのかは分からないけど、それはきっと言葉なんかじゃ表せないモノなんだろうな。

 

「……そこまで言えるなら、問題は無いな。

 なぁ結衣、言葉にしたくらいじゃ伝わらない事もあるけどさ。言葉にしないと自分の想いは相手には分かんないよ。

 

 八幡もさ、きっとそうなんだと思う。何度も何度も辛い目にあってもう信じたくないって、信じなければ傷つかないし、相手も傷つかないってそう願っているんだと思うんだ。彼奴なりのひねくれた優しさなんだろうな。

 

 けど、それは凄く悲しいことだよ誰も幸せになれない。彼奴も変わらなければならないんだと思う。

 結衣、もう少しだけ待ってあげてくれないか? 彼奴なりの答えを出せるまで」

 

「……あたし我儘だから、あんま待てないかも……」

 

「大丈夫だよ。きっとすぐに答えが見つかる。それは凄く簡単な事だからね。それに、答えが気にいらなかったらやり直させればいいさ」

 

「ふふっなにそれ……ありがとごー先輩……」

 ようやく笑ってくれた……一年間ずっと悩んで苦しんだんだ。報われて欲しいな。

 

「さてと、俺はもう行くね。朝からありがとう。また、部室で会える日を待ってるよ」

 

「うん……あたしもその日を待ってる。っよし! サブレの散歩しなきゃね。今日はありがとうごー先輩」

 

 少し元気になった結衣と別れ帰路につく。大丈夫だよ結衣、だってもうすぐ君の誕生日なんだから。あの拗らせボッチ共も結衣に会う理由になれるだろう。本当にめんどくさい後輩達だな。

 

 さてと、勉強勉強っと。

 

 ラ○ン♪ 

 

 ん? 結衣? 

<ヒッキーとゆきのんがデートしてた……二人って付き合ってたのかな……>

 

 ……彼奴らマジで問題しか持って来ないな!!?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。