七夕それは織姫と彦星が一年に一度だけ会うことを許された日。人はそれをロマンチックであると崇め祀りあげる。だが、俺からしたら二人の事が羨ましくて仕方がない。アイツと一年に一度だけしか会わないで済むのならどれだけ嬉しいだろうか……
そう、7月7日は雪ノ下陽乃の誕生日である。
午前八時、千葉駅に召集をかけられた俺は変なオブジェの前で陽乃を待っていた。
「おはよーケン、今日は珍しく抵抗しなかったじゃない」
「まぁ誕生日くらいわな。そんでどこ行くんだ?」
こいつの事だ、日中デートして夜は高級レストランとかだろう。
「平塚に行きます!」
「……はぁ!? なんで?」
「もう、今日は七夕だゾ? 平塚は日本三大七夕祭りの一つなんだよ。だから今から行くの」
どうやら俺はこいつのぶっとび加減を軽視していたみたいだ。
「ここ千葉、平塚神奈川おーけー?」
「よしっ! じゃ行こっかー」
聞けよ!
電車に揺られること数時間、遂に平塚までやって来た。見合わす限りの人混み、俺は着いてそうそう帰りたくなってしまった。
「いや〜着いたね〜長かった〜」
そんな胸そらさいで!? 無意識に目線吸い寄せられてしまう! これが万乳引力の法則か!
「わざわざこんなとこまで来るなんて、思い入れでもあるのか?」
「んーまぁ昔お父さんに連れてって貰ったんだよね。それからあまり行って無かったからさ、もう一度行きたかったのよ。ふふふっ安心して、今日は私がエスコートしてあげるから」
はぁ……まぁしゃーないか。
その後は陽乃に連れられ一日中歩き回った。陽乃はやれ恐竜がいないだの、メロン無くなっただの、お化け屋敷のクオリティが変わらないだのかなりはしゃいでるみたいでずっとバカ騒ぎしていた。昔と変わらない物もあれば無くなってしまった物もある。それがたまらなく楽しいのだろう。
「いやー楽しかった〜満足満足♪ さてと、そろそろ帰りますか」
「なんだ、珍しく早いお帰りで。明日は雨かな?」
「むぅ嫌な言い方。まぁでも帰りも長いしねしょうがない。けど、今日は雨振らなくて良かったよ。大抵三日間のうち一度は雨降るからさ」
まぁ時期が時期だからな。
「そりゃ良かったな。ふぁ〜疲れた……俺は少し寝るぞ。着いたらおこしてくれ」
マジねむ……い……
雪ノ下陽乃side
まさか本当に寝ちゃうなんてね。デートとしては大幅減点物よ、まったく。
しっかし、ケンとの付き合いも三年が経つのか……
私が人の狂気をまだちゃんと理解していなかったあの時、ストーカー達に襲われそうになった私をたまたま通りかかったケンが助けてくれたのよね……
おかげでケンは全治二ヶ月の怪我を負ったけど、相手側に全治半年以上の大怪我を負わせたことで過剰防衛をとられかねない事態にまでなっちゃって……なんとか観察処分で済んだけどあれは本当に肝が冷えたわ。
剣道だって永久追放にされたのに何も文句言わないで……もっと私を責めても良いのに……
ソッと彼の頭を撫でても一向に起きる気配がない。
「まったく馬鹿な人……」
私は未だこの胸にある感情の名前を知らない。
すみません、暫く不定期更新になります。