やはり先輩の青春ラブコメはまちがっている   作:チキチキ

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彼女へ贈る言葉

 そして月曜日が来た。

 結衣は来てくれるだろうか……

 

 ガラガラ

 

 大きな音で扉が開き、視線を向けると結衣と八幡がそこにいた。結衣の顔が強ばっているところを見ると、多分八幡が強引に中へ入れたのだろう。

 

「由比ヶ浜さん、来てくれたのね」

 

「や、やほー。ごー先輩、ゆきのん……」

 少しわざとらしく明るい声を出す結衣、部活に来るのがご無沙汰だからかまだ調子が掴めていない感じだった。

 

「ほら、二人共座りなさい。大切な話しがあるんだろ」

 うん……と返事をし、いつもの席へ座る。一分一秒が永遠のように感じる中、遂に雪乃が切り出した。

 

「由比ヶ浜さん、今日は貴女に話しがあるの。聞いてくれるかしら」

 

「うん……」

 そして、また静寂が訪れた。雪乃はスカートをギュッと握り、緊張しているのか一筋の汗が頬をつたう。

 

「由比ヶ浜さん……私は貴女に感謝を伝えたかったの。貴女が来てからの二ヶ月は本当に楽しかった……私はあまり言葉で伝える事は得意では無いのだけど、この気持ちはどうしても直接伝えたかった……ありがとう由比ヶ浜さん」

 

「ゆきのんっ! あたしも、あたしも楽しかった! この四人でいる時間が何よりも大切だったよ!」

 

「由比ヶ浜さん……」

 結衣の目から溢れる涙に息を呑む雪乃。

 

「今日呼び出したのは俺達からも感謝を伝えるためなんだ。結衣、今日は誕生日だろ? みんなプレゼントを用意したんだ。勿論八幡もな」

 まさか誕生日を祝って貰えると思わなかったのだろう。えっ? と八幡の方を向く。

 

「ヒッキー……」

 

「あ〜そのなんだ……一応まぁ用意した。俺も楽しかったってか、退屈じゃ無かったしな……」

 全く素直じゃないなぁ。

 

「まさかヒッキーがプレゼントくれるなんて思わなかったなぁ……その、こないだから微妙だったし……」

 お互い伺うように視線を向けるもすぐに逸らしてしまう。ここが奉仕部の今後を決めるターニングポイントになるだろう。

 八幡はおもむろに鞄の中から小さな包みを取り出すと結衣に手渡した。

 

「……これでチャラって事にしないか? 俺がお前の犬助けたのも、それでお前が気を遣ったのも全部チャラ。どうせ入学式からいてもボッチだったろうしよ」

 自虐的に笑う八幡を見ていると、どうしてこんなにも辛くなるのだろうか。

 

「あたしは……同情とか気を遣うとかしてないよ……ヒッキーは犬を助けただけかも知れないよ? でもね、あたしは家族を助けてもらったの……大切な家族を……だからねヒッキー、ありがとう。一年もかかっちゃったけど、これが本当に伝えたかったあたしの気持ち」

 ここまで胸をうつ言葉があるだろうか、一年越しの思いを伝えた結衣はとても美しい笑顔を見せてくれた。

 それでも、まだ八幡の心を溶かすことは出来なかったのだろう。未だ信じていいのか葛藤しているようだ。

 

「なぁ八幡、お前は人間観察が得意だよな? 依頼人の意図を正確に読み取っていたし」

 

「…あの、それが何か?」

 

「八幡から見て俺達はお前を虐めていた屑共と同じに見えるか?」

 正直、これは卑怯な質問だろう。八幡もなんて言ったら良いか分からなくなっている。だが、他人を信用出来ないなら突破口はここしかない。

 

「まだ俺達の事を計り知れていないんだろう? まぁまだ二ヶ月だしな、これからゆっくり理解し合えれば良い。だから、まずは自分の目を信じて判断してくれないか? 俺達が信用出来るか否か……」

 

「……そりゃ反則でしょ。そうっすね……保留で」

 ははっ本当に素直じゃないなぁ。

 

「それじゃまた四人で奉仕部を再開しますか」

 成り行きを見守っていた雪乃も笑顔を見せてくれた。

 

「そうね。また……四人で始めましょう」

「ゆきのんっ!」

「ち、近いわ由比ヶ浜さん……」

 感極まって抱きつく結衣をなんとか剥がそうとする雪乃。こんな風にじゃれあうのも久しぶりか。

 前までの奉仕部にはもう戻れないけれど、きっと今回の件はこの四人をいい方向へ導いてくれるだろう。

 

「よし! じゃあ誕生日パーティーしようか。カラオケだが予約は入れてある」

 

「そうね。私もケーキを焼いてきたからそこで食べましょうか」

 

「本当っ! やった〜! あたし荷物取ってくれからちょっと待ってて!」

 全身で喜びを表しながら教室へ向かった。きっと今頃スキップしてるんだろうなぁ。

 

「準備良すぎだろ……なにエスパーなの?」

 

「お前達を信じていただけだよ。他にも誘うか?」

 

「それじゃ戸塚ですね、戸塚しかいませんね、戸塚にしましょう!!」

 おぉう、いつにも増してやる気になってるな。雪乃ドン引きしてるけど。

 

「はぁ……貴方って本当に残念ね。まぁ戸塚くんも呼びましょうか。後は小町さんと、ざ……財津くん? も呼んだら? 友達なんでしょう?」

 材木座な材木座、覚えてあげて? 

 

「まぁ良いけど……けど人数は大丈夫なんですか? 予約と違うのは店にも迷惑かかるんじゃ」

 

「それなら7人で予約してあるから安心しろ。どうせ八幡の知り合いなんてそんくらいしかいないしな」

 まぁ多少人数変わってもパーティー用の部屋を用意して貰ってるから大丈夫だけどな。

 

「えぇーさっき迄あんな優しい言葉かけてくれたのに、すっごい辛辣ぅ」

 

「貴方を甘やかしてもろくな事にならないでしょう。それより7人も知り合いが出来て良かったじゃない、今までの人生の最高記録ね。まぁこれからも抜けないでしょけど」

 

「クソっ! 言い返せねぇ……」

 納得しちゃったか〜

 

「やっはろーお待たせ〜。ん? なんの話ししてるの?」

 おぉやっと来たか。急いで来たのか少し髪の乱れた結衣がひょっこり顔を覗かせる。

 

「あぁ八幡を甘やかしてもろくな事にならないって話してたんだよ」

 

「あっはは、そりゃそうだよ〜」

 

「速攻で肯定すんなよ……」

 がっくしと肩を落とす八幡、まぁ結衣は正直だから。

 

「さ、そろそろ行きましょう。ケーキにフルーツ使ってるのよ。新鮮なうちに食べた方が良いわ」

 

「フルーツ!? スイカ!?」

 

「ケーキにスイカはちょっと……」

 結衣、ガハママに料理教わりなさい。いやマジで。

 

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