学校から出る際に多少一悶着あったが、無事小町ちゃん達と合流し、いざカラオケへ。
ドリンクバーで各自飲み物を確保しカラオケルームへ、適当に座りグラスを持つもここで完全停止。普通なら乾杯でもすべきなのだが、ここにいるほとんどの人はボッチだ。乾杯なんざ身内でしかやった事がなくそれも年数回、かくいう俺もまるでタイミングが分からず膠着してしまっていた。
「んん! 部長、ここは代表として音頭を取るべきかと」
雪乃貴様! 普段部長なんて言わないくせになんて都合の良い奴だ! そういうところお姉さんそっくり!
「……結衣の誕生日を祝して、乾杯」
『カンパーイ』
「いや〜みんなありがとね〜じゃあロウソク消しちゃうね。フーっ!」
『イエーイ!』
結衣が蝋燭を消すと歓声と拍手が飛び交う。そして、また完全停止。
「えっ? な、なにこの空気?」
いや、だってなぁ。
「盛り上がるってなんなんだろうな」
「なんか哲学的だっ!?」
「いや、実際のところ俺もよく分からんのよな〜ほら、俺経験値少ないから」
「そうね。比企谷くんは呼ばれた事無いものね」
「ばっかお前、せっかく人がオブラートに包んでいるんだから的確に急所を抉るんじゃねぇよ!? それに、一度は呼ばれた事あるんだよ!」
一度だけなんだ……
「モハハハハ! おおかた一度呼ばれて以来それっきりなのであろう! ……我もそうだ……ふひっ」
オイィィィ! どうすんだよこの空気! もうお通夜だよお通夜、なんでこうボッチって自虐ネタに走って自爆すんだよ!
「まぁまぁせっかくのお誕生日会なんだからさ、もっと楽しい話しよ? ね、由比ヶ浜さん?」
「えっ? いや、結構楽しいよ! なんか奉仕部って感じで♪ 今まで誕生日会って裏方ばっかしだったしさ、料理取り分けてたらなんか終わってたって言うか……」
最初は良い話ぽかったのに、結構悲しい話だった……
7人中5人が使いもんにならんとは……もう高校生組は駄目だ小町ちゃん、頼む。
「……もうこんな空気耐えられない! そうだ、ケーキ食べましょケーキ!」
おぉ流石小町ちゃん! 素晴らしいアシストだ。
「いや、七等分ってどうやるんだ?」
「あら? 私は当然出来るわよ。まぁ数学赤点候補の比企谷くんには到底出来ないわよね」
めっちゃドヤ顔ぉ!? どんだけ嬉しいんだよ。
「チッじゃあさっさと切れば良いだろ」
「それでは蒲生先輩、お皿を押さえて貰えるかしら?」
えっ? まぁ良いけど……言われるがまま俺がそっと皿を押さえると結衣から待ったがかかった。
「ちょ、ちょっと待った! あたしが押さえるから! ケーキ入刀みたいでなんかヤダ!?」
ドン!
「わっ! びっくりした〜」
お隣さんかな? ちょっと騒がしいなぁ。
「ほら〜由比ヶ浜が騒ぐからお隣さんご立腹だぞ」
「ご、ごめんね……おかしいなぁ? 防音なんだけどな」
「はぁさっさと切りましょう」
そう言うとスッといとも簡単に切り分けてみせた。こいつナチュラルにスゲェ事するな。
「よくまぁ綺麗に切り分けれるなぁもしかしてA型?」
「何を根拠にそんな事を……」
「いや、お前って頑固っつうか融通が利かないっつうかなぁ」
気持ちは分かるが、そこは言っちゃ駄目だよ。
「あら? 喧嘩を売っているのかしら? 最高値で買ってあげるわ」
途端に室内の温度がグングン下がるのを感じる。ほらぁこうなったぁ、雉も鳴かずば撃たれまいに……
「あ、でもぼくはA型だよ。好きなことだとちょっとムキになっちゃうかな〜」
ほんと彩加は可愛いなぁ。ほんわかした空気が雪乃の冷気を中和していくようだ。
「俺もA型だな」
すると納得だわ〜って感じでみんな頷き始めた。
「なんか分かるかも、ごー先輩真面目だし」
「俺達のフォローにまわる事も多いしな」
「……どうでもいいけれど、私と随分扱いが違うように思うのだけど……」
おっと、また雪乃ブリザードが発生したな。もう完全に目が据わってるし、どんだけ負けず嫌いなんだよ。
「むほんむほん! だが、あながち血液型占いは間違っておらぬ。AB型は裏表が激しいという俗説があるが、我もふとした時に第二の我が「中二はどーでもいーや。あたしはOだよ〜」
ちょっと結衣、材木座しょんぼりしちゃってるよ。
「でも、確かに結衣さんっておーざっぱに見えます! かくいう私もO型なんですよ。もしもの時は私たちが輸血してあげますよ♪」
「適当だわ……まずいわね……ますます血液型占いに信憑性が出てくるわ」
「ゆきのんっ!? あたしそんな大雑把じゃないよ!」
いや〜それは無理があるよ。うん。
「そういう雪乃さんは何型なんです?」
「B型よ」
うわぁ納得……
「ゆきのんサバサバしてるっていうか、あれだよねクールビューティ?」
後は嫌いな事はズバリと言っちゃうとこだよなぁ。前にも八幡に毒舌かました時、嘘がつけない性格って言ってたしな。
「くっ! それなら比企谷くんはどうなの? あんなダメ人間O型よ!」
「おい、お前全国のO型の人敵に回したぞ!」
「兄ならAですよ?」
『……はぁっ!?』
有り得んだろ! こんな協調性皆無な男が日本人で最も多いA型だったら、今頃日本滅んでるぞ。
「ありがとう比企谷くん、貴方のおかげで血液型占いの全てを否定出来たわ」
「そんな綺麗な笑顔で怖い事言うんじゃねぇよ! 引きこもっちゃうでしょうが!」
「まぁ性格って血液型じゃなくて、育った環境で決まるのかもな」
「それはあるかもです! 三つ子の魂百までって言いますし♪」
最初はどうなるかと思った誕生日会もだいぶ盛り上がってきた。俺達はこんな風にくだらんじゃれあいをするのが性に合うんだろうな。
「ではでは、そろそろプレゼントタイムに参りましょうか!」
おっ小町ちゃんいい司会になってるな〜……本当なら最年長の俺がやるべきところを、すまん小町ちゃん。
「では、私から」
そう言って取り出した物は、可愛い装飾の施されたエプロンであった。
「可愛い! ありがとうゆきのんっ! 大事にするね」
うんうん、いいセンスしてるなぁ。
「僕からは髪留めだよ。いつも髪纏めてるから普段使いがいいかなって」
「さいちゃんありがとう! ていうか、これ本当に可愛くてあたしより女子力あるかも……」
相手の趣味に合い、使い勝手の良い物。まさにプレゼントの鏡だな。
「小町は写真立てです! 部室に飾って思い出の写真で埋めてくださいね♪」
「わ〜ありがとう! 凄く嬉しいよ!」
なんて子だ。ここにきて最高のプレゼントを渡すとは……そしてこのウインク、なんてあざと可愛いんだ!
「次は俺だな。まぁたいしたものじゃ無いが、気にいって貰えたら嬉しい」
俺は綺麗にラッピングされたケースを結衣に差し出すと、喜んで受け取ってくれた。
「わぁ凄く高そー開けていいですか?」
俺が頷くと、いそいそと開け始めた。ちょっとめっちゃ注目されてんじゃん!? 女性への贈り物がこんなにも緊張するなんて思わなかった……なんかこれで評価が決まりそうで怖いな。
「ハンカチ? 綺麗な色で大人っぽいし、刺繍も凄くオシャレごー先輩ありがとう!」
ホッ……良かった〜
「この刺繍アジアティックリリーね……由比ヶ浜さんにピッタリね」
「ふぅむ。急な事だった故、準備が出来ておらん。申し訳ない」
材木座にしては律儀なことだな。こんないきなり呼ばれたのなら準備出来てなくて当然だろうに。
「全然気にしなくていいよー?」
「いやいや、それでは我の気が済まない。かくなるうえは、我が編集したアニソンメドレーを贈ろう!」
それだけは駄目だ!!
なんとか八幡が自虐ネタを披露することで食い止めることに成功したが…材木座よ命拾いしたな。「リア充共はネタに飢えているのだ! それ故にヘタな弱味を見せようものなら骨の髄まですすられるぞ!
クソったれ共め! L○NEのBGMを失恋ソングに変えただけであんなに弄りやがって! そうだよ、フラレたんだよ! だからもう恋なんかしないんだよ!!!」
……ん? なんか静まりかえってる……
「蒲生先輩、貴方にも辛い過去があったのね……」
「ごー先輩かわいそう……」
「それは人間不信になるな」
しまった!? 思わず声に出してしまったのか……
はぁ…死にたい…